モリコメンド 一本釣り  vol. 115

Column

ハンブレッダーズ 4人が全身全霊で放つ、“生きること”に直結した歌とライブ感の魅力

ハンブレッダーズ 4人が全身全霊で放つ、“生きること”に直結した歌とライブ感の魅力

2019年3月30日、ハンブレッダーズの初めての全国ワンマンツアー「“Cagayake!BOYZ”ワンマンツアー」の初日を東京・渋谷CLUB QUATTORO公演で観た。このライブは東京での初ワンマン”でもあったのだが、チケットは完全にソールドアウトで、会場は超満員。観客は(筆者の目測ですが)10代後半から20代前半が中心で、開演前からライブに対する期待が破裂しそうなほどの膨らんでいる。“東京・初ワンマン”という特別なライブであることを差し引いても、このバンドが強烈に求められていることがはっきりと感じられた。

そして肝心のライブだが、お世辞でも何でもなく、掛け値なしに素晴らしかった。性急に突っ走るビートとガツーン!と鳴らされるギターを軸にしたロックンロールが中心だが——かつての“青春パンク”とつながっているような——ファンキーなリズムを取り入れたダンスチューンからフォーキーなナンバーまで音楽性の幅は意外と広い。その真ん中にあるのは、ムツムロアキラ(Vo, G)の歌だ。「弱者の為の騒音を」という楽曲からもわかるように、“ロックンロールは弱者のためにある”というのが彼らの基本的なスタンス(たぶん)。自分自身の弱さ、葛藤、痛み、苦しみ、切なさ(だけじゃなく、もちろん楽しさや興奮も)を生々しくぶちまける歌に呼応するように、ライブが進むにつれてオーディエンスの合唱の声はどんどん大きくなっていく。彼らが放つ音楽を介して、バンドと観客が強く強くつながっていく——この剥き出しのコミュニケーションこそが、ハンブレッダーズの核なのだ。「みんなが家で聴いてる歌をいっぱい鳴らすから、楽しんで帰ってくれ」とか「ここにどんな人が来てるのか知らないし、知らないままでいいと思ってます」「でも、アルバムをリリースして、たくさんの人が聴いてくれて。日々、救われてます」といったムツムロのあまりにも率直なMCにもグッと来てしまった。

ハンブレッダーズは2009年、高校の文化祭に出演するためにムツムロを中心に結成された。大学進学後も活動を続け、幾度かのメンバーチェンジがあり、2016年の春にムツムロ、吉野エクスプロージョン(G, Cho)、木島(Dr)、でらし(B, Cho)という現在のラインナップが揃った。ここからバンドの活動は一気に加速。2016年8月には現体制初のシングル「フェイクファー/コントレイルは空に溶けて」、翌2017年2月に2ndシングル「スクールマジシャンガール/既読無視殺人未遂」をライブ会場限定でリリース。同年8月にはオーディション企画「出れんの!? サマソニ!? 2017」を勝ち抜き、見事「SUMMER SONIC 2017」への出演を果たした。そして2018年1月17日に1stアルバム『純異性交遊』を発表し、3月にはバンドにとって初となるワンマンライブ「ライフイズユースフル」を開催したというのがここまでのキャリアだ。

思春期特有の、様々な感情がもつれ合う状態。自己嫌悪とどこかにあるはずの希望が混ざり合うような気分をハンブレッダーズは、幅広い層のリスナーが共感できる音楽として提示する。そんなハンブレッダーズの音楽性が明確に示されたのが、2018年11月にリリースされた2ndアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』だ。“イマジナリー(空想)だけどノンフィクション(虚構じゃない)”をテーマにした本作は、自分自身とストラグルし続け、そのなかで生まれる葛藤や切なさ、“でも、必ず前に進めるはずだ”というポジティブな感情をたっぷりと含んだロックンロール・アルバムに仕上がっている。

まず紹介したいのは、前述した「弱者の為の騒音を」だ。ジャキーン!ドカーン!と鳴らされるギター、つんのめるような勢いで走るビート、切なさと激しさを同時に放つメロディ、そして、“弱者の為の騒音を/頭の悪いギターで鳴らしてやるよ”という必殺のフレーズがひとつになったこの曲は、ハンブレッダーズの姿勢をダイレクトに直結している。

「CRYING BABY」は、このバンドのポップセンスが感じられる楽曲だ。この原稿の冒頭で紹介したワンマンライブで、「人に優しくするのは上手でも、自分に優しくするのが下手な人のために作った曲」(ムツムロ)と紹介されたこの曲の真ん中にあるのは、孤独のなかに埋もれている人たちに対する真摯なエール。そこに洗練されたコード進行、シティポップ的なアレンジを施すことで、多くの人に届く歌に結びつけているのだ。さらにライブの人気曲「口笛を吹くように」「RADIO GIRL」も収録。メンバーが敬愛するスピッツのディレクター竹内 修氏によるライブ感溢れるサウンド・ディレクションも、このバンドの生々しい魅力をしっかりと引き出している。

2019年春以降も怒涛のライブ活動を展開。8月には渋谷、名古屋、梅田(大阪)のCLUB QUATTOROで“夏の対バンツアー”も決定している。ハンブレッダーズの真骨頂はやはりライブ。4人が全身全霊で放つ、“生きること”に直結した歌をライブハウスでぜひ体感してほしいと思う。

文 / 森朋之

その他のハンブレッダーズの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
http://humbreaders.com

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