Interview

廣瀬智紀があなたの“ヒーロー”になる。舞台「HERO~2019夏~」から見えてくる、誰かを大切に想う気持ち

廣瀬智紀があなたの“ヒーロー”になる。舞台「HERO~2019夏~」から見えてくる、誰かを大切に想う気持ち

7月31日(水)からヒューリックホール東京にて、舞台「HERO~2019夏~」が上演される。本作は作・演出の西条みつとしが主宰を務める劇団太陽マジックの旗揚げ公演として2012年に初演、今夏、バージョンアップして再演を迎える。
同作に初演時は別役で出演し、今作では“ヒーロー”に憧れる主人公を演じる、廣瀬智紀に話を聞く。いろいろと熱く語ってくれた彼の言葉には、誰かを想う“優しさ”という感情が溢れていた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


自分の軸となる作品に出演できる幸せ

まずお伺いしたいのは、今作の初演にあたる劇団太陽マジックの第1回公演「HERO」、つまり劇団の旗揚げ公演に参加されたというのは、なかなかできない貴重な経験のような気がして。そのときのお気持ちから聞かせてください。

7年ほど前の2012年に出演させていただいて、当時は24歳ぐらいで、作品の数やお仕事の経験も浅くて、皆さんには迷惑をおかけしましたが、とにかく作品が素敵だと感じることができたんです。こうして時を経て再演を迎え、現在の自分の軸となる作品に出演できる幸せを感じています。

初演のときは実際にどのような気持ちでしたか。

劇場が東京の学芸大学にほど近い“千本桜ホール”という100人ほどのキャパシティーの小劇場、しかもワンシチュエーションのとある病室での群像劇というお話で。お客様との距離がとてつもなく近くて、緊張もしたし、手だって震えていました(笑)。今回、劇場の大きさは変わりますが、あのとき小劇場でもっとチャレンジしたいと感じさせてくれた経験を得たのでとても思い入れが強い作品です。

鮮烈に記憶に残っているんですね。

ええ。ご一緒させていただいた方が皆さん、純粋にお芝居が好きで、キャスト・スタッフの笑顔が溢れていた現場だったので。それは“モノ”をつくるうえでとても大事だし、振り返ると幸せな環境だったと思います。僕らは劇団主宰の西条みつとしさんのことが大好きだったし、西条さんが見つけて選んでくださったキャストだったんです。僕たちに愛を持って接してくださったし、稽古も本当に楽しかったです。西条さんも稽古が好きで、朝から晩までみっちり稽古をするのですが、それが苦ではなかった。座組みもなごやかで、みんな仲が良かったし、いい雰囲気でした。

そんな作品が再び戻ってきます。今の気持ちはいかがでしょう。

僕にとってずっと尊敬している人は、西条さんなんです。もう一度ご一緒したいという思いを抱きつつ、今日まで果たせなかったので、まずは、それを実現するために動いてくれたスタッフに感謝しています。この作品に出演させていただくことで、西条さんにどんな恩返しができるかを考えますし、役者としては西条さんから求められることは多いのですが、それを超える何かを見つけて、これまでの自分の殻を破ったお芝居をしたいです。

西条みつとしさんの魅力はどんなところにあるのでしょう。

稽古前の西条さんは寡黙なイメージがありますが、演出となると仕事師の顔にガラッと変わる。そうして誰よりも面白いものを提供されます。とてもプロ意識の高い方だと思います。

西条さんは廣瀬さんにとって大きな存在なんですね。

誰よりもお芝居が好きで、あまりに純粋で、脚本も雑念がないし、演出も捨て身の覚悟がある方です。とことん良いお芝居を追求する姿は、役者ではなく、人間として仕事をしていくうえでも大切にしたいし、人生の先輩として尊敬しています。

普通の佇まいの人間を演じることは難しい

今作では、主役の飯塚広樹を演じますね。どのような役だと思いますか。

初演のときはダブルキャストだったのですが、それぞれのキャストから人間としての深みを感じた、とても人間くさい役なんです。あの頃の自分なら、間違いなく演じることができなかったと思います。

演じることができなかったというと?

普通の佇まいの人間を演じることは難しいんです。つまり、あえて演じないようにしつつ、板の上にしっかりと存在しなければいけない。様々なジャンルの舞台があると思いますが、ストレートプレイでは最も難しい役どころだと思います。たとえば時代劇では、時代背景やそれに見合った刀といった小道具がありますよね。いわば、周りの環境が演じやすくしてくれる。ただ、今作でいえば、ストレートに役者の人となりが出てくるので、頑張って演技をしてしまうと無理が生じてくるんです。

それはストレートプレイの特徴といえばいいのでしょうか。

必ずしもそうではなくて、どのジャンルでも一本筋が通っていれば、役づくりは一緒で、周りとの関係性の中でつくっていくものだと思います。舞台は決してひとりではできないので、今作でいえば相手役の北原里英さんの演じる木崎浅美の性格や雰囲気を感じ取りながら、お芝居をしていきたいと思います。

そんな作品で、今作は主役になりますね。どのように座組みをまとめていこうと思いますか。

ストーリーは、飯塚と浅美の関係が展開されていきますが、周りを彩っているキャラクターが引き立つからこそ、僕たちの関係性が理解できる構造になっています。逆を言えば、僕がブレない軸として、しっかり地に足をつけたお芝居をすれば、それによって周りも活きてくると思うので、僕は純粋に“HERO”の世界を生きたいです。

相手を引き立たせるお芝居を考え、相手を想う気持ちが第一

ここまでお話を伺っていると、廣瀬さんはつねに相手のことを考えているからこそ、ご自身が存在できるという意思を感じます。最近で言えば、舞台『カレフォン』(18)のときも、『映画 刀剣乱舞』(19)も、役柄もありますが廣瀬さんには優しい雰囲気が漂っていた気がします。

そうおっしゃってくれてありがたいですね(笑)。常日頃から相手を引き立たせるお芝居を考え、相手を想う気持ちが第一にあって、そこから舞台や映画がより良い作品になるように心がけています。ただ、相手に嫌われなければいけない覚悟でお芝居をしているときもあります。

そういった他者を想う気持ちは廣瀬さんにもともと備わっていたんですか。

人の気持ちを考えて気を遣うタイプかも。“こういうことを他人にされたら嫌だな”ということに敏感なんです。それは、幼少期から思春期を過ごして、自分の実体験から得てきた感覚かもしれないです。

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