冒険Bリーグ  vol. 16

Column

バスケ人生最高のチャレンジは目前に。千葉、富樫勇樹は高次元で「葛藤」する

バスケ人生最高のチャレンジは目前に。千葉、富樫勇樹は高次元で「葛藤」する

『冒険Bリーグ』第16回は、千葉ジェッツ(以下、千葉)の富樫勇樹を取り上げる。167センチのサイズはB1最小だが、その存在感はBリーグ最大。日本代表の正ポイントガードとして「ワールドカップ2019・中国大会」の出場決定に貢献し、今年夏の本大会でも活躍が期待されている。

千葉は3月16日、17日のシーホース三河戦を連勝で終え、B1東地区の首位を守った。東地区は千葉と栃木ブレックス(以下、栃木)が僅差の首位争いを繰り広げており、この両チームはB1全体の勝率も1位・2位を占めている。レギュラーシーズンの残りは13試合の山場だが千葉は40勝7敗、栃木が38勝9敗と好調だ。

16日の試合は千葉のオフェンスが爆発した。チームは大量105点を挙げ、富樫もチーム最多の26点を記録して快勝に貢献した。点差が開いた終盤はベンチに下がり、プレータイムが22分53秒に止まったにもかかわらずの荒稼ぎだった。

▼【B1ハイライト】03/16 千葉 vs 三河(18-19 B1第28節)

しかし試合後の富樫は少し難しい顔をしていた。千葉のキーマンは大野篤史ヘッドコーチから受けたアドバイスをこう説明する。
「試合後に大野さんに呼ばれて、個人的なところで『やり過ぎだ』と言われました。(点差が開いた)3クォーターらへんのことだと思うんですけれど、もう少しボールを回す意識を自分に入れたかったのか、そういう言葉がありました」

最終的にプレーをするのはコート内の選手だし、大野HCが押さえつけようとしているということではないはずだ。ただ指揮官は点差が開いた中でフロアリーダーがもっと試合を落ち着かせる、他の選手に打たせるプレーを選択するべきだと考えていた。

バスケはチームスポーツで得点の「数」以上に、いかに確率の高いプレーを選択できたかが問われる。富樫は確率の低いシュートを無理に打つタイプではない。一方でひとりが打ち過ぎてしまえば、周りのリズムが崩れる展開もある。試合の後半をリードして迎えていれば、時間を使って相手の攻撃機会を減らす判断も必要だ。司令塔は1試合、シーズン全体まで含めた「確率」を考える必要があるポジションなのだ。

16日の富樫は3ポイントシュートを8本放って4本成功させており、50%という成功率は十分な数字だ。彼は3ポイントシュートの名手で、そこは間違いなく千葉の武器になっている。ただし「打てば入ってしまう」からこその高いレベルの葛藤がある。

「シュートが当たっているときって、いつ打っても入る気がするんです。その中でチームとしてどうボールを回すか、ガードとしてどうチームをコントロールするかということの、バランスがたまに難しい」

こう語った翌17日の富樫はわずか2得点ながら、8アシストを記録。チームを95-74の快勝に導いた。打って良し、運んで良し、さばいて良しの万能選手だけに、彼はそういうゲームコントロールもできる。

また富樫はアメリカのモントローズ・クリスチャン高校に留学した経験を持ち、英語でのコミュニケーションも苦にしない。外国出身選手と「使う」「使われる」という関係を構築できるところも大きな強みだ。富樫は25歳にしてすでに日本最高レベルの名手だが、「高度な葛藤」「前向きな悩み」が彼を一回り大きくするのだろう。

千葉はBリーグ一の人気クラブ、ビッグクラブで天皇杯を3連覇中。しかし昨季はチャンピオンシップファイナルで敗れて初優勝を逃し、Bリーグ制覇は悲願だ。

チームは早くも16日にチャンピオンシップ進出を決めているが、富樫は全く満足していない。
「1位通過をしなければいけないと全員が思っている。自分たちのホームコートで試合をすることが、どれだけのアドバンテージになるかを去年感じました」

千葉がこのまま東地区1位、全体1位を保てば、クォーターファイナルとセミファイナルをホームコートで開催できる。千葉にとってチャンピオンシップは出場でなく「制覇」で意味の出るステージ。勝ち上がるためにはホームの後押しと、それを得るための1位抜けがカギになる。

16日には9月1日に初戦を迎えるW杯の対戦相手も決まった。日本はグループEに入り、9月5日には彼が待望していたアメリカ戦がある。チャンピオンシップ、W杯と富樫にとってバスケ人生最高のチャレンジが目前だ。

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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