山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 57

Column

“Working On A Dream” 夢に取り組んでみる

“Working On A Dream” 夢に取り組んでみる

ソロ・ツアー“the boy 40 tour”前半戦の最後を締め括るように行われた本連載の番外編ライヴも無事終了。
2019年春。ひとつの時代が終わり、また始まるとき、私たちはどんな道を選択し、拓いていくのか。
ブルース・スプリングスティーンが2009年に発表した名曲「Working On A Dream」に、その視座と姿勢を見出す。


ソロ・ツアーが始まった。静岡のホテルにて。

ステージに立って、演奏を始める前に、一度客席をぐるっと見渡してみる。

今日はどんなオーディエンスが、どんな想いで来てくれたのか、知りたくて。

人々がそれぞれに苦闘しながら、日々を、時代を、生きぬいていることがありありと伝わってくる。たとえ、2、3日でもいいから、音楽を聞いて元気になって帰って欲しいと思う。

それが僕の仕事で役目。

ステージと客席との中空にどんな風景を描けばいいのか。どんな言葉を投げかければいいのか。考えながら、演奏は進む。次第にその日のテーマが明確になっていく。そして、やがて思考ではない場所にたどりつく。僕自身も音楽によってリリースされていく。願わくば、オーディエンスも。

平成の終わりにあたって、ゆるぎのないテーマのようなものがあって。でも、それは半分、借り物のようなもので、旅を続けながら、僕が勝手に受け継いで、育てているものでもある。

ブルース・スプリングスティーンが2009年に発表した「Working On A Dream」。初めて聞いたときから、ストンと腑に落ちた。まるで自分の口癖を取られたかのように。

「Working On A Dream」を「夢に取り組んでみよう」と勝手に訳して受けとっていた、その感覚が僕にはいちばんフィットする。「目指そう」でも「掴もう」でもなく「取り組んでみよう」という感覚。

「Working On A Dream」/ Bruce Springsteen(2009)

Out here the nights are long, the days are lonely
I think of you and I’m working on a dream
I’m working on a dream

Now the cards I’ve drawn’s a rough hand, darling I straighten the back and I’m working on a dream
I’m working on a dream

Come on!

I’m working on a dream
Though sometimes it feels so far away
I’m working on a dream
And I know it will be mine someday
「夢に取り組んでみよう」/ 意訳 by 山口洋

夜は長く、昼間は孤独と向き合っている
僕は君を想い、夢に取り組んでみる
夢に取り組んでいる

引いたカードは楽なものじゃなかった
俺は背筋を伸ばし、夢に取り組んでみる
夢に取り組んでいる

夢に取り組んでみる
手が届きそうになくても
夢に取り組んでみる
いつか手にできると知っているから

ひとりひとりが思いやるこころを胸に、本気でそれぞれの夢に取り組んだなら。世界はこんな風にはならないと、僕は本気で信じている。

コンサートを終えたらホテルに帰り、夜の余韻の中で、オーディエンスの変わっていく表情を思い返しながら、僕は書きかけの歌に取りかかる。体力的にはしんどいけれど、とても実りのある作業。時代と向き合っていることを実感している。

少し気恥ずかしいけれど、書きかけの歌を。

「夢に取り組んでみよう」(未完成)/ 山口洋(2019)

いつか飽きるほど 流れ星を見に行こうって
そんな些細な願いも かなわないまま すれちがって
月日だけが 無慈悲に流れていくだけ
複雑にまがりくねって 絡み合った ガジュマルの宇宙のように

夢に取り組んでみよう からっぽになって
君のほんとうの夢に
君に取り組んでみよう
君のほんとうの夢に

どうして何も喋らないんだい? 人生の九月をすぎてまで
君のこころの中にある夢にまで 盗まれて それでいいのかな?
言い争って 外に飛び出した 夜空に 不意に満天の星
光年の彼方 過去からのメッセージの意味 未だにわからないけど

きっと使命は もう終わりに近いんだろう
あのビルは時代の変わり目とともに 跡形もなく取り壊される
善意という暴力 忘却という暗闇 胸の中にある消し難い 罪悪感
でもきっと僕らは星の一部にまた戻るだけなんじゃないのかな

夢に取り組んでみるよ
僕のほんとうの夢に
世界に取り組んでみるよ
僕のほんとうの夢に

感謝を込めて、今を生きる。


ブルース・スプリングスティーン / Bruce Springsteen
1949年9月23日、ニュージャージー州フリーホールド出身。オランダ系とアイルランド系アメリカ人の父、イタリア系アメリカ人の母の間に生まれる。1973年にアルバム『アズベリー・パークからの挨拶 / Greetings From Asbury Park,N.J.』でデビュー。3rdアルバム『明日なき暴走 / Born To Run』(1975年発表)で現代アメリカの若者の渇きを鮮烈に描写、Eストリート・バンドとの圧倒的なパフォーマンスも加わって、時代の寵児的存在に。ベトナム帰還兵の苦悩を歌った『Born In The U.S.A./ ボーン・イン・ザ・USA』(1984年発表)は全世界で2,000万枚を超えるセールスを記録。続くワールド・ツアーでも大成功を収める。9.11同時多発テロ後に発表した『The Rising / ザ・ライジング』(2002年発表)では、ナショナリズムに煽られる国で個人の痛み、喪失感に深く寄り添う歌をうたった。イラク戦争には反対の意を表明、社会的メッセージを込めた楽曲などウディ・ガスリーの後継的アーティストのひとりとも言われ、ロック界にとどまらない存在感を誇る。
2009年発表の『Working On A Dream / ワーキング・オン・ア・ドリーム』は通算16枚目のオリジナル・スタジオ・アルバム(全米1位、全英1位を含む世界16か国で初登場1位を記録)。
2018年には、コンサートでもブロードウェイ・ショーでも一人芝居でもない、アコースティック・ギターとピアノの弾き語りライヴ&トーク“Springsteen On Broadway”で、第72回トニー賞 特別賞を受賞。本公演がNetflix配信されるのに伴い、2017年音源を収録した同名のライヴ盤『Springsteen On Broadway / スプリングスティーン・オン・ブロードウェイ』が昨年12月にリリースされたばかり。
愛称は“ボス(Boss)”。全世界トータル・アルバム・セールスは1億2,000万枚以上。20のグラミー賞、ゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞などを受賞、1999年にはロックの殿堂入り。2016年にはアメリカ文民最高位の賞「大統領自由勲章」を受章している。

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。2019年2月公開の映画『あの日のオルガン』(監督:平松恵美子、主演:戸田恵梨香、大原櫻子)でアン・サリーによるカヴァー「満月の夕(2018ver.)」が起用されたことでも話題に。現在、名古屋を皮切りにスタートしたソロ・ツアー“山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour”で全国に歌を宅配中。会場では2018年ツアーのライヴCDの発売も。3人編成となって2年目に入ったHEATWAVEの実験的ライヴ“HEATWAVE SESSIONS”、2019年の第1弾は4月18日横浜、20日京都の2ヵ所で行われる。2011年東日本大震災後から仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと続けている“MY LIFE IS MY MESSAGE”の開催は6月28日に決まった。

オフィシャルサイト

ライヴ情報

“山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour”
5月5日(日)千葉 Live House ANGA(アンガ)*アンガ22周年
5月11日(土)長野 ネオンホール
5月13日(月)豊橋 HOUSE of CRAZY
5月15日(水)奈良 Beverly Hills(ビバリーヒルズ)
5月17日(金)福山 Boggie Man’s Cafe POLEPOLE(ポレポレ)
5月19日(日)高知 シャララ
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HEATWAVE SESSIONS 2019
4月18日(木)横浜THUMBS UP(サムズアップ)
4月20日(土)京都 磔磔(takutaku)*磔磔45周年記念 HEATWAVE SESSIONS 2019 in 磔磔
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ARABAKI ROCK FEST.19
THE ARABAKI ROCKERS SATURDAY NIGHT ROCK’N’ ROLL SHOW 1969→2019

4月27日(土)・28日(日)みちのく公園北地区「エコキャンプみちのく」(宮城県柴田郡川崎町大字川内字向原254番地)
*出演日、ステージは後日発表。
出演:池畑潤二(ROCK’N’ROLL GYPSIES/HEATWAVE)
陣内孝則 / 澄田健 / 百々和宏 / 穴井仁吉 / 田中元尚(TH eROCKERS)
山口洋 / 細海魚(HEATWAVE)
花田裕之 / 下山淳 / 市川勝也(ROCK’N’ROLL GYPSIES)
仲井戸”CHABO”麗市 / 土屋公平 / 早川岳晴(From麗蘭)
ARABAKI ROCK FEST.19 オフィシャルサイト

HEATWAVE sessions 2019 ②
6月5日(水)横浜 THUMBS UP(サムズアップ)
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MY LIFE IS MY MESSAGE 2019
Brotherhood

6月28日(金)横浜THUMBS UP(サムズアップ)
出演:山口洋(HEATWAVE)×仲井戸”CHABO”麗市
詳細はこちら

VORZ BAR & GROOVE COUNCIL presents MIX UP & BLEND vol.3
7月13日(土)仙台市 市民活動サポートセンター B1F シアター
出演:山口洋(HEATWAVE)/ 藤井一彦(THE GROOVERS)/ 大江健人
Opening Act:堀下さゆり&佐山亜紀
詳細はこちら

vol.56
vol.57