Interview

松下優也が誘う音楽世界=“BLACK NEVERLAND”。ソロデビュー10周年を迎えた彼が目指す、この先

松下優也が誘う音楽世界=“BLACK NEVERLAND”。ソロデビュー10周年を迎えた彼が目指す、この先

昨年11月にソロデビュー10周年を迎えた松下優也が、ソロ名義では実に6年ぶりとなる通算4枚目のアルバム『BLACK NEVERLAND』をリリースした。
2008年にデビューし、2014年末のライヴをもってソロ活動をいったん休止。翌2015年にボーカルダンスグループ“X4”を結成し、昨年末には3枚目のミニアルバム『CROSS ROAD』を発表。
同時に俳優として、多数の舞台やドラマ、映画などでも幅広く活躍してきた彼にとって、ソロアーティストとしての10年とはどんな日々だったのか。かつて、ソロ1stアルバムに『I AM ME』と名付け、初のセルフプロデュースとなった本作でも“I am me”と歌い、“俺は俺”とラップする、その真意とは──。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 中原幸

ずっと微妙な登り坂をずっと走り続けてきた

まず、デビュー10周年を迎えた率直な心境から聞かせてください。

あっという間ではありますけど、自分の頑張りとか、自分のやってきたことに対して、それがどれくらいのものなのかっていうのは、正直あんまりわからなくて。比べるものもないですから。自分の場合、「俺はすげえやってきた」みたいなことをこれまであまり言ってこなかったし、思ってもいなかったんですけど、この10年を改めて振り返って、10年間をひとつの括りとして客観視するのであったら、「めちゃめちゃ頑張ったな、俺」って思いますね(笑)。

あはは。どうしてあまり言ってこなかったんですか? 

僕らの仕事って、結果的には人のためになることをやっていると思うし、そうであるべきだと思うんですけど、初めは自分がやりたいっていうところからスタートしているわけじゃないですか。だから、言い訳できる世界じゃないというか……自分がやりたいからやってるわけで、しんどいならやめたらいいっていう世界でもあるから、そういう意味で言えなかったというのもあると思います。ただ、すごいやってきたなって思う反面、つねに余裕がなかったなっていう印象がありますね。

松下さんはずっと走っている印象がありますよね。年間に舞台を何本もやりながらアルバムをリリースした年もありましたし。

そうですね。走り続けていますし、ずっと微妙な登り坂なんですよね(笑)。つねに自分のキャパをちょっと超えるようなことを要求され続けていたし、自分自身もそれを求めていたからかもしれないんですけど、若干傾斜のある坂道を、ずっと走り続けてきた感じがします。基本はずっと傾斜のある登り坂(笑)。それで、たまにすごく高い山を乗り越えてっていう感じで。だから、かなり濃密にやってきた10年だなって思います。

この数年間のいろんな経験を経て、自分の中で新たに表現したいものが出てきた

そして今回、X4の活動を継続したままでソロアルバムをリリースしたのはどうしてですか?

もともとはソロでできないことをグループでやっていたんですけど、この数年間、X4や、個人での別の仕事も含めていろんなことを経験したことで、自分の中で新たに表現したいものが出てきて。グループではできないことを、今度はソロでもやりたいなという思いが膨らんできたんですよね。10年という節目でもありますし、11年目の新たなものを表現したいなって思ったので。

そのソロでやりたかったことというのは?

どちらかというと僕は、表に立ってなんぼの人間だと思うんですよね。それはこれからも基本的には変わらないと思うんですけど、自分の頭の中にあるものをより表現したくなったというか。もちろん、ずっと表に立って表現しているなかで、自分の頭の中にあるもの、自分がこういうものがいいんじゃないかっていう部分を表現してきたんですけど、より、頭の中にあるビジョンやイメージを具現化したいっていう思いになって。

歌とダンスだけじゃない部分もっていうことですよね。

そうですね。自分の声と身体を使ったパフォーマンスっていうところだけじゃなくて、自分の頭の中にあるものを、今なら表現できるんじゃないかと。これまではスキルもなくて、具現化する術がなかったので、どこかで、自分の中でブレーキをかけているところもあったんですね。僕がこの頭の中で思い描いているようなものって、自分が面白いと思っているだけで、誰も求めていないんじゃないかと思ったりもして、閉じ込めていた。だけど、この年齢になって、それじゃダメだなと思ったし、同じように、自分を抑え込んでいる人たちに対しても「これでいいんだよ」っていう思いを伝えたいと思った。ただ純粋に、自分の頭の中にあるものを伝えたいって思ったんですよね。

それが10年目というタイミングと合致したんですね。

もっと若い頃、20代前半は、自分がやりたいこととやりたくないことをはっきりと区別していたんですよ。でも、年齢を重ねて、今は、ファンのみんなが求めていることと求めていないこともわかるし、そのなかで自分のやりたいことのバランスも取れるようになってきたんじゃないかなと思ってて。

求められていることと自分のやりたいことのバランスが取れるようになってきた。

そうですね。物事の白黒をはっきりつけることとか、振り幅があることって、この世界ではものすごく向いていることだと思うんですよ。ただそれは、“始まりとしては”っていう注釈が付くというか。みんなが驚くことや突拍子もない考えとかも、始まりとしては「そういう人間面白いねん」ってなるけど、キャリアを重ねたら、ちょうどいいところをちゃんと狙えるようにならないといけないなと思うんです。振り切りながらもバランスを考えるというか。だから、28歳という年齢で11年目を迎えて、少しはバランスを考えられるようになったんじゃないかって思うんですけど、変わってきた部分と変わらない部分の両方があるなって最近思っていて。

多様性を受け入れて、いろんな人がある中の“俺は俺”になった

変わった部分から聞いてもいいですか?

人になめられたくないとか、しっかりしなきゃっていう部分が、いい意味でなくなったかもしれません。10代の頃は周りがほとんど年上の人ばかりだったので、なめられちゃいけないっていう態度が、とがったふうに見えていたかもしれないなと思います。今はそういう意識がなくなってきてますね。ただ、皆さんには、自意識過剰でいたほうがいいよって言いたいですけど(笑)。僕、自信満々にずっと見えてるかもしれないんですけど、誰も自分のことに興味なんてないって思っていたんですよ。僕の自信はあくまでも自分の世界の中での自信で、対、人に自信があるわけじゃなくて。自意識過剰に見られがちだけど、ほんとは真逆。ただ、自分の好きなことややりたいことは誰も興味がないんじゃないかって自信を持てないでいると、人との関わりもなくしちゃうんですよ。そういう意味で、今まで損をしていたなって思ってて(苦笑)。だから、多少自意識過剰に見えても、相手は全員“松下優也”という存在を知っているんだ、興味を持ってくれてるんだっていうスタンスで人と向き合う。そうすると、コミュニケーションが取りやすくなって、人間関係も広がります。

逆に変わっていない部分というのは?

初めて出したアルバムのタイトルが『I AM ME』だったんですけど、つねに自我はすごい強かったんですよ。“自分は自分だ”っていうことは変わっていない。だけど、中身がちょっと変化してきているかもしれません。

本作に収録された「Nobody feat. SHUN」でも、“I am me 永遠に俺は好きにやる”と歌っていますし、「In Darkness」でも“俺は俺”とラップしています。

「In Darkness」も“「他人は他人」であるからこそ 「俺は俺」が輝く”って書いていて。多様性を受け入れて、いろんな人がある中の“俺は俺”になったっていう部分が変わったことですね。10代の頃は、周りを否定したうえでの“俺は俺”だったんですけど、いろんな人たち、いろんな意見、いろんなタイプの音楽を受け入れたうえで、“俺は俺”でいさせてくれっていう意味になりました。10年かけてそこに辿り着いた感じがしますね。

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