Tリーグ丸かじり  vol. 13

Column

奇跡的に面白いシーズンを締めくくる、女子ファイナルの行方は?

奇跡的に面白いシーズンを締めくくる、女子ファイナルの行方は?

Tリーグ女子のレギュラーシーズンは、木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)と日本生命レッドエルフ(以下、日生RE)が首位争いを繰り広げたが、途中からKA神奈川が突き放し、18勝3敗で優勝を決めた。2位の日生REは13勝8敗、3位の日本ペイントマレッツ(以下、ニッペM)は6勝15敗、私のイチオシだったトップおとめピンポンズ名古屋は5勝16敗の最下位となり、卓球コラムニストとしての見識を疑わせる結果となった。

石川佳純と袁雪嬌がチームを牽引したKA神奈川。見事、レギュラーシーズンを制した

私の見識はともかく、3月17日のプレーオフ・ファイナルは、KA神奈川と日生REの対戦となったが、その行方は「全く分からない」と言わざるを得ない。レギュラーシーズンでは大差でKA神奈川が優勝し、両者の直接対決でもKA神奈川が5勝2敗と勝ち越しているのに、なぜ「分からない」のかを以下に解説する。

まずダブルスだが、これほど方針が対照的な2チームも珍しい。KA神奈川は、8選手全員がダブルスに出ているのに対して、日生REは常晨晨(チャン・チェンチェン/中国)が21試合すべてに出ており、そのうち17試合までがパートナーが蒋慧(ジャン・ホイ/中国)なのだ。つまり、日生REは徹底的にダブルスを固定することで強みを発揮しているのだ。実際、日生REのダブルスの勝率は76%で、KA神奈川の67%を上回っているし、両者の直接対決でも日生REが5勝2敗と大きく勝ち越している。明らかに日生REが有利だ。

次に、シングルスの勝利数の個人ランキングを見ると、KA神奈川は、1位の石川佳純、2位の袁雪嬌(エン・シュエジャオ/中国)を擁しているのに対して、日生REは、3位の早田ひな、8位の平野美宇と劣勢は否めない。しかし、実は早田と平野は出場回数が少ないために勝利数が少ないのであり、勝率を見ると全く印象が変わる。勝率では、KA神奈川は袁の78%、石川の76%がトップ2だが、日生REは早田がなんと11戦全勝で100%、平野が75%なのだ。早田は袁にも石川にも勝っているし、平野も石川に勝っている。

シングルスの勝利数では3位に終わった早田ひな(日生RE)だが、勝率は脅威の100%だ

ビクトリーマッチに重複して出られることを考えると、日生REはダブルスと早田だけで3点持っていって勝ってしまう可能性すらあるのだ。実際、両チームの直接対決ではKA神奈川の5勝2敗だが、このうち、早田が出場したのは2試合だけであり、その2試合とも日生REが勝っている。早田が出た試合では日生REの全勝なのだ。

以上の状況から、俄然、日生REが有利に見えてきた読者も多いことと思うが、それでも「分からない」のは、Tリーグ以外の最近の状況だ。Tリーグで全勝だった早田は、世界選手権代表1次選考会でも全勝の1位でまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、3月3日の最終選考会でニッペMの加藤美優に最終ゲーム10-5から大逆転負けしてシングルスの代表を逃したばかりなのだ。一方の石川は、1月の全日本選手権で早田に敗れてベスト16に終わり失意に沈んでいたはずが、3月4日のジャパントップ12の決勝でかの伊藤美誠を破って優勝し、言葉本来の意味で「調子に乗って」いる。おまけにKA神奈川には全日本選手権のベスト16決定戦で平野を破って決勝まで進んでしまった恐るべき14歳・木原美悠までいるのだ。

ジャパントップ12で優勝し、勢いにのる石川佳純。KA神奈川を初代女王に導けるか?

要するに、お互いに勝ったり負けたりで実力が拮抗しており、勝敗がどう転ぶか全く予断を許さない状況にあるのだ。仕組んだわけでもあるまいに、奇跡的に面白いシーズンになってくれたものだ。図らずも筋書きのないドラマを演じてくれている選手たちにあらためて感謝しながら両国・国技館でのプレーオフ・ファイナルを見守りたい。

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE

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著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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