プレイバック・平成アニメの31年  vol. 1

Column

いくつもの社会現象がここから……平成アニメの名作を生んだスタジオ3選

いくつもの社会現象がここから……平成アニメの名作を生んだスタジオ3選

令和への改元を迎えるいま、平成アニメの31年を総ざらい。振り返ればそこには濃密な歴史があった……! 今回は、数々の名作を生み出してきたアニメ制作会社の中でも、編集部が特に注目した3社をクローズアップ。各社の歩んだ平成ヒストリーを讃えるとともに代表作をまとめて解説する。

構成 / エンタメステーション編集部


深夜アニメに数々の社会現象を巻き起こした「京都アニメーション」

平成アニメ、とくに2000年代からの深夜アニメブームを語る上で、欠かせないアニメ制作スタジオ「京都アニメーション」(以下、京アニ)。京アニは旧・虫プロダクションで“仕上げ”を経験していた八田陽子氏が、京都宇治市で近所の主婦を集めて下請けを始めたというユニークな経緯がある。

その時代から仕事の丁寧さには定評があり、以降、業務を順次拡大。自社で初元請けを手がけた『フルメタル・パニック? ふもっふ』(2003年)で注目され、完全自社制作の『AIR』(2005年)での圧倒的な作画クオリティと演出力で“京アニ”ブランドを確立した。京アニの成功は、作画クオリティへの注目度を高めただけでなく、東京に本拠地を置かない地方のアニメスタジオの存在感を確立。様々な側面で、アニメ制作現場に影響を与えている。

そんな京アニが、社会現象的ブームを巻き起こしたのが『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年)。キャッチーな内容が魅力的だったのはもちろん、本作はアニソンレーベル・ランティスと組んで、音楽と作品を高い次元でマリアージュしてヒット曲を連発。アニソン業界にも大きな功績を残した。エンディングにキャラクターのダンスをフィーチャーしたED主題歌「ハレ晴レユカイ」のヒットは多数のフォロワーを生み、新エピソードを加えた同名のテレビシリーズ2期では、ある1日の時間がループし続ける「エンドレスエイト」のエピソードを、合計8話を使って懇切丁寧に再現し物議を醸すなど、超実験的なアニメ演出法にも果敢に挑戦した。

また一方で、『AIR』の流れを汲み、ゲームブランド・Keyの恋愛アドベンチャーゲームを良質の“泣ける作品”として、『Kanon』(2006年)、『CLANNAD』(2007年)、『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』(2008年)と立て続けにアニメ化したのも、Keyと京アニ、両者のブランド力をさらに高める結果を残した。

さらに、京アニが決定打を放ったアニメ業界のムーブメントは、日常系4コマ漫画の良質なアニメ化と聖地巡礼ブーム。その火付け役となったのは、『らき☆すた』(2007年)の大ヒットだ。そしてもう1作、4コマ漫画原作から生まれた傑作が『けいおん!』シリーズ(2009年~2011年)だ。音楽に注力して良質のアニソンを届け、楽器ブーム、バンドブームを巻き起こしただけでなく、バンド演奏シーンの手間のかかる作画を丁寧に描いて技術力の高さを知らしめるなど、様々な要素が絡み合った、京アニイズムの集大成ともいえる作品だ。

2010年代に入っても、日常系アニメの決定版『日常』(2011年)や、『たまこまーけっと』(2013年)、『氷菓』(2012年)、『中二病でも恋がしたい!』(2012年)などがヒット。京アニお得意の音楽物でも、『響け!ユーフォニアム』(2015年)が吹奏楽ブームに一役買った。……というように、かわいい女の子を描かせたら比類なき実力派スタジオとして君臨していた京アニが、女性向けイケメンアニメという新基軸に乗り出して度肝を抜いたのが、『Free!』(2013年~)だった。高度な作画力をいかした水泳シーンの美しさにも驚かされた本シリーズは、現在も劇場版を中心に展開中だ。

加えて『Free!』以降、京アニは自社開催の原作賞「京都アニメーション大賞」受賞作をアニメとして世に送り出すという、新しいオリジナルアニメ制作手法を成功させている。劇場用作品に匹敵する美しいアニメーションと感動的な物語演出が「これぞ京アニ!」と絶賛された傑作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2018年)、TVシリーズ最新作となった『ツルネ -風舞高校弓道部-』(2018年)がそれに当たる。京アニのブランドカラーを原作から打ち出し、さらに質の高いアニメを作り込んでいこうという京アニスタイルは、新元号下のアニメ業界も力強く牽引していくことだろう。

(文 / 阿部美香)

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