LIVE SHUTTLE  vol. 340

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米米CLUB 全国ホールツアーは、「おせきはん」の「おかわり」? 予測不能のパフォーマンスとレアな選曲で多彩に魅せたステージ

米米CLUB 全国ホールツアーは、「おせきはん」の「おかわり」? 予測不能のパフォーマンスとレアな選曲で多彩に魅せたステージ

米米CLUB「a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2019〜おかわり〜」
2019年3月23日 川口総合文化センター

2019年1月11日からスタートした米米CLUBの全国ツアー「a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2019〜おかわり〜」が4月11日の大阪・フェスティバルホールにて千秋楽を迎えた。大好評を博した前回のホールツアー「おせきはん」からおよそ1年ぶり。1月の福岡と熊本公演がカールスモーキー石井の体調不良により延期となったものの、後日、振替公演が開催され、安堵したファンも多いはず。今回は3月23日の埼玉・川口総合文化センターで行われた公演のライブレポートをお届けしたい。

「人間だもん。腹は減る」。「相田みつをかッ?」と思わずツッコミを入れたくなる手書きの文字があしらわれた緞帳。ツアータイトルの「おかわり」から、前回のツアーの続編になるのではないかと予想していた人も多いだろう。米米が「謎のパフォーマンス集団」と呼ばれた80年代の頃のステージを彷彿とさせた「おせきはん」ツアーはオールド・ファンをおおいに喜ばせ、話題を呼んだことは記憶に新しい。前回は冒頭からマドロス姿のカールスモーキー石井が懐メロ歌手・腹綿腸次郎として登場したが、さて、今回は……? 

オープニングSEの「ボレロ」が流れ、ユニオンジャックの物販Tを身につけた観客が待ちわびる中、幕が上がると、舞台中央の上段にはすでにジェームス小野田の姿あり。1曲目からJOヴォーカルの「NICE TO MEET YOU」と来た。SUE CREAM SUE、BIG HORNS BEE、ダンサーのテキーラまさはる、パーカッションのMATARO、コーラスのMACHIKOのフルメンバーがステージに揃い、ブ厚いファンクをド派手かます。アルバム『Octave』(1992)からのナンバーに続き、2曲目は「KOME KOME WAR」。〈セメテ セメテ セメテ〉〈ヤメテ ヤメテ ヤメテ〉。当時の子供たちはこの意味不明なサビを連呼していたものだが、米米が初めてチャートのトップ10入りした曲も実はこの曲。「ハレホレヒレハレ」(クレイジーキャッツ)とか、昭和の流行語を平成が終わる今、聞けてよかった(笑)。

続く「あ!あぶない!」も『GO FUNK』(1988)からのナンバー。アフロヘアーのジェームス小野田のドス黒いヴォーカルが炸裂。冒頭からバンド一丸となってファンクで攻めて、中高年の息を上がらせる。それこそ〈とてもAb-Night Dangerous〉ですよ。「あたいのレディーキラー」は、発表当時は“オリジナル・リンダ・ナンバー”と呼ばれた歌謡ロック。デビュー前から「どうにもとまらない」などの山本リンダのカヴァーを十八番としていた米米だが、JOの怪物的な個性とも相まって、ついには昭和歌謡の重鎮、阿久悠/都倉俊一を凌駕する傑作を生むに至ったと、大袈裟に言っておく。

ここで、ようやく一呼吸のMC。「お・か・わ・り、か・わ・ぐ・ち、た・ろ・う・や・き」と、川口名物を盛り込み、ご当地ファンをくすぐることも忘れない。しかし、2019年にまさか「DRY MAN」を再び聴けるとは思わなかった。戸越銀座の昼間からブラブラしているクリーニング屋の息子の鬱憤を綴ったこの歌、JOを当て書きしたのだろうが、〈ご機嫌ななめの乾いた中年男〉という設定はむしろ今どき。そんな現代社会に鋭く切り込んだ(?)曲を含む2枚組37曲収録の『SORRY MUSIC ENTERTAINMENT』(1995) は、今こそ再評価されるべきアルバム…と、ここでも大袈裟に言いたくなるほどだ。記憶の彼方にあった「OH !」は1986年の2ndアルバム『E・B・I・S』からの曲。BHBを配したファンキー・チューンの威力は今なお健在。33年前の曲が色褪せない、その事実に驚く。

前半はJO比高めの流れだったが、ここで「愛を歌って50年。ハワイ生まれのアンディ岡田」が、自ら用意した花束とウクレレを抱えて登場。どうやらCS石井お得意のニセ日系人らしい。茨城弁を流暢に話すアンディには1500曲のレパートリーがあり、最大のヒット曲は「白糸の滝」。このモデルは映画「社長シリーズ」におけるフランキー堺の役柄あたりがルーツにあると思われ、アンディは昭和40年代に日本でも人気を博したポピュラー歌手、アンディ・ウイリアムスから来ている模様。アンディ岡田の体で歌うは「迷路’97」! 元はドラマ『素顔のままで』のサウンドトラック『ICTL』のインストナンバー「迷路」。解散前のラストアルバム『PUSHED RICE』(1997)に収録されている「迷路’97」はその改訂バージョン。過剰に効かせたビブラート、鶴岡雅義を思わせる哀愁のギター、ゴージャスが裏返ってチープさを醸し出すストリングス。誰に頼まれたわけでもないのに平成の世でムード歌謡を継承し、孤高の存在を極めた男がCS石井なのだ。続いて歌われた「ROPPONGI – 雨」は、バブル期の六本木のイメージを誇張した世界を見事に表現。サム・テイラー並みのむせび泣くサックス、UKソウルを意識しながらうっかり歌謡曲に転んでしまったようなアレンジも絶妙だ。BONとMACHIKOがビニール傘を手に踊り、途中でアンディのご祝儀袋を巡る寸劇を挟みこみながら、ホールでしか伝わらない細かい芸を披露してくれた。

「I LOVE YOU」ほどタチの悪い曲もないだろう。愛だの夢だの青春だのを正統派のポップスに乗せて朗々と歌うCS石井に聴き惚れていると、JOが〈なんちゃって〉と高い声で割り込み、〈何が愛だよ スケコマシ〉と反撃。ベタなラブソングや青春賛歌的なロックへの違和感、反骨心がこんな逆メッセージ・ソング(?)を生んだのだろうが、そこをおもしろおかしく歌いのめしてしまうのが米米の流儀。CS石井が尾崎豊「I LOVE YOU」、THE BLUE HEARTS「リンダリンダ」のさわりをさりげなく歌ったのも、「あの頃」の記憶がふとよみがえったからかもしれない。個人的には一回限りの演目、ロコ公演の「人のいいパンク・バンド」を思い出してしまった。

そんなステージでは何をしでかすか分からない米米CLUBにダンサーとして華やかな存在感を与え、観客に踊る快感を伝授したSUE CREAM SUE も、こと音楽となると容赦はしない。〈チョチョリーナ〉でお馴染みの(?)コミカルなスカ・ナンバー「チョビットダンス」を往年のアイドルさながらに歌い、踊らなければならないのだから。MINAKO&MARIもその役割を心得たもので、ここではいたいけな踊り子役に成りきる。米米で叩き上げられたプロ根性恐るべし、である。再びJOが登場し、本家・山本リンダの「じんじんさせて」を熱唱。全員がステージ前に出て、観客を煽りながら、その勢いのまま「かっちょいい!」へなだれ込む。米米ファンク初期の定番曲も今の成熟したプレイとパフォーマンスでアップグレイド。CS石井までギターを手に、ジョプリン得能、BEとトリプル・ギターを弾き、まるでライブの終盤かと思わせるほどの熱演を繰り広げ、第1部は終了した。

15分の休憩を挟んで、第2部は「TIME STOP」からスタート。米米がファンクやソウルに大きく舵を切ったアルバム『GO FUNK』(1988)屈指のラグジュアリーなバラードを、スモークの演出で聴かせるCS石井。フッシー小林のトランペット・ソロがアダルトな雰囲気を醸す中、たっぷりタメをつくりながら色っぽく歌う姿に溜息が…ではなく、クスクス笑いが起きてしまう。やけに動きがスムーズだと思ったら、大量のスモークを隠れみのにセグウェイに乗っかっていたんですねー。過去には竹馬に乗って登場したこともあるが、時代は変わった(笑)。最後の〈Kiss Me〉で「キャーッ!」と歓声が沸き上がるのもお約束。かつて「歩く豪華客船」と呼ばれた男の面目躍如たる曲である。KISS繋がりで「KISSING BLUE」という流れもニクい。1996年に米米が大人のポップに転じたアルバム『H2O』からの曲で、その路線はソロの石井竜也に引き継がれていくわけだが、新旧織り交ぜたセットリストで聴くのは新鮮だった。

そういえば、今回のツアーは、なぜかユニオンジャックをあしらった衣装やセット、物販が目についたが、その理由を「よーく見てください。この中に米って書いてあるでしょ?」と説明する石井。無理矢理こじつけた感も否めないが、あの手この手で強引に「米」に寄せ続けて30数年。再結成以降は、「永久に解散なしでやれる時にやるバンド」として活動を続けてきたことなどをあらためて語る。CS石井にしては珍しく普通のMCだったが、キャリアの長いバンドが誰一人欠けることなく存続していることを噛み締めているようでもあった。アリーナ規模のコンサートではなかなか聴けないしっとり系のポップ・バラード「Simple Mind」がセトリに加わったのも、今の石井の心境を反映していたのかもしれない。

しかし、「初めて米米CLUBを観たヒト? あー、けっこういますね。今まで何してたんでしょうねー」と、MCで照れ隠しの皮肉を口にしてしまうのは相変わらず。「話題にもヒットにもならなかった」と苦笑しつつ披露されたのは「どんまい」。映画『あさひるばん』の主題歌として2013年にリリースされたシングルだ。初回生産限定盤の「裏どん米」なる“常軌を逸した”映像特典は、よくいえば米米結成以前の学生時代に映画研究のサークルで先鋭的な作品を自主制作していた頃を連想させたが、原案・残酷・監督の石井によってとんでもない目に遭ったBONは「やらせたのはアナタでしょ!」と突っ込む場面も。2017年にDJみそしるとMCごはんが「どんまいr.t.m.米米CLUB」としてコラボ、いやコメニケーションするなど若い世代にも米文化を啓蒙? そんなとりとめのないMCが続き、後ろでニヤニヤ笑っていたBONも思わず「今日はMC長いよ!」。この日のMCは、メンバーも予測のつかないフリースタイルだったようだ。

ラテンの要素とキャッチィなメロディーでファンの人気が高い「STYLISH WOMAN」では、SUE CREAM SUEとテキーラまさはるが、まさにスタイリッシュなダンスを披露。なのに「バンドがやりたい曲と皆さんが聴きたい曲が合わない時もある」だなんて。シュークのDVD「SHAKE HIP UP!エクササイズ」で取り上げている曲だからなんて。こういう性格の悪さを装うところも想定内ではあるが。

再結成以前から米米のステージを観ていたヒトなら、BIG HORNS BEEのオリジナル「Blowz job」は嬉しかったに違いない。米米のホーンセクションとして結成されて以降、幅広く活動を続けて来たBHB。米米の音楽には必要不可欠の彼らは日本でトップクラスのプレイヤーたちでもある。この日はオリタ・ノボッタ(アルトサックス)のピンチヒッターとして石川県金沢(石川周之介)が登板し、それぞれがご機嫌なソロをまわしながら、エネルギッシュな演奏を展開。紅白歌合戦やNHK「うたコン」の音楽監督を務めるフラッシュ金子のピアノ/キーボード、BE、RYO-Jのソロやまさはるのダンスもフィーチャー。大所帯バンドならではの熱いグルーヴを生み出してゆく。

興奮とテンションが高まる空気の中、ステージ上段からジェームス小野田が登場。このツアーでは前半からJOを中心とした曲が多かったが、「大人物」は予想外! 『E・B・I・S』(1986)の頃はピュアで純朴なヴォーカルが持ち味だったJOが、直立不動で威風堂々、力強い歌を聴かせてくれたのは感動的ですらあった。スケール感溢れるライブアレンジも素晴らしい。どんなにフザけたことをやっても、演奏はビシッとキメる。その矜持があればこそ、自由に遊べる、観客を楽しませることができるのだ。

今回のツアーでは、「君がいるだけで」もショートバージョンながら“まとも”に披露。前回は「君、いる」の二言だけで終わってしまい、〈たとえば〉と始まった途端に不安がよぎったが、二度と同じ手は使わないのが米米だった。「浪漫飛行」もオリジナルに忠実に、原曲の良さを際立たせるような丁寧な歌とコーラスで聴かせる。誰もが知る大ヒット曲を生んだことがある意味「枷」になった時期もあったが、時を経て、そんなトラウマからも解放され、何をどうやろうとも米米CLUB、という自負心が今の彼らにはあるのだろう。和製フィリー・ソウル「愛 Know マジック」も米米らしい華やかさに溢れた人気のナンバー。ホーンズ、ダンサー、バンドが一体となり、音で、目でとことん楽しませる唯一無二のショーを繰り広げる。

クライマックスは、もちろん「Shake Hip!」。特効の銀テープが勢いよく飛び出し、大歓声を受けて、力の限り歌い踊るメンバーと観客。この光景は何度も観てきた。デビュー以来、一貫して「ENTERTAINMENT」を探求し、試行錯誤を繰り返しながら、あらゆる手段を駆使してきた米米だが、最後は「Shake Hip!」で「楽しかった!」と満足させてしまう。この高揚感、多幸感が米米のステージの真骨頂でもある。「せーの、と言ったら飛ぶんだよ」。CS石井のお決まりのセリフを最後に本編は終了した。

アンコールを「ボーナス」と呼ぶのも米米だけの伝統。今回は「もっかい」(もう1回)コールも混じり、「おかわり」ショータイムへ。筋書きなしのフリーなMCが長かったからか、CS石井は「今日ほど引き出しを全部出しきったことはない」と珍しく本音(?)をぽろり。ボーナス曲は、70年代の尾崎紀世彦の大ヒットナンバー「また逢う日まで」。本家に負けないソウルフルなヴォーカルと演奏で、カヴァー・ソングがブームになるずっと以前から昭和の歌謡曲を取り上げてきたバンドの底力を思いきり見せつけてくれた。他会場では「ごきげんよう! PARTY NIGHT」が加わることもあったようだが、この日はそれまでのツアー最長の3時間超えのステージだったとか。

ライブは一期一会。一回きりの刹那の時。その本質を知り尽くし、今なお予定調和を良しとしない、米米にしかつくれない独特の時間と空間がそこにはあった。

文 / 佐野郷子 撮影 / 荒川 潤
(写真は3月17日のパシフィコ横浜公演です)

米米CLUB「a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2019〜おかわり〜」
2019年3月23日 川口総合文化センター

第1部
1.NICE TO MEET YOU
2.KOME KOME WAR
3.あ! あぶない!
4.あたいのレディーキラー
5.DRY MAN
6.OH !
7.迷路’97
8.ROPPONGI – 雨
9.I LOVE YOU
10.チョビットダンス
11.じんじんさせて
12.かっちょいい!

第2部
13.TIME STOP
14.KISSING BLUE
15.Simple Mind
16.どんまい
17.STYLISH WOMAN
18.Blowz job
19.大人物 
20.君がいるだけで
21.浪漫飛行
22.愛 Know マジック
23.Shake Hip!
アンコール
24.ボーナス「おかわり」Show Time
25.また逢う日まで

米米CLUB

1982年に結成。1985年にシングル「I・CAN・BE」とアルバム『シャリ・シャリズム』でデビュー。「二度と同じステージはやらない」をモットーに、ダンサーチームSUE CREAMSUEやホーン・セクションのBIG HORNS BEE と共に大所帯のエンターテインメント・バンドとして人気を博す。80年代後半からはソウル/ファンク色を打ち出したアルバム『GO FUNK』、『5 1/2』で音楽的にも高評価を獲得。1990年には「浪漫飛行」がミリオンセラーとなり、1992年には「君がいるだけで」がダブルミリオンの大ヒットを記録。その一方で、寸劇や一人芝居を取り入れたステージやソーリー曲と呼ばれる迷曲のみで構成されたアルバムも発表するなど唯一無二の活動を展開。1997年の東京ドーム公演をもって解散するが、2006年に期間限定で活動を再開。予想を上回る好評から期間限定による活動を撤廃し、アルバム・リリースやツアーを継続。2017年にはオールタイムベストアルバム『LAST BEST ~豊作参舞~』をリリース。4年半ぶりの全国ツアー「a K2C ENTERTAINMENT TOUR 2017 ~おせきはん~」も大成功を収めた。

オフィシャルサイト
http://www.komekomeclub.net/

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