モリコメンド 一本釣り  vol. 111

Column

マキアダチ 日本の女性アーティストのイメージを刷新する可能性を秘めた、“DAW系シンガーソングライター”

マキアダチ 日本の女性アーティストのイメージを刷新する可能性を秘めた、“DAW系シンガーソングライター”

2019年2月15日更新のツイッターで宇多田ヒカルが「歌姫ってなんなん」と発言したことが大きな話題を集めたが(確かに“歌姫”という言葉はいまいち意味不明。もう二度と使わないことにします)、さらにその後、彼女は「『平成の歌人(かじん)』枠とか『平成のDAW使い姫』枠とかあったらすてき」ともコメントしている。歌人は文字通り、歌を詠む人。そしてDAWとは、Digital Audio Workstationのことで、DTM(Desk Top Music)、つまりPCで音楽制作を行うときに使う機材のことを指す。ソングライティングはもちろん、自らトラックを作成することの多い“打ち込み女子”でもある彼女らしい発言である。

そして今回紹介する“マキアダチ”もDTMのセンスと技術に長けた“DAW使い姫”の一人。楽曲の作詞・作曲、アレンジ、トラックメイク、サウンドプロデュース、ミックスなどを自分自身で手がけることができるマルチな才能を持ったシンガーソングライターだ。

幼少の頃からザ・ビートルズに触れ、その後、ヤー・ヤー・ヤーズ、シガー・ロス、レディオヘッド、ソニック・ユースといったオルタナ系〜音響系のバンドに傾倒したという彼女は、10代の頃から趣味として楽曲制作をスタート。ケータイ電話の着メルを自作することからはじまり、MTRによる宅録、さらにDAWを使ったトラックメイクへと移行しながら、打ち込みのスキルを(ほぼ独学で)上げていった。自分で歌うことを想定せず、ただひたすら作りたい曲を作りたいように作っていた彼女がアーティストして活動するようになったきっかけは、手伝っていたスタジオのスタッフに曲を聴かせたところ、「自分で歌って、レコーディングしてみたら?」と言われたこと。最初のEP「キジバトノウタ」を2014年に発表した彼女は、少しずつ“マキアダチ”としてライブ活動も増やしていく。

アイドルの楽曲コンペなどに参加し、作曲家、アレンジャーとしての活動も視野を入れていた彼女の運命が大きく動き嵌めたのは、アニメ『キャッチーくんのナイスキャッチ!』の音楽を担当したことだ。その特徴的な声を活かし、声優としても出演したことで、自分自身の殻を破った感覚を得た彼女は、リスナーを意識した楽曲にシフトチェンジ。「アンサンブル」など、キャッチーに振り切った楽曲を次々と生み出し、ライブの一体感もさらにアップ。洋楽のテイストを感じさせるダンサブルなポップチューンを軸にした、現在のスタイルへと近づいていった。

ルーツであるインディー・ギターロックに加えて、現行のR&B、ヒップホップ、エレクトロなどのテイストを取り入れながら、自らの音楽性を奔放に広げてきたマキアダチ。最新作『ALIVE!!!』からは、世界的な音楽のトレンドをバランスよく織り交ぜつつ、自らの個性をしっかりと響かせた独自のポップワールドが繰り広げられている。

これまで以上に“明るくポップであること”を念頭に置いて制作されたという本作。

その方向性をわかりやすく示しているのがタイトル曲「ALIVE!!!」だ。

“モダンなポップ・ロック”というイメージのサウンドとともに、タイトル通り“生きる”というメッセージが込められたこの曲のテーマは“恐竜”。もともと恐竜が好きだったという彼女は、昨年公開された映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』をきっかけに、恐竜に対する愛情が再燃。恐竜のDNAを採取して、育てて、バトルするゲームで遊んでいるときに「ALIVE!!!」の歌詞を思い付いたという。このブッ飛んだセンスもまた、彼女の魅力だ。

アレンジャーとしての才能が炸裂しているのが、インディー・ギターロック直系の「SPEEEEED!!!」。ライブのメンバーでもある竹内厚志(G)のよるエッジーかつポップなギターフレーズと最新鋭のエレクトロ・サウンドが融合し、高揚感たっぷりのアッパーチューンに結びつけているのだ。作詞・作曲はもちろん、アレンジ、サウンドメイクを含めトータルで楽曲を創造できる彼女ならではのナンバーと言えるだろう。

さらにチルアウト的なムードの「ようこそサンセット」、ティアーズ・フォー・フィアーズあたりの80年代サウンドを想起させる「This Way」などカラフルな楽曲を収録。ジャンルと時代を超越した彼女の音楽性をたっぷりと体感できる作品に仕上がっている。

「HUG ROCK FESITVAL 2019 GW」(2019年5月6日)、「マリフェス2019」(2019年5月14日)などのイベントに出演するなど、ライブ活動もさらに活性化。極上のポップセンスと卓越したサウンドメイク、一瞬で耳を奪われる個性的なボーカルを併せ持った“DAW系シンガーソングライター”マキアダチ。日本の女性アーティストのイメージを刷新する可能性を持った、その才能にどうか注目してほしい。

文 / 森朋之

その他のマキアダチの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.makiadachi.jp

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