Interview

あの休息期間には何があったのか。藍井エイルが打ち明ける、4thアルバム完成までの道のりと“自然体でいること”の大切さ

あの休息期間には何があったのか。藍井エイルが打ち明ける、4thアルバム完成までの道のりと“自然体でいること”の大切さ

2011年にデビューを果たし、数々のアニメタイアップソングを担当してきた藍井エイル。2016年11月の日本武道館公演をもって心身の休息期間に入っていたが、2018年6月に復帰第1弾となるシングル『流星/約束』を発売、8月には思い出の日本武道館でライブを開催した。そしてこの4月17日、4thアルバム『FRAGMENT』をリリース。5月からはライブツアーも控える彼女に、休息期間中に得たもの、復帰前と復帰後の自分を振り返ってもらう。

取材・文 / 清水耕司(セブンデイズウォー)

あぁ、みんな忘れていくのかもしれないな、と

2018年の復帰は2度目のデビューと言えるのかなとも思いましたが、2011年のデビュー時と比べると一番にどのような違いを感じますか?

藍井エイル デビューのときは右も左も、社会もわかっていない状態でしたから(笑)。すべてが新鮮なかわりにインプットがキャパシティをオーバーしていたと思います。でも今は、お休み期間を除いても6年のキャリアがありますし、お休み中に余計なプライドや無意識に目を背けていた部分とも向き合うことができたので、『FRAGMENT』では等身大な自分を表現できたとは思っています。

お休みの間は音楽とはどのような関わりで生活していたんですか?

藍井 実は、「ああ、みんな忘れていくのかもしれない」という不安に駆られて、音楽と向き合えなかったんですよ(笑)。音楽を聴くコンテンツがCDからどんどんとデジタルに変化していく時期と重なっていて、たった1年で時代が急に変わっていく感覚があったんですね。それで途中から音楽を聴けなくなりました。

あと、聴けない以上に、歌えなくもなってしまいました。誰かが歌っているのを聴いて、自分ができないことを知るのが耐え難いというか。人と比べるのは良くないと思っていたんですけど、つい比べてしまう自分がいました。それで「歌」というワードも聞きたくないくらいになって……。歌えるようになったら、またどんどん音楽を聴けるようになりましたけど。

歌えなくなったというのは、デビュー後に身につけた表現力やスキルが衰えたという感覚ですか?

藍井 いや、リアルに歌いきれなくなったんです。例えば、カラオケに行っても体力的に一つの楽曲を歌い切ることができませんでした。1番を歌ったら気絶しそうなぐらい疲れて、一緒に行った友達よりも歌えないくらいでした。

休むための時間が衰えにつながったのでしょうか?

藍井 休息をとって、歌から少し離れている間にそんな風になって、何が起きているのか、何が原因なのか、自分でもわかりませんでした。ジムにも行ってみたんですけど戻らないし、切羽詰まっているのに時は過ぎていくし。家族や友達ともカラオケに行きづらい時期がありました。歌おうとしても震えるくらいに緊張しちゃうんですよ。今までの歌い方が体に負担だったのかもしれないですね。地道にボイトレに通って、地道に家で練習して、それでやっと戻っていきました。

復帰のタイミングは、歌えるという手応えを自身で感じたからですか?

藍井 いや、「約束」のときも正直ちょっと泣きました。うまく歌えなくて。周りの方も多分、歌えなくてビックリされたと思います。でも、エイルバンドのバンマスでもある重永(亮介)さんがフォローしてくれたんですよ。嘘はつかないけど、「大丈夫だよ」と励ましてくれたので「約束」は歌うことができました。だから、レコーディングの序盤は歌い方にかなり悩んでいて、歌っていても自由に表現できない不自由さを感じてはいました。

気持ちが伝わるような客観的な歌詞への変化

歌えないことは楽曲制作や楽曲の方向性にも影響しましたか?

藍井 いえ、そこは一切考えなかったです。歌えないということを理由にはしたくなかったし、するべきじゃないと思っていました。鼻歌を歌ったり、人前では歌わなくてもこっそり歌ったり、といった日常を歌詞に書いていたので、そこに左右されると「約束」が完成しないと思いました。でも、絶対解決できると自分の中で信じるしかなかったところはありますね。

「約束」の曲を受け取ったときはどんな気持ちでしたか?

藍井 いや単純に、「重永さん、天才が過ぎる……」みたいな(笑)。デビュー曲『MEMORIA』のあとに出したミニアルバム『Prayer』が重永さんとの初対面で、10月にデビューして会ったのが多分11月とか12月くらいなんですよ。だから、ほぼ最初からずっと一緒で、藍井エイルのことをすごくわかってくれているし、私の性格も理解してくれているし。私のダメなところもいいところもいっぱい知ってくれている人なので、だから生み出されたんだなという言葉もたくさんあったんです。そこに、お休み中に感じた私なりの言葉をつなげてできたのが「約束」の歌詞だったんですね。

だから「共作」なんですね。

藍井 はい。先に重永さんが曲とデモの歌詞を書いてくれて、直したくないと思ったところはタッチせず、自分に起きた出来事とか「ここは自分で表現したいな」と思ったところを書いていきました。重永さんの歌詞は本当に、「え? 私のこと監視してたの?」くらい私の気持ちを汲み取ってくれていて(笑)、私もすごく書きやすかったですね。

復帰したばかりのときに書いた「約束」の歌詞ですが、今読んでみて気持ちの変化はありますか?

藍井 武道館で歌う前は“手紙”のような感覚でしたけど、武道館で歌った「約束」は手紙というよりも感謝の気持ちを込めた“これからもよろしく”になった感覚がありますね。

その後、「流星」「アイリス」とシングルが続きましたが、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』の主題歌でもありました。エイルさんのファンとしては「また『SAO』を歌ってくれるんだ」という気持ちがあったと思いますが、エイルさんとしてはどんな気持ちでしたか?

藍井 おっしゃってくださったように、ファンの人は「歌ってくれるんだ」と思ってくれたみたいですが、同じように私も「歌わせていただけるんだ」という気持ちでしたね。『-ガンゲイル』の話をいただいたとき、「恵まれているな」と感じました。「流星」はマイナーアップな楽曲で藍井エイルらしくて、そういう曲をまた歌えたことにすごく感謝しています。

「アイリス」については、夏アニメについて調べていたら『ソードアート・オンライン』が始まることを知って、「歌わせてもらったら嬉しいなあ」と思っていたんですけど、図々しいから誰にも言えずにいたのにスタッフさんからお話が来て。「ありがとうございます!」って会話したことを覚えています。しかも、LiSAちゃんがオープニング(テーマ)で、私がエンディングというのは『Fate/Zero』以来で、懐かしい感じもありました。

エイルさんにとって、アニソンを歌うというのはどういう意味がありますか?

藍井 ゲームやアニメや映画といった映像作品の中で流れる音楽を生活の中で聴くとすごくテンションが上がるんですよ。店内に流れて、「あのアニメの曲だ!」みたいに。だから、私の曲を聴く人もそういうテンションになってくれるといいなと思っていますし、なので歌詞を寄せ過ぎちゃうこともあるくらいなんです。その世界に入り込みすぎちゃうんですよね。ただ、藍井エイルの楽曲は聴くけどアニメは見たことがない、という人もいるので、あまり偏らないようには気をつけています。

そういった気持ちは休み前から変わらず?

藍井 客観的になったとは思いますね。休む前は、もっと主観的に歌詞を書くことが多かったので。でも、主観すぎると私だけの世界になるので伝わらないんじゃないかと思いました。「あぁ、わかる」と思ってもらえる歌詞を書くことが今は私の中での正解なので。

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