Interview

『甲鉄城のカバネリ』のヒロインはなぜこんなに可愛い? 大ヒット作・渾身の続編、荒木哲郎監督が模索する“理想のアニメの鍛え方”

『甲鉄城のカバネリ』のヒロインはなぜこんなに可愛い? 大ヒット作・渾身の続編、荒木哲郎監督が模索する“理想のアニメの鍛え方”

『進撃の巨人』で知られる荒木哲郎監督が手がけるオリジナルアニメ『甲鉄城のカバネリ』の新作劇場版『甲鉄城のカバネリ 海門(うなと)決戦』が2019年5月10日より公開中だ。

2016年春に放送されたTVアニメ『甲鉄城のカバネリ』は、シリーズ構成/脚本に『コードギアス 反逆のルルーシュ』の大河内一楼、キャラクター原案に『マクロス』シリーズの美樹本晴彦を迎え、斬新なストーリーと美麗なアニメーションで多くのファンを獲得した人気作。

突如現れた不死の怪物「カバネ」が徘徊するなか、人々は要塞化する「駅」に暮らし、蒸気機関車「駿城(はやじろ)」で駅から駅へと移動する。駿城のひとつ「甲鉄城」に乗り込んだ生駒(いこま/声:畠中祐)はカバネと戦う力をもつ無名(むめい/声:千本木彩花)と出会い、とある約束を交わす。

新作となる『海門決戦』で描かれるのは、その後の物語。廃坑駅「海門」をカバネから奪還しようと集まった甲鉄城をはじめとする「連合軍」の戦いの中心には、生駒と無名の姿があった──生駒への思いを胸に、一途に戦う無名にフォーカスされる今作について、「なによりも無名が可愛いことがマストだった」と語る荒木監督。完成披露舞台挨拶後の遅い時間から始まったインタビューにもかかわらず疲れた様子もみせず、楽しげに答える姿が印象的だった。

取材・文 / とみたまい 構成 / 柳 雄大

「自分ひとりの考えに偏らず、多くの人の意見を吸収するため」監督自ら手がけたシナリオ

『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』は、67分の中編アニメーションとして完成しました。一般的な劇場用アニメとしては短めですが、昔のアニメ映画はこれぐらいのサイズのものが多かったので、個人的にはすごく馴染みがありました。

あ~、なるほど。そう言われていま初めて思い出したのは「この尺のサイズ感でやれることって“東映まんがまつり”(※)だな」と思って作り始めたことですね。俺が子どもの頃に見ていたものはこれぐらいの尺で、ゲストの敵がいて、それを倒し、主人公たちに少しのドラマがある、みたいな感じでしたから。

逆に言うと、このサイズでは主人公たちに「かつてない荒波」が襲い掛かることはできないんです。「ある程度見知った波」じゃないといけない(笑)。そういう意味で今回はファンサービスということに意識を絞り込む、いいきっかけになったとも言えます。この尺でやるのならば、『甲鉄城のカバネリ』が好きな人に向けてしっかりサービスする。いい意味で「狙いを定めやすかった」と言えるんじゃないかと。

※東映が1960年代から昭和後期にかけて展開した、春休み・夏休みなどに子供向けアニメ/ヒーロー作品をまとめて劇場上映する人気企画。ちなみに今年はこれが29年ぶりに復活したことでも話題に。

荒木哲郎監督

“ファンサービス”の核となったのはどこでしょう?

「生駒と無名の話を中心に描こう」という部分ですね。新しい要素を出すようなことはせず、これまでの『甲鉄城のカバネリ』にあったものを使って、局地戦のような小さめのサイズの話を描きつつ、生駒と無名の仲が進展する。尺が理由のひとつでもありますが、ファンのみなさんが一番見たいのって、やっぱり生駒と無名だろうと。

そのなかで、荒木さんが「やりたかったこと」とは?

TVシリーズで、俺はもっと色々やりたかったんですね。自分で絵コンテをもっと描きたかったし、絵そのものにも手を入れたかった。でも、時間の都合上やりきることができなかったので、今回はフルパワーで仕事をさせてもらいました。

大変だったけど、それが自分のやりたかったことなので、嬉しさのほうが大きいですね。あの大変なアクションの絵コンテを描いたりすることが、自分の喜びですから(笑)。アニメーターさんはそうは言わないと思いますが、俺は喜んでやっちゃいました。あとは、自分が生んだキャラクターたちのその後を描くことは、やはり他では得られない嬉しさがありました。

今作では荒木さんが脚本を、大河内さんが構成を手がけられています。荒木さんが脚本も担当されたというのは、やっぱり「自分で全部やりたかった」という思いがあったのでしょうか?

それも大きかったです。その一方で……逆の話に聞こえるかもしれませんが、「俺ひとりの考えに偏らないで、いかに多くの人の意見を吸収して作れるか」というのも大きな課題としてありました。それって結構難しいことなんですよね。なぜなら、絵コンテが上がってしまった後では「早く作品を作っていかないといけない」という現場事情のほうが優先されるので、みんなも「つまんない」とかってツッコむわけにはいかないんです。

でも、シナリオの時点だったらまだやり直しがきくので、みんな色々と言ってくれやすい。だから今回は、俺の仕事に対してみんながダメ出ししやすい状況を作るために、自分でシナリオを書くようにしたというのが大きいです。そうすることで、みんなの意見をフィルムに反映して、さらに作品を強くすることができると思いました。

その狙い通り、色んな意見が出てきましたか?

出ましたね。俺としては理想のシナリオを出してるつもりなのに、「これがわからなかった」とか「あそこが軽い」とかすっごい言われて「チクショウ!」って思いながら書き直して(笑)。絵コンテになってからも……今回は、(作品完成の)1年くらい前に“仮アフレコ”というのをやったんですね。メインキャストのふたり、畠中さんと千本木さんに仮で声を入れていただいて、それをもとにフィルムの流れをみんなで検証して。

そこでも「あそこの話が早すぎて理解できなかった」とか「コイツが何をしたいのかわからなかった」というような意見が色々出たので、絵コンテを修正したりしました。たとえば、千本木さんから「“六根清浄(ろっこんしょうじょう)”ってセリフが出てきていません」という大事なアドバイスをいただいて、「あ、ほんとだ!」って思って、それを言う場面をあわてて作ったり(笑)。

そうやって色んな人の意見を聞いて、フィルムに反映していったので……カバネリを好きな人たちが満足できるように、やれることは全部やったと思います。

「仮アフレコをやりたい」というのも、荒木さんからの提案でしょうか?

そうですね。作品ができあがってしまったら、引き返すことはできませんから。お客さんの目に触れる前に、やれることはすべてやる。仮アフレコのライカリール(絵コンテをつないだフィルム)の時点だったら、まだ絵コンテにさかのぼって直すことができるので。

そうやって手直しできるチャンスを何度も何度も作って、フィルムを鍛えていくというのは……ハリウッドやピクサーがやっている手法ですが、「日本のアニメでも、同じようにしたらフィルムを強めることができるんじゃないか」と思って今回やってみて、はっきりと効果があったと感じました。

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