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1000回遊べるどころじゃない『風来のシレン』死ぬまでこの一本でいいのだ

1000回遊べるどころじゃない『風来のシレン』死ぬまでこの一本でいいのだ

無人島にゲームソフトを一本だけ持っていくとしたら、何を持っていくか?
友人との雑談や呑み会の席で話題になり、意外と激論に発展するクエスチョンだ。電源供給やハードの設置などの現実的な問題は抜きにして、自分にとっての至高のゲームを述べる目安になっている。大勢の人はそれぞれの理由でいろいろなゲーム名を挙げるだろうが、おそらく既プレイヤーは高確率でスーパーファミコン版『不思議のダンジョン2 風来のシレン』(以下、『風来のシレン』)を挙げるのではないだろうか。
『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』の2作目として1995年にスーパーファミコンで登場した本作は、強烈な面白さでプレイヤーを楽しませ病みつきにした。”1000回遊べるRPG”のキャッチフレーズでその後もシリーズが多く発表されたが、なかでも『風来のシレン』の印象が一番強く残っている気がする。時代劇テイストで、イタチを連れた三度笠の青年……という、まったく洗練されてないキャラクターなのにゲームの純度はとんでもなく高い。そんな24年まえの『風来のシレン』がアプリ版となって復活し、3月に発売された。ニンテンドーDS版をベースに、スマホ向けに操作性を最適化しており、課金要素などない売り切りスタイルの潔さ。完結したこの一本だけで大勢のユーザーが同じ条件で競い無限に遊ぶことができ、一度触れれば最先端のゲームにも負けない面白さをあらためて感じられる。本稿では、変わらずに存在感を放つ本作の魅力について述べていきたい。

文 / カエル大宮
協力 / 内藤ハサミ、大部美智子


ローグライク? いや、シレンでしょ

前述のとおり、『不思議のダンジョン』シリーズは数多く出ている。最近では『ファイナルファンタジー』シリーズのチョコボが活躍する新作も出た。ダンジョンに潜るたびに構造が変わり、落ちている道具も種類や位置が変わる。各階層での生息モンスターは概ね固定だが登場構成は変わり、毎回新鮮な気持ちでダンジョン攻略に臨める。いい意味で無造作なのが、入ってすぐの階層1階でも極上でレアな武器や道具が拾えること。入手した武器や道具次第で階層攻略の難度も変わる。このへんがシリーズのワクワクするところだ。

▲ボウヤーに矢を撃たせまくり、拾って利用する。遠隔武器は重宝するので集めておきたい。浅い階層で剛剣マンジカブラを拾うこともある。落ちているアイテムのグラフィックは種類ごとに同じなので、踏んだ瞬間のメッセージに歓声をあげることになる。装備すればグラフィックは固有のものに変わる

『不思議のダンジョン』シリーズ以外にもこういうタイプのゲームは多く、とにかくまとめて”ローグライク”というジャンルで称したりするが、『風来のシレン』経験のゲーム系編集者やライターはちょっと違う場合もある。記事で扱うゲームの概要を確認したとき、「ダンジョンに入るたびに構造が変わるんだ。へぇ、シレンだね」となるわけだ。『ローグ』は名作と言われているがプレイ経験者は少なく、『風来のシレン』の印象がとにかく強いので、”シレンライク”的に自然と言ってしまう。
『風来のシレン』はいくつもの趣向のダンジョンが存在するが、まずは”テーブルマウンテン”のみが解放されており、途中にいくつものフラグが用意されている。他ダンジョンの解放、倉庫の施設やキーアイテムのひとつ”合成の壺”を利用できるようにするため、テーブルマウンテンを数往復して条件をクリアする必要があり、この過程で実践的なプレイスタイルを身に着けられ、武器を強化していける。ショートカット機能もあり、目的を持って往復するので作業感も少ない。というか、往復する道中でも何が拾えるのかワクワクする。

▲モンスターと遭遇。こちらが動けば相手も動き、動かなければ永遠に動かない。HPや満腹度の増減もない。長時間同じ階層に留まっていると突風が吹く。警告の突風は3回。それでも留まっていると、4回目の突風で渓谷の宿場に強制的に戻されてしまう

ピンチとアクシデントがあってこそ

テーブルマウンテンは上りで30階。道中はいろいろな特性を持ったモンスターが登場し、後半ほど手強くなっていくが、ダンジョンの構造とモンスターとの位置や距離、手持ちの道具でいろいろな攻略を考えられる。これがまたまた楽しい。テクニカルなフットワークも駆使する必要があるが、渓谷の宿場にある”フェイの問題”で学ぶことができる。
ピンチに陥れば、スマホを放り出して突破する方法を延々と考えられる。極端な話、何日も考えてかまわない。いくつかの可能性を思いつき試して突破すれば嬉しいが、つねにアクシデントが起きて倒されるのも『風来のシレン』ならではの話。倒されて渓谷の宿場に戻るか、救助依頼でその場から再開する可能性に懸けるかは選べる。『風来のシレン』が味わい深いのは、数時間や数日経ったときに、「あっ! あのときああしていれば!」と別の解法を思いついて歯噛みするところだ。

▲ピンチとアクシデントと幸運はつねにダンジョンにある。3枚目は結果に呆気にとられ、そのあと笑いが止まらなかった。これがあるから、『風来のシレン』はやめられないのだ

▲既プレイヤーは必ず行うだろうが、筆者はカラクロイドに落とし穴の罠をなんとか作らせまくり、22階と21階の地下水脈の村を5日間も往復しまくった。そのせいで原稿が遅れた。カラクロイドの肉を食べ、スペースギリギリで落とし穴を作れた店の泥棒は本当に快感だった

おにぎりが底を尽き、草も食べつくして満腹度がゼロになった。仲間のペケジが襲ってきた。瀕死の状態で召喚スイッチのワナを踏んで4体のモンスターに囲まれた。大型地雷のワナを踏んでHPが1になった。HPを回復しながらモンスターを引き連れて歩いていたら前方から来たモンスターに挟まれた。強化した盾を弾き飛ばされ背後のモンスターに当たって消失した。壁のない店で商品を持って1歩進んだら兵隊アリが掘った通路で泥棒認定された。店主にうっかりと弓矢を射ってしまった。部屋に踏み込んだらモンスターハウス、さらに階層を上がったら大部屋のモンスターハウスだった。踏み込んだモンスターハウスがパワーハウスや泥棒ハウスなど、いまのレベルや武器では絶対に倒せない難敵ばかりだった……ピンチやアクシデントに見舞われ、次ターンで倒れるようなシチュエーションはいくらでも思いつく。筆者だけでなく、ほとんどの既プレイヤーは歯噛みをするような目に遭っていて、自分なりの非業のシチュエーションを浮かべられるはずだ。
もう諦めるしかない状況。ところが、次ターンでそれを覆してしまう可能性を『風来のシレン』は提供してくれる。状況を把握したうえで持っている道具を確認する。確認作業は行動に認識されないので、持ち物を延々と眺めて、虎口を突破する方法をじっくりと考えられる。
数ターンのあいだモンスターたちを眠らせたり混乱させられる巻物があった。一歩動いて確認済みの地雷のワナを踏んで周囲のモンスターを倒せた。バネのワナを踏んでモンスターのいない部屋に飛べた。白紙の巻物に”せいいき”と書いて地面に置いた。直線上の遠くにポツンといるモンスターに場所を入れ替えられる杖を振った。モンスターをかなしばりにしてモンスターハウスの出口を塞いだ。満腹度ゼロでたまたま読んだ巻物が道具をおにぎりにするものだった……と、やはり筆者の生き抜いたシチュエーションの一部を挙げてみたが、どれも安堵したあとにじわりと『風来のシレン』の芯にある面白さを実感できることになる。ゲームのシステムに振り回されず、プレイヤーがシステムの上に立ちじっくり考えて状況をコントロールする。このような気持ちのいい手ごたえを与えてくれるゲームはそれほど多くない。
とにかく。30階の奥にはボス戦が待っている。道中のモンスター同様、ボスにもいろいろな手段を使える。弱いモンスターも強いモンスターも、特性による打ち消し以外は同じ手段で臨める仕様がうれしい。ボスにマムルの肉を投げて一撃で倒すという呆れた勝ちかただって可能だ。

▲いろいろなフラグを立て、条件をクリアする

こうしてテーブルマウンテンをクリアして”ある存在”を助け、途中で重要なキャラクターたちとの会話・手助け、施設の再建、数段階の条件を経ていれば、いくつものダンジョンが解放される。少し面倒だが出会う人と話し、救済を求める対象を助け、行けるところに侵入しておけば大丈夫だ。ここから、遊びの純度が一気にアップする。

さまざまなダンジョンが楽しすぎる

いろいろな条件を満たしていれば、6つのダンジョンが解放される。ワナを利用したりモンスターの肉を食べ特性を駆使する異色のもの、果てしない道のりや条件・縛りが厳しいものなど、得意不得意や好みで進められる。前者はスーパーファミコン版から用意されているものでクセが強く、道具の持ち込みはできないが遊ばせることに徹底している。後者はニンテンドーDS版で追加されたダンジョンで、高難度のものを用意した印象だ。道具が持ち込め、武器や盾を強化して最終的にコレクションすることが楽しめる。

▲各種ダンジョンが解放される。順番はとくに決められていないので好きに選べる

道具が持ち込み可能なダンジョンは、武器や盾の強化が行える。山頂の町にあるガイバラの窯元の展示場で合成の壺を仕入れておき、それを携えて何度もダンジョンに向かう。道具があまり落ちていないダンジョンもあるのが悩みどころだが、強化値を上げ、付いていない能力をひとつでも多く付与できて満足していく。後述する風来救助が、”道具が持ち込みできるダンジョン”指定で活性化しているのもそういう理由だ。

▲筆者は倒れまくって道具を持ち帰れないことが多く、ある夜は酔った勢いで強化中の刀を変化の壺に入れる失態もしてしまい、強化がサッパリだ。上は友人の強化途中の武器と盾の写真を借りた。ここで剛剣マンジカブラや風魔の盾を拾えば、それをベースに合成をすることになるのだろう。世間ではこれ以上の強化を進め、能力マックスで別名称に変化した武具を持っているプレイヤーも多い

そして残りのダンジョン、それがスーパーファミコン版の最後の難関として存在していた”フェイの最終問題”だ。道具の持ち込みはできず、落ちている道具はすべて未識別、ダンジョンは縛りのないシンプルさで99階層を踏破する。
スーパーファミコン版『風来のシレン』が登場したころ、筆者はゲーム雑誌・週刊ファミ通編集部のスタッフだった。当時のスタッフたちは面白いゲームに貪欲で、仕事中でも好きなゲームをちょろちょろと遊び、仕事が終わっても帰宅せずに遊んだ。面白いゲームはすぐに口コミで編集部でブームになり、大勢が同じゲームを遊んで進行を競ったりした。『ダービースタリオン2』、『実況パワフルプロ野球』シリーズ、『ディアブロ』、『バーチャファイター』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』などがそれで、そのなかにはもちろん『風来のシレン』があった。
『バーチャファイター』で名を馳せたBは「壺の中に壺は入らないぜ!」という画面メッセージを気に入り、何かあれば叫んでいた。風のように編集部を通り過ぎたNはミノタウロスの痛恨の一撃を受けると「ミノさん!」と呼んで強敵を称えた。ずーっと編集部に住んでいたYは落石スイッチの罠を踏むたびに「シイタケ!」と発した……などなど、ほかにも多くのスタッフが遊び続け、当時は印画紙が高額なビデオプリンターで画面を印刷し、編集部の壁に自慢げにフェイの最終問題の到達階層やアクシデントの写真をペタペタと貼り続けた。

▲フェイの最終問題は、基本のフェイの問題50問をクリアすれば解放される。筆者は倒されて渓谷の宿場に戻ってくると、たまにフェイにケンカを売ったりする

発売と同時にチュンソフト(当時)は早解きキャンペーンを行っていた。フェイの最終問題99階層をクリアし、つぎの階層に至ったテレビ画面をカメラで撮影して、その紙焼き写真を送った人に先着順でマムルのぬいぐるみ・マムルボンボンをくれた。先着の規定人数は忘れたが、筆者は規定数に間に合い、マムルボンボンをもらった。いまも実家の段ボール箱にビニール袋に入れて保存している。

情報発信や風来救助でネットが沸騰

スマホアプリ版『風来のシレン』発売から今日まで、プレイヤーの熱気はネットでうかがえる。モンスター情報、道具の情報、フローチャートなど攻略情報がどんどんアップされ、店の泥棒の手口もレクチャーされ、ファミ通で行われたように強化した装備や到達階層自慢など、自分の楽しみを人に伝えることに熱心な人が増えていった。仮説を立て、検証や統計を発表する動画も公開されている。以前は考えられない情報の多さ。既プレイヤーが、十分な経験で改めてのプレイで自信を以て公開した情報の確度は高い。当初は情報を遮断していた筆者だが、最近は我慢できずに見てしまった。そして、救助のやり取りがとても多い。

▲バージョン1.1.0から救助パスワードの”コピー/貼付け”ができるようになり、救助依頼から復活までのやり取りが快適になっているのがありがたい

▲筆者も地味に友人を救助。というか写真を撮影したくて、「倒れたら教えて!」とお願いしていた

救助のみのコミュニケーションを行うサイトが立ち上がり、活発な交流が行われている。昔のように筆者は倒れまくった。ダンジョンをダッシュで走り、ワナを踏みまくり、モンスターにぶつかってカウンターをもらいまくったせいだ。1回の冒険で3回まで救助してもらえるが、利用しまくった。救助依頼のパスワードを伝え、助けてもらってはお礼の手紙を返送した。先ほど述べたが、道具が持ち込めるダンジョンの場合は依頼して数分で救助者が名乗りを挙げてくれて、あっという間に再開できた。救助システムはニンテンドーDS版からのものだが、当時はネット環境が発達していなかったためこれほど活発ではなく、プレイをしている知り合いに声をかけて助けてもらう程度だったため、この救助の活況は感慨深い。SNSでも”#風来のシレン”、”#風来救助”などのハッシュタグで情報の提供や救助が活発だ。

▲店の売値で、まちがいなく”ジェノサイドの巻物”と判断。なぜか拾ってしまい、”ジェノサイド”と書き込み置こうとしてうっかりと読んでしまう大失態! 店から出られなくなり、いまその段階でどうしよう……と筆者は悩んでいる。しあわせの腕輪を20階層ぐらいまでは利用したいんだよなぁ

何回も遊べて、そのたびにプレイヤーを一喜一憂させるゲーム、そして行動させるゲームと考えると凄いことだ。遊んで満足して終了し、ゲーム棚にパッケージを収納するゲームが多いなかで、自分の知恵を他者に伝えたい、伝えねばならぬ、自分の成果を見せたい、超えているなら見たい、自分が突破したところで倒れたのなら助けたい……経験者の満足と優越と優しさがネットを通じて反映されるゲームが、ほかにあるだろうか。
改めて。ここまでプレイヤーを動かすゲームなのは、根幹がすこぶる面白いからに尽きる。美麗なビジュアルや動画の演出はいらない。操作して自分で考えて何かを突破して気持ちいい&面白い体験に華美なものはいらないのだ。各ダンジョンをクリアしても、もっと気持ちいい体験ができるかもしれず、いきなりレアな道具を拾えるかもしれないと考えると、またダンジョンに潜りたくてウズウズする。その衝動ゆえ何度も遊び、遊ぶたびにいろいろな感興を得られる。無人島に持っていきたくなるのも当然。遊ぶたびに面白い『風来のシレン』一本があればいいのだ。

フォトギャラリー

■タイトル:不思議のダンジョン 風来のシレン
■メーカー:スパイク・チュンソフト
■対応ハード:iOS/Android
■ジャンル:RPG
■対象年齢:全年齢
■発売日:発売中(2019年3月12日)
■価格:ダウンロード版 1,800円(税込)

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『不思議のダンジョン 風来のシレン』オフィシャルサイト

 

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