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清水葉月&松田 凌らが心理戦を繰り広げる。舞台『+GOLD FISH(プラスゴールドフィッシュ)』開幕

清水葉月&松田 凌らが心理戦を繰り広げる。舞台『+GOLD FISH(プラスゴールドフィッシュ)』開幕

舞台『+GOLD FISH(プラスゴールドフィッシュ)』が、5月10日(金)紀伊國屋ホールにて初日を迎えた。
演出家・西田大輔が描く本格ミステリー作品の第2弾。「その本当の名前を知ったときに過去を振り返ることができる」と言われる魚《オンリーシルバーフィッシュ》を求めて、イギリスの片田舎にある古い洋館に集まった12人の男女。それぞれが秘める「振り返りたい過去」、そして偶然に起こった事件の真相を巡り、彼らは心理戦を繰り広げていく……。
舞台・映像と幅広く活躍し注目を集める若手女優・清水葉月と、第1弾舞台&映画連動プロジェクト『ONLY SILVER FISH』でも中心を担った松田 凌がW主演。個性派揃いの役者陣が脇を固め、上質なワンシチュエーション会話劇を魅せる。
初日直前に行われたゲネプロのレポートをお届けする。

取材・文・撮影 / 片桐ユウ


《オンリーシルバーフィッシュ》の名前を巡って心理戦を繰り広げ、人間性を浮き彫りにさせていく

『+GOLD FISH(プラスゴールドフィッシュ)』は、2018年1月に同劇場にて上演され、同年には映画が公開となった映画&舞台の連動プロジェクト『ONLY SILVER FISH(オンリーシルバーフィッシュ)』に遡る時系列の物語。

舞台は第1弾作品と同様、中央の奥に大きな水槽がある洋館の一室。上手と下手の奥は上がり階段が設置されており、各部屋へ続いている。上手に外へと続く扉、下手には簡単なチェアが置かれ、真ん中にソファとテーブルのセットが鎮座する。新しくはないが手入れの行き届いたといった上品さが漂う室内だ。
始めから終わりまで、このワンシチュエーションの中で綴られていく会話劇である。

冒頭に登場するのは、洋館の執事であるパーカー(川本 成)と、マーティズ(松田 凌)。マーティズは水槽を遊々と泳ぐ魚《オンリーシルバーフィッシュ》に見惚れるも、その名前の追求が目的ではなく、この洋館で休暇を過ごすことになっている青年だ。

マーティズ役の松田 凌は映画版でも主演を務めた、いわばこの世界の常連。それでいて、“イギリスの片田舎にある古い洋館”を新鮮に味わっている好青年を、ごく自然体で演じている。無邪気さと、ふいに見せる鋭い眼差しが、陽気に見えるマーティズの奥に何かを予期させる。

マーティズが散歩に立ち去ったあと、洋館には次々と客がやってくる。そして誰もが合図のように同じ小説本を掲げてみせる。ここは、そのミステリー小説の謎を解いたものだけが訪れることのできる場所なのだ。
彼らの目的は《オンリーシルバーフィッシュ》の本当の名前を知ること。この魚の本当の名前を知ることができれば、自分が望む過去を振り返ることができる。すなわち、洋館にやってくる誰もが「振り返りたい過去」を持っている。

そのためか、彼らは自分を語りたがらない。それでも訳ありなことが漂ってくるような、クセの強い面々だ。なにせ演じている俳優陣が個性派揃い。

状況判断に長けたメガネの紳士・ワイズナーを演じるのはコントユニット「親族代表」の竹井亮介、クセのある物言いで人を翻弄するポロット役は「劇団お座敷コブラ」主宰の伊藤裕一。

屋敷を訪れた夫婦、気の強い妻・エヴリンは二人芝居ユニット「ナシュラン家」を旗揚げした西丸優子が演じ、愛妻家のビクトールは劇団「柿喰う客」と「青年団」に所属する大村わたる。そんななかにやってくる謎めいた紳士・ブラントを演じるのが「劇団☆新感線」の粟根まこと。

そして冒頭から登場しているパーカーを演じているのは演劇ユニット「時速246億」主宰、「あさりど」の川本 成なのだから、すべての場面で濃密かつ洒脱な芝居が繰り広げられるのはあきらかだ。

実際、何気ないシーンやアドリブとおぼしきやりとりも相手への挑戦感があって、瞬きする間が惜しいほど。ミステリーならではの役同士の駆け引きと心理戦のなかに、役者同士での掛け合いを楽しむ芝居心が潜んでいる。

芸達者揃いのなかで、真摯な芝居を見せる若手俳優と女優陣の輝きも見逃せない。

落ち着いた大人の女性・クラリスを演じる清水葉月は、数々の注目作を経てきた経験値を発揮。一生懸命さが愛らしいシンシア役の樋口日奈(乃木坂46)は、華と瑞々しさを持ち合わせている。

クールなアーシュラを演じる高柳明音(SKE48)は、感情を露わにする場面での変化が見事で、世界観にも良く馴染んでいた。

アーシュラの婚約者・ペイトンを演じる神永圭佑は、レトロなスーツ姿が生来のノーブルな雰囲気を活かしており、ちょっとした茶目っ気を含めて見てみたかった神永圭佑。
物静かで内気な男・ベントーを演じる伊万里 有も、昨今ではガタイの良さを活かした役柄を目にすることが多かったせいか、あらためて彼の芝居が持つ繊細さを見ることができた。

この12人の男女が、《オンリーシルバーフィッシュ》の名前を巡って心理戦を繰り広げ、人間性を浮き彫りにさせていく。

水槽の中を泳いでいる、という演出の中に存在する《オンリーシルバーフィッシュ》同様、人が見る誰かの姿は真実とは限らず、その見えている姿はその人の中にしかない。

しかも“謎”はそれぞれの人柄、過去や関係だけではない。魚の名前はもちろん、話の途中で、隣町から逃れた「殺人犯」が客の中に紛れている可能性が浮上するのだ。

次から次へと湧き上がる“ミステリー”。いったい誰が「犯人」で、結果誰が「魚の名前」を手にするのか。その誰かが「振り返りたい過去」とは何か。

緊張の糸を西田の演出がうまく手繰りながら、見事な回収の待つラストへと導いていく。

見終えたあとには、良質な舞台を見届けた満足感と、彼らの心情を思う切なさが残る。謎解きの爽快感はもちろんだが、この12人が己の人生をさらけ出して見せてくれた、人と人との関係そのものについても一考したくなる作品だ。

上演は紀伊國屋ホールにて5月19日(日)まで。来場者全員プレゼントがある公演日、アフタートーク開催日も決定している。

舞台『+GOLD FISH』

2019年5月10日(金)〜5月19日(日)紀伊國屋ホール

STORY
イギリスの片田舎にある古い洋館に集まった12人の男女。
彼らは《オンリーシルバーフィッシュ》の本当の名前を知るため、とあるミステリ小説の謎を解いてこの洋館を訪れた。
その魚の本当の名前を知ることで、過去を振り返ることができると言われているのだ。
しかし、魚の名前を知る権利が与えられるのは、たった一人だけ。
洋館の主の言葉に従い、その一人を決めるべく投票が行われることとなったのだが、
そんな中、隣町から逃れた”殺人犯”が洋館に紛れている可能性が浮上し…
偶然居合わせた考古学者の青年を巻き込み、物語は誰もが予想できなかった結末を迎える。

作・演出:西田大輔

出演:
クラリス 役:清水葉月
マーティズ 役:松田 凌
シンシア 役:樋口日奈(乃木坂46)
ベントー 役:伊万里 有
ペイトン 役:神永圭佑
アーシュラ 役:高柳明音(SKE48)*友情出演
ポロット 役:伊藤裕一 *友情出演
エヴリン 役:西丸優子
ビクトール 役:大村わたる(柿食う客)
ワイズナー 役:竹井亮介
パーカー 役:川本 成
ブラント 役:粟根まこと(劇団☆新感線)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@GOLDFISH2019)