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櫻井圭登&村田 恒らが魅せる、浪漫活劇譚『艶漢』第三夜が上演中!

櫻井圭登&村田 恒らが魅せる、浪漫活劇譚『艶漢』第三夜が上演中!

4月20日(土)からシアターサンモールにて上演中の浪漫活劇譚『艶漢』第三夜。
浪漫活劇譚と銘打った『艶漢』は、2016年の初演、2017年の第二夜と続き、今作で3演目となり、上演されるたびに多くの演劇ファンの耳目を集めている。
舞台はノーフンがち(フンドシをはいていない)な柳腰の美少年で傘職人の吉原詩郎と、熱血正義感の巡査殿・山田光路郎、そして詩郎の兄貴分で無敵な色気を放つ吉原安里を軸にした、昭和の郷愁が漂う、笑いあり、サスペンスあり、涙ありのストーリーだ。
脚本・演出には初演から、ほさかよう(空想組曲)が手掛け、キャストは、吉原詩郎 役に櫻井圭登、山田光路郎 役に末原拓馬(おぼんろ)、吉原安里 役に三上 俊、佐倉春澄 役に村田 恒、テツ 役に福井将太、庵主 役に岩 義人、砂絵 役に岡田あがさ、早乙女水彦 役に堀越 涼(花組芝居)、東雲 役に八神 蓮と手練れの“役者”が集っている。
そんな舞台のゲネプロと初日前挨拶が行われた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 鏡田伸幸

胸を張って生きることのどこが悪い!

浪漫活劇譚『艷漢』は、“胸を張って生きることのどこが悪い!”とお尻を蹴り上げてくれるような痛快な舞台だ。生きることに絶望することも、諦める必要もないと教えてくれる。なぜなら、“吉原詩郎=櫻井圭登”が満面の笑みで「怖がることはない」と我々を抱きしめながら頭を優しく撫でてくれるのだから。それだけでノックアウトされてしまう

“エロス”と“タナトス”。今作はこのふたつの言葉をメルクマール(目標)としていると思う。常に表裏をなしているこの言葉は、どちらが少しも欠けては成立しないし、どちらが少しでも優位に立ってもいけない、絶妙なバランスで成り立っている世界。『艶漢』の魅力はそこにある。

ちなみに、広辞苑を引くと“エロス”とは、“生”を意味するが、言い換えれば“生きるパワー”ということでもあるだろう。哲学者プラトンは愛へのあこがれの源であるとし、精神分析学者のフロイトは生の本能とした。対して“タナトス”とは、“生”の対極にある“死”を意味するが、フロイトは死の欲動と表現した。

舞台は、“生”と“死”、“静”と“動”、“ロマンチシズム”と“リアリズム”、“デカダン”でありながら“堅実”、そんな二項対立を立体的にしていくことで作り上げられている。物語の中心となるのは、“外界”の街・幻灯町と“組”と言われる場所。登場人物は、普通の人間とそうでない超人的な人種の“覇人”。さらに“組”にも派閥があり、南部、北部といった区分けがされている。

今作では、傘職人の詩郎と警察官の山田光路郎(末原拓馬)が手を組んで幻灯町で起こるとある連続殺人事件を解決しようとする一方で、ある目的を持って“組”へと訪れた吉原安里(三上 俊)、その仲間であるテツ(福井将太)は南部の“覇人”として、北部の東雲(八神 蓮)と部下の佐倉春澄(村田 恒)らと争う設定。いわば二つの世界を股にかけたパラレルな話になっているのだが、様々な事件を経て、やがてひとつの話へと収束していく……。

今作の魅力は、脚本・演出のほさかよう(空想組曲)の美しい超絶技巧の演出にあるだろう。基本的に舞台セットは、どのシーンでも大きく変わらないのだが、何枚かの襖や、傘職人の詩郎をイメージしたカラフルな番傘を上手に操りながら、夢や現実の世界を行ったり来たりする。そのスピーディーでリズミカルな演出が見事だ。今作のインタビューで村田が「タクトを振って演出されました」と語っていたように、音楽的であるがゆえに、エロティックで幻想的で観客の想像力を掻き立てる演出になっている。そこから、本来重なり合わないだろう世界の事件が同時に起きたり、混じり合い、重なり合い、反駁し合う、まさに演劇でしか表現できない作品に仕立てあげた。

そして、この作品は、アンサンブルを含めカンパニーの力が存分に発揮された舞台だ。まさに、ほさかようを中心としたオーケストラのように、誰一人としても欠けてはならない、そんな緊張感に満ちている。早乙女水彦の堀越 涼はトリックスターといった趣の芝居で笑いが絶えないし、庵主の岩 義人は少しイタい人物を好演、テツの福井将太の義を重んじる芝居は観客の胸を熱くしてくれ、東雲の八神 蓮は冷徹で頭の切れる役をクールに演じきった。砂絵の岡田あがさは唯一の女性の登場人物でいろいろな世界の橋渡しをする重要な役割を果たしながら、母性さえ感じさせる芝居で縦横無尽の活躍ぶり。

その中でも、注目すべき役者をあげるとすれば、安里役の三上 俊、光路郎役の末原拓馬、春澄役の村田 恒、そして詩郎役の櫻井圭登だろう。三上は、狂気に満ちているけれど決して闇雲な演技ではなく、そこに至る過去があるから、そうなってしまったという必然性を感じさせる芝居をしていた。彼の真骨頂は、それらを担保にしながら、上半身をさらけ出し、自分の肉体だけで勝負する、役者・三上の身体に宿るむき出しの“役者魂”を炸裂させていたことだ。

光路郎役の末原も、三上と同じく浪漫活劇譚に関しては初演から出演しているので、キャラクターが板について芝居がブレない。真正直に生きる真面目な人間というキャラクターを熱演し、人間の根底にある美しさを表現していたと思う。彼の芝居には虚飾が一切ないのが魅力だ。春澄の村田は前作からの続投で、今作では、東雲という己の座長(上司)に忠誠を誓っているはずなのに、安里の登場で心境が激しく変わり、ハッとした瞬間に、東雲への殺意が目覚めたりと、演技のON/OFFの切り替えが巧みだった。

また、『艶漢』から初座長を務めた詩郎の櫻井の活きの良さにも感服してしまう。肌の露出が多いからというだけではなく、芝居から“エロス=生きるパワー”が溢れ出ている。つまり、彼はフィクショナルなはずのエロスの男・詩郎になりきって活き活きしているのだ。前述のインタビューで村田が「背中で見せてくれるから、自然とついていきたくなる」と語ったように、ここぞというところで舞台を引き締めてくれる役割も担い、『艶漢』を通して役者としての地位を確立していた。彼は、これからも果てなき役者道を歩いていくのだろう。歌舞伎的な拍子木を使った演出に合わせて見得を切るところも、座長としての風格が際立っていた。

詩郎と光路郎の友情VS安里と春澄の敵愾心。光路郎と春澄のそれぞれの上司に対する忠誠心のコントラスト。そして、詩郎がエロスの象徴であるとするなら、安里はタナトスの象徴である。それらが演劇的手法によって、詩郎と安里は互いに入れ違い、すれ違い、混じり合うことで、エロスの詩郎とタナトスの安里の役割が逆転する展開がスリリングで、舞台から片時も目を離すことができない。

“生きることは人間にとって最高の快楽である”、今作からはそんなメッセージすら感じ取れる。だからといって決して難解な物語ではなく、最高に「エンターテインメント」をしているところに本作の楽しさがある。何回も足を運んでも飽きることはない。カンパニーが発する“生へのエネルギー=エロス”を受け入れて、恥ずかしがらずに堂々と生きる気持ちにさせられる、生のエネルギーに満ちた稀有な舞台に立ち会うことができた。

やっぱり明日も生きてみようじゃないか。

第三夜ならではの舞台に

このゲネプロの前に、初日前挨拶が行われ、櫻井圭登、末原拓馬、三上 俊、村田 恒、福井将太、岩 義人、岡田あがさ、堀越 涼、八神 蓮が登壇した。

まず、岡田は「激しいアクションも注目ではありますが、その間に繰り広げられる人間ドラマも楽しんでください」と述べ、岩は「僕は原作にはいないオリジナルキャラクターなので、座組みのスパイスになれるように頑張りたいです」と語り、福井は「とても演劇的な作品になっています。何度観ていただいても楽しめますよ」と作品に太鼓判を押した。

村田は「第二夜に引き続きの参戦で、今作では東雲という兄貴が存在します。前作を超えた面白い作品にしたいです」と語り、堀越は「初演の時に出演しましたが、それ以来、久しぶりに稽古に入ると“『艶漢』はこんな世界だったな”と感慨深いです。千秋楽まで頑張っていきます」とコメントし、八神は「初めての出演になります。初演から積み上げてできあがった今作の役に立ちたいです」と意気込んだ。

三上は「初演から出演するメンバーと新たに加わったメンバーで過去最高の作品になっていると思います。僕の役は、これまでと比べて感情的に殺陣をしたり、見所がたくさんあると思います」と語り、末原は「初演は、2016年のシアターサンモールで、同じ劇場なので懐かしいですね。歌謡倶楽部バージョンの『艶漢』を含め、5作目になりますから、いろんな人と一緒に作り上げてきたと思うと嬉しいです。また新たなものを積み上げていきたいと思います」と述べ、最後に櫻井は「新キャラクターが登場し、カンパニーに新しい風を吹かせてもらったので、第三夜ならではの舞台になっていると思います。愛を込めて詩郎を演じていきます。ぜひ劇場に足を運んでください」とコメントし、初日前挨拶は終了した。

公演は4月20日から4月29日まで、シアターサンモールにて上演される。また、今作のDVDの発売が決定した。発売日までに、CLIE TOWNにて予約をすると、「千秋楽全景定点映像DVD(非売品)」がもれなくついてくる。さらに千秋楽後の4月29日(月・祝)の19時から、Rakuten TVにて今作のディレイ配信がされ、5月17日(金)からは、過去作の一挙配信も決定した。詳細は公式ホームページをチェックしよう。

CLIE-TOWN
Rakuten TV

浪漫活劇譚『艶漢』第三夜

2019年4月20日(土)〜4月29日(月・祝) シアターサンモール
原作:尚 月地
脚本・演出:ほさかよう(空想組曲)
企画・製作:CLIE
出演
吉原詩郎 役:櫻井圭登
山田光路郎 役:末原拓馬(おぼんろ)
吉原安里 役:三上 俊
佐倉春澄 役:村田 恒
テツ 役:福井将太
砂絵 役:岡田あがさ
早乙女水彦 役:堀越 涼(花組芝居)
東雲 役 八神 蓮

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@clie_seisaku)

©尚 月地/新書館
©尚 月地/幻灯署活劇支部

『艶漢』

著者:尚 月地 出版社:新書館