LIVE SHUTTLE  vol. 344

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忌野清志郎の “Love & Peace”の精神が野音に響く。超豪華な顔ぶれで讃えた、最後の“追悼ライブ”

忌野清志郎の “Love & Peace”の精神が野音に響く。超豪華な顔ぶれで讃えた、最後の“追悼ライブ”

忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日比谷野外大音楽堂 Love&Peace 2019年5月4日 ~FINAL〜
2019年5月4日 日比谷野外大音楽堂

日本のロックシーンの数々の伝説を生んだ日比谷野外大音楽堂。その聖地で、“ザ・キング・オブ・ロック”忌野清志郎を讃えるイベント「忌野清志郎ロックン・ロール・ショー」が、令和元年5月4日に開催された。この日は朝から快晴だったが、午後になると清志郎の地元・東京西部の多摩地域には雷鳴が響き、雹(ヒョウ)が降った。まるで清志郎がこのイベントを祝っているかのようなロックン・ロール日和。日比谷の空にも雷雲の端っこが到達したが、雨を降らせるほどではない。

この「忌野清志郎ロックン・ロール・ショー」は2011年に始まり、没後10年の節目となる今年がファイナルとなる。これまで清志郎にゆかりのある、数多くのアーティストが参加した。今回も超豪華な顔ぶれが告知されている。このプラチナ・チケットを手に入れられなかった数百人もの清志郎ファンが、音だけでも楽しもうと野音の場外を取り囲んでいる。もちろん野音の場内は超満員だ。

ステージの上には楽器群とともに、清志郎のシンボル「ヒトハタウサギ」のバルーンが陣取っている。開演を告げるオープニング映像「忌野清志郎が野音にやって来る!」が流れると、オーディエンスは改めて大歓声を上げたのだった。

最初に登場したのは、竹中直人、木暮晋也、高木完の3人。ド派手なコスチュームで開演を盛り上げる。竹中が満員の会場を見渡して「すげーなぁ!」と言って始まったのは、RCサクセションの初期の名曲「ぼくの好きな先生」だった。高校時代の清志郎の心の拠り所だった美術の先生を歌ったナンバーで、まずは野音が和む。続く曽我部恵一は、アコギ1本で「甲州街道はもう秋なのさ」。これも清志郎のホームグラウンドの多摩を歌っていて、清志郎を身近に感じられるスタートとなった。

最初のブロックは、アコースティック・セットで出演者が次々に交代しながら進む。浜崎貴司(FLYING KIDS)×高野寛が「わかってもらえるさ」を「変拍子なので手拍子禁止です(笑)」と断ってから歌った後、大いに盛り上がったのは、清水ミチコの「帰れない二人」だった。「1番の詞は井上陽水さんが書いて、2番の詞は清志郎さんが書いて、曲は2人で作ったという友情の歌です」とコメントして、ピアノを弾きながら“陽水の声”で歌い出すと、会場から感嘆の声と爆笑が起こる。2番で“清志郎の声”に変わると、また爆笑。客席からは「似てないぞ~(笑)」というジョークを込めたおホメの掛け声が上がる。僕は以前に福岡の海の中道海浜公園のイベントで、清志郎と陽水がこの歌を一緒に歌うのを観たことがあるが、それを思い出すほど見事な“ひとりデュエット”だった。清水は拍手を浴びながら、スキップを踏んで退場。

真心ブラザーズの「よごれた顔でこんにちは」の後を受けて、ステージに手をつないで現われたのは、矢野顕子とのんだった。「野音って、もっと木が茂ってなかったっけ? 都の偉い人が伐採しちゃったのね。私にひと言、断ってよ」と矢野。何度も野音のライブを経験しているからこその発言だ。「矢野さんに曲をお願いしたら、この素敵な曲をいただきました。清志郎さんのことを書いてくださった」とのん。矢野が「どれだけいい曲か、皆さんに聴かせてあげよう」と答える。矢野のピアノとのんのギターと2人の歌声で届けられた「わたしはベイべー」は、華やかな彩りをイベントの序盤に添えたのだった。

次のブロックは“タイマーズ”のコーナーだ。三宅伸治によく似たギタリストTOPPIの率いるトリオをホストバンドにして、ボーカルが次々と入れ替わる。宮藤官九郎が「タイマーズのテーマ~偽善者」を歌って勢いをつけ、増子直純(怒髪天)はなんと「原発賛成音頭」を選曲。ステージのすぐ後ろに経済産業省のビルが建っていることを考えると、笑いが止まらない。

男くさいこのブロックでは、Leyonaが「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌って、ホッとさせてくれる。続くTOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)は、「言いたいことは、ただひとつ。音楽に政治を持ち込むな!」とコメントして、「あこがれの北朝鮮~LONG TIME AGO」を熱唱する。清志郎の“Love & Peace”の精神を受け継ぐ者たちが躍動する、痛快なブロックとなった。 

次のブロックをリードしたのは、仲井戸麗市だった。ドラムは河村“カースケ”智康、ベースは早川岳晴、キーボードはDr.kyOn、サックスは梅津和時というバンドと共に登場した仲井戸は、RCサクセションのライブの定番「よォーこそ」からスタート。続けて「お墓」。ストレートなバンド・サウンドに、野音が一気に往年の雰囲気に包まれる。

「よーこそ、来てくれた。じゃあよぉ、80年代の曲をいくつかやらしてもらうぜ。すげーゲストが来てる。いちばん古い友達かもしれない。渋谷の“屋根裏(ライブハウス)”で新生RCサクセションの音を探してたとき、こいつが観に来てくれて励みになったぜ。こいつが武道館でライブをやったとき、俺たち、フロントアクトをやらしてもらったんだ。忘れない。ギター弾かなきゃ、ただの生意気な小僧だ。竹中尚人、Char!!」。

真っ白なハットをかぶり、ストラトキャスターを抱えて、Charが颯爽と現われる。ギターにプラグを刺してアンプにつなぐと、Char独特のギター・サウンドが野音を満たす。そこに仲井戸のテレキャスターが絡む。Charはまるで自分の曲のように「ロックン・ロール・ショー」を歌い出す。Charのギター・アームが魔法のように野音の空間を歪ませる。♪Year ロックン・ロール・ショー すり切れるまで♪という歌詞が、耳に突き刺さる。息を呑むようなパフォーマンスだった。大きな歓声が上がる中、仲井戸が「日本のロックの宝だ! Char!! あいつが来るといつも雨なんだが、大人になったなぁ」と敬意を込めてCharを送り出した。

このブロックは、やたらと気合が入っている。夏木マリが「上を向いて歩こう」を清志郎バージョンで歌った後、まさかのゲストは、村越弘明。通称“ハリー”。

「RCサクセションは、武州・三多摩だ。同じ出身地のヤツを紹介するぜ。断られると思って誘ったら、快諾してくれた。この歌を、こいつに歌って欲しかった。よく来てくれた。村越弘明! ハリー!!」。

村越がテレキャスターを抱えて登場し、仲井戸と右手の拳を突き合わせる。軽くブルースで流した後、仲井戸のギターでハリーは「いい事ばかりはありゃしない」を歌い出す。これが仲井戸の望みだった。ザ・ストリート・スライダーズの名曲「のら犬にさえなれない」と同じ匂いがする。村越は6番まである歌詞を、淡々と、そして丁寧に歌った。きっとどこかでそれを清志郎が聴いている。高い緊張感のある、心のこもったセッションだった。

「また一緒にやろうぜ」と仲井戸は村越を送り出し、「こんなの、毎週、やりてーな(笑)。次のゲスト、こいつらも野音でライブやってるぜ。赤羽のバンドだ。いつまでも赤羽の匂いが消えない。好きだぜ。よく来てくれた。エブリボデイ、エレファントカシマシから、宮本浩次!」。

宮本が歌ったのは「君が僕を知ってる」だった。いつものように宮本は、少し首をかしげて♪今までして来た悪い事だけで 僕が明日有名になっても♪と歌い出す。この歌が、とてもよく似合っている。宮本は仲井戸の肩に腕を回したりしながら、大好きなRCサクセション・ナンバーを歌う。

梅津が入魂のサックス・ソロを吹いているとき、仲井戸は「サックス片山広明!」とコールする。片山はRCサクセションのサックスを長年担当したミュージシャンで、残念ながら昨年亡くなった。この曲で梅津は、片山のサックスを借りて来て吹いたのだという。

「次はあっちーヤツが来てる。徳島だあ、太陽みたいなヤツだあ。佐藤タイジ、シアターブルック!」。

佐藤はレスポールを抱えてステージにやって来た。Dr.kyOnがあの有名な「スローバラード」のピアノのイントロを弾き出す。佐藤は力強い声でRCサクセションの名バラードに、直球勝負を挑む。その潔さに、会場から大歓声が上がる。佐藤は歌い終わると梅津とハグを交わし、仲井戸は「佐藤タイジ、ソーラー武道館!」と送り出した。

とにかくこの日の仲井戸のMCは最高だった。RCサクセションの歴史と、ゲストへのリスペクトを込めた紹介は、芸術品のように素晴らしく、オーディエンスの心を打つ。

次々に登場する“RCサクセションの子供たち”は、そのDNAをしっかりと受け継ぎ、オリジナルなスタイルに昇華している。このブロックの最後に登場した斉藤和義もそうだった。

「ツアー中なのに、抜け出して来てくれました。だからこいつだけリハをやってない。栃木が生んだスーパーヒーロー、斉藤和義、斉藤くーん!」。図抜けたボーカル力で歌うのは、「ドカドカうるさいR&Rバンド」。ボーカルも凄かったが、それ以上に青いレスポールから繰り出される斉藤のギター・ソロが凄かった。ボーカリストのギター・ソロには独特の味がある。斉藤のエネルギッシュなソロに大きな拍手が贈られたのだった。

最後のブロックは、清志郎のソロからの曲が捧げられる。三宅伸治をリーダーに、ドラムは江川ゲンタ、ベースは中村きたろー、ブラス・セクションは、3人の“ニューブルーデイホーンズ”。口火を切ったのは、鮎川誠(シーナ&ロケッツ)の「ROCK ME BABY」だった。続いて山崎まさよしが、「愛と平和」をストラトキャスターを抱えながら歌う。

このブロックでオーディエンスの度肝を抜いたのは、金子マリの「恩赦」だった。♪新しい時代が始まったから 犯罪者達に恩赦がある♪という歌詞が、始まったばかりの令和の時代に重々しく響く。恩赦とは、国家的な慶事に際して犯罪者の罪を軽減する処置。金子の重厚な歌は、国家、犯罪、赦し、祈りなどの言葉の深い場所を刺激する。清志郎と同世代の金子らしい、スピリチュアルなパフォーマンスが光った。

清志郎と三宅が共作した「雑踏」をBEGINが温かく歌い、このイベントのキーパーソンである三宅と仲井戸が、それぞれ「ボスのSOUL」、「毎日がブランニューデイ」を歌った後サプライズが待っていた。本編最後の「JUMP」で、金子マリ、 斉藤和義 、TOSHI-LOW、仲井戸麗市らが勢揃いした中に、山崎まさよしに呼び込まれてシークレット・ゲストの木村拓哉が飛び込んで来た。最初はあっけにとられていたオーディエンスは、キムタクに気付くと大喜び。木村はテレビドラマ「ギフト」で清志郎と共演して以来、親交があったという。木村は何度も何度もジャンプを繰り返し、最後はステージの端に飾られてあった清志郎の自転車にひざまずいてステージを去った。

アンコールでは出演者全員がステージに登場。すっかり晴れ上がった空の下、その空にぴったりの「雨あがりの夜空に」を大合唱する。キムタクを夏木マリとLeyonaがはさみ、村越と宮本が1本のマイクを分け合って歌う、夢のようなシーンが目の前で展開される。

ラストは仲井戸麗市と三宅伸治のアコギをバックに、梅津和時が「多摩蘭坂」を歌った。仲井戸は片山を初め、シーナ、石田長生など、天国に召された友人たちの名前をコールする。同時に、このイベントをずっと支えてきたスタッフの名前を挙げ、「このイベントは蔦岡晃ってヤツがやってたんだよ。覚えといてくれ! 清志郎も喜んでるぞ~!!」と締めた。令和の始まりを記憶に刻む、最高のライブだった。

文 / 平山雄一 撮影 / 山本倫子

忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日比谷野外大音楽堂 Love&Peace 2019年5月4日 ~FINAL〜
2019年5月4日 日比谷野外大音楽堂

オープニング映像 忌野清志郎が野音にやって来る!
01.「ぼくの好きな先生」 竹中直人+木暮晋也&高木完
02.「甲州街道はもう秋なのさ」 曽我部恵一
03.「わかってもらえるさ」 浜崎貴司(FLYING KIDS)×高野寛
04.「帰れない二人」 清水ミチコ
05.「よごれた顔でこんにちは」 真心ブラザーズ
06.「わたしはベイべー」 矢野顕子×のん
07.「タイマーズのテーマ~偽善者」 宮藤官九郎
08.「原発賛成音頭」 増子直純(怒髪天)
09.「デイ・ドリーム・ビリーバー」 Leyona
10.「あこがれの北朝鮮~LONG TIME AGO」 TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)
11.「タイマーズのテーマ」 TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU) / 宮藤官九郎/ 増子直純(怒髪天) /  Leyona
12.「よォーこそ~お墓」 仲井戸麗市
13.「ロックン・ロール・ショー」 Char
14.「上を向いて歩こう」 夏木マリ
15.「いい事ばかりはありゃしない」 村越弘明
16.「君が僕を知ってる」 宮本浩次
17.「スローバラード」 佐藤タイジ(シアターブルック)
18.「ドカドカうるさいR&Rバンド」 斉藤和義
19.「ROCK ME BABY」 鮎川誠(シーナ&ロケッツ)
20.「愛と平和」 山崎まさよし
21.「恩赦」 金子マリ
22.「雑踏」 BEGIN
23.「ボスのSOUL」 三宅伸治
24.「毎日がブランニューデイ」 仲井戸麗市
25.「JUMP」 金子マリ/ 斉藤和義/ TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU) / BEGIN / 山崎まさよし/ 三宅伸治/ 仲井戸麗市/ 木村拓哉
ENCORE
EN1.「雨あがりの夜空に」 全員
EN2.「多摩蘭坂」 梅津和時×仲井戸麗市×三宅伸治
Dynamic Live
01.「ヒッピーに捧ぐ」 忌野清志郎
02.「毎日がブランニューデイ」 忌野清志郎


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