“平成”を駆け抜けた音楽たちのちょっとイイ話  vol. 2

Column

平成の頃、僕はインタビューをしていた

平成の頃、僕はインタビューをしていた

平成を振り返り、「いったい君は、この30年、何をしてたんだい?」と問われたら、「インタビューしてました」と答えたい。仕事の役得で、なかなか会えない人にも会うことができた。(昭和の時代も若干含まれるが)服部良一さんや植木等さん、筒美京平さんといった、超レジェンドの方々にもお目にかかれた。

ちなみに僕は、筒美京平さんに会った際、「ところで先生、もし色紙を出されて“売れ線”という線をマジックで書いて欲しいと言われたら、どう書きますか?」などという、失礼千万な質問をした覚えがある。しかし先生は、いやな顔せず、「そうねぇ」と一瞬考え、答えてくれた(その答自体は、勿体ないのでここには書かない)。

インタビューする時に大事なのは、事前の準備(下調べなど)と出たとこ勝負(クソ度胸が肝心)である。このふたつは矛盾するようだが、まさにそうとしか言えない。初対面の場合、まずは相手の出方というか、この人は、どういうタイプの人間なのかを探る。いきなり友達っぽくなれれば楽だが、危険でもある。のちのち畏まった質問が、しづらくなる。程良い距離感。言葉じゃ簡単だが、そう、それが決め手である。

初対面の印象が悪い方が、のちのち長いお付き合いになったりする。この話は既に27回くらい書いてるが、小田和正さんに初めてお目にかかれた時は、開口一番、「曲のことなら、説明することないよ」と言われた。(それを訊くのが音楽インタビューなのにぃ〜)。このカッコ内の言葉は、その瞬間の僕の、悲痛な心の叫びを再現している。のちに判明したが、お座なりじゃなく、本当に訊きたいことをぶつければ、実に丁寧に答えてくれる人だった。

ユーミンが1枚のアルバムで数十の紙媒体の取材を受けていた頃、彼女がインタビュアーには“松・竹・梅”があると発言したことがあった。もちろんこれ、あの方ならではのユーモアだろうが、そんなこと言われると、気になって仕方なかった。その頃、よく彼女を取材してたからだ。いったい僕は、どのランクなんだろう…。“お重からハミ出すほど”であることは望まないものの、せめて白いご飯が見えない程度の[竹]であって欲しい。そう願ったものだ(あー、なんか鰻が食べたくなってきた)。

会うなり「死んだ兄貴にソックリだ」と言われた時は驚いた。数々の名作で知られる織田哲郎さんにインタビューした時である。そういえば、「いつまでも変わらぬ愛を」は、その亡くなったお兄様に向けて作られたものだといったエピソードを、どこかで読んだ記憶がある。

織田さんは理知的なヒトで、取材の出だしこそ驚いたが、実りある取材となった。

初対面は初対面でも特殊な例は、大瀧詠一さんの場合だ。僕はあのヒトがやってた「ゴーゴー・ナイアガラ」というラジオ番組のヘヴィなリスナーだった。番組宛てに、ハガキをたくさん出していた。「君の名前はみたことあるなぁ」。大瀧さんはそう言った。嬉しかった。しかし、彼がぽろっという冗談が、好事家ならではの深みのあるもので、理解出来ないことがあった。

インタビューというのは相手と正面を向いてやるものだけど、それを拒否したヒトがいた。玉置浩二さん。面と向かって話すのは恥ずかしいなぁ、と、彼が提案したのはお店のカウンターのように横並びの取材だ。場所は大橋のレコーディング・スタジオの地階だった。ミキシングコンソールという、スタジオの中が見渡せて、音の調整をいろいろする場所があるのだが、その台の前に並び、無人のスタジオをそれぞれ眺めつつ、約1時間、話を聞いた。相手の目を見ないで会話するというのは勝手が違うのであり、正直、やりづらかったが、僕も数十年この仕事しているが、こんなオリジナリティ溢れる取材を提案したのは彼だけだった。

井上陽水さんに「ところで今度のアルバムなんですけど…」と切り出すと、「オヌキさん、ズルい」と言われたこともある。「まずは“最近こんな面白いことがありました”とか、いろいろ話してくれないと…」。彼はそう要望したのだ。咄嗟になにか、アドリブで話したと思う。取材場所は新宿の高層ホテルだったけど、帰り道、果たして僕は、ズルかったのだろうかと考えた。でも陽水さんが仰りたかったのは、ヒトとヒトが久しぶりに会ったなら、そりゃ世間話もしてこそ人間として健康的なのではなかろうか、ということだったのだろう。それ以降の陽水さんの取材は、ちゃんと“まくら”を用意するよう心掛けた。

そんなわけで、平成が終わる。取材に遅れる人も、結局、現われなかった人もいた。忘れてて現われなかった人も、そもそも来る気がなかった人もいた。そのまま会わずじまいの人も、スケジュールが出し直され、会えた人もいた。すべてはご縁。これからも、もし僕がインタビュアーとして現われたなら、どうかアーティストの皆様、他では喋ってないとっておきの話、ぜひお願いいたします!

文 / 小貫信昭

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