Interview

家入レオ 二度目のデビュー作と語る6枚目のアルバム。彼女に起きた新たな変化と手応えを訊く。 

家入レオ 二度目のデビュー作と語る6枚目のアルバム。彼女に起きた新たな変化と手応えを訊く。 

誰にも平等に訪れる時間をタイトルにした前作『TIME』では、「シンガーソングライターという肩書きだけではない自分に生まれ変わりたかった」「自我を手放して普遍的な自分を表してみたかった」という家入レオ。その『TIME』から1年2ヵ月、6枚目となるオリジナルアルバム『DUO』でテーマに掲げたのは“レオ劇場”。一度手放した自我を再び手にしたことで、家入レオの音楽世界はより一層強度を増した。
『LEO』『a boy』『20』『WE』『TIME』。名は体を表すではないけれど、この人のアルバムは常にその時の彼女自身を表す言葉だった。そう思うにつけ、この『DUO』も非常に興味深く耳に響いてくる。誰と、何と、デュオであるのか──。曲ごとに雰囲気をガラリと変えるビートやサウンドを身にまとい、心のどこかを濃密に歌に託した『DUO』。間違いなく、この後の家入レオにとってのキーポイントになる、そんなずしりとした手応えを感じる二度目のデビューと言ってもいい作品だ。

取材・文 / 前原雅子 撮影 / 石ヶ森三英

本当に私にしか歌えない曲、個人的な体験を真ん中に置いた作品を作ろうって

アルバムの方向性やテーマなどから聞かせてもらえますか。

前作『TIME』を作ったときは普遍的な自分になりたいと思っていたんです。誰にでも当てはまる事柄を取りあげて歌いたかったし、普遍的な言葉にどれだけ深みを持たせられるか、そういう歌い手になれるかということを真ん中に置いて作った1枚だったというか。でもそのあと全国ツアーをしていたときに、その後の曲作りに関してのヒントをもらえたんです。「私って、私にしか歌えない曲を求められてるんだな」って感じた瞬間があったので。

ライブ中に?

はい。あと、喉を休めるためにリハーサルでディレクターさんが仮歌を務めてくれて「Bless You」という曲を歌ったあと、「レオさんの曲って自分の思いを託して歌うんじゃなくて、レオさんになりきって歌うタイプの曲なんですね」って言われて。そこでハッとして、「次の制作ではレオ劇場というものをテーマに作っていこう」と思ったんです。本当に私にしか歌えない曲、個人的な体験を真ん中に置いた作品を作ろうって。それが、この『DUO』なんです。

『TIME』以前の作品は、今振り返るとどうですか。

それ以前は自分も曲作りに携わっていたので、自ずと自分のなかにあるものしか出てこなかったんだと思うんです。でも『TIME』で初めていろんなクリエーターさんと制作して、なんていうのかな、自我を消すみたいなことに一生懸命になっていたのかもしれない。

当時、「事前にいろんなお話しをして曲作りに取りかかってもらった」と言っていましたけれど、自我は消したかったのですか。

言葉を尽くして「私ってこういう人間なんです」って言いながらも、「みんなに当てはまるような曲にしてください」という言い方をしてたと思います。でも『DUO』はクリエーターさんと私、2人だけの化学反応から生まれた曲で構わないと思っていました。

すると今回は、みんなにわかりやすい楽曲にしたいとは。

言わなかったです。私が歌う曲だから、たとえこの世界で他の誰も理解できない出来事でも、私がわかっていればいいって。それを言葉やメロディーにしてくださいっていう感じでした。だから『TIME』の真反対ですよね。

音楽を自分の人生として捉えはじめたことが大きかったですね

それを言うなら、『TIME』もそれまでと真反対だったと言えませんか。

そうですね。『TIME』のときは、シンガーソングライターっていう肩書きだけじゃない自分に生まれ変わりたかったし。だから自分で曲を書かないことにこだわっていた部分も今思うとあったような。……なんていうんだろうな、自我を手放すようなことに挑戦したかったんですよね。

曲を書かないことで自分度を低くしたかった。

じゃないと辻褄が合わない気がした。「こういうことを書きたい」と思うなら、自分で書けばいいじゃんって解釈される気がしたんです。でも心のなかにある体験を広くわかってもらうためには、客観的な視点を入れたほうがいいと当時の私は思っていたから。出来事は自分のものを使ってるけど、作詞家さんや作曲家さんと組むことで曲と距離を置くようなことをやっていたような気がしますね。

実際にそうしてみてどうでした?

これも一つの形だと思いました。でも『TIME』ツアーでみんなの集中してる波動がより伝わってくる楽曲は、やっぱり私にしか歌えない曲なのかなぁと感じました。

だとしたら、曲はやはり全部自分で作ろう、とは。

今回のタイミングでは思わなかったです。それには音楽を自分の人生として捉えはじめたことが大きかったですね。やっぱり今まではどこかで結果を気にしてる部分があったと思うんです。でも1月に「この世界で」をシングルとしてリリースするとき、周りからは「これをシングルにして結果に繋げるのは賭けに近いものがある」と言われたりもして。だけど私は尾崎(雄貴、ex.Galileo Galilei、現Bird Bear Hare and Fish)さんからあのメロディーと言葉をもらったときから、絶対にシングルにしたいと思っていたので。結果的にすごくいい流れになったんですけど、そこで自分の心に正直になっていいんだって本当に思えたんですよね。

以前までいい音楽を作るためにいい経験をしたいって思ってたんですけど、今は、豊かないい生活があるからいい音楽ができるって思うようになって

好きだというだけでやってはいけない、と思っていたとか?

思ってました。責任があるんだから、みたいなことを常に感じながら音楽をやってきてたと思うんです。それが去年から少しずつ変わってきて、以前まではいい音楽を作るためにいい経験をしたいって思ってたんですけど、今は、豊かないい生活があるからいい音楽ができるって思うようになって。そこを逆にするだけで、こんなに余裕ができてくるんだと思って。

前も、いい曲を作りたいがゆえのことだったんでしょうけど。

でも逆だったんですよね。極論すると、音楽はなくても生きていけるじゃないですか、食べることや寝ることが先にくる。そこが整ってないのに、いい音楽ができるはずがないと思って、ちょっとずつ調整するようにしたんです。その頃から自分の感性に触れてくる人たちには出来るだけ自分で会いに行って、自分の言葉でこういう曲を作りたいって伝えるようになりました。10代から自分で自分のことは探し続けて、自分の引き出しも開けたので。それでもまだまだですけど。今は誰かと、何かと出会うことによって見えてくる自分が面白くて。だから今回は作詞作曲をしてる曲もあるけれど、化学反応が楽しめる提供曲も多いんです。

「この世界で」をはじめ、提供曲であっても「家入レオ作詞?」と思う曲が、すごく多いですね。「Whenever」「Bicolor」もそうですけど。

うんうんうん、そうですね! きっと舞台で言うところの“当て書き”だったからかもしれない。

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