モリコメンド 一本釣り  vol. 112

Column

ギリシャラブ 高い芸術性と大衆音楽としての匂い。摩訶不思議で危うい世界。比類なき魅力を持ったバンド

ギリシャラブ 高い芸術性と大衆音楽としての匂い。摩訶不思議で危うい世界。比類なき魅力を持ったバンド

現在行われている「Exhibitionism−ザ・ローリング・ストーンズ展」(〜5/6/東京・TOC五反田メッセ)で彼らのキャリアを振り返って感じたのは、“このバンドは常に本能的に動いてきたんだろうな”ということだった。ブライアン・ジョーンズの呼びかけによって結成されたザ・ローリング・ストーンズは、R&B、ブルースを色濃く反映したロックンロールで世界的な人気を博したわけだが、70年代のサイケデリック、80年代のディスコなど、時代によって少しずつ変化を繰り返し、50年以上に渡って(文字通り)転がり続けきた。

「これをやっておけば売れそう」という小賢しい計算ではなく、に「やりたいことをやる」ということにフォーカスすることで、自分たちのパフォーマンスを高め続ける。それこそが“世界最強のロックバンド”として君臨し続ける最大の理由なのだ(もしかしたらミック・ジャガーは計算しまくってるかもしれないが)。“それやったら、どれくらい儲かるんですか?”みたいなセコイ考えではロックバンドとしてのダイナミズムは絶対に生まれないーーここで話はいきなり話は飛ぶが、目先の利益ばかり考えているように(私には見える)バンドが多い現在の日本のシーンにも、純粋に「やりたいこと」を追求しているロックバンドは存在する。その一つが“ギリシャラブ”であることは間違いないだろう。

2014年に京都で結成されたギリシャラブは幾度かのメンバーチェンジを経て、現在は天川悠雅(Vo)、取坂直人(G)、山岡錬(G)、中津陽菜(Dr)、ハヤシケイタ(B)の5人体制で活動している。古今東西の音楽はもちろん、文学作品や絵画からインスピレーションを受けて作られるストーリー性と創造性をたっぷり含んだ楽曲で関西のシーンで注目を集めてギリシャラブは、2015年に1stミニアルバム『商品』を、2017年3月にフルアルバム『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』を発表。そして2018年1月に「(冬の)路上」を志磨遼平(ドレスコーズ、毛皮のマリーズ)監修のレーベル・JESUS RECORDSからリリースしたことで、さらに幅広いリスナーにアピールするに至った。

70年代あたりのヨーロッパのフォークロア、アジア、アフリカ、南米などの民族音楽からチル・ウェイブまで幅広い要素を散りばめたーー天川はUKのバンド“blur”から影響を受けたと公言している——サイケデリックにしてポップなサウンド、妖しさ、美しさ、凄み、色気、叙情性を含んだボーカル、そして、トーマス・マンやマルグリット・デュラスなど20世紀の欧米文学からの影響を感じさせる歌詞の世界がひとつになったギリシャラブの音楽は、高い芸術性と大衆音楽としての匂いが自然に混ざり合っているという点において、現存する日本のバンドとは完全に一線を画している。前述したように、これは“狙って”できるものではなく、純粋に“やりたいこと”を追求した結果なのだ。

4月3日にリリースされる2ndアルバム『悪夢へようこそ!』は、このバンドが持つ芸術性とポップネスをさらに深く追求した作品だ。本作に向けて志摩遼平は「ディスコ・ポップ/ガレージ・サイケ/フレンチ・エレクトロからラップ〜リーディングまで、すべての退廃的で美しいインディー・ミュージックの化合物のような傑作を完成させました」さらに「やはり特筆すべきは、ソングライティングを手がける天川くん(Vo.)の卓越した詩世界であります。まるでヨーロッパ映画のようにノワールで刹那的な彼のポエジーと肉感的な声こそがギリシャラブの比類なき魅力とも言えるでしょう」とコメント。この言葉をもっとも端的に証明しているのが、アルバムに先がけMVがアップされた「ブエノスアイレス」だろう。独特のエキゾチズムとロマンティズムを醸し出すメロディ、70年代的なサイケデリアと現代のインディーポップ感が混ざり合うサウンド、そして、「路地は太陽でいっぱい すべてに糞食らえ 肥溜めに乾杯 美しく生きたい」という非道徳的にして美麗なリリック。この曲が描き出す世界観こそが、現在のギリシャラブの表現であり、本作『悪夢へようこそ!』の魅力のだと思う。

さらにガレージ系ロックンロールに乗せて死と性と恋を歌った表題曲「悪夢へようこそ」、“わたしには精神がない ただ肉体があるだけ”という人間の本質を突いた歌い出しで始まる低温のディスコチューン「空洞について」——おそらく“ゆらゆら帝国”「空洞です」にインスパイアされた——など魅惑的な楽曲が揃った本作。現在のシーンが…とか、海外のインディーロックからの影響が…といった情報をとりあえず消去して、ロックバンドというアートフォームが持つ、摩訶不思議で危うい世界にどっぷりと浸ってほしい。

文 / 森朋之

その他のギリシャラブの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://greece-love.com

vol.111
vol.112
vol.113