冒険Bリーグ  vol. 21

Column

B1最強の「泥棒集団」を牽引。秋田の成長株、中山拓哉のユニークなパーソナリティ

B1最強の「泥棒集団」を牽引。秋田の成長株、中山拓哉のユニークなパーソナリティ

2018-19シーズンの開幕と共に始まった『冒険Bリーグ』だが、今回の第21回でB1全クラブの選手が登場したことになる。今回紹介する中山拓哉はプロ3シーズン目の25歳。若いチームを引っ張る期待の成長株だ。一つの「冒険」の締めくくりとして、彼の魅力とユニークさに迫りたい。

B1最強の「泥棒集団」は、秋田ノーザンハピネッツ(以下、秋田)だ。秋田が2018-19シーズンに記録した1試合平均のスティール数は8.2個。ハードな守備を誇り、B1で最高勝率を記録した千葉ジェッツを上回っている。中山はそんなチームの先頭に立ち、平均2.2スティールでB1のスティール王に輝いた。

秋田は前から積極的に踏み込み、ボールを奪い切る守備戦術を取っている。加えて中山は初速、一歩目の出足が素晴らしい。数々の要因がこの記録の背景にはある。

もちろん、それ以上の理由もある。本人にスティールの秘訣を聞くと、こう説明してくれた。
「自分のマークマンとパスを出す人が、どこを狙っているかを見ています。スペーシングでどこを狙いたいかは限られてきていて、インサイドに入れるとき、外に出すときの身体の向きはしっかり見ますね」

しかしさらに追及すると、若き怪盗は超能力の存在について口を割った。
「何か『取れる!』って思います。『あっ、来る!』というのを感じます」

中山はスティール以外にも多彩な武器を持つ選手だ。彼が今季の秋田で主に任されているポジションはポイントガード(PG)。技術と判断力の高い選手が務める「司令塔」のポジションだ。

ただし彼はPGのキャリアが浅い。東海大時代はチームメイトに伊藤達哉(京都ハンナリーズ)、寺園脩斗(三遠ネオフェニックス)と後にB1で活躍するライバルがいる巡り合わせもあった。そのため当時の中山はシューティングガードやスモールフォワードで出場していた。

昨季のB2でもPGは経験せず、パワーフォワードで出場して2m級のビッグマンとマッチアップしたことさえある。そんなキャリアからも分かるとおり、プレーの「幅」に関してはB1の日本人プレイヤーでもトップクラスといえるだろう。

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182センチとそこまで大柄ではないが、プロ入り後に一回り大きくなって現在のウェイトは85キロ超。当たりの強さも兼ね備えている。1試合の平均リバウンド4.8個は、アウトサイドの選手として異例の多さだ。

攻撃における最大の武器はパワフルで鋭いドライブ。中山が「どこのチームも僕のアタックを警戒している」と口にするように、相手の守備はゴール下に“収縮”してドライブのコースを消そうとする。相手の形を見てパスをさばく技術は向上しているように見えるが、彼自身はそこに課題を感じている。

「もっともっと、やっていかなければダメです。点を取るときとアシストするときの駆け引きが上手くならないといけない。ターンオーバーも多いですし、本当にいろんなことを考えさせられた1年でしたね」

チームにとっても楽なシーズンではなかった。千葉ジェッツ、栃木ブレックス、アルバルク東京と強烈な顔ぶれがそろう東地区の中で、秋田は三強から1勝も挙げられなかった。ただ辛うじてB1残留は達成している。

「1年目の特別指定のときに降格を経験しています。今年まず落ちなかった、残れたことは秋田にとっても大きな一歩だと思います。ただ、やらなきゃいけないという思いが強すぎて、空回してしまったところがあったかもしれません」

とはいえB1経験と、残留への苦闘はきっと彼の糧になる。
「日本代表の選手たちとマッチアップして、いろんなものを吸収できました。チームを上手くまとめながら味を出している選手がB1には多い。僕はまだチームをまとめられていない。そういうところは勉強になった。昨季は今千葉にいる田口成浩選手が中心でしたが、今年は自分がやらなければいけない。そういう自覚、責任感は1年ですごく成長できた」

間違いなく言えることは、ペップHCは中山の才能を見込んで、彼を引き上げようとしているということだ。今季の出場時間は1試合平均29.9分で、日本人選手ではダントツの長さだった。

中山はちょっとうれしそうに、指揮官との関係を明かしてくれた。
「ペップと2年間一緒にやってきて、いろんなことを言われます。自分がすごく呼ばれるんです。僕に対してじゃないことも僕に言ってきて『伝えろ』と言われたり(笑)『俺を呼ぶ必要あるかな?』とも思うんですけれど、信頼されているのかなと思います」

取材・文 / 大島和人 写真提供 / B.LEAGUE

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著者プロフィール:大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。大学在学中にテレビ局の海外スポーツのリサーチャーとして報道の現場に足を踏み入れ、アメリカの四大スポーツに接していた。損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年から「球技ライター」として取材活動を開始。バスケの取材は2014年からと新参だが、試合はもちろんリーグの運営、クラブ経営といったディープな取材から、ファン目線のライトなネタまで、幅広い取材活動を行っている。

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