LIVE SHUTTLE  vol. 338

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THE ORAL CIGARETTESのツアーファイナル! 彼らの揺るぎない意志、メッセージが胸を揺さぶる横浜アリーナ公演レポート

THE ORAL CIGARETTESのツアーファイナル! 彼らの揺るぎない意志、メッセージが胸を揺さぶる横浜アリーナ公演レポート

昨年、6月13日に4thアルバム『Kisses and Kills』をリリース後、9月18日からライヴハウスシリーズ〈Kisses and Kills Tour 2018 Live House series 〜Directly to various places~〉をスタートさせ、12月8日からアリーナシリーズ〈Kisses and Kills Tour 2018-2019 Arena series 〜Directly in a wide place~」を行っていたTHE ORAL CIGARETTESが、そのファイナル公演を3月17日に横浜アリーナで迎えた。
“Kisses”と“Kills”という両極の感情を柱に、人間の内面を描いた作品で構成されたアルバム『Kisses and Kills』。その内容を反映させて、前半は“Kisses(愛)”、後半は“Kills(憎しみ)”をテーマにしたライヴを展開。さらに、3月13日に最新シングル「ワガママで誤魔化さないで」をリリースしたばかりということもあり、さらなる新境地を切り拓く貪欲さを示した彼らにとって、ベストなタイミングでのステージとなった。

取材・文 / 岡本明
メイン写真 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

今日は俺たちにとってすげえ大事な日だし、皆さんにとって大事な日に変えたい

「人間は両極端な感情を持つ」。まさにこのライヴのメインテーマであり、THE ORAL CIGARETTESが追求し続ける、人間の負の側面を表現した重要なキーワードが最初の段階でステージに提示される。近未来的な都市が描かれたオープニング映像に続き、ドラムセットがせり上がると中西雅哉(drums)の姿が。そして火花の合図とともに、山中拓也(vocal, guitar)、鈴木重伸(guitar)、あきらかにあきら(bass, chorus)が揃ってステージ上にポップアップで現れた。

撮影 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

1曲目の「What you want」から、安定感と迫力を備えたバンドサウンド、キャッチーなメロディを歌う山中のボーカルが会場に響き渡る。さらに、ポップな「もういいかい?」でたたみかけ、あきらのスラップベースに導かれて観客がジャンプを繰り返す「容姿端麗な嘘」と続けざまにアッパーな曲を披露。山中、あきら、鈴木の3人もステージ前方に設けられた花道に歩み出て観客を煽る。

「ツアーファイナルになります。ライヴハウスツアーを終えてアリーナツアーに入り、約6ヵ月……長かった。長い間やってきて今日という日があります。今日は俺たちにとってすげえ大事な日だし、皆さんにとって大事な日に変えたいと思うので、今日一日よろしくお願いします」(山中)

撮影 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

客席の頭上には“KK CUBE”という、話しかけると答える人工知能が搭載されたボックス型のLEDが吊られてあり、「最近聴いた中で一番良かったアルバムは?」と山中が尋ねると「THE ORAL CIGARETTESの『Kisses and Kills』ですかね」とマシンボイスで答えてくれる。その流れで「“Kisses”の“愛”を表現していきたいと思います。KK、“愛”を歌う曲をちょうだい?」と話しかけ、「LOVE」のイントロが流れ始める。大きなハンドクラップに迎えられ、カラフルなサウンドと映像が一気に押し寄せる。

続く「A-E-U-I」でも観客はサビを大合唱。ひたすら会場が一体感を増していく。そして、これまでの熱気をやわらげるバラードナンバー「不透明な雪化粧」へと繋いでいく。ファルセットを多用した山中の切ないボーカル、端正なサウンドが会場を包み、雪に模した大量のシャボン玉がステージに客席に降り注ぐ。

撮影 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

「アリーナツアーができるようになっても、変わりたくない。会場が大きくなったからといって気どりたくないし、物理的な距離は遠くなっても、心の距離はいつも皆さんの近くにと思っています。だから、ライヴハウスのときと変わらず下ネタの話をします(笑)。“Kisses”ってエロいやん……KK、お題ないですか?」(山中)

すると、KK CUBEが「あきらさん、女の子の口説き方を教えてください」と、あきらに話を振る。「えっと……まず髪の毛を触って『可愛いね』って言ってあげる(照)。そこからじわじわと……(苦笑)」と苦し紛れに話し始めたあきらだったが、それを山中が笑いながらバッサリと否定し、「いやいや、違うんですよ!(笑)かっこいいライヴをしたら、口説けるんです。今、皆さんを口説いています。とはいえ、僕らだけがライヴを作ってもダメなんです。皆さんの力が必要です。横アリ、まだまだやれますか! かかってこい!」

威勢のいいシャウトで「起死回生STORY」へと突入。山中が呼びかけると、細かいハンドクラップで応える観客。そのテンションのまま「リブロックアート」へ。切れ味鋭いサウンドがさらに高みへと導いていく。そして、スピード感を損ねずに美しいメロディで盛り上げたのが「トナリアウ」だ。エモーショナルな山中のボーカルと巧みなコーラスで繊細さを表現しつつ、芯のあるサウンドでたくましく力強い楽曲として存在感を放っていた。

撮影 / 鈴木公平

ここで、3人が去って山中がひとりステージに残り、アコースティックギターで「ReI」を弾き語る。

「人っていつ亡くなるかわからないです。そこらへんで殺人が起きるし、大好きだったロックスターも自殺する。でも音楽って、その人が死んでも残る。音楽って素晴らしい。一生そいつの想いを共有できる。僕はミュージシャンであることを誇りに思います。自分たちがこの世界に何を残せるんだろうって考えながら聴いてもらえたら嬉しいです」(山中)

曲が始まる前に語ったように、自らの想いや心情を隠さず吐露しながら、切々と歌っていく。東日本大震災をきっかけに作られたこの曲に対し、そのひと言ひと言を聴き逃さないよう、観客もしっかりと耳を傾けていた。

日本人として何をするべきか、オーラルにしかできないことは何なのか

前半の“Kisses”のパートから一転、ここからは後半にあたる“Kills”のパートへと移り変わっていく。映像とともに、KK CUBEの表面には“憎悪”、“失意”、“陰口”、“挫折”、“反感”、“裏切”など、ネガティブなワードが次々に現れる。 その空気感のまま、ダークな曲調の「Ladies and Gentlemen」が始まった。どっしりとしたファンクに乗せ、痛烈なメッセージを歌う。4つ打ちのビート「PSYCHOPATH」では、さらにスリリングな緊張感を加え、まくしたてるようなボーカルがハードなサウンドと相まって、ますます張り詰めた空気を生み出していく。

撮影 / 鈴木公平

さらに、観客もコーラスで参加して楽曲のスケールを大きくしていたのが「DIP–BAP」だった。緻密なリズムに絡むよう、メロディアスなサビのパートが心地よく跳ねていく。

そして「『Kisses and Kills』の“Kills”編、すなわち後半が始まりました。ここでもっとボルテージを上げたいので、みんなに新曲を持ってきました」と、リリースされたばかりの「ワガママで誤魔化さないで」が紹介され、タイトなドラムのイントロに始まり、彼らの持ち味である濃厚なメロディと鉄壁のバンドアンサンブルが届けられる。新曲と思えないぐらい、オーディエンスが熱気溢れるアクションで反応をしているのが見てとれる。そんな新曲と対照的に「古い曲をやらせてください」と紹介されたのが「LIPS」。優しいタッチでありながらも、そこに込められた悲しい想いが胸を打つ。

撮影 / 鈴木公平

「この横アリに大好きな先輩のライヴを観に来たことがありまして。そのバンドにしか出せない存在感を出しているなと感心させられました。日本で、自分が日本人として何ができるのかを感じたライヴでした。俺たちは日本人として何をするべきか考えています。オーラルにしかできないことは何なのか。俺たちは海外に行ってもきっと日本語で歌い続けるでしょう。なぜなら、日本という国に誇りを持っているから。日本を一緒に盛り上げていこうぜ。みんながロックスターって崇める日本人アーティストが出てきたら誇らしいやん。それが俺たちかはわからんけど、俺たちはそこを目指してやるつもりです。不器用ですけど、これからも応援よろしくお願いします」(山中)

長めのMCで熱い想いを語ったあと、「キラーチューン祭りやろうぜ!」と叫び、ラストスパートをかける。妖しいリフから「CATCH ME」が始まり、熱量を込めたハードなサウンド、マイナーのメロディが強烈なインパクトを与えていく。そして、パートごとに展開が鮮やかに変化していく「カンタンナコト」、タイトルどおりカオス状態になるほど客席が沸き返る「狂乱 Hey Kids!!」といった強靭な曲たちをアグレッシブにぶつけてくる。

撮影 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

本編ラストは「BLACK MEMORY」。ここでも超満員の観客の大合唱に支えられ、全力を尽くすメンバー。完全燃焼のライヴパフォーマンスをやりきったその姿はまぶしいほどに輝いて見えた。

俺たちは感情にこだわり続けます、この世から人間の感情がなくなりませんように

盛大なアンコールに応え、4人が再びステージに登場し、「気がついたらたくさんの友達ができて、その友達が支えてくれて、そこが居場所になっていました。俺はあなたたちを連れだと思っているから、一生大切にします。ラスト一曲、また強くなってこの場所でという意味を込めて歌います」という山中の言葉に導かれ、後悔や悔しさで涙を何度流そうとも“帰れる場所”があるから希望を持って進もうと歌う「ONE’S AGAIN」がオーディエンスの背中を押す。

撮影 / Viola Kam(V’z Twinkle Photography)

そして暗転したかと思うと、ステージ上が完全に暗いまま山中がMCを始める。表情は見えないが、疑問を投げかけるその口調には彼の強い信念が宿っていた。

「ひとりでは生きていけない、なぜならそこには感情があるから。感情っていうものは自分のために向けるものだけじゃなく、他人の感情とぶつけるもの。それがあなたたちは今、できていますか? このままじゃいけない、このまま放っておいてはいけない。俺たちは感情にこだわり続けます、この世から人間の感情がなくなりませんように」(山中)

撮影 / 鈴木公平

真っ白なステージをバックに、メンバー全員がシルエットで浮かび上がるなか、「嫌い」で最後を飾る。「嫌い、嫌い、嫌い」と何度も叩きつけるように歌う山中のボーカルは後半に進むにつれて凄みを増し、全身を震わせながらの3人の演奏は果てしなく高まっていく。表情がわからないライティングのため、そこにあるのは、まさに歌と音に込めた“感情”のみ。彼らが究極のメッセージを伝えるエンディングとなった。

ツアーファイナルという集大成の場を締め括りつつ、聴く者すべてに鋭い刃物のような表現を突き付けたTHE ORAL CIGARETTES。自らの感情と向き合う真摯な姿勢が刻まれたこの日のライヴは、忘れられないほどの深い感動を観客の心に刻んで幕を下ろした。

Kisses and Kills Tour 2018-2019 Arena series 〜Directly In a wide place〜
2019.03.17@横浜アリーナ SET LIST

M01. What you want
M02. もういいかい?
M03. 容姿端麗な嘘
M04. LOVE
M05. A-E-U-I
M06. 不透明な雪化粧
M07. 起死回生STORY
M08. リブロックアート
M09. トナリアウ
M10. ReI
M11. Ladies and Gentlemen
M12. PSYCHOPATH
M13. DIP-BAP
M14. ワガママで誤魔化さないで
M15. LIPS
M16. CATCH ME
M17. カンタンナコト
M18. 狂乱 Hey Kids!!
M19. BLACK MEMORY
ENCORE
M20. ONE’S AGAIN
M21. 嫌い

THE ORAL CIGARETTES(ジ・オーラル・シガレッツ)

山中拓也(vocal, guitar)、鈴木重伸(guitar)、あきらかにあきら(bass, chorus)、中西雅哉(drums)。2010年に奈良県にて結成。2012年に〈MASH A&R〉にて初代グランプリを獲得。2014年、シングル「起死回生STORY」でメジャーデビュー。2017年6月に日本武道館、2018年2月に大阪城ホールでのワンマンライヴを成功させる。2018年6月に4thアルバム『Kisses and Kills』をリリース、9月から翌年3月までアリーナ4公演を含む全国ワンマンツアー〈Kisses and Kills Tour 2018-2019〉を敢行。2019年3月13日にシングル「ワガママで誤魔化さないで」をリリース。9月14日(土)・15日(日)泉大津フェニックスにて初の野外主催イベントを2daysで開催する。

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