Interview

postman 名古屋の注目4人組は、この1年間の成果をどんなふうに新作に結実させたのか?

postman 名古屋の注目4人組は、この1年間の成果をどんなふうに新作に結実させたのか?

初めての全国流通盤をリリースしてから1年。名古屋を拠点に活動する4人組が完成させた新作は、随分とたくましさが増したように感じられる。実際、彼らはこの1年の間に地道にライブを積み重ね、バンドとしての体力アップに努めたようだが、その結果として自らが進むべき方向をより明確に見据えることにもなったようだ。
ここでは、すべての楽曲の作詞も担当するバンドのフロントマン、寺本颯輝にその新作『Night bloomer』の制作を振り返ってもらいながら、この1年の間にバンドが考え、見つけたものをじっくり語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

お客さんが作るpostman像に寄せた部分があった前作から、より音楽的な方向に進んだのが今回のアルバムだと思います。

前作リリース後には、どんな反応を受け取りましたか。

全国流通盤は前作が初めてだったので、自分の知らない遠い所からの反響が届いたりしたし、去年は初めてライブしに行った所がたくさんあったんですけど、そこで「地元のCDショップで買いました」という話もたくさん聞いたし。そういうふうにいろんな所に届くように作ってるから、それは当たり前と言えば当たり前なんですけど、いざそういうことを実際に経験すると、うれしいと言うよりも不思議な感じがしましたね。ただ、そこで逆に自分の曲や自分たちがどういうバンドなのかということを客観的に見ることもできました。

postmanはどういうバンドなんでしょう?

“僕らはどういうバンドか?”ということについては、初見の人の声がいちばんリアルだと思うんです。名古屋の人たちはリリース前から元々知ってる部分も多いから、成長の過程の一つとして受け取る人もいると思うんですけど、前作で初めて僕らの音楽を聴いた人は、その印象が僕らのバンドに対する印象になるだろうから、例えば「光を探している」の明るい感じが僕らの印象になった人もけっこういるみたいなんですよね。僕ら自身は「光を探している」についても“光が無いから探している”という気持ちだったんですけど。そういうこともあって、僕のなかでボーカルとして責任感がより強くなった感じもあります。もっとリードしていかなきゃいけない、というか。今までは自然体で歌ってたし、曲もそういう感じで作ってたんですけど、最近は“もっと音楽の幅や視野を広げていいんだ”、“もっと広げよう”という気持ちになってますね。それと、今回は“思い切り好きなことをやろう”という方向に進んだんですよ。

それは、どういう気持ちの流れだったんですか。

自然とそういう方向になったという感じなんですけど、それでも今になって振り返ってみると、前作は“こういうのが、みんなが考えるpostmanだよね”というところにちょっと寄せたかもしれないなと思うんです。1stだったから、“postmanらしいものを作ろう”みたいな気持ちがあったなって。でも、本当に自由に作ったこの2枚目ができてみると、お客さんが作るpostman像に寄せた部分があったと思うんですよね。その結果として、いい作品ができたとは思ってるんですけど、自分たちが思っていることと聴いた人の評価がズレているのはそこが原因なのかなと思うんです。もっと伸び伸びやれば良かったかなって。

もっと伸び伸びやっていれば、自分たちの思いがもっと真っ直ぐに伝わっただろう、と?

ちょっと薄くなったというか、僕らが思っていることを完全に表現しきれていなかったなって。少なくとも、もっといろんな曲があるということは思ってましたから、それを武器として、というか…。より音楽的な方向に進んだのが今回のアルバムだと思います。音楽が好きだったら、こうなるよなっていう。単純に「いろんな曲がありますよ」というのではなくて、「音楽的にもっといいバンドになろうとした結果がこれです」という感じですね。

このアルバムで歌われている“夜”というのは単純な夜の意味だけではなくて、自分の殻を破るみたいな意味でもあります。

今作の具体的な制作は、いつ頃スタートしたんですか。

レコーディング自体は去年の9月にやったんですけど、前作を出してすぐに、2枚目はどういうものを作りたいかということはもう考えてました。曲も、前作には入れなかったけどライブではやってる曲がいろいろあったから、“こういうふうにしよう”というイメージはすぐに浮かんできたんですけど、初めての土地にライブで出かけたり、いろんな新しい経験するなかで、そのイメージがどんどんはっきりしていったんです。そしたら、入れたいと思う曲も変わってきて、また新しい曲もどんどんできて…。だから、向かって行ってる先はずっと同じなんだけど、そのイメージがどんどん明確に、また鋭くなっていったという感じですね。

その「明確に、また鋭くなっていった」過程を振り返ってほしいんですが、「自分たちが向かっている先」は最初から見えていたんですか。

僕はまずアルバムのコンセプトを考えるんです。というか、それがはっきりしないと、納得のいく曲ができなかったりするんですけど、今回は「夜明けを待たずに」という曲が歌詞を2、3年前からずっと完成させようとしていた曲で、前作を作っていた時期はちょっと中断していたんですが、リリースした直後くらいからまたその曲の歌詞を考え始めて、並行して夜にまつわる曲や何かを越えるというような曲ができていくなかで「夜明けを待たずに」も完成したんです。それがキーになりましたね。そのタイミングで、どの曲を入れるか考えてみたら、新しくできてきた夜にまつわる曲たちがどれも共通したことを歌っていたので、その曲たちだけでアルバムを作ることにして、みんなで具体的にそれぞれの曲を詰めていきました。

“夜”から“夜明け”への流れがテーマになっているということですか。

このアルバムで歌われている“夜”というのは単純な夜の意味だけではなくて、自分のなかの日付が変わるというか、自分の殻を破るみたいな意味でもあって、その過程のなかで答えを見つけていった感じがします。それに、「夜明けを待たずに」みたいに、何年も時間をかけて歌詞を書くということをこれまではやったことがなかったんです。書こうとしたら、いつも一気に書いてしまっていたので。だから、その長い年月をかけて完成させていった過程で、自分も何か変われた気がします。

例えば「紫陽花」で歌われているような、なかなか“夜明け”が来ないと感じて悶々としていた時期、寺本さんのなかでどういうことがはっきりしていなかったというか壁になっていたんだと思いますか。

活動を続けていくと、どうしても“postmanは〜ぽい”みたいなイメージがリスナーの間で出来上がっていくじゃないですか。それを、いい意味で裏切りたいという思いはあるし、もちろん期待に応えたいという気持ちもあるし。そういうことに関して、メンバーのなかでも意識がズレる時期もあったし。それに、単純に憧れとして“○○になりたい”という気持ちもあるし。そのなかで、自分にしかないものがわからないという時期があったんですよ。特に歌詞に関しては悩みました。曲よりも歌詞で個性を出すほうが難しいと思うんです。だから、“自分にしかない言葉ってなんだろう?”って、すごく考えました。

とすると、アルバム3曲目の「ありふれた幸せ」はどういうふうに出来上がった曲ですか。

まず歌詞がバーッと出てきて、それとほぼ同時にメロディも浮かんで、それでその夜のうちにデモを作って、みんなに送りました。そこからアレンジもほとんど変わってないです。それに、今回のアルバムの曲のなかでこの曲だけが牙をむいてないというか、他の曲は見えない何かと戦ったりするという意味で“夜を越える”ということを歌ってるんですけど、この曲は周りの人とのつながりで越えられない部分をなんとかしようとしている歌ですね。

この曲のことを聞いたのは、さっき「メンバーのなかでも意識がズレる時期もあった」と言われましたが、この曲がメンバーに向けた歌であるように感じたからなんです。

そうですね。確かに、そういうところがあります。去年、ズレを感じて、メンバーに不満を持っていた時期があったんです。だから、その時期には「ありがとう」とか「ごめんね」を僕があまり言えなかったりしたんですよ。その延長線上で、他の周りの人に対しても自分の足りない部分や、それこそありふれた幸せみたいなことに気づけていないところはめちゃくちゃあったなと思って。そういう時期にこの曲ができて、最初にメンバーに聴かせたら、ベースの(岩崎)圭汰から「さっちゃんはあまり“ありがとう”とか言わないよね」と言われたんですよ(笑)。“ああ、なるほど”と思いましたね。やっぱり、そうかって。

メンバー3人は、もう付き合いが長いから“そういうもんだ”と思ってたんでしょうか。

どうなんでしょうねえ(笑)。ドラム(いわたんばりん)なんて、もっとそういうこと言わないですから。それに、その時期は3人もそれぞれに不満を抱えていたと思うんですよ。そういう意味では、この曲はバンドに大きな影響を与えているかなと思います。

だからこそ、この曲だけ外に向かって戦いを挑むようなことを歌っているわけではないけれど、それでもこのアルバムに入れるべきだと感じたんですね。

今入れるべきだと思ったし、後々もっと良さがわかると思って。実際、クルマの中でみんなで聴いてると泣きそうになるような気持ちになりますから。

1 2 >