Interview

熱烈な『キングダム』原作ファンの橋本環奈が語る、 映画版の再現度の高さとスケール感! 「原作ファンの方にこそ見てほしい」

熱烈な『キングダム』原作ファンの橋本環奈が語る、 映画版の再現度の高さとスケール感! 「原作ファンの方にこそ見てほしい」

めざすは中華の統一! 舞台は紀元前の中国、春秋戦国時代。まだ誰も全土統一を成し遂げていなかった群雄割拠の乱世を、空前のスケールで描いた原 泰久の大人気コミック『キングダム』が、待望の映画化を果たした。実写化は不可能と言われていた大河ドラマを、「GANTZ」シリーズ(11)や「図書館戦争」シリーズ(13~)、『いぬやしき』(18)などで知られる佐藤信介監督らスタッフ&豪華キャストで中国ロケを敢行、圧巻の一大映像絵巻として完成させた。

そんな男くさい群像劇の中で、かわいらしいキャラクターとして存在感を放つのが、山の民の血を引く女の子・河了貂(かりょうてん)。演じた橋本環奈は、もともと熱烈な『キングダム』原作ファンでもある。原作愛にあふれる橋本に作品との出会いから、撮影でのエピソード、そして映画の見どころまで幅広く語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 島田敏次

河了貂役のお話をいただいてうれしかった反面、原作ファンとしては実写化に複雑な思いもありました(笑)。

橋本さんは元々『キングダム』の愛読者だったそうですが、どのようなきっかけで原作と出合ったのでしょうか?

本当にたまたまなんです。私、マンガが大好きで、電子書籍のアプリでもたくさん読んでいるんですけど、“あなたにおすすめ”という作品の中に『キングダム』があったんです。で、読んでいくうちに…沼にハマるがごとく、という感じでした。それが6年くらい前で、中学生のころです。とにかく読んでいて引き込まれるんですよね。目ヂカラがすごくて魂がこもった絵のタッチだったり、キャラクターたちが動き出すんじゃないかなっていうくらい迫力がある中に、一つひとつのセリフに重みがあって、学べることも多い。そんなふうに純粋な面白さに加えて、いろいろな魅力が詰まっているところに惹かれたのかなと思っています。

そういった中での河了貂役のオファーには、運命を感じたのでは?

とてもうれしかったのと同時に、原作ファンとして「実写化するんだ」っていう、ちょっと複雑な思いがありました(笑)。『キングダム』は実写化不可能って言われてきた作品なので、正直「可能なのかな…?」って。でも、お話をいただいたからには本気でやりたいなと思いましたし、佐藤信介監督やスタッフの方々、キャストのみなさんと現場に入ってからは、安心する要素しかなくて。これだけ「実写化不可能」と言われたのに、CGもセットもすごく緻密な計算のもとにつくられていたので、これまでの映画とスケール感の違いを肌で感じられたのが何より大きかったです。ロケは中国と日本の両方でしているんですけど、中国のセットというのがまた、ものすごく大きくて、その壮大なスケールで撮影できるということに、すごく演じやすかったです。

今はCG技術が発達して、グリーンバックで撮ることが多いんですけど、中国にわざわざ行って、本当の空の下、実際に建てられたセットで撮った甲斐があったなと思ったのは、みんなが一緒にとてつもなく大きな城を見られたこと、そして、その感覚を共有できたことにあるんです。圧倒される感覚というのは、同じ空気感の中で同じものを見ているからこそ、感じ方が一緒なんだなって。もちろん、キャラクターによって見せ方や思いが変わってくると思いますけど、そういった表現の違いも中国に行ったからこそ可能になったんじゃないかなと感じました。

中国のオープンセットの広さはハンパなかったみたいですね。

広すぎて迷子になるんじゃないかって思うくらい、本当に壮大でした。撮影所の規模もハリウッド並みか、超えるんじゃないかっていうくらいで。スタッフの人数も約700人だって聞いて、「エッ!?」という言葉しか出なかったです(笑)。

それだけ大規模な撮影だと、やっぱり大変だったのだろうなと想像しますが…。

中国ロケもそうですけど、日本国内のロケもけっこう過酷でした(笑)。千葉とか宮崎、熊本、静岡など、あちこち行きました。足元がぬかるんでいたり、洞窟の中でダウンを着ていても寒かったり、千葉の鋸南で「山の民」に会いに行く途中に通る崖のシーンを撮ったんですけど、マジで怖かったです! 映画ではさらにCGを付け足しているんですけど、リアルな崖っぷちだったんですよね。

河了貂の衣装は独特ですが、着心地はいかがでしたか?

けっこう重たかったです。ちなみに蓑についている羽は、本当に1枚ずつ付けていて。そのこだわりは「すごい!」のひと言です。衣装合わせの段階では、もう少し大きなサイズだったんです。でも、フォルムだったり、貂のキャラクターの見え方を計算された上で、もう少し小さくなったみたいでした。でも、すごく繊細なつくりなので、アクションだったり走っているシーンで羽が落ちていっちゃうんですよ。なので、気づいた人は貂の羽を拾うというのが、暗黙のルールになっていました(笑)。

では、河了貂のキャラクターをどのように橋本さんの心身に落とし込んでいったのでしょうか?

原作の河了貂は、よく男の子に間違えられるんですけど、映画ではその要素がないんですよね。もちろん、実写化する上で私が演じる以上、女の子だというのはわかるわけですけど…「男の子に間違われる」という原作上の大きな要素をとりのぞくからこそ、しっかりと私自身を貂に寄せていかなきゃいけないと思いました。特に、男っぽさや少年っぽさ──意味のないことで(山﨑賢人演じる主人公の)信と張り合うところだったり、雑な口調とかちょっとガニ股で立ってみたりして──。

それと、原作では表情がコロコロと変わるんですけど、(本郷奏多演じる王弟・成蟜に仕える凄腕の剣豪である)佐慈が刀についた血をなめるシーンで、「気持ちワルっ!」と言うところでは、原作の貂っぽい表情に近づけようと意識しました。ただ、終始そのエッセンスを出そうと狙って演じると、たぶんやりすぎになってしまうので、全体的には「貂っぽさが出ればいいな」という淡い感覚でした。というのは、脚本に原(泰久=原作者)先生が携わっていらっしゃったので、貂のキャラクター性が顕著に出ていたんですよね。「これ(=羽のついた蓑の衣装)はオレの戦闘服だ」っていうセリフを何度も言い張ったりするところに、かわいらしさが出ていたように感じたので、そんなに私が狙わなくても貂の魅力が伝わるだろう、と判断したんです。

信役の山﨑賢人さんや漂/嬴政役の吉沢 亮さんとは『斉木楠雄のΨ難』などで、長澤まさみさんとも「銀魂」シリーズで共演されていらっしゃったので、その点では心強かったのでは?

そうですね、アットホームな雰囲気だったと思います。大変な撮影だったからこそ、みんな無理にでも笑おう、みたいなところもあって(笑)。変なギャグを言い合ったり、謎のテンションだったりもしたんですけど、何度も共演させていただいている山﨑賢人さんに吉沢 亮さん、長澤まさみさんとご一緒できたことはやっぱり心強かったですし、私自身が貂になろうと思っていなくても、山﨑さんも吉沢さんも、それぞれ信として政として生きてくれたので、それだけで3人の関係性ができあがりました。信じてついていこうと自然に思えたのは2人のおかげですし、ありがたかったなと思えた部分でした。

あの…カメラワークのアングルを決めるまでの間だったり、セットチェンジもめちゃめちゃ時間がかかったんです。ワンシーン撮って20分空いて、またワンシーン撮って…といったローテーションがざらにあったんですけど、その間にみんなで動画を見て盛り上がったりして(笑)。中でも満島(真之介=壁役)さんがムードメーカーで、とにかく笑わせてくださったので、毎日がとても面白かったです。

そうだったんですね! それと…現場の話で言うと、佐藤信介監督は各シーンのコンテを用意されていて、演者さんたちはイメージがしやすいと聞いているんですが、いかがでした?

はい、台本とは別にコンテ本があって、それが「ハリーポッター」の単行本なみの分厚さなんです。しかも、どんどん現場でカット数が増えていくので、「えぇっ!? 撮り切れるのかな…」と正直なところ思ったりもしましたけど(笑)、佐藤監督は撮りたい画が明確でいらっしゃるんです。なので、「こういう場合、貂はどうしたらいいですか?」と、しっかりお話をさせていただくことができたのも、役を掘り下げる上でヒントになりました。場面ごとの立ち位置的な部分というか、バランスのとり方というのは佐藤監督の演出に委ねていたと言いますか、「監督がOKなら大丈夫だ!」と絶大なる信頼を置いていました。

原作愛が強いということで、橋本さんなりの河了貂のイメージもあったと思いますが、求められた貂の人物像とズレた場合、どう擦り合わせていったのでしょうか?

たとえば、「こういう場合、貂はこうは言わないような気がします」と思って、監督に言ったとします。その思いを受け止めてくださるのが、佐藤信介監督という方なんです。なので、「ここは、貂ならこうするかもしれないな」と思ったり感じた時は、「こういうふうにした方がいいと思いますか?」と相談していたんですけど、どんな場合でも誠実に答えてくださるんですよ。反対に、監督から「こういう時って、貂ならどうすると思う?」って訊いてくださったりもして。それがとてもありがたかったですし、だからこそ信頼を置いていたんですよね。「ここでは、こうしてほしい」という要望をいただいたとして、そこに到るまでの間に気持ちをつなげて辻褄を合わせる必要があるわけですけど、そこもちゃんと逆算して一本の筋道ができているんです。それは監督の中で全編を通して画が明確に見えていたからこそ可能であって、本当に細やかに提示してくださったので、演者としては全力で応えよう、と。そういう思いにさせてくださる監督さんなんです。

1 2 >