LIVE SHUTTLE  vol. 337

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aiko ステージに立つ度に“瑞々しさ”を更新する理由とは。LLP vol.21のさいたまスーパーアリーナ公演を振り返る。

aiko ステージに立つ度に“瑞々しさ”を更新する理由とは。LLP vol.21のさいたまスーパーアリーナ公演を振り返る。

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」
2019年2月10日 さいたまスーパーアリーナ

これが、キャリアを積み重ねてきたアーティストの強さなのか――aikoのライブを観るたびにその内容に圧倒され、感動しているが、2月10日さいたまスーパーアリーナライブを観て感じたのは、あの“瑞々しさ”は一体何だろうということだった。年齢を重ね、ライブを重ねてきた結果、あの日感じさせてくれたあまりにも瑞々しい時間は、特別なものだった。

昨年20周年を迎えたaikoは、6月から約半年をかけ、全国27カ所45公演という自身最長にして最大のホールツアー『Live Tour「Love Like Pop vol.20」』を行い、12月9日に地元・大阪でファイナルを迎えた。そしてその合間、夏の終わりにはサザンビーチちがさきでフリーライブ『Love Like Aloha vol.6』を3年ぶりに行った。例年以上に精力的にライブを行ってきた。しかしaikoにはまだ足りなかった。間髪入れずに、今年ライブツアー『Love Like Pop vol.21』が1月26日大阪城ホールからスタートし、3月10日福岡マリンメッセでファイナルを迎えた。ライブを続けることでファンと繋がっていることを何度何度も確認し、「私だけを好きでいてください」と、その関係、絆をさらに太いものしていく。aikoにとってはライブこそが存在証明であり、だからこそステージに立つ度に瑞々しさを更新できているのかもしれない。

2月10日さいたまスーパーアリーナ。会場に入るとステージから後方まで約80mの長い花道が目に飛び込んでくる。この花道を疾走する、そしてファンとコミュニケーションをとりながら歩き、歌うaikoの姿がすぐに浮かんでくる。オープニングは、レーザーとプロジェクションマッピングの美しい演出で。オープニングナンバーは聴きなれた、でも何度聴いてもせつなくて、胸が締め付けられるイントロが印象的な「カブトムシ」。客席がどよめく。一曲目から「カブトムシ」という贅沢なセットリストで、観客のテンションは上がっているはずだが、全員が息をのみ、聴き入っている。年末に出場した『紅白歌合戦』で「カブトムシ」を歌った時の衣装でもある白いワンピースに身を包み、ひと言ひとこと愛おしそうに歌う。曲のラストで一瞬の静寂。aikoの深く息を吸い込む音。そして伸びやかな声を佐野康夫のドラムがより響かせてくれる。

客席に感動が広がる。そんな空気を一変させるように始まったアップテンポな「ハナガサイタ」では、“束縛バンド”(ザイロバンド)の演出で、客席にまさに花が咲いたようだ。ブラスセクションが加わり「雲は白リンゴは赤」を歌うと、「冷凍便」では<あたしの楽しみにしているラジオ もっと遅くにやるの>という歌詞を、<あたしの楽しみにしているラジオ 水曜夜1時にやるの>と変え、aikoファンにはおなじみの、親交のある南海キャンディーズ山里亮太が来場していることを暗示させる。

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」より

ピアノのドラムがグルーヴを生む「冷たい嘘」を情感たっぷりに歌い、「かばん」、そして「三国駅」を切々と歌い、叙情的な世界観を作りだす。この日は、より歌が“むき出し”になっていた気がする。それはセットリストがもたらすものなのか、はたまた曲のライブアレンジが影響しているのか、それともさいたまスーパーアリーナという巨大な会場の、ひとり一人に向け、歌を届けようという強い思いがあふれ出ていたのか……とにかく歌が生々しかった。

「恋人」を歌い終わると、aikoの姿が消え、ステージには土砂降りの雨が降る映像が映し出され、空気がガラッと変わる。雨音とaikoの声の余韻とが重なり、切なさが増していく。花道中央に円形ステージに幻想的な照明が降り注ぎ、aikoとバンドがせり上がってくる。アコースティックコーナーの一曲目は「Do you think about me?」。聴く機会が少ないナンバーのひとつだ。ジャズフレーバーを散りばめた「桜の時」、そして「あたしの向こう」では弾き語りと見せかけ、ワンコーラス終わったところでバンドが参加し、花道の先端、後方スタンドに近いお立ち台で歌う。

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」より

ここで「冷凍便」の替え歌のことを伝え、「なぁ、山里さん」とaikoがPA席に近い=花道のかぶりつきの席にいる山里に声をかけると、スポットライトが当たる。すると「あかんで!あいこのスポット取るな!あいこだけスポットあてて」と嫉妬。恒例のコールアンドレスポンスでも「赤眼鏡!」と山里を指名し、「イエ~」と叫ぶと客席は大盛り上がり。さらにマイクを向け、「スッキリ」(日本テレビ系)の、山里の親友!?の「天の声」のおなじみのフレーズ「おっはよ~ございま~す」が飛び出すと、場内は笑いと拍手が沸き起こる。ある意味ぜいたくな笑いの時間。

後半は「ストロー」から。光の渦の中で歌うaiko。アリーナならではの贅沢で幻想的な光の演出もこのライブの見どころのひとつだ。「ドライブモード」では、センターステージでスカートの裾をふわりと揺らしながら、光と戯れるように歌う。視覚的にも印象に残るシーンが多かった。「ひまわりになったら」では過去映像が流れ、20年間を駆け足で振り返る。跳ねるピアノが印象的な「夢見る隙間」、そして「最後の曲だけど、何度か呼んでくれたらすぐにでてくるから」と本編最後の「ホーム」を歌い始める。どこまでも続く道を照らすような、優しくも軽快なイントロに導かれ、優しく歌うと、また切なさを運んでくる。

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」より

佐野康夫(Dr)、須長和広(B)、佐藤達哉(Key)、浜口高知(G)、設楽博臣(G)、小林太(Tp)、川原聖仁(Tb)、山本公樹(Sax)という強力バンドが奏でる音は、aikoの言葉とメロディに強い光を当て、時には濃い影を作り出し、歌を際立たせる。いつまでも聴いていたいと思わせてくれる歌と演奏。

アンコールの声に応えて、約束通りステージに登場し「ナキ・ムシ」や「えりあし」「花火」「二人」など、20年という時間を振り返るメドレー。aikoを応援し続けてきたファンの中に、思い出にと共に寄り添う曲達ばかりだ。そして「デビューしたころは20年もやったら、もうやりたいこともやり尽くして、やめられるのかなと思ってたけど全然そんなことなくて。まだまだできてないこと、やれてないことがいっぱいありすぎて!もっともっとがんばらなあかん、もっともっとやりたい!って思います」と、aikoとファンとの時間は21年目からさらに濃いものになっていくと宣言してくれた。

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」より

「キスする前に」に続いて、ファンファーレのようなホーンが鳴り響き、大歓声が沸く。aikoのライブでは必須の「be master of life」を投下。花道を駆け回り、寝っ転がって、感情の赴くまま、今感じている姿を客席に曝け出す。まさに大団円、と思いきや、客席からのaikoと叫ぶ声がどんどん大きくなっていく。その声に押されaikoが「やるー?ちょっと待ってな!相談するから!」と、ステージ袖に一旦消えていく。

再びステージに登場し、まずは「予告」を披露。そして「愛の病」「ジェット」とアグレッシブに攻め、終了。「みなさんに連れてきてもらった」と久々のさいたまスーパーアリーナという空間を、ファンと共に楽しんだaiko。「ライブが終わるのが本当に淋しい」と語っていたが、それはファンも同じだ。泣き、笑い、感動し、濃密な時間を過ごしたファンは、極上の余韻に浸りながら、誰もが笑顔で会場を後にしたに違いない。aikoのライブにかける思い、ファンと一緒に過ごしたいという強い思い、そしてファンとの思いとが年々熱くなり、それが交錯し、ひとつになり熱量と共に、圧倒的な瑞々しさを作り出しているのかもしれない――そう感じさせてくれた夜だった。

文 / 田中久勝 撮影 / 岡田貴之

aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21」
2019年2月10日 さいたまスーパーアリーナ

セットリスト

1.カブトムシ
2.ハナガサイタ
3.雲は白リンゴは赤
4.冷凍便
5.冷たい嘘
6.かばん
7.三国駅
8.染まる夢
9.心日和
10.恋人
11.Do you think about me?
12.桜の時
13.あたしの向こう
14.ストロー
15.ドライブモード
16.ひまわりになったら
17.夢見る隙間
18.ホーム
<アンコール>
en1.メドレー
<ナキ・ムシ~今度までには~プラマイ~えりあし~嘆きのキス~あした~恋のスーパーボール~花火~Loveletter~二人>
en2.キスする前に
en3. be master of life
<ダブルアンコール>
en4.予告
en5.愛の病
en6.ジェット

その他のaikoの作品はこちらへ。

オフィシャルサイトhttps://aiko.com

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