プレイバック・平成アニメの31年  vol. 5

Column

平成の終わりにオススメしたい“妹萌え”アニメ3選。妹を愛でる禁断のジャンルの起こりと、それに続いた名作たち

平成の終わりにオススメしたい“妹萌え”アニメ3選。妹を愛でる禁断のジャンルの起こりと、それに続いた名作たち

平成の時代は、様々なジャンルのアニメ作品が生まれたが、今回あえて注目したいのが“妹萌え”だ。中でも『シスター・プリンセス』(以下、『シスプリ』)がもたらした“妹がヒロイン”という設定が与えた功績は特筆に値する。現に『シスプリ』放送以降、作品をオマージュしたネタが他のアニメでも多数登場するなど、影響は計り知れない。

そこで筆者が妹萌えに一石を投じたと感じる『シスプリ』の魅力や、それ以降の妹作品『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『干物妹!うまるちゃん』についても紹介していきたいと思う。

文 / 古瀬敏之

今なお続くオマージュと“妹萌え”の原点…『シスター・プリンセス』(2001)

TVアニメ『シスター・プリンセス』は主人公の海神航(CV:野島健児)に突然12人の妹ができる。というかなりぶっ飛んだ設定からスタートする。もともとは電撃G’sマガジンの誌上参加企画から作品は始まったのだったが、人気が高まり2001年にアニメが放送されると、一躍世の「お兄ちゃん」達を虜にした。

そもそも『シスプリ』が登場する以前の妹とは、あくまで物語のいち登場人物に過ぎず、血縁関係での恋愛という倫理観に反するため、ヒロインにはなり得なかった。そういった意味では、平成の時代になり、表現の自由の名のもと、文字通り自由な作品を作ることができたのも「妹がヒロイン」という設定にとって追い風になったように思う。

まずズルいのが、作品に幼馴染、後輩、先輩的なキャラは一切登場せず、ヒロインは全員妹のみという所だ。しかも登場する妹たちは年齢層も豊富、高校1年生の兄に対し、小学校低中学年から中学高学年までおり、見た目も子供~大人びた妹の姿を網羅している。また、「お兄ちゃん」「兄ちゃま」「おにいたま」「お兄様」など、妹ごとに兄の呼び名が異なり、思い思いの形で兄を慕ってくれる。

ただキャラが多いだけではなく、1人1人の妹の特技、趣味、性格、持ち味が絶妙に活かされており、典型的な美少女ゲーム、2次元の女の子に抵抗がないという人なら絶対に1人のキャラは好きになってしまうという、アニメ界の妹ホイホイみたいな作品なのだ。

しかも誰を好きになっても全員妹なので、『シスプリ』という作品が好きになってからというもの、長年“妹萌え”という業を背負ったお兄ちゃん達が続出したことは言うまでもない。

そんな魅力的な妹たちの中で、私が特にお気に入りの妹が衛(CV:小林由美子)だ。スポーツ万能のボーイッシュな子で、一人称は「ボク」。「あにぃ」と主人公を慕ってくれるのだが、年頃の女の子としては珍しくあまり着飾らず、ましてや「ボク、妹じゃなくて弟として生まれたかった、だって男同士だったらずっとあにぃと遊んでいられるもん!」と発言するなど、自身の女性的な健康的魅力に気づいていない感じが初々しくて可愛らしい。

そんな妹が「ボクにこんな女の子らしい服装似合わないよ……。」と照れる姿は当時の私の心にどストライクに突き刺さった。私は若くして妹萌え+ギャップ萌えという業を背負うことになるのだが、それはまた別のお話……。

と、このように、当時のお兄ちゃんたちの心を鷲掴みにした『シスプリ』。当時のアニメ業界では妹ネタを扱うと必ず『シスプリ』ネタが使われるほどだったし、特に衝撃的だったのが、2003年にアニメ化した『住めば都のコスモス荘』の第8話ではまるまる妹ネタで1話を消化し、シスプリのキャラがプレイ画面越しとはいえ登場するなど力の入れようが半端ではなかった。

また、最近では2018年に放送された『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』第1話にて冒頭でガッツリ妹たちが全員登場! しかもボイス付きという『シスプリ』ファンには号泣とか感動どころの騒ぎじゃない演出が施されるなど『シスプリ』は確実に“妹萌え”に大きな影響を与えた作品といえるのである。

受け継がれる妹萌えの遺伝子、画面にうっすら映り込むあのパッケージは…『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2010)

2010年10月からTVアニメが開始された『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(以下、『俺妹』)。萌え系作品にしては珍しく、現代のオタク文化や、それに対する偏見や社会問題にも触れているのが特徴だ。

普通の高校生高坂京介(CV:中村悠一)は、スポーツ万能で雑誌モデルをしている中学生の妹・桐乃(CV:竹達彩奈)とは幼い頃は仲が良かったが、今ではまともに挨拶も交わさない険悪な関係に。そんなある日、京介は玄関で桐乃とぶつかった際、魔法少女アニメのDVDケースが落ちているのを発見する。しかも、その中にはアダルトゲームが。持ち主が桐乃であることを確信した京介は、DVDを桐乃に返すが、桐乃から「人生相談がある」と言われ萌えアニメ、美少女ゲーム、特に妹萌えの作品が好きであることをカミングアウトされる。

という序盤の話があるが、桐乃から「人生相談がある」と言われ隠し扉を開けた時にうっすら最初に映り込むゲームのパッケージも『シスプリ』だったりする。また、桐乃が「キャラのタイプごとにお兄ちゃん、アニキ、にぃに、兄ちゃま、とか特別な呼び方で私を慕ってくれるのね。それがグッとくるんだぁ」と言うシーンがあるが、これも『シスプリ』のオマージュだ。

『シスプリ』が12人の妹に強烈な個性を持たせてヒロインとしての立場を与えているとしたら、『俺妹』は妹1人に焦点を当て、妹とその周りの仲間たちとの触れ合いの中で移り変わる心情の変化を描いている。

妹の桐乃は雑誌モデルに学業、スポーツ、文筆業にと各方面で非凡な才能を発揮しつつも、萌えアニメや男性向け美少女ゲームにも全力で情熱を注ぐ隠れオタク。兄妹仲は良くなく、桐乃の勝気な性格が災いして基本的にツンデレ。それゆえ、時より見せる嬉しそうな顔や、照れくさそうにする表情は見ていて本当に可愛らしい。

私が特に本作のエピソードでお気に入りなのが、アニメ第2期(2013)の第5話と第6話だ。桐乃に「彼氏の振りをして欲しい」と言われ、承諾した京介が成り行きでデートをし、そこで出会った桐乃の友人に「彼氏(京介)彼女(桐乃)のどこが好き?」と問われ、お互いを本音で褒め合うさまは聞いていて本当にむずがゆくなる。

しかし、その後2人は喧嘩をしてしまい、桐乃が本当の彼氏を連れてきて嫉妬した京介は、「お前より俺の方が桐乃を大切にする、絶対だ! だからお前に桐乃はやらん!」と桐乃の彼氏に本音をぶちまける。対する桐乃も「あんただって他の女の子とイチャついている癖に! 文句あるに決まってるでしょ!」と反論。この兄妹のブラコン、シスコンっぷりにはニヤニヤが止まらなかった。

アニメの『シスプリ』では妹との血縁関係は特に明言されていなかったが、原作がライトノベルで血縁関係の妹とここまでシスコン、ブラコンな展開を見せる作品もなかなかに珍しい。

グータラな妹としっかり者の兄の共同生活、そしてメインキャラは全員兄妹!?『干物妹!うまるちゃん』(2015)

2015年よりTVアニメが放送された『干物妹!うまるちゃん』。『俺妹』が妹1人に焦点を当てているとしたら、本作はメインキャラのほとんどに兄妹がおり、それぞれの兄妹同士の繋がりや、友情を描いたドタバタコメディ。

『俺妹』の桐乃はオタクという素を隠してモデルに学業、スポーツ、文筆業にと各方面で非凡な才能を発揮していたが、『干物妹!うまるちゃん』のうまる(CV:田中あいみ)は外では容姿端麗かつ品行方正、成績優秀・スポーツ万能で教師からも太鼓判を押される評判の女子高生。しかし、家に帰った途端2等身キャラにデフォルメ化され、夜更かし・偏食の不摂生かつグータラな生活を好む「干物妹(ひもうと)」になってしまうという、桐乃よりもさらにオンオフの激しいキャラだ。

また、しっかり者の兄が、グータラな妹うまるに注意することはあっても兄妹仲は非常に良好である点も異なる。

ちなみに、うまるの兄であるタイヘイの声を演じるのはTVアニメ『シスプリ』で兄を演じた野島健児というのも見逃せない。基本的に片付けもせず、グータラ部屋でコーラやポテチを貪りながら、漫画やゲームを楽しむうまるの世話をするめちゃくちゃいいお兄ちゃんなのである。

そんなタイヘイは朝から晩まで仕事をし、帰宅してからうまるの世話をすることになるのだが、元々世話焼きな性格なため、やることが無いと老け込んでしまう(第2期2話)ので、グータラな妹と働き者の兄でバランスが取れていて非常に面白い関係性だ。

お話としては、うまるとその友人・海老名、切絵、シルフィンの友情話も捨てがたいのだが、やはりうまると兄タイヘイの兄妹のやり取りが個人的には好きだ。特に、アニメ第1期の7話でタイヘイが誤ってうまるの所持するフィギュアの箱を捨ててしまうのだが、(演技で)悲しみを訴えるうまるの姿にショックを覚えたタイヘイが、フィギュアの代わりに日本人形を買ってくるという話は秀逸。タイヘイが「フィギュアがどこに売っているかわからない」という理由で日本人形を買ってくるというのも面白いが、うまるも夜に目が覚めてタイヘイが家にいないことに気づき、言い過ぎてしまったことと、夜に1人でいることの寂しさから目に涙を浮かべ、帰宅したタイヘイの顔にダイブする姿は、お互いを大切に思っている姿を表しているようでほっこりする。

また、アニメ第2期(2017)の9話でタイヘイとうまるがカメラでお互いの姿を撮るお話でも微笑ましい兄妹の掛け合いを見ることができるのだが、ぼんば(CV:安元洋貴)の「カメラはあった方がいいぜ、たぬきち(うまる)だってすぐ大きくなるし、ずっと一緒にいるわけじゃないだろ」という何気ない言葉が胸に響いた。

普通に仲のいい兄妹だからこそ、いつかは訪れる別れの時のために思い出を残すという行為に言葉では表せない家族の愛を感じたのだ。

平成の時代に、妹という存在は形を変え、設定を変え、私たちを楽しませてくれた。他にもたくさんの妹萌え作品が登場したが、これからはどんな妹作品が作られるのだろうか? 新たな作品や妹の可愛らしさに期待したい。

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