冒険Bリーグ  vol. 18

Column

縁の下の力持ち。三遠、太田敦也の「成長」はまだまだ止まらない

縁の下の力持ち。三遠、太田敦也の「成長」はまだまだ止まらない

『冒険Bリーグ』第18回は、三遠ネオフェニックス(以下、三遠)の太田敦也選手が主人公。彼は34歳の今も、三遠と日本代表にとって欠かせない人材だ。206センチ・112キロの体格はもちろん日本人最大級。ワールドカップ・アジア2次予選のベストゲームだったイラン戦は18分56秒のプレータイムで、97-89の勝利に貢献した。そんなビッグマンの「真価」と「成長」をお伝えしよう。

太田の持ち味は粘りの守備だ。bjリーグ(日本初のプロリーグ)時代から外国籍選手とのマッチアップを重ね、時には手痛い思いもしながら、一歩ずつ成長を遂げてきた。

Bリーグには外国籍選手の同時起用が2名以下という制限がある。センターのポジションは帰化選手も含めて外国出身者ばかりだが、太田は「国産選手」としてただ一人のこのポジションでB1クラブの主力を担っている。

3月31日の新潟アルビレックスBB戦(以下、新潟)で、太田は先発で起用され、34分04秒に渡ってコートに立った。セドリック・シモンズ、ジョシュ・チルドレスとNBA経験者をフォワードに従える陣容だ。

【B1ハイライト】03/31 三遠 vs 新潟(18-19 B1第31節)

新潟の得点源はダバンテ・ガードナー。203センチ・132キロの巨体と高いスキルを持ち、B1の得点ランクを独走する強力センターだ。太田はその対応を任され、新潟も彼とのマッチアップを執拗に攻めてきた。31日のガードナーは大量38得点を記録している。

それでも三遠は中地区首位の新潟に対して70-74と善戦したのだ。最大の驚異となる選手を太田が引き受けたことで、外国籍選手の負担が減った。特にチルドレスは23得点を記録している。

太田に機敏な動き、跳躍力はない。しかし必死に食い下がって時間を稼ぎ、相手を苦しい方向に誘導し、仲間がヘルプに入ってきやすい状況を作っていた。ガードナーはターンオーバーの少ない選手だが、31日にはそれを4つ記録している。

藤田弘輝ヘッドコーチも試合後に「本当にファイトしていたし、チームで戦えたので満足しています」と選手達の奮闘を高く評価していた。太田は守備でしっかりと抵抗し、チームが戦うベースを作った。

フル出場に近いプレータイムで、バトルの相手がB1最強選手となれば、負担は大きかったはずだ。しかし彼はむしろ余裕を感じる表情で試合後の会見場に現れ、こう述べていた。

「大変ですけど、相手はがんがん走ってトランジションで点を取ってというチームではない。富山のスミスだとか、三河のバッツだとか、そこまで直線的に身体を当てて来る選手もいなかった。体力面はまだマシかなと思っています」

彼が悔いていたのはシュートを10本放って2本しか決められなかった攻撃面だった。前日は「7分の5」と高確率で決めていたのだが、31日はジャンプショットが不発。太田はこう振り返る。

「真っすぐは行っていたけれどショート、オーバーが多くかった。修正ができなかったのは自分の課題です」

この6月に35歳を迎えるビッグマンは、長らく「数字に残り難い渋い貢献を見せる」タイプとして、プロ生活を送ってきた。しかし今季は自身の得点にもこだわりを持ってプレーしているという。

「自分自身のスタッツ、数字に残るものもやっていかなければいけないと思っている。まずできることからやっていきたい。シューティングの練習をして、ああいうジャンパーをもっと積極的に打って、確率よく決めたい。その結果がワールドカップ、オリンピックにつながっていけばいい」

3月31日の早朝、男子日本代表が東京オリンピックの開催国枠獲得を決めた。太田はこう喜びを口にする。

「本当にうれしいですね。自国開催で出られるのはチャンスです。この流れから結果を残せればファンの方々も観に来てくれるようになります。W杯の予選で出場を決めた後ですら効果が顕著に表れた。ファンを増やす意味で重要だと思います」

自分のアピールポイントについてはこう答えていた。
「今までと変わらず、コート内でもコート外でもみんなをサポートして少しでもやりやすい状況を作ってあげる。それが僕自身の求められている部分です」

太田はコート内では気を配って身体を張り、仲間を活かす縁の下の力持ちタイプ。コート外でもなごみ系の、皆から慕われるキャラクターだ。

今年9月にはW杯・中国大会も迫っている。アジア予選は太田、竹内兄弟と30代のベテランがインサイドの主力として踏ん張ったが、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)や八村塁(ゴンザガ大)のような若手も台頭してくるだろう。叩き上げのベテランは世代交代の波に晒されることになりそうだが、彼はこう言い切る。

「その子たちと僕自身が切磋琢磨をして、練習からどんどん競り合って強くなっていける」

ガードナーのような強力な相手とマッチアップを重ねてきたからこそ、彼はW杯予選で活躍し、国際舞台に出場するチャンスをつかもうとしている。もちろんW杯の本大会で対戦する相手はアメリカを筆頭に格上ぞろいで、立ち向かう壁もより高くなる。ただそれは経験値を上げるチャンスだ。

太田の成長サイクルはまだ止まっていない。彼はこう言い切っていた。
「こういう(敗戦の悔しい)経験をこの場で終わらせないで、国際試合で発揮できたらいい。国際試合で経験したものを今度はリーグ、チームに持って帰れたらいい。まだまだ僕自身も伸びると思います」

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

B.LEAGUE(Bリーグ)オフィシャルサイト
https://www.bleague.jp/

著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

vol.17
vol.18
vol.19