連続テレビ小説『なつぞら』特集  vol. 5

Interview

『なつぞら』の柴田夕見子役で話題の福地桃子。朝ドラの現場で感じたこと、考えたこととは…?

『なつぞら』の柴田夕見子役で話題の福地桃子。朝ドラの現場で感じたこと、考えたこととは…?

節目となる100作目、そして平成最後にして令和最初の“朝ドラ”こと連続テレビ小説『なつぞら』。スタート初週からヒロイン・なつの少女時代を演じた粟野咲莉の名演、そして草刈正雄扮する頑固じいさん・柴田泰樹と心を触れあわせていくシークエンスが大反響を呼び、好調な滑り出しを見せた。放送第三週となる4月15日(月)からは、いよいよ“本役”の広瀬すずが登場。北海道での「青春篇」を清々しく描き、ますます注目を集めている。その広瀬が演じる奥原なつが暮らす柴田家の長女にして同い年の夕見子を好演している福地桃子を、エンタメステーションはクローズアップ。ネクストブレイクの1人と目されている若手女優は、朝ドラの撮影を経験する中で何を感じ、何を思うのか? その時々の胸中を節目ごとに聞くことで1人の女優の成長も追いかけていくシリーズの第1回は、『なつぞら』出演が決まってから放送開始直後までを時系列でたどり、心境を浮き彫りにしていく。

第14話より ©NHK
料理をする明美に「手伝ってよ。」と言われたのに対し、「身体を使うことだけが労働じゃないのよ。こう見えて暇じゃないの。」と夕見子。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志


他人のためにエネルギーを使えるというところで、私は夕見子を人としてとても尊敬しています

『なつぞら』、スタートから大反響ですね。

すごくありがたいですし、素直にうれしいです。でも、ずっと時間をかけて撮影してきて、「まだまだスタートは先だなぁ」なんて思っていたんですけど、あっという間に4月になって、もう1ヶ月になろうとしているので…どんどん“終わり”に向かっていくという時間の流れを、ちょっとだけ淋しく感じたりもしています(笑)。

そう感じるほど、広瀬すずさん演じられるヒロイン・なつや、柴田家のみなさんと一緒にいる時間が愛おしいということでしょうか?

ちょうど1年くらい前に(北海道・十勝編キャストの)記者発表があって、その時にキャストのみなさんとお会いした印象と、作品に入ってからの距離の縮まり方というのは、やっぱり全然違っていて。この1年ですごく時間をかけて柴田家のあたたかさを、みなさんがつくりあげてくださっていると思いますし、その一員として団らんの輪の中にいられることで、すごく良い経験をさせてもらっています。特に放送が始まってから、その場にいられることがいかに贅沢かを実感していて。現場に入る時から(子役の荒川梨杏が演じた)幼少期の夕見子からじっくり見させてもらって、その雰囲気だったり、梨杏ちゃんと(なつの少女時代を演じた)粟野咲莉ちゃんたちがつくりあげてきたものを引き継げたらいいなという思いで私もずっと演じてきたので、自分が登場する週が近づくとともに、ドキドキが増しました(笑)。

朝ドラはヒロインの幼少期から青春時代へ時間がポンと飛ぶパターンが多いですけど、そこで描かれなかった数年間にあった出来事も自分なりに想像を広げれば、表現できるものがあるはずですし、そこもふくめて夕見子のいろいろな成長を見ていただきたいですね。もちろん夕見子に限った話ではなく、登場人物1人ひとりのキャラクターが本当にしっかり確立されていますし、すごくていねいに描写されているだけに、台本で読むのと実際につながった映像で見るのとでは、また印象が違ってくるんです。そんなふうに、なつに関わる人たちの裏側の描写を、視聴者の方々にはいろいろな角度から見ていただいて、いろいろな感情を抱いてもらえたら──と私としては考えています。

福地さんはオーディションを経て、夕見子役に決まったんですよね。

はい。オーディションでは台本の一部を渡されたんですけど、その時は夕見子のキャラクターや背景を全然知らない中で読みこんでいきました。なので、夕見子なのか、それともなつなのかわからない役を…ちょっと名前も変えてあったんですけど、その上でお芝居をするという感じでした。ただ、今にして思うと、あまり情報がない中で演じる夕見子だったんですけど、だからこそ余計なことを考えずにのびのびと演じられたのかもしれないな、という感覚もあるんです。
現場に入ってからは逆にいろいろ考えすぎて、かえって自分で難しくしちゃっていた時期に、もう一度オーディションの時のようなフラットな状態でやってみようと思い出せたことが、自分の中では結構大きくて。大人になるにつれて、夕見子はさらに芯の強い女性になっていくんですけど、私自身も『なつぞら』の現場に入らせてもらったことで、これから女優としてやっていく上での芯みたいなものを今つくってもらっているんだなって、実感しているところなんです。
お芝居を楽しんでいるキャストのみなさんに周りを囲んでいただいている中で、私ももっともっと良いものにして楽しみたいっていう空気を循環させて、自分なりに『なつぞら』に貢献できるよう追求していきたい気持ちがあって。常にそういうふうに思わせてもらえる現場ということもありますし、夕見子が大人になるにつれて強くなっていく姿も気に留めていただけたら、うれしいですね。

第20話より ©NHK
演劇は「じいちゃんの為にやる。」と言うなつに「自分の為にやんなよ。それなら私も応援する。してやる!」と照れ臭そうに返す夕見子。

朝ドラは1年近くかけて撮っていくというタームも、複数のカメラで長回しするという撮影方法も独特ですが、その辺りはどのように感じていますか?

まず、自分の中で朝ドラに出演させていただくことが大きな出来事だっただけに、夕見子役に決まってからも、なかなか実感がわいてこなかったんです。1年前、記者発表の場で初めてキャストのみなさんとお会いした時にようやく実感がわいてきて、「本当に朝ドラに出演する機会をいただいているんだ、この作品で絶対に自分は何か…今はまだ何を得られるかわからないですけど、いろいろなものを吸収して終わってないといけない」って思えたんですよね。始まる前に終わっているころの自分を思うというのもどうなんだ、という話ですけど(笑)、長い期間一つの役を演じるということに加えて、柴田家のみなさんとご一緒できる機会って本当に一生に一度なのだから、夕見子が成長していくと同時に、私も1人の役者として何かを得て終わっていないといけないなって、その時に思ったんです。それから1年が経って、確実に自分が強くなっていくのを感じられるのが、うれしいです。
それこそ独特な撮影方法に最初は戸惑いましたけど、朝ドラならではの雰囲気を感じさせてもらえてもいて。それと、スタジオに置いてあるモニターが面白いんです。カットが掛かった後、お芝居のチェックをするんですけど、パパパッて編集されて、今撮ったばかりなのにオンエアを見ているみたいな感覚で確認できるので、毎回「わ、すごい!」って感動しています。そういった…独特でありながら、ここでしか感じられない──それこそ朝ドラならではの時間を過ごさせてもらっているからこそ、撮影が終わって、『なつぞら』の放送も終わってしまった時に、楽しいことも大変なこともあった撮影現場を振り返るにつれ、思い出というか…濃厚な記憶として自分の中に残るんだろうなって、今からそんな気がしているんです。

福地さんにキャストが引き継がれた高校3年生の夕見子は、読書や勉強をしているからというのもありますけど、先進的な考え方の女の子という印象があります。幼少期とは違った意味で“尖って”いて、そこに個性があるように感じました。

夕見子を演じさせていただく中で感じるのは、ビックリするくらい「芯が熱い」ということです。「芯がある」というよりも、「芯が熱い」んですよね。それは、なつとのやりとりの中でも感じることが多くて。一見、夕見子は家族に対して興味がなさそうに見える瞬間があるように思われがちなんですけど、実は一歩離れたところから家族をよく見ていて。そういう夕見子なりの家族への関わり方をすることで、意外と柴田家はまとまっているんじゃないかなと思う瞬間があるんです。家族に興味がなさそうに見えたりする中で、いつも自分が勉強していることを教えてあげたいというところに着目すると、その瞬間瞬間を後悔して生きてほしくないという部分が見えてくるんですよね。そんなふうに人のことにまで熱くなれる子っていうところからも、全然冷たい子ではないし…むしろ、ものすごく情熱的な女の子だなって思うんです。
実は、そのことは演じながら気づいたことなんです。今まで演じたことのないタイプの役だったこともあって、最初は正直、夕見子のことがあまりよくわからなくて、まず自分との共通点を探してみることから始めていきました。それでも「なんでこういうことを言うんだろう?」とか、葛藤していたんですけど、なつと関わったりする中で、なつのことを思って何か発言していたり、自分から何かを発信している時が、夕見子にとっては一番いきいきしている瞬間なんじゃないかなって思えるようになってきたんです。だからこそ、なつとの絆というものを見ていただきたいですし、夕見子自身も、なつにたくさん影響を受けているからこそ──言葉にはしないですけど、いつも恩返ししたい気持ちがあって。だからこそ強めの言い方になってしまうんですけど、そういう不器用さだったり、一番近くで見ているからこそ、なつに対して「後悔してほしくない」という気持ちから自分にしか言えないと思って、いろいろ言っちゃうんです。でも、他人のためにそこまでエネルギーを使えるというところで、私は夕見子を人として尊敬しています。

夕見子という役への想い、しかと受け止めました。ちなみに、エンタメステーションも真冬の北海道ロケ取材会に参加しまして。残念ながら、その時は福地さんにお話をうかがえなかったんですけど…(笑)。

私、みなさんが十勝にいらっしゃった前日に撮影があったんです。柴田家のみなさんにくらべると外のシーンが少なくて、実はあまりロケがなかったりして。だから、すごく貴重な北海道での撮影だったんですけど、ちょうどその日が一番吹雪くっていう…(笑)。ちなみに私が関わっていた撮影シーンは何とか撮り終えることができたんですけど、草刈(正雄)さんをはじめ柴田家のみなさんのシーンは猛吹雪で撮れなくて、予備日に変更になってしまって。準備万端で待機されていたんですけど、そういうこともあるんだなっていうロケならではの大変さというのを、日本で一番寒いという北海道の地で経験をさせてもらって、すごく勉強になりました。

夕見子にとって泰樹さんが大きな存在であるように、私からすると草刈正雄さんは「お守り」のような人なんです

9年の間になつと夕見子が本音を言い合える関係になったことが読みとれるなど、スムーズに話がつながる大森寿美男さんによる台本を、福地さんはどう読みといているのでしょう?

自由な解釈をさせてもらてもらえる、発想の自由を与えてくださる台本だなと思っています。読んでいる時は「ここではこう思っているだろうから、こう演じてみよう」と考えてきたことが、現場に入ってみて柴田家のみなさんと実際に会ってお芝居をすると、変わっていくことが多々あって。そういうことを積み重ねるにつれ、あんまり「自分はこう思う」って決めすぎず、その場で考えたり感じたことを大事にして演じた方がやりやすいんだなって気づきました。と言っても、現場の空気感を感じながらつくっていった方が絶対いいものになるって、決めつけているわけでもなくて。カットが掛かった後にモニターでチェックする中で、表情から「あ、夕見子はこういうことを伝えたかったんだな」って気付く、と言いますか…。セリフはないんですけど、なつを見るみんなの視線が、家族のあたたかさを物語る瞬間というのがたくさんあるんです。それって、すごいことだなと思うんですね。セリフがなくても、その人の気持ちを表現できる瞬間が、大森さんの台本には描かれているんだなって思いました。

なるほど、深いですね。そして放送が始まった序盤、草刈さんが演じられている泰樹さんの厳しくも優しい振る舞いが話題になりましたね。

泰樹さん…というか草刈さんは、私自身にとってもすごくお守りのような方なんです。言うまでもなく圧倒的な存在感を感じさせてくださる方ですけど、夕見子というキャラクターから見ても泰樹さんは、ものすごく影響力がある人でもあって。なつと夕見子というのは全然違った性格で、歩いている道も目指しているものも違うんですけど、その根本というか、根ざしているものというのは、泰樹さんを心に置いている部分で共通しているのかなと思っていて。なつと、そういう話をするシーンはないんですけど、台本を読んでいて、何か2人にとっても家族にとっても、いてくれるだけですごく安心感がある方だなと感じたんですね。同じように私自身も、草刈さんにはどんなふうにして現場に臨むかを学ばせてもらっていて。
けっして口数が多いわけではないんですけど、コミュニケーションの一つとして、いつも声を掛けてくださったり、気にかけてくださったりするんですよ。半年以上ご一緒させてもらって、徐々に緊張もしなくなってきたんですけど、最初のころはどうしたらいいんだろうっていうことばかりだったので、その…「どう、元気?」だとか「今日はどう?」だとか、そういうひと言に助けてもらっていたなと思う瞬間がたくさんあって。そのひと言があったからこそ、泰樹さんとの関係性というところで…お芝居だからフィクションではあるんですけど、本当に心から尊敬できる関係性が出来上がりましたし、すごく助けてもらっているなと実感することができているんですね。もちろん、ほかのキャストの方々にも助けていただいているんですけど…泰樹さんというキャラクターがいたからこそ、夕見子というキャラクターの根本に“開拓者”への憧れがあるんだろうなって。「女性だからできない、なんていうことはない」という気持ちを、幼少期からずっと持っていたと思うので、これからどんどん成長していく物語の中で、絶対…みんなの心の中に泰樹さんがいる、いてくれるっていう安心感が、お話としても現場としても、お守り的なところがあるんですよね。そういうわけで、草刈さんはすごくホッとする存在です。

第28話より ©NHK
泰樹が大好きな雪月のシュークリームをお土産に渡す夕見子。

そういったお話を聞いているだけでも、福地さんがたくさんのことを吸収していることがうかがえます。

ずいぶん前に「これから撮影に入るんだ」って言っていたのが、あっという間に半年以上経ってしまって。最近も、「いよいよ放送が始まるね」っていう会話があったばかりなんですけど、もう放送が始まってしばらく経とうとしていますし…しかも毎日放送されるとなると、それは撮影も大変だろうなって、あらためて思ったりします。それと…すごく穏やかで気持ちのいい朝を視聴者のみなさんに迎えていただくために、いろいろな人が関わっていらっしゃいますけど、一番最初にホン(台本)読みをした時に、一つの作品に関わる人の多さに圧倒されて、これまでないくらいに緊張したんです。でも、立ち上がってみなさんの顔を見てご挨拶をする時に、こんなにたくさん『なつぞら』という作品に関わっていらっしゃるのを目の当たりにして、自分にはこれだけの数の寄り添ってくださる人がいるんだって──そういう思いの方が強く感じられたんです。こんなにも身近に味方がいるんだって感じさせてくれる現場こそが、朝ドラならではの家族のあたたかさみたいなものを生むんだなって、“裏側”を見た時に感じたと言いますか。だからこそ、見てくださる方々が感動して、あたたかい気持ちになりながらも、いろいろなことを考えさせるドラマの歴史ができていくんだなって思いました。

しかも、節目の100作目ですからね。

また、最初から決まっていたことじゃないですけど…“平成最後で令和最初の朝ドラ”になったのも、すごいなって思います。すずちゃんがヒロインを務める朝ドラにふさわしいなって素直に感じますし、その作品で夕見子という役を演じさせてもらうことが、とてもありがたいです。

そんな朝ドラの歴史の中で、福地さんの思い出深い作品を挙げるとすると?

朝ドラのオーディションを何回か受けさせてもらいましたが、自分が出たいなと思うきっかけになった作品で、ちょうどお芝居を始めたばかりのころに放送されていたのが『べっぴんさん』でした。しかも、ヒロインの芳根京子さんが同世代だったんです。自分よりも年上の女優さんがヒロインを演じられた作品も好きなんですけど、同世代の女優さんが、母親として子育てする年代を演じられたりするのを見た時の衝撃は、今までにないくらい大きくて。そういう意味では、いろいろと視野が広がる作品でもありました。それまでは芳根さんが学生を演じているところしか見てこなかったんですけど、お母さんになるとか、年齢を重ねていくっていうことを、こんなに濃密に描くお話として、半年間ずっと見ていられるというところでも、朝ドラはすごくいろいろなことを考えさせてくれるんですよね。きっとヒロインに感情移入しながら朝ドラを見る方が多いと思うんですけど、だからこそ男性でも女性でも関係なく、没入できるというか…ふだん自分が感じられないことを、ヒロインの気持ちになることで、知らない世界を見せてもらえるというのが、朝ドラの特色なんじゃないかなって。私がそれを感じたのが『べっぴんさん』だったんです。『なつぞら』も、どなたかにとって、そんなふうに感じてもらえる作品になれば、うれしいですね。

2019年度前期
連続テレビ小説『なつぞら』

放送(全156回):
【総合】[月~土]午前8時~8時15分/午後0時45分~1時(再)
【BSプレミアム】
[月~土]午前7時30分~7時45分/午後11時30分~11時45分(再)
[土]午前9時30分~11時(1週間分)
【ダイジェスト放送】
「なつぞら一週間」(20分) 【総合】[日]午前11時~11時20分
「5分で『なつぞら』」 【総合】[日]午前5時45分~5時50分/午後5時55分~6時

作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人 /
岡田将生、吉沢 亮 /
安田 顕、音尾琢真 /
小林綾子、高畑淳子、草刈正雄 ほか

制作統括:磯 智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中 正、渡辺哲也、田中健二ほか

オフィシャルサイト
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/
Twitter(@asadora_nhk)
Instagram(@natsuzora_nhk)

福地桃子

1997年生まれ、東京都出身。
2016年に本格的に女優デビュー。
主な出演作に、主演映画『あまのがわ』(2019年),
映画『あの日のオルガン』(2019年),TVドラマ『あなたには帰る家がある』,『チア☆ダン』(TBS系)など。

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