Interview

朝ドラ100作目『なつぞら』ヒロイン・広瀬すずが語る意気込み、心構え、そして現場で常に意識していること

朝ドラ100作目『なつぞら』ヒロイン・広瀬すずが語る意気込み、心構え、そして現場で常に意識していること

記念すべき100作目の“朝ドラ”こと連続テレビ小説『なつぞら』。4月1日(月)のスタートが、いよいよ目前に迫った。戦災で親と家を失い、兄・妹とも離れて東京から北海道・十勝に暮らす亡き父の戦友一家に家族の一員として迎えられる主人公の奥原なつが、広大な自然の中でたくましく育ち、やがて少女期に魅せられたアニメーションの世界を“開拓”していく物語。
エンタメステーションでは、メディア向けに行われたヒロイン・広瀬すず取材会の内容を、丸々紹介する。平成を締めくくり、年号があらたまる新しい時代初の朝ドラを背負って立つ若手女優筆頭が紡ぐ言葉を、存分にご堪能あれ!

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

1週間のスケジュールに出番がズラーッと並んでいるのを見て、「私、ホントに朝ドラのヒロインなんだ」と実感しました(笑)

まず、物語の舞台である北海道・十勝ロケでの印象をお話しください。

北海道ならではの景色や空気、風まで映像から伝わってくるんじゃないかと思えるシーンが多くて、それは台本を読んでいても感じるんですけど、本当に自然の大地を生かした物語と言いますか…。その中で、(広瀬演じる主人公の奥原)なつは1人で立っているから、いろいろなことを感じたり見ることができるのかなと思います。特に家族の愛情や思いに触れた瞬間に、「きっとここでしか感じられないだろうな」と思う気持ちに出会ったりして。そういった瞬間の気持ちよさが印象に残っています。あとは…やっぱり食べ物が美味しかったです(笑)。

では、なつという主人公をどのような女の子としてとらえたのでしょうか? また、広瀬さんご自身と似ているところはありますか?

なつ自身は本当に幸せを感じながら生きているんですけど、子どものころから家族と離ればなれになってしまったぶん、人に対して無意識に一定の距離をつくってしまうところがあるのかな、と思っていて。「幸せだ」という言葉で自分の気持ちを表現して伝えますし、「ありがとう」や「ごめんなさい」をちゃんと言える女の子なんだなと感じながら、演じています。
自分と似ているところは…あるかな? 私は、なつほど“いい子”じゃないだろうな、と思います(笑)。そこにいるだけで、周りの人たちが何かを感じることができるなつを演じていて、「自分も頑張ろう」と思わせてくれる太陽みたいな子だな、見習わなくちゃなって思うくらい素敵な子だなと感じています。

なつの性格のとらえ方は、台本を読んで実際に演じていく中で変わってきたのでしょうか?

台本を読んだ時点では、優しいと言いますか…どこかホンワカしている部分があってもいいのかなと思ったんですけど、一方でわりと“男気”があるというか、自分の足で立っている感じをどう表現したらいいのかなって、ずっとフワフワしていたところもあって。昨年の夏、北海道ロケをしている時もまだ確信が持てていなかったので、とにかく自分が感じるまま、思うままに演じてみようと。でも、東京のスタジオでの撮影が始まって、(なつが引き取られる)柴田家の家族全員とのシーンだったり、出会う人も増えていくにつれ、言葉を交わしたり会話をすることもありますし、単純に年齢を重ねたこともあって、またちょっと印象が変わってきたところがあります。正直、どう演じれば正解なんだろうと思ったりもするんですけど、「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと伝えることで、自分と一緒にいる人に後ろ向きな思いをさせたくないなというところは、常にあるような気がしています。

そういったなつの心づかいは、戦争で家族と離ればなれになったことが影響していると思いますが、広瀬さんご自身はどう感じているのでしょうか?

私は、なぜか親がいない役を演じることが多いんです。なので、1人でいる感覚は何となくつかめているというか…(笑)。これまで演じてきた役では、どこかしら孤独を感じるシーンが多かったんですけど、今回はさらに「自分は1人ぼっちなんだな」と、ふいに感じてしまう瞬間が多い気がしていて。富士子(松嶋菜々子)さんや剛男(藤木直人)さん、じいちゃん(富士子の父・柴田泰樹=草刈正雄)のことを本当の家族のように思ってはいるんですけど、血は繋がっていないんだなって、どこかでずっと意識しているのを、実際に撮影で感じました。照男兄ちゃん(清原 翔)や同い年の夕見子(福地桃子)と一緒に「お父さん、お母さん」と富士子さんたちを呼んで、家族の会話をしているんですけど、何となく性格のちょっとした違いだったり、テンションの違いで、血が繋がっていないんだなって思う瞬間があったんです。特に、お母さんに「ありがとう」と言う時、「感謝の気持ちを伝えなくちゃいけない!」って…本来だったら、逆に恥ずかしかくて言えない言葉のような気がするんですけど、ちゃんと伝えているのが、逆に本当の親子じゃないからこそ、そう思ってしまうのかなって…そんなふうに感じていました。

なつは日焼けしていたり、北海道の自然の中で育ったことを感じさせますが、容姿についてはどう思っているのでしょうか?

昨年夏の北海道ロケの時は、結構肌が日焼けしているようにファンデーションを塗っていて、見た目が垢抜けないなぁって(笑)。あと、やっぱり役でチェックのシャツにオーバーオールっていう衣装が、なぜかよくあるんですよね。その中でも“ザ・朝ドラ”的な麦わら帽子をかぶっている格好をできたのは、すごくうれしかったです。朝ドラのヒロインって、どんな格好をしているんだろうって最近の作品も見ていたんですけど、何か王道っぽい“元気な女の子”のイメージが衣装合わせの時点でピタッとハマって、ダボッとしたオーバーオールの感じが醸す男まさりな雰囲気と、お下げ髪っていうバランス感で、「あぁ、これがなつなんだ」と率直に思いました。あと、足元は真っ白なスニーカーを履いているんですけど、足が小さく見えるんですよ。そういったビジュアルの一つひとつに対して、「今どきの子で、こんなに似合う子もいないよ」って、ほかのキャストのみなさんからも言われて(笑)。うれしいんですけど、「あ、そうなんだ、似合うんだ…」って──そこは逆に自信をもって、衣装を着こなしてお芝居ができればいいなと思いました。

ヒロインに決定して、撮影に入ってからしばらく経ちますが、「私、朝ドラのヒロインなんだ」と実感された瞬間だったり、意識が切り替わった瞬間というのはありましたか?

切り替わったのは最近かもしれないです。1週間のスケジュールを見ると、なつの出番がズラーッと並んでいて。キャストのみなさんとたくさん会話をするようになってから、「本当にすごい(出番が多い)ね」って言われて、「私、ホントに朝ドラのヒロインをやってるんだなぁ」って思うようになりました(笑)。ヒロイン発表の会見から1年以上経っているんですけど、どうなんだろう…1年以上朝ドラが頭の中で中心にあるので、ある意味、逆にずっとフラットで今までと変わってないかもしれないですね。幸いにも大変だなと思うこともないですし、むしろ「こんなに楽しいんだ!」って、事前に聞いていたよりも全然ポジティブだったりします。もちろん、1日中撮影してはいるんですけど、こんなに楽しい雰囲気で長い期間、同じ役柄でお芝居をするということがなかったのもあって、毎日がすごく楽しいなって思っています。

大森寿美男さんの脚本の印象や、好きなところはどこでしょう?

すごくまっすぐというか、こんなに台本を読んでいて…1ページめくるたびに心に刺さるというか、全員の気持ちがよみがえってくるというか──なつの感情も自分が一番わかるし、週を重ねていくにつれて、「また、ここで母さん(=富士子)に、こんなふうに言われるんだ…」って感じるような切なさが、すごく描かれているんです。何だろう…1人では受け止めきれなくて、マネージャーさんと事務所の社長さんに「私、読んでいて涙が止まらなかったんです」って言ってしまったくらい、ストレートに届く台本だなって。元々、本を読むのが速いわけでもないですし、撮影が近くなるまで読まないんですよ。印象的なシーンがあると、ずっと気にかけてしまうので。でも、大森さんの台本は、1人ひとりの裏の感情まで見えてくるというか、切なさだったり喜びを感じてくれていたり、人の幸せを自分の幸せだと思っている登場人物が多くて、一度読み始めたら止まらないんですよね。なので、早くこの物語を世の中に届けたいという気持ちが新しい台本をいただくたびに増してきます。

若い世代はテレビを見なくなった、と言われていますが、この『なつぞら』という物語を同世代にどう届けたいですか?

最近、重めの作品に出演させていただくことが多かったんですけど、『なつぞら』もちゃんと重さを感じさせてくれる物語になっているんじゃないかなと感じていて。私自身、ずっと朝ドラを見ていたというわけでもなくて、以前はネット(オンデマンド)で観たり録画しておけばいいか、みたいなところがあったんです。でも、自分が朝ドラのヒロインに決まって、『半分、青い。』を毎朝見るようになったら、「なんで、こんなに続きが気になるんだろう。明日まで待てない」って感じるようになっていて。15分でどんどん話が進んで、登場人物がどんどん増えて、ヒロインの顔つきもどんどん変わっていくっていう…話が進むのもほかの連続ドラマよりも速いんですけど、時間はたっぷりに感じられるっていうのは朝ドラ独特のテンポとリズムなんだなって。
(『なつぞら』の)夏の北海道ロケの映像を見た時に、今まで見たことのないテンポになっていたりもするのかな、と思っていたんですけど、結構コメディーというか笑えるシーンがあって。この間撮っていた農業高校演劇部のシーンも劇団っぽいというか、つくりこまれた笑いのシーンがあって──それもリズムがあるから面白いのかなって思いました。その面白さは広い世代に通じるというか、誰が見てもクスッと笑えるようなシーンになっているようにも思いますし、そういうところで笑える幸せが朝ドラにはあるんだろうなって感じたので、『なつぞら』を通じて、そういう気持ちになれるものを届けられたらいいですね。気軽に見られるんですけど、笑いだけじゃなくて涙とか切なさとか、いろいろな感情を呼び起こされると思うドラマなので、どの世代の方にも届いたら素敵だなと思います。

なつ以外で、広瀬さんが好きな登場人物を挙げるとするなら、誰でしょう?

高畑淳子さんが演じていらっしゃる、とよ婆ちゃんや雪次郎くん(山田裕貴)、つまり小畑家の人たちがとんでもなく面白くて! “劇団おばた”って呼んでいるんですけど(笑)、そのシーンを撮っている時は、小畑家のみなさんも見ている私たちも思いきり笑えて、幸せな気持ちになれるんです。また雪次郎くんとは親友というか“同志”みたいな関係になっていくんですけど、一緒にいると幸せな気持ちにしてくれたり、心強さや温かさをもらえる──すごく素敵で魅力的な人として裕貴くんが演じてくださっていて。
そうやって考えると、私もなつと同じように周りの人たちから支えてもらう瞬間が多いなって感じます。この間も、小畑家のみなさんがそろうシーンの撮影があって、(雪次郎の父親・)雪之助役の安田 顕さんもいらっしゃったんですけど…すごく幸せな気持ちにさせてもらいました。真面目な話をしている時は、家族の真剣な思いが私にも伝わってきて、「家族っていいなぁ」という思いを新たにするとともに、毎週どこかワンシーンでもいいから出てほしいと思うくらい、小畑家全員が好きです。

『なつぞら』で描かれている時代を役として生きてみて、どんなことを感じられましたか?

戦後を生きられてきたみなさんは、人間として強いなと思いますし、家族で支え合う関係性の強さを、台本を読んでいても演じていても感じます。人と関わったり繋がっている時間が、いい意味で現代よりも重さがあるというか…。今の時代って繋がれるものがたくさんあるじゃないですか、SNSだったりとか。でも、『なつぞら』の時代は手紙でやりとりをしたり…しかも、頻繁ではなかったから、1枚にものすごく重さがあるんですよね。結構、手紙を書くシーンが多いんですけど、そういう時間をなつが大事にしているのもわかるので、人との関わり繋がりを特に大切にしたいなっていうことは、その時代を演じているからこそ感じた部分です。
それと、アニメーターになってから、動画を描く作業があるんですけど、これもすごいんですよ。1人で何千枚も描かれていて、しかも1枚ずつ繋げていって動画にしていくんです。キャラクターがちょっと振り向くだけの動きでも何十枚もの動画がある世界なので、その繊細な作業というか…ちょっとした角度のズレを描く練習もしているんですけど、これが結構楽しいんです。ほぼ無言で、ずーっと描いていて、話しかけられても描きながら「はい、わかりました」って返事をするくらい没頭しちゃうんですけど、なつもそういうところがあるんですよね。そうやって無心になれるくらい繊細な線の動きとか角度のことを知るにつれ、「想像以上に細やかな世界なんだな…」とすでに圧倒されているんですけど、アニメーションがたくさん制作されて公開されている今だからこそ、一本の作品をどうやってつくっているのかを伝えられたらいいな、と思っています。

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