『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』特集  vol. 5

Interview

『PSYCHO-PASS サイコパス』劇場版3部作のためによみがえった歴代楽曲たち。「関わることができて光栄」中野雅之によるリミックス全曲解説

『PSYCHO-PASS サイコパス』劇場版3部作のためによみがえった歴代楽曲たち。「関わることができて光栄」中野雅之によるリミックス全曲解説

2012年にTVアニメ第一期が放送され、その近未来的な世界観とハードなストーリーで熱烈な支持を集めたアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』。今年1月から3月にかけて、劇場版三部作としてスピンオフ作品『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』も連続公開されたばかりだ。

一方でその『PSYCHO-PASS サイコパス SS』では、TVシリーズや劇場版の楽曲がBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之によるリミックスで起用されたことも話題を呼んだ。そして今回、中野による『PSYCHO-PASS サイコパス』楽曲のリミックスをコンパイルしたアルバム『PSYCHO-PASS Sinners of the System Theme songs+Dedicated by MASAYUKI NAKANO』がついにリリース。中野は凛として時雨やEGOISTらによる『PSYCHO-PASS サイコパス』の音楽世界をどう生まれ変わらせたのだろうか。

取材・文 / 澄川龍一


スピンオフの公開には、ファンの期待をさらに超えていかなくてはというミッションを感じた

中野雅之

今回、劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』の主題歌も含め、歴代のテーマソングをリミックスされましたが、まず『PSYCHO-PASS サイコパス』という作品についてはどんな印象をお持ちですか?

中野雅之 人気が出る要因というのは様々あると思いますが、まず世界観が特殊な舞台設定だと思いました。人間の心理状態が数値化される社会のなかで、どう生き方を手に入れていくかという話を面白く観させていただきました。それもあって今回関わることができて光栄だと感じました。

オファーの内容はどういったものでしたか?

中野 オファーとしては単純にリミックスを、ということでしたが、作品から汲みとれることは多かったというか。すでにアニメにもアーティストにも楽曲にも大きいファンがベースについているじゃないですか。そのスピンオフを公開するにあたって、そのファンの期待に応えて、それをさらに超えていかなくてはならないというミッションを感じたんですね。オファーの際に具体的には何も言われませんでしたけど、そういう意味では通常のリミックスのやり方とは変えていかなくてはならない。じゃないとファンをがっかりさせてしまうんじゃないかなと。

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』より

楽曲の背後にあるアニメ作品、そしてそれを支持するムーブメントも意識したリミックスになっていくと。

中野 そうですね。その都度その都度何を目的にやるのか、なんで受けるのかというのは考えながらやってきていますけど、そのなかで今回は『PSYCHO-PASS サイコパス』の楽曲全曲でしたし、劇中で使われる曲に関しては89秒という縛りもあったので、そこは頭フル回転で、より曲が輝きを放つように。オリジナル楽曲はアニメとの親和性も高かったので、それをより押し広げていってより感動するポイントというものをたくさん作っていければなと思いました。

今までの楽曲になかった面をつけることで、歌がより叙情的に聞こえるようになるというアプローチ

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian』より

では、今回のアルバム収録曲について一曲ずつお伺いします。まずはTVアニメ第一期OPテーマの、凛として時雨「abnormalize」から。

中野 原曲は性急感というか、スピード感とか北島くん(TK)のボーカルのピーク感というのが魅力だと思います。それがオリジナルだとしたら、そこに広がりと重みとを加えていって世界観を押し広げていくというのを意識しました。彼のボーカルがひとたび鳴れば出来上がってしまう部分があるので、それに対して今までの楽曲に、足りないわけじゃないけどなかった面をつけることで、歌がより叙情的に聞こえるようになる。そういう方向でアプローチしてみようかなと思いました。

次はTVアニメ第二期『PSYCHO-PASS サイコパス 2』OPテーマの「Enigmatic Feeling」はいかがでしたか?

中野 凛として時雨の楽曲ではビート感を強く意識して作った曲が多かったんですが、今回どれか一曲はビートレスにしたかったんですね。それでこの曲がピタッとはまったというか。今回こうやってビートレスで作ってみると、意外なところで叙情的なものになるなと思いましたね。

続いて、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』主題歌の「Who What Who What 」で意識されたことは?

中野 もちろんアニメの世界観と、原曲の世界観と北島くんのボーカルの特徴を活かすこと。劇場版(『PSYCHO-PASS サイコパス SS』)では使われていない楽曲ですけど、そこは意識して、その作品のトータリティがちゃんと出るように思ってやりました。それ以外は、映像に対して作らなくてよかったので自由にやらせてもらいましたね。これだったら北島くんも好きなんじゃないかなって軽く意識はしましたけど、自然にああいうものが出たのは、自分が今まで培ってきたもの、音楽性やテクニックとか自分のキャリアのなかから自然に出てきたものなのかなって思いますね。

「ちょっと小難しく聴こえるかも」という懸念がありつつ、これで提出してみたいという冒険があった

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__』より

ここからはEGOISTによる楽曲のリミックスになります。まずはTVアニメ第1期前半のEDテーマの「名前のない怪物」はいかがでしたか?

中野 楽しかったですよ。どこかダークネスなものがある、ゴスっぽいところがryoくんのテイストというか。そのゴスっぽさを生かしつつも、近未来的な感じで、僕の好きなテイストにちょっと振ってやってみました。そんなに大変じゃなく、いいボーカルテイクをもらったことで、こっちのイマジネーションがどんどん膨らんでいったのが楽しかったですね。

続いては第一期後半のEDテーマの「All Alone With You」。

中野 この曲はアニメのエンディングで聴いたときに、歌い出しでホッとしてサビでつかむという、アニメにものすごく貢献した曲なんじゃないかなと思いました。その役割を今回僕のリミックスでも担わなくちゃいけないなというのはありましたね。バラードで、エンディングで心をつかむというは僕も必ず実現しなくちゃいけないなと思いつつ、なのでサウンドメイクをしながらもやっぱり歌に頼って作っているところはありましたね。で、世界観をさらに原曲から押し広げていくのに、少しアーバンなハーモニーとか、フューチャーリスティックなサウンドスケープとかを加えて、未来のソウル・ミュージックみたいに聴こえるように作ってみたつもりです。

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』より

そしてTVアニメ第二期EDテーマの「Fallen」ですが、ハードコアな原曲とはまた異なるアプローチとなりました。

中野 これは結構ジャズっぽいというか、フューチャー・ジャズみたいな感覚で作りましたね。もしかしたらこれは映像制作サイドからダメが出るかもなって思って提出した曲です。コード感やハーモニーは原曲とかけ離れているところがあって、音楽的には少しIQが高めと自分では感じながら作っていて、ちょっとしたチャレンジかなと。多くの『PSYCHO-PASS サイコパス』のファンにとってはちょっと小難しく聴こえるかも、という懸念がありつつ、ちょっとこれで提出してみたいなっていう冒険があったんです。そしたら意外なことに一発でOKなので、「あ、これ大丈夫なんだ」って(笑)。

そしてもう一曲、Nothing’s Carved In StoneによるTVアニメ第一期後半のOPテーマ「Out of Control」についても。こちらは曲中の印象的なギター・フレーズを冒頭に持っていきましたね。

中野 そこでハッとさせられることがあるかなと。結構アグレッシブなリミックスなので、あの曲だよということを最初に印象づけておいたほうが世界観にぐっと引き込めるかなと思いました。

ハードルはすごく高いなって思っていたのは本当です

いずれも濃厚なリミックスが揃ったアルバムになりましたが、原曲やアニメが好きな人たちで、クラブ・カルチャーやリミックス文化に触れてこなかった人たちにとっては、今回こうした体験は実にフレッシュになるんじゃないかと思います。

中野 そうだったらいいなと思います。いやまあアレですよ、総スカン食らったらどうしようと思っていたところです。「これは俺が知っている『abnormalize』じゃない!」って言われたらやばいなあって(笑)。

そうした懸念は中野さんでも感じていたわけですか(笑)。

中野 これは叩かれるために引き受けるんだって思っていましたよ(笑)。というのは冗談ですが、ハードルはすごく高いなって思っていたのは本当です。

こうしたリミックスから中野さんのそのほかのワークスにも耳を傾けてもらいたいですね。そして、これから先もアニメ作品での中野さんの音楽が聴ける機会があるといいなと思います。

中野 もちろん。今後もいい作品があればぜひ頑張りたいですね。アニメってそう思わせてくれる、日本のコンテンツ独自の文化なので、何か貢献していきたいと思います。やっぱり音楽で作品の印象ってガラッと変わるし、自分の力を使って作品にプラスな効果が出るようであれば、積極的に関わっていきたいと考えています。

©サイコパス製作委員会

中野雅之オフィシャルサイト

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