Tリーグ丸かじり  vol. 15

Column

女子ファイナルは衝撃的な結末! 早田ひなが13戦全勝でTリーグの歴史に名を残す

女子ファイナルは衝撃的な結末! 早田ひなが13戦全勝でTリーグの歴史に名を残す

3月17日の東京・両国国技館で、男子に続いて18時から行われた女子のプレーオフ ファイナルは衝撃的な結末に終わった。レギュラーシーズン13勝8敗で2位の日本生命レッドエルフ(以下、日生RE)が、18勝3敗で1位の木下アビエル神奈川(KA神奈川)を3-2で破り、初代王座に就いたのだ。

確かに戦前の予想で、ベストメンバーがそろったときは日生REが有利との見方があったとはいえ、レギュラーシーズンで勝ち星を積み重ねてきたKA神奈川の自信は揺るぎないと思われた。直前に行われた男子の試合で同じグループの木下マイスター東京が優勝した勢いも考えれば、なおさらKA神奈川が有利だろう。しかし勝負は分からない。

レギュラーシーズンを圧倒的な強さで勝ち切ったKA神奈川だったが……

第1マッチのダブルス、KA神奈川はエース・石川佳純と14歳の天才・木原美悠を起用し、日生REの常勝ペア、常晨晨(チャン チャンチェン)、蒋慧(ジャン ホイ/ともに中国)に挑んだ。石川のパワードライブと木原の神がかったバックハンドに対し、日生ペアはコンビネーションが冴え、勝負は最終ゲームにもつれ込む白熱戦となった。10-8と先にマッチポイントを握ったのはKA神奈川だったが、ここから日生REが驚異の粘りを見せ、最後は11-13で劇的勝利。大きな1点を奪取した。

第2マッチはKA神奈川の杜凱琹(ドゥ ホイカン/香港)と日生RE・平野美宇の対戦だが、これまた大接戦となった。プレーはまさに世界レベルで、特に平野は「ハリケーン・ヒラノ」と世界を驚かせた、相手のボールの軌道を45度で横切って全力で振り抜く「許容タイミング誤差0.02秒」のバックハンドカウンタードライブを連発した。しかし、その精度がわずかに狂った隙を杜凱琹は逃さず3-2で平野を振り切った。総得点数は実に49対48という本当に本当に僅差のしびれる試合だった。まだ第2マッチなのにこの興奮。どうなるんだ一体。これでマッチカウントは1-1。

バックハンドカウンタードライブを連発! 杜凱琹と激闘を演じる平野美宇

第3マッチにはKA神奈川随一の勝率を誇る袁雪嬌(エン シュエジャオ/中国)と、奇跡の全勝クイーンである日生RE・早田ひなが登場し、会場の興奮は頂点に達した。早田はこれまで全勝とはいえ過去の成績は今日の勝利を保証するものではない。それどころか、むしろプレッシャーとして不利に働くのが常だ。好調の末の最後の最後のもっとも大事な試合で惨めな敗戦に泣いた選手がどれだけいたことか。早田がそうなっても誰も彼女を責められはしない。果たして最強の二人の対決はこれも見事に最終ゲームにもつれこみ、袁が実に8度ものマッチポイントを握ったが、早田が「ここでそれをやるか?」というプレーでことごとく跳ね返し、19-17で劇的勝利をもぎ取った。なんという試合だ。見ているこちらの神経が持たない。

これで日生REが2-1と優勝に王手をかけたが、第4マッチで石川が鬼の形相で日生RE・前田美優との打撃戦を制し、とうとうビクトリーマッチになだれ込んだ。

その場で出場選手を決めるビクトリーマッチ。両チームの監督が出場選手名をコールすると会場には一瞬のどよめきの後、割れんばかりの拍手が起こった。運命の一戦を託されたのは袁と早田。第3マッチと同じカードだ。両チームの監督の熱い思いに拍手は鳴りやまない。ああ、これで十分だ。こんなすごい試合に居合わせることができただけでもう十分だ。こんな試合でどちらか一方が負けなければならないとは。しかしこれが勝負でありスポーツであり、彼女たちが選んだ道なのだ。

勝負を制したのは早田だった。序盤、点差が3点と離れない攻防が続いたが、6-6から突き放し、最後は11-7で日生REの劇的優勝を決めた。これで早田はなんと13勝全勝、一度も負けることなくこの歴史的なTリーグのファーストシーズンを終えた。いったい誰がそんなことを想像しただろう。

第3マッチとビクトリーマッチに勝利しチームを優勝へと導いた早田ひな

日本初のプロ卓球リーグは、その誕生と同時にひとりのスター選手を生み出した。しかし卓球にオフシーズンはない。このプレーオフ ファイナルが終わるとすぐに東京五輪出場権をかけた過酷なレースが始まる。今日、優勝を分かち合ったばかりの早田と平野、涙を飲んだ石川、木原らが今度はワールドツアーで熾烈な争いを繰り広げる。そしてまたTリーグの来シーズンに帰って来るだろう。繰り返す。卓球にオフシーズンはないのだ。

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE

T.LEAGUE(Tリーグ)オフィシャルサイト
https://tleague.jp/

著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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