Tリーグ丸かじり  vol. 14

Column

吹っ飛ぶスマッシュ、擦れるシューズの音と選手のうめき声。すべてが別物だったTリーグ

吹っ飛ぶスマッシュ、擦れるシューズの音と選手のうめき声。すべてが別物だったTリーグ

3月17日、東京・両国国技館でプレーオフ ファイナルが開催された。記念すべき日本初のプロ卓球リーグの初代チャンピオンを決める戦いだ。午後1時から行われた男子・木下マイスター東京(以下、KM東京)vs岡山リベッツ(以下、岡山RV)には、開幕戦とほぼ同じ5120人の観客が詰めかけた。

KM東京は水谷隼と張本智和の日本のトップ2を擁しているため、2点は堅い。一方の岡山RVは、圧倒的優位にあるダブルスを死守したうえで、水谷と張本以外の選手から何とかして1点をもぎ取り、2-2にしてビクトリーマッチに持ち込みたいところだ。ビクトリーマッチは1ゲームだけで勝敗を決めるギャンブル性の高いマッチであるため、水谷、張本といえども盤石ではないからだ。

第1マッチのダブルスは、KM東京は水谷/大島祐哉、岡山RVは上田仁/森薗政崇だ。同じ選手は2マッチまでしか出られないため、水谷がダブルスに出てきたということは、ビクトリーマッチは恐らく張本だ。過去、張本は岡山RV戦のビクトリーマッチでは2戦2敗。いずれも吉村和弘に敗れている。それを想起せずにはいられないダブルスのペアリングだ。ダブルスは岡山RVが有利とはいえ、これを落とせば勝ち目はない。そのプレッシャーの中、前半リードされながらも岡山RVが逆転で制した。

エース・水谷(左)をダブルスに起用し、初代王者への執念をみせたKM東京

実質的に勝敗を決したのは第2マッチ、侯英超(ホウ・エイチョウ/中国、KM東京)vs吉村(岡山RV)だった。侯英超はカットマンと呼ばれる守備型選手。ボールにカットと呼ばれる猛烈な後退回転をかけて相手のボールをネットにかけさせるスタイルだが、同じような打ち方で無回転に近いカットも混ぜるため、その見分けがつかない相手にとっては地獄だ。しかし回転の見分けさえついてしまえば攻撃できるボールでもある。だからお互いに慣れた状態では攻撃選手が有利であり、それ故にカットマンは少ない。

しかし侯英超のカットの回転量は吉村の経験の範ちゅうを逸脱していた。吉村のドライブが何度もネットの中腹に突き刺さった。「分かっていても落とす」現象だ。頭での理解に体が追いつかないのだ。吉村もファインプレーを連発したが、最後は3-1で侯英超が大きな大きな1点を奪取した。

勝負を分けた第2マッチ。KM東京は侯英超を起用し、大きな1点を奪取

その後、水谷が岡山RVの李尚洙(イ・サンス/韓国)を3-0で完封し、最後は森薗がフォア側に身を投げ出しながらカウンターしたボールを張本がそっとコート中央に返したのを、床に手を付いたままの森薗が呆然と見つめ、KM東京の初代チャンピオンが決まった。

Tリーグ男子は水谷、張本の両エースを擁するKM東京が戴冠!

リオ五輪で男子の卓球が注目されるようになって以来「卓球ってすごい」という感想が聞かれるようになったが、Tリーグによってさらに注目度が上がり、今やすごいのは当たり前となった。しかし、実はテレビではその本当のすごさは伝わっていない。会場で生で見たラリーを後でテレビ画面で見ると全然別物になり果てる。卓球台を蹴るように跳ねるボールと唸るような軌道、吹っ飛ぶスマッシュ。早回し再生をしているとしか思えないラリー、擦れるシューズの音と選手のうめき声。すべてが別物だ。これまで一部の卓球マニアが年に1、2回しか味わえなかったそれらをTリーグはより開かれたものにした。本番はこれからだ。

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE

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著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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