Interview

正義とは、悪とは何か? 声優・内田雄馬、『劇場版ウルトラマンR/B』謎の戦士・トレギアを演じて思考する“ヒーロー観”

正義とは、悪とは何か? 声優・内田雄馬、『劇場版ウルトラマンR/B』謎の戦士・トレギアを演じて思考する“ヒーロー観”

2018年7月から12月にかけてTV放送された『ウルトラマンR/B(ルーブ)』。綾香市に住む湊カツミと湊イサミの兄弟がウルトラマンに変身するという、シリーズ初の設定で人気を博した本作が『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』となって帰ってきた。

舞台となるのは、怪獣が出現しなくなって1年が経った綾香市。湊家の面々は平和な日々を送っていたが、カツミの高校時代の友人だった戸井の身辺に「トレギア」と名乗る謎の存在が現れ、物語が動き出す──。

作品のカギを握るウルトラマントレギアを演じるのは声優・内田雄馬。「謎の存在として“存在理由を明確にしないお芝居”を心がけました」と語る内田に、ウルトラマン作品への思いや、ヒーロー観について語ってもらった。

取材・文 / とみたまい 撮影 / 山本哲也


過去の出演作を観てトレギア役に選んでくださった、そんなに素敵な縁はない

小さい頃の「ウルトラマン」の思い出について教えてください。

内田雄馬 変身ごっこをしまくっていましたね。どれだけスペシウム光線を撃ったことか(笑)。「シュワッ!」って言ったりもしていました。

特に思い入れのあるウルトラマンは?

内田 僕にとっての“ファースト・ウルトラマン”はウルトラマンティガ(TV作品としては1996年~97年放送)だったので、やっぱり一番記憶にありますね。僕、ウルトラマンティガのことを「ウルトラマン」って呼ぶんだと思っていたんです。でも、ウルトラセブンやウルトラマンタロウとかたくさんいることを後で知って、「え? そんなにいるの?」って(笑)。

3月8日から公開されている『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』でも、ウルトラマンロッソ、ウルトラマンブルをはじめとしたウルトラマンが登場します。その中でウルトラマントレギアを演じていらっしゃる内田さんですが、出演が決まった際にどのように感じましたか?

内田 「ウルトラマン作品に参加できる!」といううれしさはもちろんありましたが、それだけじゃなく……今回、僕が以前に出演した作品を観ていただいて、お声をかけてくださったと聞いたので、それがとてもうれしかったんです。きっと、その観ていただいた作品自体を「良い」と思ってくださったから、役のイメージも心に残っていて、僕にお声をかけてくださったと思うので。

そうやって今まで自分が演じてきたものを観ていただいていることが本当にうれしいですし、それでお声をかけていただいたのなら、そんなに素敵な縁はないなと思いました。

ウルトラマン作品で、かつ、物語のキーとなる役どころということで、プレッシャーもあったのでしょうか?

内田 僕は特撮で声をあてる経験があまり多くはないので、そういう意味での緊張はありました。最初にPVを録ってから、別の日に本編を録っていったのですが……PVのときは数ワードくらいしかセリフがなかったので、その中で「どういうキャラクターにすればいいんだろう?」と悩んだのを覚えています。

それでもかなりガッチリと役を作らせていただきましたが、本編の収録に入ってからはより細かくディスカッションしながら作っていくことができたので、すごく楽しかったですね。

今後も“謎の存在”であるために、トレギアの存在理由を「明確にしすぎない」ように心がけた

ウルトラマントレギアを演じる際に、どんなところを特に意識しましたか?

内田 今回のトレギアの立ち位置としては、「作品を観ていただいた方に謎を残す」というのが一番大きなところだったのかなあと思っています。作品の中で「これから」を感じさせるキャラクターとしても、大事な立ち位置だったのではないでしょうか。

それに、トレギアの「善でも悪でもない存在」というのも、僕の中ではかなり大事にしていた点ですね。収録の際に「トレギアをただの悪として描く方向にはしたくない」というお話もいただいていたので……。

たしかに、トレギアは“純粋な悪”というイメージで描かれてはいなかったですね。

内田 PVにもありますが、作中で主人公に「きみはウルトラマンか? 湊カツミか?」という問いかけをするんです。その問いかけ自体は、主人公にとって考えさせられるものであったりするので……トレギアって、相手の本質だったり、あまり探られたくないような“痛いところ”と見つけることに長けていて、そこから相手を揺さぶるんですよね。

「なぜそういったことをトレギアはするのか」という理由は、今作だけではわからないと思うんです。というか、逆に「理由を明確にしすぎない」というのを非常に大事にしているんですよね。「わからない」という怖さを観ている方に感じていただきたいし、「なんかよくわからない、謎のヤバいヤツがいる。コイツこの先どうなるの?」みたいな、先の未来も感じさせるような意図があったのかなあとも思っていて。そういう意味でも、「明確にしない」というお芝居を心がけました。

なるほど。でもそれって、かなり難しいことだと思うのですが?

内田 そうですね、すごく難しかったです(笑)。もちろん、その時々で起きていることに対してはトレギアも明確なんです。主人公たちから見たら、やっぱり悪に見えると思います。でも、ひとつの物語として今作を観たときに、「トレギアの本筋を明確にしすぎない」というのは徹底されているんですよね。

それってつまり、物語を「終わらせない・完結させない」ということなんですけど……自分が視聴者だったら、やっぱりスッキリ終わってほしいじゃないですか(笑)。そういう意味では、主人公たちはひとつの答えを出すのでスカッとした気持ちで観ることができるんですが、トレギアはそうではなくて……ハッキリさせないことによって、彼のミステリアスな部分をより感じることができ、トレギアのことが気になっちゃうんじゃないかなって思うんです。

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