Interview

岡山天音 初主演舞台『ビビを見た!』。衝撃を受けたというこの作品に彼はどう挑むのか!?

岡山天音 初主演舞台『ビビを見た!』。衝撃を受けたというこの作品に彼はどう挑むのか!?

次代を担う作家・演出家として注目を集める松井 周が“幻の童話作家”と言われた大海赫(おおうみあかし)の伝説の絵本『ビビを見た!』を舞台化する。
町中の人々が突然視力を失い、正体不明の敵に襲われる状況のなかで、7時間だけ目が見えるようになった盲目の少年・ホタルを演じるのは、本作がほぼ初舞台&初主演となる岡山天音。
ドラマや映画など、数多くの映像作品に引っ張りだこの彼に、初めて主演として舞台を踏む意気込みを聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望


すべての出来事は劇場の中で起こる。自分にとって事件になる

まず、初の主演舞台が決まった心境から聞かせてください。

映像のお仕事を主にさせていただいてきたんですけど、もともと舞台を観に行くのが好きだったので、「やりたい」ってずっと思っていました。いざ、その機会に恵まれて、題材が『ビビを見た!』という衝撃的な作品で。本当に贅沢で豊かな場を与えてもらったなって思いました。

以前から舞台にも興味があったんですね。

絶対にやりたいと思っていました。舞台経験が全然ないからなのかもしれないですけど、映像とはだいぶ乖離した世界というか。たくさんの現場に行かせていただいて、いろんなことを学ばせていただきましたけど、まだまだ知らないことを教えてもらえるんじゃないかなという期待があって。周りの人がやっているのを見て「いいな〜」って感じていましたね。

映像と舞台では、どんな部分に乖離を感じていました?

やっぱりお客さんの目の前で演じなければいけないっていうことですかね。あとは、本物のものがあんまりないというか……手に触れるものもそうですけど、特に風景は本物ではなく、すべての出来事は劇場の中で起こる。そういう中で芝居をするのは、自分にとって事件になるんじゃないかなって思ってます。まだお客さんとしての感想ですけど(笑)。

本作がほぼ初舞台とのことですが、2011年に舞台『袴垂れはどこだ』に出演されていますよね。

そうですね。まだ仕事を始めたばかりで、台詞があるかないかくらいの役しかやったことがなかったときに、初舞台を経験させていただきました。ひとりの人間を2時間通して演じることも初めてだったし、本編丸々通してその人の人生の一部を表現するっていう経験がまだ全然ないなか、周りの人も先輩ばかりで、一番近くてもひと回りくらい上の方々に囲まれてやっていたので、本当に、気づいたら終わっていたというか。もがいたまま、全然地に足着かずに終わってしまって。今でも自分の中でとても印象に残っているくらいに大きい出来事ではあったんですけど、あれからいろいろ現場に行かせてもらった今、もう一回、舞台というものにチャレンジしたら、また違うものが見えるんじゃないかなと思っていますね。

同じ年に映画『犬とあなたの物語 いぬのえいが』や『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』でスクリーンデビューを果たし、ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』にも出演しています。プロの俳優としての本格的な活動をスタートさせた年には映画、ドラマ、舞台をやっているわけですが、そこから映像を中心になってきたのは何か理由がありますか? 

いや、単純に機会がなかっただけですね。同じ事務所に所属している俳優(門脇 麦さん、東出昌大さん、満島真之介さん等)はみんな定期的に舞台をやっていますし。僕は運よく、映像のお仕事をいただく機会が多かっただけで、なかなかタイミングがなかったっていう感じですかね。だけど、気持ちとしては興味津々でした。

映像と舞台、どちらを優先してやりたいというのはない?

うーん……映像の現場が圧倒的に多すぎてまだ比べられないし、比べるというよりも、知らないことをたくさん知りたい、と思っています。経験したことがないことをいっぱい経験したいっていう感じです。

好奇心旺盛なので、いろんなところに行きたい

映像の現場が多いことはどう感じています? 例えば、ここ1年を見てみても映画だけで10作品近く出演されています。

大きい役ばかりではないから、作品数が増えるのは必然かなと思います。脇役もあれば主役もあるし、ジャンルもバラバラですし、『痛快TVスカッとジャパン』にも出させていただいたりしてて(笑)。そういう環境にいたからこういう体質になってきたのか、最初からそうだったのか、どっちが先かはわからないですけど、今となっては、自分としては理想的なスタンスだなって感じてて。まだ全然通過地点ですけど、このまま進んでいきたいなっていう思いがあります。今はひとつのジャンルだけをやっていきたいとは思っていないので、すごく楽しく、いろんな人と出会わせていただいていますね。

理想的なスタンスというのはどんなものですか?

好奇心旺盛なので、いろんなところに行きたいんですよね。それぞれのフィールドで、それぞれのジャンルを専門的にやっている監督さんやスタッフさんがいらっしゃいますよね。例えば、ずっとホラーを撮ってる方とか、ラブストーリーを何年も通して撮ってる方とか。皆さんフィールドは違うけど、それぞれが命をかけてやっているので、どこに行っても絶対に面白さはあるし、そういうところを楽しいって感じます。それに、一見「これきついな、苦手だな」って思っても、それを楽しむっていう筋力を鍛えたいと思っているんです。いろんなカッコよさがあると思うんですけど、僕的には、より好みするのはダサいなっていう感じですね。

環境がそうさせたのか、もともとそういう志向だったのか。今となってはわからないとおっしゃっていましたが、改めて、俳優になるルーツをお伺いできますか。

NHKのドラマ『中学生日記』が衝撃的な時間だったんです。楽しくてしょうがなくて。僕、あんまり学校とかに行ってなくて。小さい頃には保育園にも行ってなかったんです。子供の頃からずっと惰性というか、与えられたものだから乗っかっていただけだったんですよね。でも『中学生日記』の現場は、人生で初めてって言っていいくらい、心の底から楽しいっていうことしかなくて。そのときに「これはもっとやりたい」と思って事務所のオーディションを受けました。だから、本当に幼い考えというか、考えですらないというか……。

『中学生日記』は主演でしたが、あくまでも中学生としての出演でしたよね。

そうですね。だから、最初は仕事にするとかも考えてなくて。ただ、もっとやるには事務所に入るしかないと思って、行動に出たっていう感じでしたね。

その楽しさは仕事になっても変わらなかった?

最初は大変でしたね。何が大変だったんだろう……プレッシャーはすごくありました。プロの俳優として扱われるっていうのが、『中学生日記』との大きな違いで。それまでは感覚や感情だけで過ごしていたので、そのプレッシャーに対して「こんなに身動きが取れなくなるんだ」って思いました。あと、『中学生日記』のときは主役という立ち位置だったというのもあったので、脇役からスタートしたときに見える景色が全然違って。そういうことが大変だったんですかね。

好奇心を持つことが得意になってきて。それは絶対にプラスの力に働く

また楽しさを感じられるようになった作品はありますか?

全部の作品が、楽しいのと苦しいのと、いろんな色が混ざった感じなので、一概には言えないんですけど、映画『ポエトリーエンジェル』(17年公開)は、久々にすごく楽しかった記憶があります。短編(15年公開『チキンズダイナマイト』)で以前ご一緒させていただいた飯塚俊光監督と次に長編でご一緒できたっていうこととか、主演を演じさせていただいたこととか、いろんな条件が重なったんだと思います。それに、自分の中でお芝居でやりたいことが見つかってきた時期でもあったし、慣れない映画主演ということへの期待感もあって。地域映画だったので、和歌山という土地からもエネルギーをもらったし、スタッフさんもみんないい人で。そういうのが重なってすごいハッピーな思い出になってますね。

その、「お芝居でやりたいこと」というのは? 明確に転機になった作品はありますか?

あんまりガツンと変わったというよりは、気づいたらっていう感じなんです……しかも、使命めいたものでは全然なくて。なんだろう……見てくれる人が共感してくれるようにやってみようっていうか。そういう意識が始まった時期だったんですよね。それまでは、どちらかと言うと、ずっと主観でやってたっていう感覚ですね。

観客の目を意識するようになった?

そういうことかもしれないですね。物心ついたっていう感じですね(笑)。脚本の読み方も、いろんなことに対して自覚的になってきて。

今はもう楽しいですか?

いや、全然苦しい気持ちもあります。ただ、好奇心を持つことが得意になってきて。それは絶対にプラスの力に働くんですよ。自分自身とは全然違う役がきても能動的に向き合えるっていう。

では、俳優でやっていこうって覚悟を決めたのはいつですか?

いつだろうな……ちょっとずつ役をいただけるようになった頃も……「何かいい出会いがほかにあったらやめるし」みたいなことをずっと思ってたし、言ってましたね(笑)。結構、最近まで思ってました。うん、20歳までは確実に言ってたかも(苦笑)。作品を何本か同時にやってることも多いから、そもそも区切りがあんまりなくて。だから、いつからかはわからないですけど、少しずつ少しずつ楽しくなってきたり、少しずつ少しずつ自分のやりたいことが見つかってきたりするなかで、気づいたらっていう感じですね。でも、本を読むことも好きなのでその影響も大きいかもしれないです。いろんな本を読むので。

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