黄瀬和哉が語る『攻殻機動隊 新劇場版』  vol. 2

Interview

黄瀬和哉が語る『攻殻機動隊 新劇場版』(後編)

黄瀬和哉が語る『攻殻機動隊 新劇場版』(後編)

早くも9月5日よりデジタル配信が決定した『攻殻機動隊 新劇場版』。既に配信中の『攻殻機動隊ARISE』に続き、攻殻機動隊の誕生と草薙素子のルーツに迫るこの作品の魅力や制作秘話について、総監督とキャラクターデザインを手掛けた黄瀬和哉が語る。

インタビュー・文 / 藤井浩
撮影 / 増田慶


生まれ変わったキャラクターたち
素子の「前髪パッツン」の秘密

ただキャラクターデザインも手掛けられているということで、それが言外の提言にもなっているのではと思うのですが、キャラクターデザインにおける狙いなどについて教えてください。

黄瀬和哉(以下、黄瀬) 今回は「どうやったらキャラクターを若返らせることができるか」が最大の悩みどころでした。今までの素子の髪型だとどうしても若返ってくれないので、それで前髪パッツンにしてみたんです。実はたまたま電車に乗った時、目の前に前髪パッツンな女の子がいたので、「あ、これ使えるかも」って思ったのがきっかけですね。

意外なパッツン秘話ですね(笑)。

「表情を見せたい」という意図があったので、前髪がジャマだったという理由もあります。うまく動けない時の苛立ちとか。

『攻殻機動隊 新劇場版』では「笑う素子」のカットもいくつかあって新鮮でした。

うーん、実は設定画には笑顔はないんですけどね。だからそういうのはこっちに回ってくる(笑)。「やさしい笑顔にしてください」とか言われたら自分でカットを描かなきゃいけない。他にも感情表現で迷ったら僕のところに来ますね。「素子がどんな表情でサンドイッチ食べるのかわからない」とか(笑)。それで「なんかイラッとしながら食うんだろうな」と思いながら描いたり。

笑顔が設定にないキャラクターというのも珍しいですね。

これまでの作品でも素子はほとんど無表情ですからね。怒りの感情があるくらいで。今回も最初の段階では素子が笑う予定はなかったんですよ。アクションが主体だからアクションの時に必要な表情があればいいと思って。でもけっこう笑ったりテレたりする場面が出てくるので「困ったなあ」と(笑)。

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黄瀬さんが考える一番「素子らしい表情」とは?

わかんないですねえ。そもそも素子が未だによくわかんない(笑)。わかったらつまらないということでもあるんですが。素子役の坂本真綾さんとも「素子ってどんな人なんでしょうね?」と話しましたが、坂本さんいわく「カッコいい人、でもそばにいるとちょっとイヤかな(笑)」。

黄瀬さんご自身は? もし素子がそばにいたら……

逃げますね、怖いから(笑)。とりあえず一定の距離感は取りたいですよ。

一新された声優陣のプレッシャーとチームワーク

そういう意味では、ご自分でも「攻殻機動隊」ファンを公言している坂本真綾さんの方が素子像に対するこだわりは強いのかもしれませんね。

こだわりというか、最初は「私でいいんだろうか?」というのはあったようですね。でもシリーズを重ねて行くうちに自分なりのものが出せるようになってきたと言ってました。「でも、“やっと”っていうところで、もう終わりなんですよね」とも(笑)。それは他のキャストの方々も同じように言ってました。新垣樽助さん(トグサ役)や松田健一郎さん(バトー役)も、「これからっていう時に終わっちゃうんだもんなあ」って残念そうだったのが印象深いですね。

『攻殻機動隊ARISE』『攻殻機動隊 新劇場版』で声優陣が一新されたことによるプレッシャーはあったのでしょうか。

それはかなりあったようですね。特に松田さんのプレッシャーは強かったみたいです。「オーディションに受かったのはいいけど、大変なことをしてしまったんじゃないだろうか」って(笑)。ただ、アフレコの現場はとてもスムーズでしたよ。たいてい1、2テイクくらいですんなり終わってしまう。あんまり早く進みすぎて、僕がスタジオに着く前に収録が終わってたなんてこともありましたから(笑)。

ファンの間では声優が変わることに対して、最初のうちは不安を感じる向きもあったようですが、「素子役が坂本真綾さんなら大丈夫!」という声も多かったですね。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では既に少女時代の素子の声も演じられてますし。

そうみたいですね。実は僕は坂本さんが少女時代の素子を演じてたことは知らなかったんです。だから狙ってキャスティングしたんじゃなくて、本当に偶然の一致なんです。

先ほどの声優さんたちのお話にもあったように、「これから」という時に完結してしまったのは残念ですね。このキャスト、この世界観での続編の可能性というのは?

僕はやりませんよ(笑)。『攻殻機動隊 新劇場版』できっちりと完結してますので。次の「攻殻機動隊」があるとすれば、前日譚はもうやってしまったので、素子が消えてしまった後の話くらいしかできないですね。あるいは「部長トグサ」(笑)。トグサの娘が9課にいたり。そういうスピンオフ的なことならできるだろうけど、それはもはや「攻殻機動隊」ではないので。

PlayStation VIDEOでは9月5日から早くも『攻殻機動隊 新劇場版』の配信がスタートするわけですが、黄瀬さんからぜひここを観てほしいというポイントはありますか?

やはりモーショングラフィックですね。電脳会議室の描写など、ああいったセンスは野村監督だからこそ出てきたものだと思います。僕がやってたらもっとアナログな感じになってたでしょうね。

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そうした未来感の描写は「攻殻機動隊」ならではですね。

それもあるでしょうし、未来感を演出するギミックとして定着してますよね。ただ、正直言うと僕自身は視覚的な未来感はどちらかというと苦手な方なんです。今のネットが既にそうですが、あまりにいろんな情報がありすぎて、人間がついていけない。もっとピンポイントに情報を絞ってあげないと。僕自身がそういう電脳世界的なものに興味が行かないから、表現がアナログ的になってしまうんです。そのあたりの発想は野村監督ならではだと思います。

逆に、そんな世界の中での「ゴースト」とか人間のあり様を描くところにも「攻殻」が長く続いてきた秘訣があるような気がします。

今回の『攻殻機動隊 新劇場版』で野村監督が提示したテーマは「青春」ですからね。「攻殻」で青春って! って最初は思いましたが(笑)、まあそれもアリかと。

今後配信によって作品が視聴されるスタイルは増えていくと思われますが、クリエイターとしてはどのように感じられますか?

パッケージ販売がなくなることはないと思いますが、作り手としてはまず「作品を観てほしい」という思いが強いので、いろんな手段で作品が観られることは純粋に有り難いことです。とにかくより多くの人に観ていただくというのが第一ですから。

『攻殻機動隊 新劇場版』では公開前に冒頭部を配信するなどの試みもされていましたが、そうした取り組みが視聴の幅を広げる可能性もありますね。

そうですね。実は「攻殻機動隊」っていかにもコアな感じではない人たちもけっこう観てるんですよ。この間は飲みに行った先の店員のお兄ちゃんが「攻殻ファンです!」って(笑)。女性で観ていただいている方も意外と多いと聞きますし、やっぱり層が厚いなあと。これはうれしいことですし、配信でその裾野がさらに広がっていくことを期待しています。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会

『攻殻機動隊 新劇場版』

攻殻機動隊

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攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain


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border:2 Ghost Whispers

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border:3 Ghost Tears

ARISE4
border:4 Ghost Stands Alone

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PYROPHORIC CULT

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