プレイバック・平成アニメの31年  vol. 2

Column

『まどマギ』が“平成最大のキセキ”となった理由。オリジナル作品復権の一年…平成23年(2011年)のアニメを振り返る

『まどマギ』が“平成最大のキセキ”となった理由。オリジナル作品復権の一年…平成23年(2011年)のアニメを振り返る

【シリーズ:平成アニメ“忘れられないあの年”】
終わりを迎える平成、そのアニメの31年間の中でも、本誌執筆陣にとって特に思い出深い1年を取り上げるコラム。今回は、東日本大震災という大きな転機がやってきた平成23年(2011年)の作品とアニメ事情を振り返ります。

文 / 山下達也(ジアスワークス)


平成23年のアニメ業界を語る、その前に(長い前置き)

平成23年(2011年)は全ての日本人にとって忘れられないできごとのあった年だが、実はアニメ業界にとっても、その後に大きな影響を与える大きなムーブメントのおきた1年だった。それは一言で言えば「オリジナル作品の復権」。

このことについて語るには平成23年から少しさかのぼり、いわゆる「00年代(平成12年~21年)」に巻き起こった深夜アニメブームについて説明する必要がある。アニメの表現の幅を拡げ、作品点数を大きく増やすことに貢献した「深夜アニメ」というムーブメントは平成13年(2001年)頃から急激に加速を始め、平成18年(2006年)に第一の黄金時代を迎える(『涼宮ハルヒの憂鬱』『コードギアス 反逆のルルーシュ』『ひぐらしのなく頃に』など)。なんと、この年だけで110本以上の新作アニメが制作されているというのだから驚きだ(ちなみに前年は約70本だった)。

その“無茶”を支えたのが、マンガやライトノベルなどの「原作付きアニメ」。できあいのストーリー、キャラクターがあり、固定ファンの見込める原作付きアニメは、数字が読みやすく企画が通しやすいこともあって、とにかく数を作りたいアニメ業界の意向とマッチした(平成23年は80%強の深夜アニメが原作付き)。テレビアニメの波及力によって原作がブレイクすることも少なくなく、この時期について言えば、原作付きアニメは多くのクリエイターとファンが幸せになれる仕組みだったと言って良いだろう。

しかし、その蜜月関係は有望な原作が“枯渇”してしまったことで終焉を迎える。00年代後期には、まだ始まったばかりの作品や、そもそもアニメ化向きではない作品を無理にアニメ化するといった問題も発生。このあたりから強く顕在化してくる「原作改変を嫌う風潮」もあって、最終回まで観たはいいものの話が何も終わっていない(なぜなら原作が全く終わっていないから)というモヤモヤ感だけが残る作品や、あまりに駆け足展開すぎるダイジェスト版のような作品が急増していくことになる。

アニメの本数は増えたが、どれもマンガやラノベのプロモーションを目的とした原作付き作品ばかり……。当時、そう感じていたアニメファンは少なくないはずだ。

『魔法少女まどか☆マギカ』という平成最大のキセキ

そして平成23年。この年の1月、まさに平成を代表するアニメと言っても過言ではない作品がスタートする。そう、『魔法少女まどか☆マギカ』だ。

今さらドヤ顔で解説するのも恥ずかしいのだが、マンガ家・蒼樹うめデザインのかわいらしい女の子たちがキャッキャウフフする魔法少女アニメと思わせておいて、第3話でメインキャラクターのひとりが衝撃的な死を迎える展開には、当時、誰もが度肝を抜かれた。その後も毎回、予想も付かないジェットコースター展開が続き、多くのアニメファンが翌週を心待ちにしながら、SNSなどで次回予告やストーリー考察を披露することに。しかも、物語がラストに向けて大きく転回するラスト3話が震災の影響で放送延期となり、意図せずファンの飢餓感を煽ると言う事故も発生。こうした不幸も乗り越え見事な完結を果たした本作は、その最終回がすばらしいものだったこともあって、多くのアニメファンに、オリジナル作品ならではの“先の読めない楽しさ”を再確認させることとなった。

そして、平成23年がミラクルだったのは、その直後に『魔法少女まどか☆マギカ』に負けない、数々の傑作オリジナルアニメが放送されたことだろう。

埼玉県秩父市を舞台にした、ちょっと不思議な青春群像劇『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(4月~6月)、当時テレビドラマでも人気だった“バディもの”のエッセンスを取り込んだヒーローアクション作品『TIGER & BUNNY』(4月~9月)、石川県湯涌温泉をモチーフとした架空の温泉街で働く4人の女の子たちの成長を描いた『花咲くいろは』(4月~9月)、鬼才・幾原邦彦監督が12年ぶりに手掛けた哲学的ファンタジー『輪るピングドラム』(7月~12月)などなど。どれも『魔法少女まどか☆マギカ』で膨らんだアニメファンの期待を裏切らないデキであった。

この後、こうした成功を受けて企画が通りやすくなったのか、翌年以降、新作オリジナルアニメが急増。その潮流は現在まで続いている。原作付きアニメを否定するわけではないが、「早く来週が来てほしい!」というワクワク感、ドキドキ感は、オリジナルアニメならではのものだろう。

ちなみにこの年のオリジナルアニメで、筆者的に「特別賞」を与えたいお気に入りの作品が、この年の10月に放送開始された『gdgd妖精s(ぐだぐだフェアリーズ)』。アニメというよりも、声優バラエティ的な側面の強い実験的な作品で、その露骨なまでの低予算感も含め、いろいろな意味で“ヒドい”作品であった。筆者はこれらの作品のせいで、それまであえて手を付けないようにしていた声優ラジオを聞くようになってしまった。そういう意味でも思い出深い作品。

(余談ですが、本作の主演声優であるピクピク役の三森すずこさん、ご結婚おめでとうございます。コロコロ役の明坂聡美さん、まだ大丈夫ですよ!)

なお、本作でシリーズ構成を務めた石館光太郎(石ダテコー太郞)は、その後、『てさぐれ! 部活もの』(平成25年)などでこの手法を確立。近年は他の制作陣によるフォロワー作品も生まれており、1つのジャンルとして成立しつつあるようだ。

『シュタゲ』、『アイマス』、『Fate』……この年はゲーム原作アニメもすごかった!!

平成23年をふり返るということで、最後にオリジナルアニメ以外の、この年を象徴するもう1つのムーブメントについて言及しておきたい。それが「新世代ゲーム原作アニメの登場」。冒頭にも述べたよう、00年代は原作付きアニメが極めて多く、ゲーム(特に美少女ゲーム)もその重要な原作供給源となっていたのだが、平成23年にはそれまでの流れとはやや異なる路線のゲーム原作アニメが登場し、その素晴らしい内容から新たなファンを獲得することに成功しているのだ。

タイムリープを繰り返し、あるべき未来への道を切りひらく“想定科学ADV”作品『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』(4月~9月)は、2009年にXbox 360向けに発売されたアドベンチャーゲームが原作。それまでは知る人ぞ知る傑作ゲームという位置付けだった本作だが、アニメ化されたことで劇的にファン層を拡大。6月にPSP移植版が発売されるまで、中古市場でXbox 360版が枯渇するという現象も起きた。

続く7月にスタートした『THE IDOLM@STER(アイドルマスター)』は、アーケードゲームとXboxで人気を博したアイドル育成シミュレーションゲームのアニメ化作品。実は本作はこの4年前に『アイドルマスター XENOGLOSSIA』という形でなぜかSFロボットアニメとしてテレビアニメ化されていたのだが(!?)、本作はファン待望のストレートなアニメ化を実現。丁寧な作り込みや、魅力的な楽曲によって、作品の再活性化に成功。平成25年に放送される『ラブライブ!』と並び、アイドルアニメブームを巻き起こすことになる。

そして冬には『Fate/Zero』(10月~12月、翌年4月~6月の分割2クール)が登場。平成18年(2006年)にアニメ化済みの『Fate/stay night』の前日譚となるスピンオフなのだが、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄による巧みな物語展開と、ufotableの手掛けた切れ味鋭いアニメーションによって印象を一新。この作品でFateシリーズのファンになったという人も多い人気作品だ。

多数の傑作オリジナルアニメに加えて、これら大人気ゲーム原作アニメも始まった平成23年。「平成」の31年間の中でもとりわけ大きな「当たり年」だったと言えるだろう。令和に、この年を越える盛り上がりが起こるのか……? いちアニメファンとして期待したい。

vol.1
vol.2
vol.3