Interview

松田 凌&小早川俊輔が無償の“愛”を届ける。舞台『Being at home with Claude 〜クロードと一緒に〜』まもなく上演!

松田 凌&小早川俊輔が無償の“愛”を届ける。舞台『Being at home with Claude 〜クロードと一緒に〜』まもなく上演!

4月13日(土)に横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホールから上演される、舞台『Being at home with Claude 〜クロードと一緒に〜』。
本作は1985年に発表されたフランス系カナダ人のルネ=ダニエル・デュボワの戯曲をもとに、日本では2014年に初演され、今回が4度目の上演となる人気作だ。カナダのモントリオールにある裁判長の執務室を舞台に、殺人を犯して自首をした若い男娼の“彼”と、“彼”を取り調べる“刑事”、取り調べの記録を行う“速記者”、そして裁判所を警備する“警護官”、4人だけの密室で繰り広げられる会話劇。日本版は毎回、様々な趣向が凝らされており、今回は8人の役者が〈Blanc(ブラン)〉と〈Cyan(シアン)〉の2チームに分かれ、さらに演出もふたりが行い、〈Blanc〉を田尾下哲、〈Cyan〉を保科由里子が担当する。
そこで、〈Blanc〉チームで3度目の“彼”を演じる松田 凌と、〈Cyan〉チームで初めて“彼”を演じる小早川俊輔に話を聞いた。彼らの今作にかける意気込みから、この舞台が発する熱量を感じて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


自分が今まで身に付けた芝居を全力で出し尽くす

松田さんは今作で3回目の“彼”での出演になりますね。

松田 凌 まずは4度目を迎えた今回に、再び“彼”役で選んでいただいてとても光栄です。舞台は会話だけで進んでいくので、お客様には演劇でしか出せない空気感や、矛盾を孕んで展開していくストーリーの緻密さを感じていただきたいです。中毒性の強い作品で、前々回や前回も“彼”を演じ終わってしまうと、この役から引き離されたくないと感じてしまったぐらいで(笑)。初演から今回まで、上演台本も少しずつ変わっていますし、また新しい“クロードと一緒に”をお届けできると思います。

松田 凌

小早川さんは今作からこの座組みに参加します。

小早川俊輔 僕らの〈Cyan〉チームの演出を担当される保科さんとは19歳からの付き合いになります。保科さんのワークショップに4年ほど通って、演劇の基礎を教えていただきました。僕が役者としてこれまでどういう道を辿ってきたのかを知っている方で、こうして再びご一緒できる機会をもらったので感謝しています。だからこそ、現状に甘えることなく自分が今まで身に付けた芝居を全力で出し尽くしながら、それでも気構えずにいたいですね。当然、“彼”として背負わなければいけない不安や絶望の波に襲われることもありますが、「大丈夫」とみんなが手助けをしてくれる優しいカンパニーです。

小早川俊輔

松田さんにとって“彼”はどのような役になっていますか。

松田 「“彼”に出会う」という表現は大げさかもしれませんが、“彼”に会うことは本当に大変です。稽古をしていれば“彼”に会っている気がするのに、稽古が終わると、どういった人物なのか正確にはわからなくなってしまう。ただ、本番までに“彼”を見つけることが役者としての一番の仕事ですから、“彼”に出会うために最大限の努力を続けていきます。言い換えれば、どんな“彼”になるのか本番までわからないということですね(笑)。なので、お客様には劇場に足を運んでいただいて、舞台に立った僕がどういう“彼”になっているかで、今作の“彼”を判断していただければと思います。当然、役づくりは自分だけではできないので、これからはほかのキャストと一緒に“彼”という人物を浮き彫りにしていきたいです。

小早川さんは“彼”はどんな人物だと思いますか。

小早川 “彼”の生い立ちや、“彼”が犯した罪の理由を知ると、絶望的な人生に見えますが、稽古をしていくと、だんだん羨ましいと思うときがあるので不思議です。“彼”は周りに裏切られ続け、罵られ続け、否定され続けてきました。だからこそ人生に期待せずに生きてきたのに、手をかけてしまった“大学生”と出会うことで“愛”を知って変わっていく。“愛”を覚えた“彼”の姿からは絶望感が漂っていないからかもしれませんね。

今作のような会話劇は、役者にとって芝居の極致

今作は少数精鋭の四人芝居になりますね。

松田 演劇には、ミュージカルやエンターテインメントやアクション活劇といった枠組みがありますが、どんな作品でもプロフェッショナルなスタッフの力があるからこそ成立します。役者個人としてできることは限られているので、今作のような会話劇は、役者にとって芝居の極致なんです。会話だけで舞台を成立させるのは役者の限界値が露わになる場所だと思ってもいて。そのぶん、ごまかしは効かないし、なんの武器も鎧も身に付けない裸のまま芝居をする必要があります。なので、自分の直感を脳で覚えて、それを心に伝達しながら、“真心”を持ってお客様に台詞を伝える作業が大切になります。

小早川 この作品が大変なことは稽古が始まる前からわかったうえで、さらにそれ以上のつらさを実感しています。どの作品もそうだと思いますが、今作は会話劇なので台詞に嘘がつけないですし、カナダという異国の言葉を日本語にして発する翻訳劇ですから、お客様のイメージだけに委ねることはなかなか難しくて。僕らが作品のことを本当に理解して、自分だけではなく座組みで共有しないと、物語がどうなっていくのか繋がらなくなってしまうので、ひとり孤立するのではなく、共演者やスタッフだけでなく、舞台美術や小道具、身にまとう衣裳とも仲良くなっていくことを意識しています。

稽古はいかがですか。

松田 今作はWチームでチームごとの稽古時間が違うので、小早川くんのチームの稽古がどういう状況かわからないんですね。〈Cyan〉の稽古風景を見に行くのが怖くて、ソワソワして行けないという理由もあるんですけど(笑)。というのも、演出補の木村孔三さんが、どちらのチームも演出補助で立ち会って稽古をご覧になっていて、「チームによってまったく毛色が違う」とおっしゃっているから、より気になるんですね。もちろんお互いライバルといった感覚はなくて、8人のキャストは“同志”に近いです。パラレルワールドのように作品が違いますが、熱い想いで素晴らしい作品を届けたいという強い意志は同じですから。

小早川 たしかに。ただ、セットは同じなのに、チームが交代して稽古場に入ったときに、自分が知っている場所ではない気持ちになりますよね?

松田 わかる。アウェイ感がすごくある(笑)。

(笑)。では、それぞれのチームの稽古はいかがでしょうか。

松田 僕ら〈Blanc〉チームはずっと曇り空みたいな稽古場です。

小早川 あはは。

松田 といっても、雨は降ることがあるけれど陰湿ではなくて。たとえば、100年前のロンドンのようなずっと霧がかっている世界を想像してください。推理小説を読んでロンドンへの想像を膨らませていたような時代では、未知の世界がつい色っぽく見えてしまうように、独特な色合いで濃密な空気に満ちた稽古場になっています。それから、共演者の目の色が強くて、それぞれ意識を張り巡らせているからこそ、そんな天気になってしまったとも言えるので、逆に曇天の稽古場は心地よくて、恥ずかしいところもすべて曝け出せる場所になっています。

小早川 〈Cyan〉チームは明るいかな(笑)。技術的なことを言えば、セットにリアリティがあって、密室で36時間を過ごす会話劇という意味を理解して、どれだけその状況に慣れていくのかを大事にしています。ただ、慣れていけばツラツラと台詞を言えるようにはなるけれど、雰囲気だけで演じないように、毎回稽古の始めにみんなで決めた目的に立ち返りながら、稽古を進めています。

新しい舞台が誕生する瞬間に立ち会える

チームによって演出家が違うところも面白い試みですね。総合演出は、田尾下哲さんが当たりますが、基本的には〈Blanc〉は田尾下さんが担当し、〈Cyan〉は保科さんと個性的なおふたりで舞台をつくっていきます。

小早川 僕らは稽古に入る前に、かならずシアターゲーム(ゲーム感覚の遊びのようなもの)をするんです。そうするとみんなの心が自然と解けるので、変に芝居を固めてしまおうとせずに、柔軟な姿勢で稽古に臨むことができます。

松田 同じ作品でも稽古はそれぞれ違いますし、演出家も含め、今回は新しい試みがなされて贅沢な作品になっているので、お客様には〈Blanc〉と〈Cyan〉の2回は観て欲しいです。そうして、この作品の新しい演劇の面白さにフォーカスを当ててくれたら嬉しいですね。こういったチャレンジで、今後もいろいろな方が演出をして、誰かが演じて、未来に紡いでいく作品になって欲しいです。今回はその可能性を引き出して、新しい舞台が誕生する瞬間に立ち会えるという期待感で心が高ぶっています。

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