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かつてない最高難度!? 『SEKIRO』がやめられない面白さに転換する理由

かつてない最高難度!? 『SEKIRO』がやめられない面白さに転換する理由

“体幹”に“回生”? 聞きなれない言葉が並ぶフロム・ソフトウェアの新作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』は、同社作品のファンを自称する筆者の予想をはるかに上回る、超硬派かつ高難度のアクション・アドベンチャーゲームでした。ディレクターは、現在までに『デモンズソウル』、『ダークソウル』シリーズなどで世界中のプレイヤーを絶望のどん底に叩き落し、同時にそのストイックな世界と絶妙なゲームバランスで魅了してきた宮崎英高氏。発売から数日が経ち、プレイヤーの間では「近作での最高難度では?」などと噂されています。実際にプレイを進めて、筆者が「打つ手なし……」と何度も思わされた内容に迫ります。まずはロンチトレーラー動画を見て、本作のダイナミックなアクションに驚いてください。

文 / 内藤ハサミ


戦乱の世で暗躍する、孤独な忍びの物語

舞台になる本作の世界は戦国末期がモチーフですが、実在の地名や人名は登場しません。従って、物語の舞台である“葦名の国”も架空の国名です。和風でありながらどこかエキセントリックで無常感漂う雰囲気は、山田風太郎の忍法帳シリーズや白戸三平の作品を思い起こさせます。本作の主人公となるのは、狼と呼ばれる壮年の忍びです。性格は冷静で寡黙。「主は絶対である。命を賭して守り、奪われたら必ず取り戻せ」という掟に縛られ、山深い“葦名の国”に古くから続く一族の末裔であり特殊な力を持つ御子ただひとりのためだけに戦います。固定の主人公となるので、キャラクターメイキングはありません。

▲任務に忠実で、そのためならためらいなく殺す狼。そこに情けはありません

このほとんど話さない、話したとしても「言えぬ」、「御意」など、続けて5秒以上喋り続けたことがないのではと思うくらい無口な主人公の狼が非常にカッコよくて、プレイを進めるごとに筆者の感情移入度は深まっています。表情を表すことがないので、知らず知らず自分の気持ちを乗せてしまっているからでしょうか。それに、“私情を一切挟まず殺す隻腕の忍び”なんて、これ以上萌え……いや、燃える主人公はほかにいるでしょうかッ!? 鼻息が荒くてすみません。めちゃくちゃ忍者好きなんです……。

▲葦名の重臣、平田の養子として育てられた御子ですが、今は狼と同じ天涯孤独の身です。狼には特別なシンパシーを抱いている様子。聡明でけなげな子供です

葦名は他国に侵略され、滅亡の危機に瀕しています。熟達の忍びである狼が育ての父である梟や絶対守るべき存在である御子ともはぐれ、井戸底に追いやられうずくまっているところからゲームはスタート。謎の者によって投げ入れられた文をきっかけに、再び狼は使命のため動き出すことになります。狼が文の指示どおりに月見櫓へ向かう道中は、操作のチュートリアルを兼ねています。櫓へは、崖にぶら下がって動く、しゃがんで音を消して歩くなど、必要なアクションをひととおり練習できます。しかし、チュートリアルといえども敵に見つかれば殺されますから、練習だからと気は抜けません。ここでとんでもなく深い崖に足を滑らせて死んだのが、筆者の記念すべき初死にとなりました。以前までの作品と比べるとかなり高くから落ちても無傷でいられる狼ですが、やはり奈落に落ちると死んでしまいます。

▲本作ではジャンプアクションがとても大事で、戦闘中も多用することになるでしょう

狼を操作してまず驚いたのが、操作性の良さとスピード感です。『ダークソウル』シリーズと比べると、びっくりするほど早い動作とジャンプができる軽快さには、フロム・ソフトウェア歴代作品の動きが体に染みついているファンであればなおさら驚くでしょう。「やっぱり忍びは素早く動けるのね」と感心しつつ、月見櫓へ急ぎます。そこには囚われの主、御子がいるはずです。

▲草むらにしゃがんで身を隠しながら進む狼。特定の敵は、近くに寄ると会話を盗み聞くことができます。攻略のヒントとなるでしょう

▲出会うことができたふたり。狼は御子を逃がすために動き出します。個人的に心のつながりを求めているように見える孤独な御子と、任務以外の表情をまるで見せない狼の微妙な距離感というか、ちょっと切ない関係がたまりません!

▲御子を逃がす道中、没落しつつある葦名家再興に燃える“葦名弦一郎”によって狼は左腕を斬られ、御子まで奪われてしまいます

断片的なストーリーを体験していくことで物語の全貌が浮かび上がってくる作りは、同社の『ダークソウル』シリーズ、『ブラッドボーン』にも通じる手法ですが、今回のストーリーはこれらと比べると登場人物の語りも多いですし、時間の流れもわかりやすいのではないでしょうか。隻腕の忍とその主である囚われの御子、ともに孤独のなかで生きるふたりの主従関係を軸に進むストーリーを、これぞフロム・ソフトウェアともいえる泥臭さやダウナーさのミックスされた独特の美術が外連味たっぷりに盛り上げます。狼の左腕を奪った葦名源一郎が御子を必要とする理由、その御子の力とはどういうものであるのかなど、数々の謎を解き明かしながら、これから隻狼はひとり戦っていくことに……。容赦のない超難度がまず取り沙汰されるフロム・ソフトウェアのゲームですが、この刺激的なストーリーも大きな魅力なのです。以後、ひたすらに御子を守るという掟に従い、狼はひたすら邪魔するものたちを斬っていくことになります。そして、物語の終盤、狼は大きな選択を迫られることになるでしょう。狼はプレイヤー自身の分身です。あなたは、どんな道を選ぶのでしょうか。

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