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こんなに死んで、なぜ面白いのか?『SEKIRO』絶望と快感のカタルシス

こんなに死んで、なぜ面白いのか?『SEKIRO』絶望と快感のカタルシス

息を殺し機を伺う隠密の緊張感と、一瞬の隙が命取りになるヒリつくような戦闘のスピード感を極限まで高めたアクション・アドベンチャーゲーム『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』。フロム・ソフトウェアが今作で切り開いた新境地です。前回の記事を執筆した段階ではクリアには至らなかった筆者ですが、なんと未だエンディングを見ることができていません。同社が開発した『デモンズソウル』、『ダークソウル』シリーズをクリア&周回プレイするくらいの腕前はあるので、2回目の記事となる今回は「無事エンディングを迎え……」なんて書き出しで始められるものとばかり思っていたのですが、見事にその自負は打ち砕かれました。まさかこんなに苦戦することになるとは……。今回の記事では、筆者を苦しめ、そして大きな喜びも同時に与えてくれたボスキャラたちとの壮絶な戦いを主に紹介しますが、まずは最新の公式トレーラーで未プレイの方にも興奮の一端を味わっていただけたらと思います。

文 / 内藤ハサミ


まさか、ここまで苦戦するとは……

“影(忍者)は二度死ぬ”という意味の本作サブタイトルを見つめながら、「てやんでぃ! こちとら二度どころじゃなくバッタバタ死にまくってらァ!」と悪態をつく筆者。今日こそは勝ってやるぞと闘志を燃やしている相手は、強敵“赤鬼”です。実は筆者、プレイ開始から2日間、時間にしておよそ5~6時間ほどずっと勝てず、先に進めないでいたのです。赤鬼は初めて出会うことになるボスクラスの敵……まさか、ここまで苦戦させられるなんて。あまりにもショックで冒頭にも恨み言を書きましたが、フロム・ソフトウェアの大ファンを自称する筆者の自信は、しょっぱなからズタズタにされてしまいました。

▲赤鬼のモーションはゆっくりで隙だらけに見えるのになぜか攻撃をかわし切れず、力負けしてしまいます

▲幾度となく倒される狼こと筆者。憎し赤鬼!

「今からこんな調子では、エンディングを見ることなんて夢のまた夢なのではないだろうか……」と絶望していると、公式サイトに“ゲーム序盤のTips”というお助けページが出現したのです。いままさに進行が詰まっているところで、“強者「赤鬼」との戦闘について”とアドバイスが記載されているではありませんか! ここで、ステップ回避と赤鬼をひるませることができる忍具について改めて学習しました。今まで自分なりに工夫して戦っていた気ではいましたが、システムを熟知し、しっかりとした戦略で立ち回らないといけないのだと筆者は考えを改め、基礎から真に強い忍者を目指すことを決意。そして向かったのは、荒れ寺で戦技のレクチャーをしてくれるNPC、“死なず半兵衛”のところです。彼と修練を重ねて基礎を磨いていけば、赤鬼に有効な立ち回りもできるようになるでしょう。

▲メニューから選んだアクションを半兵衛との手合わせで成功させるとクリアできます

▲練習モードではあるのですが、これがなかなか楽しいのです。半兵衛は成功するとちゃんと褒めてくれます。優しいお方~

荒れ寺で初めて半兵衛に会ったときは、「なるほど、アクションに不慣れな人はここで練習できるのね、まあ私には関係ないけれど……」と完全にスルーしていたのです。あのときの私ときたら、完全に驕り高ぶっていました。猛省します! 半兵衛とひととおりの操作を学びなおし、さらに不安なアクションを複数回練習すると、以前よりも機敏に動けるようになってきました。ひとつひとつの操作を実戦で身につけられる、よくできた練習モードです。

▲赤鬼~! 今日がお前の命日じゃ!

というわけで、いざ再戦! 赤鬼の動きをしっかり見極めながら忍具“火吹き筒”でひるませ、攻撃をステップやジャンプでかわし、隙を見逃さず集中して……忍殺!

▲か、勝てました! 「半兵衛、私やったよーっ!」 踊りだしそうなほど嬉しいです

極度の緊張が続いたからか、倒したあとはしばらく冷や汗と手の震えが止まりませんでした。そして、同時に沸き起こってくる武者震い。自分の実力で倒したという手ごたえは予想以上の快感です! 赤鬼撃破のドロップアイテムは、4つ集めるとHPと体幹の上限が上がる数珠玉でした。この方法でしかHPや体幹をパワーアップすることはできないので、貴重なアイテムです。最初に出会うボスである赤鬼のことを思い入れいっぱいに書いてしまったのは、実は筆者が序盤に最も苦労し、死んだ回数もダントツだったボスだからなのです。戦闘における基本を教えてくれた先生ともいえる赤鬼、ありがとう。そして、グッバイ。

▲序盤では赤鬼に次ぐ死亡数を叩き出した“まぼろしお蝶”戦。回生を使い、回復アイテムもほぼ使い切り、体力じり貧でなんとか勝ちました。お蝶はとにかくかっこいい老女キャラで、筆者が一番好きなボスです。声優さんの演技も最高にシブくて素敵なんですよ!

▲“鬼刑部”戦。馬に乗って暴れまわる恐ろしいボスでしたが、地道に相手の攻撃を防ぎ、自分が攻撃するチャンスを逃さず体力を削ることで撃破! 堅実な立ち回りが功を奏した戦いでした

▲なんと初見で勝ててしまった“火牛”戦。焦らず攻撃を避け、動きを見極めることが勝利のカギでした

赤鬼との戦いで自信を取り戻した筆者は、探索を進め何体かのボスに出会いました。赤鬼先生が教えてくれた、「何度も挑んで敵の動きを見極め、有効な手段を見つけて効果的に叩き込むこと、決してボタン連打で何とかしようとしてはならないこと、そして自分の腕を磨けば必ず勝てること」を忘れず、なんとか撃破できています。もちろん、筆者のとった戦法は数ある立ち回りかたのひとつ。ボス一体にも有効なアプローチは複数あり、プレイヤーが戦いを重ねていくなかで身を削って習得していくものなのです。現在は、とある強敵がどうしても倒せずに行き詰まっているのですが、いずれ撃破できる! と心折れずにやっていけています。筆者がたくさん死にまくったおかげで竜咳が大流行中の我が葦名では、NPCたちの健康は完全に損なわれているので、そこだけ心苦しくはありますが……。

こんなにたくさん死ぬのに面白い理由

しかし、やはり死んでしまうと悔しくて冷静でいられなくなるのもまた自然な反応です。筆者だって赤鬼で何十回も死んでいたときは、悔しさのあまり自分が赤鬼に成り替わるんじゃないかと思いましたし、ほかのボスに関してもあまりに死ぬので、「私には無理なんじゃないか」と思うことは多々ありました。そんなに苦しい思いをしてまでなぜ続けるのか。これは未プレイの方が最も不思議に思う点かもしれません。でも、不思議とやめてしまおうとは思わないのです。その理由を改めて考えてみました。

▲「惑わば死ぬるぞ」 プレイヤーの心にガツンと響くセリフです

まず、本作は決して理不尽にプレイヤーを苦しめるゲームではないのです。本作が高難度であるのは間違いないのですが、死の理由はとてもはっきりしていて、プレイヤーにもそれがしっかりわかるようにデザインされています。「よくわかんないけど、死んじゃった……」と初見で思うことがもしあっても、戦いを重ねれば必ず理由が見えてくるように作られているのです。「見切りのタイミングが遅かった」、「弾くことのできない攻撃を弾こうとしてしまった」、「攻撃を焦りすぎて相手の出かたを見ていなかった」など、克服すべきポイントは必ず見えてきます。克服の具体的な手段については、ときに大変悩むこととなりますが、行き詰まっているところとは違う場所を探索したり他のボスと戦ったりしているうちに有効な立ち回りを閃くこともありますし、実力がついてから再戦してみるとなんてことはなかった、という場合もあります。そうそう、攻略ルートはある程度順番が決まってはいますが、戦わなくても先に進めたり、他のルートに行けば違うボスとも戦えるようになったりと、結構自由に動けるのです。リスポーンやファストトラベル、体力回復などができる鬼仏もかなり多く設置されているので、目当ての場所に毎回たどり着くのが億劫ということもほぼなく、テンポよく進められます。これも、心折れずにチャレンジできる要素のひとつでしょう。

▲探索中に発見できるとほっとする鬼仏

当然のことながら、プレイヤーは死ぬためにゲームをプレイしているわけではありません。難敵を撃破したときに大きな爽快感があるからこそ、何度も何度も繰り返してしまう無残な死に耐えられるのです。少しずつ上手くなっていく己の腕を信じながら、次こそはと勝利に向かって進んでいくプレイヤーをこのゲームは決して突き放さず、親切に手を引いてくれるわけではないけれど、学習・工夫する楽しさを適切な距離から提供してくれています。プレイを進めるうちに克服すべき点が見えてきて、それに向かって努力することで自分の実力アップを実感できる。この法則が貫かれているからこそ、本作は「たくさん死ぬのに面白い」のだと筆者は思います。最速で正解を選び取れることだけが楽しさではないのです。

▲なかなか勝てない敵に遭遇し、鬱憤が溜まるときもあります。そんなときは、平田屋敷に出向いて障子を破壊しまくるという暗い遊びに興じている筆者。無心に屋敷の内部を破壊していると、いい攻略のアイデアが生まれる……かも?

本作の難をあえて挙げるとするならば、敵へのターゲット、壁際などでのカメラワークにやや不自然さが感じられるところでしょうか。逆に言うと気になった点はそのくらいで、全体的にはかなり快適にプレイができています。さて、このあとストーリーを進めていくと、序盤では一番の強敵である“葦名弦一郎”との戦いが待っています。これまでに培った技を総動員して挑むことになる激しい戦いに勝利することは、プレイヤーにとっての大きなブレイクスルーとなるでしょう。演出も最高にかっこいいので、ぜひぜひその目で確かめてみてください! そしてさらにその先に進むと、狼と御子は大きな岐路に立たされることとなるでしょう。選択できる道はひとつではなく、戦う敵も選択によって変わることがあります。ラスボスの強さも折り紙付きだとのことなので、筆者もこの原稿を書き終え次第、攻略に戻ろうと思います!

▲激しく辛い戦いに勝っても、こんな道端でうっかりと死んじゃったりするんですけどね……

高難度に苦しむプレイヤーの姿がまず話題に上がりがちな本作ですが、その先にある達成感がそれ以上に大きいからこそ、狼の過酷な旅路を共にする喜びを味わうことができるのだと、いま一度述べておきたいと思います。筆者は同社の過去作をクリアしているとはいえ、お世辞にもアクションゲーム全般が得意なほうだとは言えません。それでもこの世界の楽しみを味わいたくて何度も挑んでいるうちに、なんとか戦えるようになってきています。「アクションが苦手な方にも向いています!」と言って勧める気は毛頭ありませんが、新たな驚きと探求の楽しみを見つけられる人は必ず多くいるはずです。筆者が熱弁をふるうまでもなく、発売からひと月も経たないうちに全世界で実売200万本突破ということですから、これからも続々と全世界で凄腕の忍びが育っていくのでしょう。

フォトギャラリー

■タイトル:SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE
■メーカー:フロム・ソフトウェア
■対応ハード:PlayStation®4、Xbox One、PC
■ジャンル:アクション・アドベンチャー
■対象年齢:17歳以上
■発売日:発売中(2019年3月22日)
■価格:各機種通常版(パッケージ版・ダウンロード版) 7,600円+税


『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』オフィシャルサイト

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