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“あなたのために”という想いが込められた、2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」第3弾が開幕

“あなたのために”という想いが込められた、2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」第3弾が開幕

2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」Episode 3『ROMEO – in the darkness -』が4月25日(木)からヒューリックホール東京にて上演中だ。
本作は、2.5次元に存在する芸能事務所「ツキノ芸能プロダクション」に所属するSolidS(ソリッズ)とQUELL(クヴェル)という2つのユニットの物語がメインに綴られる「SQ(スケア)」シリーズの舞台版で、2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」(通称:スケステ)と銘打った第3弾にあたる。『ツキステ。』においても手腕を発揮するふじわら(ムービック)が原作・脚本を手がけ、原作楽曲提供には滝沢 章、はまたけし、キャラクター原案には沙月ゆう、脚色・演出・映像にはヨリコジュンと一流のクリエイターが揃っている。
神田の古書街にやってきたSolidSとQUELLのメンバーがとあるきっかけで手にした『ROMEO(ロミオ)』という一冊の古書をめぐる数奇な物語。第2弾の『星芒の彼方-月野百鬼夜行綺譚-』から約半年という短いスパンでありながら、どんな完成度の高い舞台を見せてくれるか楽しみだ。
本公演はREDとBLUEの2バージョンあるが、今回取材したゲネプロはSolidSのメンバーがメインに活躍する「Ver.RED」となっている。

取材・文・撮影 / 竹下力

“愛”という普遍的であり刹那的でもあるアンビバレンツな感情。 “愛”の持つ幸福感と絶望感を痛切に訴えかけている

この舞台をひと言で表すとすれば1本の“薔薇”だ。この花には本数によって花言葉があるのだけれど、1本の薔薇には“あなたしかいない=オンリー・ユー”といった意味がある。そこから、ふと矢継ぎ早に思い出したのが歌謡曲「百万本のバラ」。日本では加藤登紀子がカバーして、多くの日本人はそちらを耳にしていると思う。どこかロマンチィックでパセティックな曲調なのに、実は、貧しい画家が高嶺の花の女優に恋をして、有り金をはたいて薔薇を買い集め、“あなたしかいない”と彼女に振り向いてもらおうと奮闘する曲で、現代の視点からしたらストーカーにも見えるし、あまりにも純朴な画家の挫折を歌った曲でもある。ようは“愛”とは複雑で答えの見つからない感情なのだ。

今作に登場するロミオ(平井雄基)が恋人のジュリエットに執拗に伝えようとする「例え、この身が滅んでも、君に伝えたいことがある」という言葉。おそらくそれは後悔を孕んだ愛の言霊なのだろう。それにしても、どれだけ愛していれば、この気持ちをわかってもらえるのだろう? 伝えようとすればするほど想いは募っていくばかり。観ているこちらが諦めろよと思わず声をかけたくなる。この舞台は、“あなた”への溢れんばかりの恋慕がクライマックスに達したまま続いていく、破裂しそうなほど狂おしく身悶えしてしまう。

言い換えれば、今回の主人公であるSolidSとQUELLのメンバーにだって当てはまる。伝えたいことは、無限にあるはずなのに、あなたにだけは伝わらない。そんなつらい思いをきっとしてきただろう。この舞台はアイドルという特異な存在を炙り出してくれる。特にSolidSのリーダーの篁 志季(日向野 祥)は、そんなつらい想いをしたひとりだ。彼はかつてアイドルでいることに挫折したことがあるのだ。

そう、アイドルというのも、とても難しい職業なのだ。端的に言ってしまえば、一種のサービス業であるのだから、自分の思いの丈が観客に伝わらなければ、そっぽを向かれるし、それが当人にとってどれだけつらいことなのか、そんな経験をした人にしかわからない。本作は、ロミオという架空の人物の恋の苦しみと、アイドルたちの日々抱えている“アイドルゆえの苦悩”を表現したダブルミーニングになっていると思う。

印象的なのは、幕開き前の赤い垂れ幕の真ん中に“薔薇”の刺繍があることだった。それが何を意味するのか静かに問いかけてくる。

そしてゆっくり開く。舞台の始まりはとあるヨーロッパの地。映像のヨリコジュンのレベルの高いプロジェクションマッピングを背に、ボロボロの衣裳を身にまとった男・ロミオ(平井雄基)が1冊の日記を手にして独白をしている。すべては恋するジュリエットへの想いだ。

シーンが変わり、神田の古書街にやってきた村瀬 大(小林 涼)、世良里津花(阿部快征)、久我壱星(山中健太)、久我壱流(山中翔太)のSolidSとQUELLのメンバーたち。彼らは路地裏で不思議な書店を見つけ、何気なく中に入る。そして怪しい店主を尻目に、『ROMEO(ロミオ)』という1冊の本を見つける。村瀬はそれを手にとりページをめくっていると、紙でうっかり手を切ってしまう。うっすらと血に濡れてしまった本。商品を汚してしまったから買うしかないと決意した村瀬は店主にその本の値段を聞こうとすると……。

そこから夢と現実、過去と現在、そんな世界を行ったり来たりする。『ROMEO(ロミオ)』という古い日記(あるいは書籍)を巡って、その世界に飛び込んだり、劇中劇のように物語が進んでいく様は、『ツキステ。』でもたびたびモチーフになっている。つまり、本当の世界とはいったいなんだろう? ということだ。本作では、ふたつの異なる世界に流れている“愛”という不分明な感情を通して、世界そのものが繋ぎ合わされ、解体され、再構築され、本来あるべき世界(現実)が提示されていく。これは原作のふじわらの終生のテーマだと感じさせる。

今回の「スケステ」で活躍するメンバーは、村瀬 大(小林 涼)と世良里津花(阿部快征)。彼らを追いかけていれば、何が起こっているのか、どんな顛末を迎えるのか一目瞭然。彼らは物語の道標であり、重要なファクターになっている。“愛”という言葉をモチーフにし、物語は深い“業”を感じさせるのだが、演劇的仕掛けや台詞の妙によって、展開はグルーヴに満ちているから次のシーンが気になって仕方がない。やはり脚本のふじわらと演出のヨリコジュンによるパワーが大きく、ユーモアたっぷりのシーンもあるので、なおのこと楽しめるはずだ。

その中でも強く惹かれるのは、ロミオ役の平井雄基という存在だ。彼の「愛する人をもっと愛したい、愛する人に愛されたい」というのっぴきならない気持ちが、彼の表情や仕草から細かにうかがい知ることができる。本当に彼は泣いているようにさえ見え、“愛”という普遍的であり刹那的でもあるアンビバレンツな感情をどうやって表現していくのか、稽古で研鑽をしていたのだと思う。彼は「百万本のバラ」の貧しい画家のように、“愛”の持つ幸福感と絶望感を痛切に訴えかけている。

そしてロミオの分身となる村瀬 大(小林 涼)である。村瀬は、ロミオの過去の思いの丈を現実に翻訳するキャラクターで、その作業がブレてしまうと全体の雰囲気が壊れてしまうところだけれど、小林 涼は演じきった。愛の持つ根源的な苦しさを味わいながらも、現実世界において、ロミオの心を昇華して新しい感情(多幸感かもしれないし、ロミオが味わう以上の絶望かもしれない)として饒舌に表現していた。

もちろん、日向野 祥、瀬戸啓太、阿部快征、田中稔彦、中尾拳也、山中健太、山中翔太らの醸し出す“優しさ”があるからこそ、平井と小林の芝居が活きていたのは言うまでもない。なぜなら、彼らのあらゆる他者に対する平等な想いが、愛という独善的な気持ちを際立たせるからだ。

いや、この舞台から答えを見つけようとしてはいけないのかもしれない。そもそもそんなものないかもしれない。答えは迷宮の中。まさに演劇ならではの愉悦を味わえる。「Ver.RED」のSolidSのメンバーの熱い血潮に胸を打たれた第一部だったから、「Ver.BLUE」の方はクールな雰囲気がありそうで気になる……また足しげく通ってしまいそうである。

『ツキステ。』同様、『スケステ』もダンスライブと銘打っているので、第二部はライブになっている。こちらも、REDとBLUEではセットリストが違うのだが、どちらも楽しめるだろう。私は「Ver.RED」を体感したのだが、冒頭から真紅な赤のイメージそのままの熱いライブだった。

1曲目はバッキバキのエレクトロニックなSolidSの「CRAZY BABY SHOW」、そこからダンサンブルな「Judas」、そしてQUELLの「BELIEVER -祈り-」、「時を越えて」と怒涛の4曲のメドレーでテンションは上がりっぱなし。ダークでアンビエントで攻撃的なSolidS。幽玄的で柔らかくて優しいQUELL。彼らの個性が異なるライブはひたすら楽しい。しかも、冒頭4曲では、2019年版のセクシーな衣裳をまとった彼らのダンスがキレキレで目を見張った。

そしてソロナンバーと続き、再びユニットの曲へ。QUELLの「NEMOPHILA」、「Above the best」、そしてゆるふわギャングみたいで今っぽい超かっこいいラップをかますSolidSの「Midnight Mystery」と続き、ラストは全員で「東京LOVEジャンキー」を披露して大円団を迎えた。やはり二部構成の舞台は、第一部が深く考えさせる内容だったからより一層、楽しく爽快なものに感じた。それをよくわかっているスタッフ、もちろん役者・ダンサー・アンサンブルに大きな拍手を送りたい。なぜなら、彼らの“あなたのために”という想いが我々にしっかり伝わったのだから。

公演は、5月6日(月・休)までヒューリックホール東京にて上演される。

2.5次元ダンスライブ「S.Q.S(スケアステージ)」
Episode 3『ROMEO – in the darkness -』

2019年4月25日(木)〜5月6日(月・休)ヒューリックホール東京(有楽町)

STORY
とある日、神田の古書街にやってきた大、里津花、壱星、壱流は、路地裏で不思議な雰囲気を持つ店を見付けるのだった。
彼らはそこで『ROMEO(ロミオ)』という1冊の本を手に入れる。
しかし本には、ロミオという名の吸血鬼の呪いがかかっていて──。
例え、この身が滅んでも、君に伝えたいことがある。

原作・脚本:ふじわら(ムービック)
キャラクター原案:沙月ゆう
原作楽曲提供:滝沢 章 はまたけし
脚色・演出・映像:ヨリコジュン
振付:J.U.N.
制作:Ask サンライズプロモーション東京

〈SolidS〉
篁志 季 役:日向野 祥
奥井 翼 役:瀬戸啓太
世良里津花 役:阿部快征
村瀬 大 役:小林 涼

〈QUELL〉
和泉柊羽 役:田中稔彦
堀宮英知 役:中尾拳也
久我壱星 役:山中健太
久我壱流 役:山中翔太

ロミオ 役(舞台オリジナルキャラクター):平井雄基

バックダンサー:
J.U.N. 中村 聖 上地大星 理士

アンサンブル:
新宮乙矢 池田彰夫 橋本昭博 加賀美秀明

オフィシャルサイト