Interview

古川雄大が人間の“死”と“愛”を語る。ミュージカル『エリザベート』で新境地を開拓し続ける役者の生き様

古川雄大が人間の“死”と“愛”を語る。ミュージカル『エリザベート』で新境地を開拓し続ける役者の生き様

ミュージカル『エリザベート』(以下、『エリザベート』)が、6月7日(金)から帝国劇場にて上演される。
ハプスブルク帝国の最後の皇后であるエリザベートと黄泉の帝王トート=“死”の禁じられた愛を描くミュージカル。1992年にオーストリアで初演、日本版は1996年の宝塚歌劇団雪組の宝塚版を皮切りに、東宝版の2000年以降繰り返し上演される大ヒット作だ。
脚本・歌詞はミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲はシルヴェスター・リーヴァイと、ミュージカル『モーツァルト!』(以下、『モーツァルト!』)、ミュージカル『マリー・アントワネット』(以下、『マリー・アントワネット』)などでも手腕を振るう黄金タッグ、そして、演出・訳詞には小池修一郎が集結。
今作では、2015年と2016年版でトートを演じた井上芳雄と、2012年、2015年、2016年版で皇太子ルドルフを演じた古川雄大がタブルキャストでトート役に挑戦。
そんな歴史あるミュージカルで初役を担う古川雄大に話を聞いた。人間の“生”と“死”、そして“愛”を真摯に語ってくれたインタビュー。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


トートは人間の“死”の象徴

『エリザベート』は古川さんにとって、最も出演したいと思っていた舞台だそうですね。

そうなんです。2012年版のルドルフ役から携わらせていただき、今作は2016年版を基盤に新たなメンバーが加わり、配役も変わるので、気持ちが奮い立ちます。それでも、トートは初めての挑戦になりますし、稽古に入る前からプレッシャーを感じて緊張しています(笑)。『エリザベート』の現場は作品の重厚なテーマもあって、今まで加わったカンパニーとは違う独特な雰囲気があるのですが、精一杯チャレンジしていきたいと思います。

トートはどんな役だと思いますか。

簡単に言えば、人間の“死”の象徴であり、エリザベートの“死”への想いを擬人化したキャラクターですね。彼女の内面から現れる存在であり、そのとき彼女が対峙していた誰かを“死”に導こうとする役割です。僕はトートに憧れていたので、このカンパニーに入るといつも彼の演じ方の答えを見つけようとしていたのですが、なかなか見つからないです。

トートの魅力はどんなところにあるのでしょう。

まず、見た目の美しさがあります。それから、歌うナンバーがかっこいいです。どの曲も素晴らしいメロディーラインに合わせて歌うことができますし、エリザベートの内面の変化に合わせて登場する重要なシーンが多いので、美味しい役どころだと思います。

今まで演じてきた役と感触は違いますか。

トートは抽象的で、“死”という概念は演じたことがないので、比べるのはなかなか難しいですね(笑)。モーツァルトのように実在の人物であればわかりやすいのですが、トートに関しては、正解を知っている方はいないわけで、逆を言えば、ご覧になる人によって見方も違うし、意味も変わってくる、お客様のイメージが無限に広がるキャラクターだと思いますし、お芝居にもたくさんの選択肢が生まれると思っています。

僕の役者人生にとっての最終目標だと思っていた

トートは古川さんにとって特別な役だそうですね。

僕の役者人生にとっての最終目標だと思っていました。なので今作では、お客様にとっても、自分にとっても、絶対に満足できる役にしたいです。それでも、トートを自分の役にすることができたら、そこからまた新たな変化を目指して、挑戦すべき役を見つけようとすると思いますけれど(笑)。

(笑)。具体的にどのように役づくりをされるのでしょうか。

まずは、いろいろな登場人物の気持ちを理解しながら、エリザベートから生み出されたキャラクターであることを意識して、稽古に挑もうと思います。ただ未知の領域なので、演出の小池修一郎先生をはじめ、皆さま方の話を聞きながら柔軟に役づくりをしていきたいです。

主人公のエリザベートとの関係で大切にしたいことはありますか。

エリザベートとトートの間に流れる“愛”が今作では重要になりますが、彼女がどんな安らぎを求めているのか、あるいは自由を求めているのか、そのときにエリザベートが何を感じていているのかを深く理解したいと思います。

では、エリザベートを演じるダブルキャストの花總まりさんや愛希れいかさんとどのように接していきますか。

僕はどの現場でも、ダブル、トリプルキャストのどなたでも、自分の気持ちを変えずに接していこうとしています。気をつけているのは、キャストによって違うアプローチを取らないことです。「この人ならこういうふうに接していこう」という考えはしないようにしています。

それでは『エリザベート』で古川さんはどんな表現をしていきたいですか。

エリザベートにしっかり寄り添って、“死”を通して強く生きる女性の姿を、より魅力的に引き出せるようにしたいです。

ダークな曲の中に美しい旋律がある

これまで歌ってきたナンバーと違う点はありますか。

ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんの曲は、『モーツァルト!』、『マリー・アントワネット』でも歌わせていただきましたが、どちらかというと、今作の曲調は『マリー・アントワネット』に似ていると思います。もちろん、作品が違うので異なる部分もあります。『マリー・アントワネット』で演じたフェルセン伯爵は低音を響かせて、感情を全面に押し出そうとしますが、トートは、低音を響かせるところは似ていますが、感情をあまり表に出す役ではないので、表情を変えずに淡々と低音から高音まで表現しなければいけないと感じています。今作では、ダークな曲の中に美しい旋律があるところに注目して欲しいです。

古川さんは様々な役を経験されていますが、“古川さん流”の役づくりはありますか。

演じている役の気持ちがどうお客様に伝わるのかに注意を払っています。そのために、自分を俯瞰して、まず脚本の内容を伝えるのが役目だと思いながら役づくりを始めます。僕は作詞作曲もしているのですが、役づくりも歌詞の書き方と似ている部分があって、いつも自分の意図した想いを伝えることを念頭に置いています。いろいろな解釈があるのはもちろんですが、自分の思っていることを明確に相手に届けることを一番に心がけています。

もっと気持ちの良い声を聞かせてくれ

古川さんの役者人生を変えた、ミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんと改めてタッグを組むことはいかがですか。

どんなときでも現場に来てくださって、僕らの芝居を丁寧に見てくださるので、舞台への“愛”がある方たちだと思っています。本番を迎えてからも変更点を指示してくださるほど、作品の完成度を追求していらっしゃいます。『エリザベート』の日本版は1,200回以上もの公演を積み重ねてきたのに、まだ飽くなき変化を求めている。プロフェッショナルな方たちだと尊敬しています。『マリー・アントワネット』のときもおふたりとも日本にいらっしゃって、リーヴァイさんからは歌のアドバイスを直接していただいたり、僕の歌い方の変化を感じ取って褒めてくださることもありました。おふたりに満足してもらえるトートを表現できれば嬉しいです。とはいえ、彼らが描いているトートは遥か高みにあると思うので、理想に近づけるように努力していきたいです。

『マリー・アントワネット』や『モーツァルト!』などではどんなアドバイスがありましたか。

僕の声を楽器に例えながら「もっと気持ちの良い声を聴かせてくれ」とおっしゃっていました。つまり、声の音色の質を良くして、音圧を高くして、声の種類を増やして欲しいということだと思いました。

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