Interview

『えいがのおそ松さん』で中村悠一が改めて感じた、“隙だらけ”のカラ松の魅力とは?

『えいがのおそ松さん』で中村悠一が改めて感じた、“隙だらけ”のカラ松の魅力とは?

赤塚不二夫の名作ギャグ漫画『おそ松くん』を原作とし、2度にわたって制作・放送されたTVアニメ『おそ松さん』。二十歳を過ぎても“ニート”で“童貞”の松野家6兄弟が織りなす、予測不能なギャグコメディとして、2016年度の流行語大賞にノミネートされるなど、社会現象を巻き起こした。

そんな『おそ松さん』が、完全新作となる劇場版『えいがのおそ松さん』を制作すると聞いた次男“カラ松”役の声優・中村悠一は、「これまで短いエピソードで構成されてきた『おそ松さん』が、長尺の劇場版で成立するのだろうか?」と懸念したそうだ。その中村の言葉からは『おそ松さん』というコンテンツに対する強い思いと愛情が感じられる──衝撃のTVシリーズ放送開始から4年という月日を迎えようとしているいま、改めて中村悠一が感じるカラ松の魅力とは?

取材・文 / とみたまい 撮影 / 祭貴義道

108分という長尺の『おそ松さん』に「嬉しさ3割、辛さ7割」

『おそ松さん』がついに映画化ということですが、最初にその報を受けた際、どのように感じましたか?

中村悠一 率直な思いとしては、「嬉しさ3割、辛さ7割」でした。というのも、TVシリーズを録っていたときって、テンションが高い作品なもんですから、毎週すごい労力がかかっていたんです。だからこそ面白いものになったのですが、「これを劇場版のスケールでやるって、どうなっちゃうんだろう?」と、一番に思いましたね。

これまで『おそ松さん』でいろんなものを録ってきましたが、そのなかで一番尺が長かったのはドラマCDだったんです。50分強くらいあって、「うわあ、結構キツいなあ」って話をしていたんですが、それが今回は劇場版ということで、「90分くらいはあるだろうから、ちょっと大変そうだな」と思っていたら……フタを開けたら90分でもなかったという(笑)。

100分以上ありますからね。

中村 「なんでやねん!」っていう感じでした(笑)。さらに今回は、週替わりで“前説劇場”という短編もあるので、その収録も足したら「2時間を超えてるんじゃねえかい?」って(笑)。実際のところ、想像以上に大変な収録にはなりましたねえ……まあ、収録が終わったいまとなっては、よかったなと思いますけど。

台本を読んだときの印象はいかがでしたか?

中村 18歳の6つ子が出てくること自体は「面白い試みだな」と思いましたが、どんな感じで出てくるのかわからなかったので……単なる過去回想として出てくるのか、それとも、18歳の6つ子がベースで話が進んでいって、いまのニートの6つ子たちが少し出る、みたいな展開になるのか、いろいろ想像はしていましたが……まさか、2つの世代の6つ子たちが出会うとは思っていなかったので、「いやいや、待て」と。映画っていうのは、大体ゲストキャラが出てくるものだろうと(笑)。

「ゲストキャラが出てきて、彼らが頑張るような、映画でよくあるパターンじゃないの?」って脚本の松原(秀)さんにも言ったんですけど、「なるほどね!」の一言で終わりました(笑)。なので、6つ子が映像を占めている割合が思いのほか高かったですね。まあ、あんまりゲストキャラに支配されすぎたら、『おそ松さん』とはちょっと違う方向性になるかもしれないので、このカタチでいいとは思います。

『えいがのおそ松さん』のアフレコで印象に残っていることはありますか?

中村 最初はなんだかんだと楽しくアフレコしていましたが、夜の深い時間になりだしてから、明らかに僕も含めて全員の集中力の欠如が浮き彫りになってました。ミスの多さや、口が回らないなど、初歩的なエラーが目立つようになってきて、「やっぱり歳だな。一日中アフレコするのは、体力がもたないな」と如実に感じましたね(笑)。

20代のカラ松へと繋がる、18歳時のカラ松像に「違和感はなかった」

18歳のカラ松は、TVシリーズで演じられていた20代のカラ松の人格とはかなり異なっていましたが、どのような印象を抱きましたか?

中村 奇をてらったような設定ではなかったので、僕としては普通に受け入れられる感じでしたね。18歳のカラ松は、気が弱くて、人の顔色を気にしたり、意見が言えないとかって、相当引っ込んでる性格の子になっていますが、現代のカラ松を演じているなかでもそういった部分は見え隠れしていましたし、僕としてはある種、“隙だらけ”なところがカラ松の魅力だと思っていたんです。しかもそれを、カラ松自身は自覚していない感じがしていて、そこも彼の良さだと思っていたので、今回の18歳のカラ松にはそんなに違和感はありませんでした。18歳から20代への成長過程が見えるような気がしましたね。

たしかに、「あ、こういう18歳のカラ松がいたから、いまのカラ松になったんだな」と腑に落ちたところが個人的にもありました。

中村 18歳時の、まだカッコつけていない……なにかで自分を覆うようなことをしていない、無防備な状態のカラ松をみて、僕も「いまのカラ松を10代に落とし込んだら、この映画に出てくるカラ松になったんだな」と腑に落ちました。そのカラ松が、どこかのタイミングで生き方を変えて、いまのカラ松になったんだとは思います。結局のところ、本質は18歳のときから変わらないんでしょうね。

「じゃあ、20代のこのカッコつけてるカラ松って、何なんだろう?」と考えたときに思ったのが、「こうしないと、カラ松は喋れないのかな?」ということでした。そうやって自分で自分に仮面を被せているカラ松の、ふと素直になる瞬間だったり、心を許したときに出てくる素の部分が、キャラクターとしての魅力なのかもしれませんね。

ほかの6つ子たちの18歳時の印象はいかがでしたか?

中村 おそ松はいまとまったく一緒だったので、「一緒なんだ」って思うくらいですね(笑)。チョロ松は、台本に細かくキャラクターの特徴が書かれており、「神谷さんはこれをどう表現するんだろう?」と思っていましたが神谷さんがいい塩梅でおかしなキャラクターをちゃんと作り上げていたので、いまのチョロ松にも時々出てくる“イタさ”みたいなのが、18歳のチョロ松にもしっかりと出ていて、「あ、これがチョロ松の根幹なんだ。このときから“イタい”部分があるんだ」って思いました(笑)。一松は……個人的にはこの18歳シリーズで一番好きでしたね。

どんなところが好きでしたか?

中村 一見、陽気な感じで現在と真逆なキャラクターに見えますが、。そんな18歳時の自分を見てツッコんでる、いまの一松との対比がまた面白いんですよ。18歳の一松を単体で見ても何とも思いませんが、いまの一松を知っているからこそ、より面白く映るんでしょうね。

18歳の十四松は、不良というかなんというか……。

中村 ファンのみなさんの間でも話題になっていましたが、なんでこんな設定になったのかまったくわからないです(笑)。「18歳の十四松の設定、途中で忘れてるよね?」って思うぐらい、物語にこの設定が活かされていない気がするんですよね(笑)。十四松がこのビジュアルである必要って……あんまりないですよね?

おそらく監督たちのなかでは、「おそ松だけ変わらない」とする以上、「ほかの6つ子は変えないといけない」っていうのがあったんでしょうが……無理矢理感があるというか、思いついたのがこの設定だったのかなって。本当に何なんですかね? ちょっとよくわからないですね(笑)。

18歳のトド松はいかがでしょう?

中村 いまのトド松は、かわいいだけじゃなく、見ていてイラっとするような演出も含め、みんなから「ふざけやがって!」みたいに言われるところまでがひとつのセットになっていると思うんですが、18歳のトド松は普通にお兄ちゃん子な、かわいい感じですよね。かわいすぎて「18歳でこれって、大丈夫か?」と感じるところもありますが(笑)。「この頃は、まだ素直な性格をしているのかな」って思いました。

そんななかで今回、キャストさんのお芝居も含めて「そうきたか!」と思ったキャラクターはいましたか?

中村 やっぱりいつも「面白いなあ」と思って聞いちゃうのはトド松ですね。入野くんの、トド松の持っていき方っていうのがすごく面白くて……。

おそらく、トド松の設定資料をもらって演じる際に、ほとんどの人は“ぶりっ子”になるだけだと思うんですが、入野くんがやると“ぶりっ子だけじゃない何か”になっている気がしていて。ぶりっ子をしているんだけど、イラつく絶妙なところをついてくるんです(笑)。そこらへんは、やっぱり入野くんの技量だと思うし、「うまいなあ」と思うところですね。ほかの人にはできない、彼にしかできないトド松像に仕上がっているので、今回も映画を通してそういったトド松の面がたくさん出てくると思います。

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