Interview

「第6話はアニメ史に残る神回になる」幾原邦彦作品フリークの村瀬歩が予告する『さらざんまい』の衝撃度

「第6話はアニメ史に残る神回になる」幾原邦彦作品フリークの村瀬歩が予告する『さらざんまい』の衝撃度

2019年4月より放送がスタートしたTVアニメ『さらざんまい』。本作は『美少女戦士セーラームーン』シリーズや『少女革命ウテナ』、『輪るピングドラム』、『ユリ熊嵐』といったアニメ作品を独特な感性で描いてきた幾原邦彦監督による最新作だ。

『さらざんまい』は浅草を舞台に描かれる、矢逆一稀(やさかかずき)、久慈悠(くじとおい)、陣内燕太(じんないえんた)という3人の少年たちの物語。突如現れた謎のカッパ型生命体“ケッピ”に尻子玉を奪われカッパに変身させられた3人は、元の姿に戻るためにつながりあい、ゾンビから尻子玉を奪うことになるのだった──と、あらすじを読んだだけではサッパリわからないこの感じこそが、幾原監督の描く“イクニワールド”へと足を踏み入れた証ともいえよう。

今回はそんな幾原監督に共感するファンのひとりでもある、声優の村瀬歩(矢逆一稀役)にインタビュー。すでに『さらざんまい』の世界に触れた方も、そうでない方も、村瀬が語る幾原作品の魅力や『さらざんまい』の見どころを参考に、イクニワールドを楽しんでほしい。

取材・文 / とみたまい 撮影 / 増永彩子


幾原作品が好きだったから、『さらざんまい』の独特な世界観にも入りやすかったのだと思う

完成した『さらざんまい』の映像を初めて観た際、どのように感じましたか?

村瀬 歩 幾原監督が手がけられた『輪るピングドラム』でも音楽を担当されていた橋本由香利さんの音楽が流れていて、『さらざんまい』の世界観と橋本さんの音楽って密接に関わっているんだと、改めてその影響の大きさを感じました。音楽が入ったことで、作品が完成されていくんだなあと印象深かったですね。

それに画がすごくキレイで……色使いはもちろん、波が揺らいだり、風が吹いたりといった細かな自然の表現を画で“魅せる”ような作品だと思いました。キャラクターの呼吸や見開かれる目などもすごくキレイに描写されているので、引き込まれます。

アフレコに臨む前に、村瀬さん、悠役の内山昂輝さん、燕太役の堀江瞬さんのお三方は幾原監督からお話があったと伺っています。具体的にはどのようなお話だったのでしょうか?

村瀬 「なぜ『さらざんまい』を作ろうと思ったのか」とか、キャラクターの具体的な方向性とか……カッパになるときに声を変えるのか・変えないのかとか。おそらく監督のなかでも「イメージを膨らませたい」という意図があったんでしょうね、シナリオに沿って少しセリフを掛け合ったりもしました。

そうやって事前に監督と役者が会うというのは……新人のとき以外ではなかなか経験しないことだったので、新鮮でした。幾原監督はそうやって伝えたい方なんだと思いましたし、ご自身が作る世界観を、役者たちに「わからない」と手放してほしくないんだろうなと感じました。

そのやり取りがあったことで、スムーズに収録に入れた?

村瀬 そうですね、やっぱりすごく大きいと思います。何をテーマにして、何を描きたいのかっていうことは、いわば“目的地”みたいなものだと思うので。それがわかっていて進むのと、わからないまま進むのとは……良し悪しはあれど、大きく違ってくると思います。

とはいえ、独特な世界観が展開される『さらざんまい』ですから、解釈が難しかった部分もあるかと思います。

村瀬 うーん……でも僕自身、もともと幾原作品がすごく好きということもあって、掴みやすかった感じはします。完全に私見ですが、「運命」や「自己犠牲」「約束」といった、幾原作品で共通しているキーワードみたいなものがあるような気がしているので、そこに照らし合わせながら「このキャラクターはこういう役割なのかな?」とか「こんな感じで物語が動いていくのかな?」と妄想しつつ台本を読んでいました。そういう意味では僕自身、幾原監督の世界観に入りやすかったんじゃないかと思います。

謎や問いを考察しながら、次の話を待つ一週間のあいだ、何度も観ていただきたい

放送がスタートした『さらざんまい』ですが、毎話、最後がすごく衝撃的で……。

村瀬 そうですね。『さらざんまい』の作りとしては、ほぼ毎回、最後に謎や問いが「ボン!」と投下されて、みんな「え!?」ってなって。翌週の放送で「なるほど、こういうことか」と段々わかってきたところで、また最後に新しい謎が投下されて「えー!?」ってなる、みたいな(笑)、毎週やきもきするような構成になっていますから。そうやってずっと興味を持って見続けていただけると嬉しいですね。

役者のみなさんも、台本を1話ずつ渡されて……?

村瀬 そうですね。なので、「え? これはどういう気持ちで言ってるんだろう?」とか「え? ど、どうした?」とかって思うこともありましたね(笑)。第2話のラストで起きることなんて特に……「どういうこと!?」って思いますよね。

矢逆一稀(CV:村瀬歩)

第1話から一稀の触れられたくないところが描かれたりもしましたが、演じる際に意識したところはありますか?

村瀬 僕の独自の解釈ですが……例えば第1話の後半で、一稀が女装してサラになりすましていたことが暴かれるんです。でも、前半では実際にサラの声を担当されている帝子さんが、(女装した一稀がなりすましていた)サラの声をやっているんですね。ああいうのって、叙述的なトリックにもちょっと近いと僕は思っていて。「一稀が変装したサラなんだから、本当は一稀を演じる自分がやらなきゃいけないんじゃないの?」とかって思うのは、すごくナンセンスだなあと……。

「ナンセンス」というと?

村瀬 女装した一稀と居合わせた悠には、「よくわからない女に自分の犯行現場を撮られた、まずい、写真を取り返さないと!」ぐらいにしか映ってないんですよね。そういった情報の優先順位があるなかで、一番大事なことはリアルに描かれつつ、ほかのところはデフォルメされる。

幾原監督は、そうやって物語の流れに沿って演出を考えていかれる方だと思うので、前半では本物のサラが声をあてて、後半の種明かしのところでは一稀が声をあてるというのが自然なんだろうなと思うんです。なので、僕らもそういった話の流れに身を任せて、いい意味で“疑問を抱かないように”意識する必要があるんじゃないかと思い、演じていましたね。

吾妻サラ(CV:帝子)

おっしゃるとおり、後半を観た後に「あれ? さっきのは村瀬さんの声だったかな?」と思って、前半を観直しました(笑)。

村瀬 ですよね(笑)。

それで改めて感じたのは、「前半を帝子さんがあてることによって、より後半の“一稀が演じるサラ”が生々しく聞こえてくるんだなあ」ということで……。

村瀬 うんうん、面白いですよね。そうやって何度も観ていただける作りになっていると思います。キャラクターの表情もすごく細かく描写されているので、「ん? なんでこんな表情をしてるんだろう?」とか、「なんでこういうニュアンスの芝居が入ってるんだろう?」と少し引っかかっていたところを、先まで観た後にまた戻って観ると「あ、こういうことかな?」と思えるようなポイントもたくさん入っているので。次の話を待つ一週間のあいだ、何度も観ていただきたいと思います。

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