SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes『歌詞を巡る旅』  vol. 11

Interview

シド Mini Album『いちばん好きな場所』~ライブハウスで盛り上がる曲を! 勢いのままに制作した初のミニアルバム~

シド Mini Album『いちばん好きな場所』~ライブハウスで盛り上がる曲を! 勢いのままに制作した初のミニアルバム~

Self Liner Notes特集「歌詞を巡る旅」。この企画で最後に紹介する作品は『いちばん好きな場所』です。シド初のミニアルバムを作ったのは、まず前作の『NOMAD』を作ったときに、もっと曲を入れたいね、という想いが俺らの中にはあって。それぐらい、溢れ出るものがたくさんあったんです。ただ、あのアルバムは収録された10曲で完結してるので、そこに入れるわけにもいかないよねということになって……。その頃に、ちょうどライブハウスツアー“SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR「いちばん好きな場所 2018」”が決まったんですよ。ライブハウスは、かなり前から押さえないと取れないから、とりあえず各会場に問い合わせしてもらって。それが取れたよっていうことだったので、じゃあどういうツアーにしようかという話になったときに「“いちばん好きな場所”のツアーにしよう」という流れになったんですね。それで、ツアーに合わせてミニアルバムを出しちゃおうか、と。そういう勢いのまま作った作品が『いちばん好きな場所』です。リリース予定というのはメンバー、レーベル、事務所など、みんなで最初に決めた軸というものがあるんですけど、本来このタイミングで作品をリリースする予定はなくて。でも「いましかないな」と、メンバーのほうから作品を出したいと提案しました。軸になかったことをいきなりやるのは、シドではあまりなかったから、作る前に決めてたコンセプトもないんですよ。最初はミニアルバムを作ろうっていうことだけで、あとからライブで盛り上がる曲を作ろうと決めていきました。ミニアルバムという形態にしたのは、フルアルバムの『NOMAD』を出してからそんなに時間が経っていないっていうのが一番の理由かな。あとは、シドでミニアルバムを作るのはこれが初めてだったので、やったことがないことをやることでなにか新しく生まれるものがあるのかなという期待感も込めてそうしました。ジャケットのアートワークは、デザイナーさんがアイデアを持ってきてくれました。ライブハウスツアーが決まってたので、ライブハウスを連想させるようなものなんだけどシドらしいスタイリッシュさはなくさずにということで、ああいうものになりました。

構成・文 / 東條祥恵
撮影 / 今元秀明、緒車寿一

もっとちゃんとみんなに伝えておきたいなっていう気持ちがある

マオ from SID エンタメステーションインタビュー

01. VOICE
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

歌詞を書く前から、ライブハウスツアーでSEが流れたあと、1曲目にやるというのが俺のなかで決まっていた曲です。それであれば、いつもライブで1曲目、2曲目あたりを歌っているときに思ってる気持ちをそのまんま歌詞にしたらいいんじゃないか、と。そういうことを歌いたいなと思わせてくれる曲でした。この歌詞は、めちゃめちゃストレートに思ってることを書いてます。 “今こうして やっぱり 巡り会えた”というところに“やっぱり”と入れたのは、こういう気持ち、俺には強くあるんですよ。“奇跡的に 巡り会えた”ではなくて、目の前のファンを見ると「やっぱり俺たち、当たり前のように集まったよね」って、なぜか思うんです。もちろん奇跡だなとは思うんですよ。だけど、実際ライブ空間で一緒になると「だって、他にいないもんね。俺ら、お互いに」っていう感じがすごくするんです。俺自身、ステージに立つと普段よりも強気になるからこそ、こういうことが言えるんだろうし、歌えるんだと思います。サビの“ウォーオ〜”のコーラスはデモの段階から入ってましたね。ここでメンバーが歌えばお客さんも歌うだろうなというのが想像できたので、サビ頭には“声を聞かせてよ”と入れて。ここの歌詞はライブでしゃべってるのと同じ感覚なんです。「もっと声聞かせてよ!」「もっと!」「愛し合おうよ!」「こんなもんじゃねぇだろ!」って、いつも俺がライブ中に言ってるMCを歌詞にしただけ(笑)。俺はステージでも作品のなかでも、昔からあんまり「愛し合おうぜ!」とかは使わないタイプだったんですけど、最近はそこもどんどんストレートになってきちゃいましたね(笑)。もっとちゃんとみんなに伝えておきたいなっていう気持ちがあって。そう思うようになったのは、年齢と歴(キャリア)のせいなのかな? 普段の生活のなかでは言わないですからね。「愛し合おう」とか(笑)。普段言わないこともストレートに表現できるのは、音楽の力なんだと思います。

「Shinjiかっこいいな」ではなくて「シドってギターかっこいいよね」と思える場面がちゃんとあってほしい

02.  reverb
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

この歌詞は、ちょっと聴いてる人の想像、妄想をかきたてるようなものにしたいなというのが一番にありました。ストレートな曲だけでは面白くないなと思ったら、自然といつもの“俺”が出ちゃいました(笑)。でも意識的に入れたわけではないんですよ。ギターもそうなんだけど「曲がめちゃくちゃネットリしてるな〜」って思って。それなら歌詞もネットリ書こうと思ったら、ねちょねちょな感じになっちゃいました(笑)。1番の“歪んだ眉が ちょうどいい”というのは、俺の中では眉間にちょっとシワが寄ってるイメージですかね。で、2番はそれが“乱れた髪が もっといい”になる。“ちょうど”を“もっと”に変えることで、シーンが前に進んでる感じを出したかったんです。どんなシーンを書いているのかは、あえて説明はしないですけど、たぶん皆さんが想像しているシーンで間違いないと思います(笑)。Bメロの頭で“深く深く深く”と“甘く甘く甘く”と入れたあとに、それを“生かしてあげる”と“一緒にいこう”と歌う。ここは、ファンのみんなを引っ掛けたいなと思って入れたんです。案の定、まんまと引っ掛かってくれました(笑)。歌詞カードを見るまでは「なんて卑猥なこと歌ってるですか!」と言っていた人たちが「(歌詞カードを見たあとに)すみません、私が卑猥すぎました」って反省してて。みんな、可愛いんですよ(微笑)。ちゃんといい感じにこっちの狙いどおり引っ掛かってくれたので、めちゃくちゃよかったです(笑)。書き手として、こういうのは楽しいですね。「ここはこういうふうに書いたら絶対みんな引っ掛かるだろうな」とか想像しながら書いてますからね。そして、なんと言ってもこの曲は、ド頭からShinjiが思いっきり主役になって引っ張っていくんです。ステージではあそこをなくそうかっていう案も出たんですけど、「いやいや、ガッツリやろうよ!」ということで、ライブではShinjiがギターヒーローになってパフォーマンスしてました。最近そういうバンドを見なくなりましたけど、Shinjiにはギターヒーローとして存在していて欲しいんですよ。「Shinjiかっこいいな」ではなくて「シドってギターかっこいいよね」と思える場面がちゃんとあってほしい。これは、そういう1曲になりましたね。

このミニアルバムは全曲そうなんですけど、自分が思ったことを歌いたい、と。

マオ from SID エンタメステーションインタビュー

03. その未来へ
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

この歌詞のきっかけは、たまたま本屋さんで見かけた本の表紙に写ってた女の子の写真です。あとから読んだら、それは内戦から必死に逃げてきた女の子で。表紙の女の子はめちゃめちゃカメラ目線なんですけど、とても悲しい感じの目をしてて。でも、すっごく綺麗で強くて。とにかくその目に惹かれて、俺は「なんだこの感情は…」と思ったんですよ。そうしたら、そういう世界で起こっている内戦とかは教科書に書いてある程度なら知ってるけど、いまはどうなってるんだろうって、急にめちゃくちゃ気になり出して。それで、本をいっぱい買ったりネットでニュースを調べたりしているうちに、「歌いたいな」と思ったんですよね。このミニアルバムは全曲そうなんですけど、自分が思ったことを歌いたい、と。個人でいろいろ活動することもすごくいいことだとは思うんですけど、それよりも俺がいまやるべきことは“歌にすること”なんじゃないかなと思って。こういう世界があることを知るきっかけになったり、知ったあとにみんながどう思うかとか。そういうところまでを俺が歌でつなげられたらすごくいいなと思って、この歌詞を書きました。こういう動機で歌詞を書いたのは初めてですね。こういう歌詞を自分が書くとは思ってもいなかったんで驚きましたよ。正直、どこかで「俺は違うだろう」「キャラじゃないだろう」と思ってましたから。でも、俺と同じように考えている人は世の中にいっぱいいるから、それが逆にスイッチになったんですよ。この歌が少しでもそういうことを知るきっかけになればいいかなと思ったんです。そういうことを書きたいと思ったタイミングで、この楽曲があったのは縁ですよね。“生まれた場所だけ 囲う生き方 そろそろやめにしよう”というところは自分に言っているところもあるんですよ。いままでは自分の周り、自分に関わってる人たちが幸せになっていって、その輪がどんどん広がっていけばいいと思ってたんだけど「そうじゃないんだな、という気持ちに俺はなったよ」ということを書いています。2番のA、Bメロの部分は、人間ってなんでこうなるんだろうと思って書いた歌詞です。“汚した世界”というのは、大人たちがなんらかの理由で汚しちゃったわけだけど、汚しちゃったのにはいろんな理由があって。自分たちを守るためだったり、逆らえない誰かに言われてだったり……。それがぐっちゃぐちゃに絡まって汚れてしまった。なかには「こういうの、もう嫌だな」と感じて、絡まったものをほどこうとする人もたくさんいると思うんです。でもそこで、また誰かが私欲に負けちゃって、ぐちゃぐちゃぐちゃってなってしまう。そういうことを人間はずっと繰り返して生きてるんだなと感じて。ぐちゃぐちゃだから時間はかかるかもしれないけど、誰も私欲に負けないでいられたらそこで終わりがくるのに、なんで人間はそこで負けちゃうのかなというのが、俺が内戦のことを勉強して一番に思ったことでした。そして、それを簡単な言葉で歌詞にしました。内容がシビアでも、生々しい感じにはしたくなかったから、そこは他の曲以上に慎重に考えたところです。これを書いたことで、実際に活動をされている方々からも「この言葉、すごくいいです」、「みんなで聴いてます」というメッセージをいただいたりしたので、書いてよかったなと思っています。なので、この曲はそういう輪を広げるためにも、ずっと歌っていきたいですね。

昔だったら絶対言わないような言葉が自然と出ちゃってる自分たちが「うわっ、俺たち大人」って思って

04. ラバーソール
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

「ラバーソール」というタイトルにしたのは、中学のときにみんな履いていたことを思い出したからですね。俺が通っていた中学校ってパンクロックの文化がすごく強かったんですよ。だから、先輩の影響で制服着ててもみんな足元はラバーソールだったんです。校則でOKだったかどうかは置いといて(笑)、学ランにラバーソール、髪立ててというのがカッコいいとされていたんです。だから放課後誰かの家にみんなで集まったりすると、玄関がラバーソールだらけで、みんな行儀悪いからラバーソールがぐしゃぐしゃぐしゃ〜って散らかってた。それがぶわって思い浮かんだから「ラバーソール」にしたんです(笑)。ラバーソールはなぜか各々イメージカラーがあって。アイドルみたいにね(笑)。俺は白担当でした。この歌詞のベースになっているのは、中学校時代の友達としゃべってたときに思ったことです。共通のある友人が亡くなって。その後、友人が亡くなる不幸が続いたんですよ。そこで、中学の友達と話してるときに「昔はこうだったよね」って会話をしながら「なんか、生きなくちゃね。俺らも頑張って」って、昔だったら絶対言わないような言葉が自然と出ちゃってる自分たちが「うわっ、俺たち大人」って思って。そういうところから溢れ出た思いを書いたものです。だから、リアルなんですよ。“なんかこう 弾けるような 震えるような〜”っていう歌い出しの部分は、そういえば昔の俺ら、いっつもいっつも「なんかないっけ? 楽しいこと」って、そればっかり言ってたな。ある訳もないのに、みんなでずっとそういうものを探してたな、と思って。あの頃は“なあ おれたちずっと 適当だよな”って、勉強なんか適当でいいよねって言ってたのに、いまは頑張ってるやつもいれば飛んじゃったやつもいて。あいつのぶんまで生きなくちゃって柄にもなく思ってる。ここからは最近の俺たちになっていくんです。あの頃先生とかが「ひとつだけ頑張れ」ってよく言ってたけど、人生そんなに単純ではない、もっと深刻だってことは分かったよっていうことを後半では歌っていて。ひとつだけ頑張っても、それだけではダメな人もいるから。ひとつだけ頑張ることが向いてる人はいいけど、実際はそうじゃない人もたくさんいるからね。そう考えると、この曲は意外と大人の歌なんですよ。

メンバーとファンが一緒に作った、15周年の幸せな空気感をパッケージしたような作品にしたかった

05. いちばん好きな場所
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

俺たちはライブハウスが本当に好きだよねというところから始まったのが“いちばん好きな場所”のツアーだったんで、大好きなライブハウスのことをテーマに、俺たちがこれまで歩んできた道を歌詞にしました。“いくつもの奇跡を重ねて〜”の部分は、改めてシドの歴史、15年を振り返って思ったことです。メンバーと出会えたのもすっごい奇跡だし。出会って「こいつと一緒にやりたい」とお互いが思えたのも奇跡だし。いまの事務所に入ったのも奇跡だと思いますし。この文章がネットで公開されて誰かに届いて、初めてシドを知った人がいたら、それも奇跡だし。音楽をやっていると、そういうちっちゃなことがいっぱい重なっていくことが奇跡なんだと実感します。 “僕らは幸せだね”って言葉で終わるところは、ライブの最後とかで俺自身、もう力が抜けちゃってて、出てくるのは「幸せだね」っていう普通の言葉なんですよ(微笑)。「もっとすごいところまで行こうぜ!」って、最後から3番目の曲では言っていたくせに、最後は「幸せだね」って感じが多いんです。だから、こういう歌詞になりました。「いちばん好きな場所」のMVを、ファンのみんなを入れて作りたいと言い出したのは俺なんです。15年間バンドを続けられたのも、ファンの存在が絶対的に必要だったので、ファンのみんながいっぱい映っているものにしたかった。そこから監督さんといろいろ話して詰めていきました。MVの映像に関しては、この映像をMVで使いますとは言わないで、ファンのみんなに「シドの15周年に絡めてこの映像を使うかもしれないからコメント協力してもらえませんか?」とお願いして撮ってきてるんですよ。「(MVに使うことは)言わないで」っていうのは、俺からお願いしました。最初にバラしちゃうと、なんか企画っぽくなっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、本当のみんなの気持ちとか笑顔とかライブ直後の反応。それをそのまま映像に詰め込みたいなと思ったから。そうしたら、リアルな声がたくさんもらえたんで、あれは本当にやってよかったです。だから、映像の編集段階でも、監督さんは「メンバーをもっと出さないと」って言うんだけど俺は逆に「いやいや、ちょいちょい出てくるメンバーのカットはもっと減らしてファンを入れましょうよ」と提案しました。メンバーとファンが一緒に作った、15周年の幸せな空気感をパッケージしたような作品にしたかったんですよね。あのMVを公開した後のファンのリアクションは面白かったですよ(笑)。「あれ、これ自分なんだけど」とか「ここにあれが使われたの?」とか驚いてたんで、してやったりな感じがすごくありました(笑)。

次回の公開(最終回)は20195月中旬掲載予定です。


LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

ライブ情報

ID-S限定ツアー 2019

4月26日(金) Zepp Fukuoka
5月2日(木・休) Zepp Nagoya
5月9日(木) Zepp Osaka Bayside

SID collaboration TOUR 2019

6月17日(月) Zepp Tokyo
<Guest Artist> みやかわくん
6月20日(木) Zepp Nagoya
<Guest Artist> GRANRODEO
6月21日(金) Zepp Osaka Bayside
〈Guest Artist〉シド
6月27日(木) Zepp DiverCity TOKYO
<Guest Artist> BiSH

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを開催。9月からはLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”を全国31公演で展開。2019年、アジアツアーを経て、3月10日の横浜アリーナで15周年のグランドファイナルライブを無事に成功させた。そして4月19日からメンバーズクラブ会員限定ライブツアー“ID-S限定ツアー2019”がスタートしている。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

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