Interview

ミツメにしか描けないミツメだけの世界をさらに深化させた3年ぶりの新作『Ghosts』

ミツメにしか描けないミツメだけの世界をさらに深化させた3年ぶりの新作『Ghosts』

ミツメが、2016年の傑作『A LONG DAY』以来、3年ぶりとなるニューアルバム『Ghosts』をリリースした。昨年はFUJIROCK やタイ、韓国でのフェス、上海でのワンマンライブを成功させ、ミツメらしいポップを追求したシングル「エスパー」「セダン」で、幅広い支持を獲得。クールな音像と詩情溢れる歌は音楽業界のみならず多方面からの注目を集め、インディペンデントでありながらますます活躍の幅を広げている。2009年の結成から10年。ミツメにしか描けない世界をさらに深く極め、どこにでもない独自のサウンドと言葉を紡いだ彼らの新境地『Ghosts』を紐解きながら、ネクストに踏み出したミツメの今を探る。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 沼田 学

アルバムの出発点になったのは2017年のシングル「エスパー」

新作は2016年の『A LONG DAY』以来、3年ぶりになりましたね。

川辺 素 2017年末に「エスパー」、去年の夏に「セダン」というシングルを2枚リリースして、その後にアルバムを出すという計画ではあったんですが、自分でも体感的に空いた気がしますね。「やっとアルバムだね」という反応も多かったし。

アルバム用の曲作りはいつからスタートしたんですか?

 

川辺 シングルの2作はアルバムに入れるつもりだったので、それを含めると前作をリリースして半年後には曲の制作には取りかかっていました。

須田洋次郎 大半は「セダン」以降にアルバム用につくった曲ですけど、シングルには採用されなかった曲も今回のアルバムには収録されているので、アルバムと繋がっていますね。

「エスパー」と「セダン」はポップに舵を切った曲でしたが、その流れはアルバムにも関係しましたか?

川辺 そうですね。「エスパー」は最初の出発点でもあったので、シングルがアルバムの中でポツンと浮いてしまわないような流れは意識しましたね。結果的にアルバムはポップに振り切ったという感じではなく、それが良かったかなと思ってます。

アルバムはこれまでのミツメを凝縮して、さらに進化させたような内容ですね。

川辺 もうアルバムも5枚目ですからね。僕らより若いバンドも随分増えてきて…

nakayaan そこそこ中堅になってきました(笑)。

川辺 今回のアルバムは20曲くらい出来て、その中からの11曲になったんです。昔よりつくるスピードは上がってきたし、曲を吟味して制作に力を入れられるようにはなってきましたね。

須田 中には気に入っていたけど、お蔵入りした曲もあるし。

川辺 そう。ミックスまで終わっている曲や、オケは録ったけど歌詞だけ入ってない曲もあって。アルバムには厳選された曲が入りましたね。

作業スペースで3人が同時にPCに向かうミツメの曲作り

ミツメの曲作りはどんな風に進めていくのですか?

川辺 先ず僕が弾き語りとかワン・アイデアのデモを持っていって、作業スペースで3人が同時にパソコンに向かって演奏して録音していくというのが今回はほとんどでした。僕はそれを黙って見ている。

須田 自分たちの作業スペースが出来たのは大きかったですね。

川辺 その作業スペースで大体のカタチが見えてきて、バンドで詰めるときは、すぐ近くにのリハーサルスタジオを予約してみんなで音を出してみる。

Nakayaan それで格段に作業がしやすくなった。

川辺 前作まではそういう作業が僕の家でしたから。作業スペースには機材も置いてあるので、シンセとか色んなエフェクターをすぐに試すことができたんです。

大竹雅生 今回、ダビングが多いのは環境の変化のせいもありますね。

どういうアルバムにしようという構想は?

川辺 曲が大体出揃ったあたりで、漠然とこういうイメージがあるという話はしたけど、この時期を過ぎたら新曲を作るのは難しいという締め切りをつくって、そこまでに出来た曲でアルバムとしてムードに統一感がある曲をセレクトした感じですね。

須田 時間は今まででいちばんかかっているのかな。ベーシックなメロディーとコード進行は川辺が一人でつくるんですが、たぶん生活の中でその割合は増えてきているんじゃないかと。

川辺 そうだね。

須田 それに対してバンドは、集まれるときに短い時間でも効率良く作業できるようになりましたね。その間もずっとライブ活動を続けてきて、色んなアイデアの引き出しが増えたことも影響していると思います。

左・須田洋次郎(Dr) 右・川辺素(Vo/Gt )

この3年の間に、海外も含めて積極的にライブを行ってきた影響が?

Nakayaan かなりあると思います。

川辺 意識的にそうしたところもありました。前作がフィジカル要素が強くて、もう少し頑張らないとアンサンブルとして成り立たないと思ったので、ライブで場数を踏んで演奏を鍛えようと。前作を出してからはライブを重ねて、ハードルが気持ち的に少し下がった。

そのハードルというのは?

川辺 前は月に何本かライブをやるとクタクタになって疲弊していたんですよ。2年前、初めて中国にツアーに行って3日連続ライブをやったりして、体力、気力ともに鍛えられたところはありますね。

Nakayaan レコーディングしていても、3年前とは違うなと感じました。ベイシック・トラックのレコーディングで、少ないテイク数でもいいノリが出ていたりするのは、その成果なのかなと思いますね。

左・nakayaan(B) 右・大竹雅生(Gt,Syn)

アルバムのテーマ=不在感を醸し出す音の隙間を意識したアンサンブル

『Ghosts』というアルバム・タイトルはどこから?

川辺 アルバムの曲が無意識のうちに「不在」、「何かがいない」感じをテーマにしたものが多いなと思ったんです。そこで、大竹くんが『Ghosts』というタイトル案を出してきた。

その「不在」感は、1曲目の「ディレイ」から醸し出されていますね。

川辺 ちょっと不気味な一面的じゃない表現にしてみたかったんですけど、確かに1曲目からGhosts感があるかもしれない。

何とも不思議な心地にさせるのは、時折聴こえてくるノイジーなギターのせいもありますね。

大竹 途中まではポップで少しチープな音だったんですが、ノイズ・ギターを入れてみたら、意外とハマりましたね。

川辺 実はトラック数は少なくはないんだけど、不思議と複雑なことをやっているように聴こえない音に着地しましたね。

大竹 今回、音数を増やしてカラフルにしようという向きもあったんですけど、ひとつひとつの音がちゃんと意味を持つようにしたいというのはありましたね。

音の選び方、空間のつくり方はミツメの特徴でもあるし。

須田 今回は使う楽器が変わって変化はしているんですが、音の隙間を意識したアンサンブルというのは1stの頃からずっとありますね。

隙間があるとそこに音を入れたくなる傾向もあると思いますが?

大竹 ありますね。

川辺 ベーシックを録った段階では、隙間が多すぎて不安になることもあったんですけど、それでも思い切ってやれるようになったのはアルバムも5枚目ということなのかなと。

須田 音数が少なくても成り立つ、完成させることができると思えるようになりましたね。バンドの演奏の中に無音の瞬間があるというのも個性なのかなと思います。

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