モリコメンド 一本釣り  vol. 113

Column

the perfect me ポップスの黄金比を抑えながらオルタナティブなエッセンスを加えた独特の世界

the perfect me ポップスの黄金比を抑えながらオルタナティブなエッセンスを加えた独特の世界

次の年号が発表されて、なぜか新しい時代が来たような雰囲気になっているが、それは完全にカン違い。相変わらず景気は良くないし、使えるお金は少ないし、人々はなんだかギスギスしてるし、どう考えても未来は暗いし、まったくどうなってんだ……と(いつものように)ネガティブにはじめてみたが、今回もシリアスな気分を吹き飛ばすニューカマーを紹介したい。その名は、the perfect me。なんといっても“完璧な私”というネーミングが素晴らしい。拠点は福岡で、既にアメリカでのライブ経験もあり。音楽性はというと、これが完璧にワールドワイドで、英語圏であるあれば間違いなくアピールできるはず。日本がどんなに閉鎖的でも、音楽とミュージシャンはどんどん世界に出ていける。近い将来、the perfect meはそのことを自らの音楽で証明することになる……と強く希望する。

the perfect meは、福岡出身のアーティスト/エンジニアである西村匠のソロユニットだ。 2013年に2人組ユニットとして結成し、ライブを主体として活動。先鋭的なサウンドメイクと洗練された楽曲によって徐々に注目を集め、全国的には無名ながらもUSのインディ・バンド“ DEERHOOF”のオープニングアクトに抜擢されるなど、地元・福岡を中心に早い時期から存在感を示していた(グループ 名のthe perfect meはDEERHOOFの曲名から名付けられたという)。

2017年には1stアルバム『INTO THE HOUSE』をリリース。ファンク、ニューウェイブ、インディロック、ジャズなど幅広いジャンルを融合させた音楽性、音数を抑えたアレンジメントとソフィスティケイトされた歌がバランスよく配置された本作は、現行の海外シーンともリンクし、早耳の音楽リスナーにしっかりとアピールした。

この時期から西村は、レコーディングエンジニアとしても活動をスタートしている。“スロウタッチ”を標榜する3ピースバンド・STEPHENSMITHの2016年作品「sexperiment」 のレコーディング、ミックスを手掛けるなど、サウンドメイクでも手腕を発揮。たとえば「皺寄せ」(STEPHENSMITH)におけるディアンジェロ直系のドープなサウンドを聴けば、西村の音作りのセンスの良さを実感できるはずだ。そのポイントを簡単に説明すれば、“海外のトレンドを自然に吸収しつつ、日本の風土にも馴染むプロダクション”ということになるだろうか。

ギタリストの脱退により、2018年の夏から西村のソロユニットとしてリスタートしたthe perfect meは、同年9月に福岡で開催された音楽イベントASIAN PICKS(福岡から発信するカルチャーイベント)のライブオーディショ ンでグランプリを獲得。その副賞として2019年3月 にアメリカ・オースティンで行われた世界的音楽見本市SXSWの JAPAN NITEへの出演し、初出演ながら入場規制がかかるほどの盛況となった。 作曲、アレンジ、トラックメイク、歌唱、ミックス、エンジニアリングまで、楽曲制作における全ての過程を西村自身がコントロールすることによって、the perfect meの音楽的な解像度はさらに上がっている。

まずは2月にリリースされた1stデジタルシングル「two colors expressway」。ドナルド・フェイゲンに代表される80年代初期のAORの香り、10年代以降のネオソウル、ファンク・リバイバルなどを有機的に結びつけ、幅広い年齢層のリスナーに訴求できるこの曲は、現在のthe perfect meの音楽的な核を担っていると言っていいだろう。音数を絞り、スッキリとした印象を与えながら、リピートするたびに発見があるアレンジメントも、「two colors expressway」の魅力だと思う。

3月に発表された2ndシングル「Dance」は、軽快なギターカッティング、心地よいファンクネスを含んだリズムアレンジ、80’sテイストのサウンドメイク、そして、スムーズ&グルーヴィーな歌メロがひとつになった(曲名通り)ダンサブルなナンバー。おしゃれなBGMとして楽しめる気軽さ、フロア映えするセンスの良さを同時にカバーする全方位的な楽曲だ。決してエモーショナルになりすぎず、メロディの良さを際立たせるボーカルにもぜひ注目してほしい。

ポップスの黄金比をしっかりと抑えながら、現代的なサウンドアプローチを施し、オルタナティブなエッセンスを加えたthe perfect meの音楽。Nulbarichのブレイクにより、世界的に起きている“ネオソウル、アシッドジャズの再評価に伴うポップスの進化”の波が日本にも押し寄せている現在、このユニットの楽曲はさらに大きな注目を集めることになるはずだ。

文 / 森朋之

その他のthe perfect meの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
http://tpm-music.com

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