Interview

浅井健一「METALLIC MERCEDES」。つねに「最善の道を歩んでいる」と語る彼の“今”

浅井健一「METALLIC MERCEDES」。つねに「最善の道を歩んでいる」と語る彼の“今”

2019年2月にソロ名義としては約5年ぶりとなる新曲「HARUKAZE」「ぐっさり」を配信リリースした浅井健一。5月29日にはニューシングル「METALLIC MERCEDES」をリリース、久々のソロプロジェクトをさらに強く押し進めている。
同シングルには表題曲「METALLIC MERCEDES」(作詞・作曲:浅井健一/Vo.G:浅井健一、Ba:仲田憲市、Dr:岡屋心平、Ch:小林瞳)のほか、「INDY ANN」(作詞・作曲:浅井健一/Vo.G:浅井健一、Ba:中尾憲太郎、Dr:小林瞳)、「Freedom」(作詞・作曲:浅井健一/Vo.G:浅井健一、Vn:美央、Ch:小林瞳)を収録。楽曲によってレコーディングメンバーを変えるスタイルにより、ソロアーティストとしての音楽世界をより豊かに広げている。
現在は2014年の6th『Nancy』以来となるソロアルバムの制作中という浅井。シングル「METALLIC MERCEDES」をフックにしながら、今のモードについて様々な角度から語ってもらった。

取材・文 / 森朋之


「METALLIC MERCEDES」は不思議な運命を辿った曲

2月にデジタル配信された「HARUKAZE」「ぐっさり」に続き、ニューシングル「METALLIC MERCEDES」がリリースされます。表題曲「METALLIC MERCEDES」はシンプルかつエッジーなギターリフを軸にした、“近未来のロカビリー”と称したくなるナンバー。この曲はいつ頃生まれたんですか?

リフはだいぶ前からあったかな。この曲は、仲田先輩(仲田憲市 / Ba)、心平(岡屋心平 / Dr)とやるのがいいんじゃないかと思って。

「迷うことも探す事も 悩むことも全て終わり 恐れないさ もう分かった」という歌詞がとにかくカッコよくて。

歌詞はいつもそのときの気持ちを書いているんだけど、結局、何が起きるかは自分の気持ち次第だよね。あきらめてしまったら、何も起きないでしょう? 実は「METALLIC MERCEDES」も途中であきらめかけたんだよね、作ってるときに。去年の秋くらいに一度録ったときに、マネージャーやスタッフから「絶対にカッコよくなると思うから、もう一度チャレンジしてみて」と何度か言われて。俺は忘れ去ろうとしていたんだけど、今年に入ってもう一回やってみたら、いい感じになって。それでシングルとして出すことになったんだよ。だから、ちょっとした自分の気持ちの方向で変わっていくんだなって。それはミュージシャンだけじゃなくて、誰でもそうだろうと思うけど。

去年の秋のときとはアレンジも変わってるんですか?

少し変わったし、進化したんだよね。最後に瞳ちゃん(小林瞳 / Dr)のコーラスが入って、さらに強力になって。不思議な運命を辿った曲だね。

「METALLIC MERCEDES」というタイトルの由来は?

“MERCEDES”はラテン語かなんかで“神の慈悲”という意味なんだわ。車のメルセデスは、ベンツの創始者の娘の名前みたいだよ。このタイトルは“神の慈悲”だから、「車のことじゃないよ」って書いておいて(笑)。

わかりました(笑)。ギラっとした手触りのセクシーで危うい音質も印象的でした。サウンドメイクについてはどんな方向性があったんですか?

いつもと同じだけどね。ここ7年くらいはSHERBETSのキーボードの福士久美子さんがやっているSTUDIO HIPPOで録ってるんだけど、近くて便利だし(笑)、エンジニアが優秀で、いつもいい音になるから。今回もいいんじゃないかな。

そのときの心境が歌詞になってる。ある日の自分の心

2曲目の「INDY ANN」は「本当の気持ちがどこにあるのか/それは自分が一番知ってるよ」という歌い出しで始まるミディアムチューン。

この曲も1年以上前から存在していたかな。曲名は“インディアン”。この歌詞も「METALLIC MERCEDES」と同じで、そのときの心境が歌詞になってて。ほかの曲もそうだけど、ある日の自分の心だよね。

ネイティブ・アメリカンに対するシンパシーも含まれているんですよね?

インディアンは素晴らしいよね。BLANKEY JET CITYのとき、メンバーが一時期インディアンが好きになって、曲にしたこともあるから。自然と調和しながら生きて、素晴らしい暮らしを送っていたんだけど、一部の白人に無茶苦茶にされてしまう。大きく言うと、世界中の歴史はそれでしかないよね。

そして3曲目には「Freedom」を収録。浅井さんのギターと歌、美央さんのヴァイオリンという編成によるナンバーです。

ちょっと前からライヴでも歌ってるんだけど、こういうシンプルなアレンジでやっていて。この編成でレコーディングしたいなと思ってたから、ちょうどタイミングが合ったんだよね。この曲、いいよね。

AJICOにも「フリーダム」という曲がありますが、まったく雰囲気が違いますね。

そうだね、世界観も違うし。「フリーダム2」にすれば良かったかな(笑)。

浅井さん自身の“自由”に対する考え方も変化しているのでしょうか?

どうだろう……今回の「Freedom」は、「自由をはき違えている人がたくさんいる」と思ったことがきっかけになってるんだよね。インターネットの世界もそうだし。何年か前、フランスの新聞がイスラム教徒をバカにするような風刺画を載せたことがあったでしょう? 抗議のつもりであったとしても、神様をバカにしたら、その宗教の人は怒るに決まってる。それを「表現の自由だから、なんでもやっていい」というのは、俺は違うと思うんだよね。自由をはき違えているヤツはやっつけていかないとダメだなというのが、俺の考え方だから。

なるほど。今回のシングルを含めて、今年に入ってからソロ名義の楽曲が5曲リリースされましたが、いずれも歌詞がすごく直接的で。メッセージをはっきり伝えたいという狙いもあるんですか?

そこまではっきり意識しているわけではないけどね。そのときの気分で書いたらそうなったっていう。もちろん、何かを感じてくれたら嬉しいけど。

この状況が20年くらい前にできてたら、もっと良かった

ソロアルバムの制作も進んでますか?

うん、いい感じだよ。「METALLIC MERCEDES」と「HARUKAZE」はアルバムに入れようと思ってる。照ちゃん(照井利幸 / Ba)、椎野さん(椎野恭一 / Dr)と録った曲もいいし、仲田先輩たちとやった曲、KILLS(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)でやった曲もあって。これから録ろうとしている曲もあるし。全部並べてみないと、どういうものになるかはわからないけど、相当クオリティは高いと思う。行けるところまで行くわ。

今回のソロプロジェクトに関しては、“新しい血を入れたい”という狙いもあったそうですが、それもうまくいったと。

そうだね。その段階はもう終わって、次はKILLSの面々と新しい曲を作ろうと思って。

え、そうなんですか? ソロプロジェクトとバンドの行き来がさらに自由になっているというか……。

毎年いろんなことを考えながらやってるし、最善の道を歩んでいるつもりなんだけど。

シングルの初回盤には、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのライヴ映像「浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS Sugar Days Tour 2018 Final at Shinkiba STUDIO COAST」を収録。このときのライヴの手応えはどうでした?

良かったよ、もちろん。たぶん今のほうがもっといいけど、去年のSTUDIO COASTのライヴも良かった。どこから良くなかったのかは、自分ではよくわからないんだけどね。「カッコよくなった」としか言いようがない。

6月のツアー〈浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS〜INDIAN SUMMER QUATTORO GIGS〉も楽しみです。

俺も楽しみだね。今回のシングルの曲もやるだろうし。KILLSのメンバーも喜んで、バリバリやってくれるから。

いい状態ですよね、ほんとに。いろいろなアウトプットの方向があって、創作もライヴもまったく途切れることがなくて。

そうだね。この状況が20年くらい前にできてたら、もっと良かったんだけど(笑)。まあ、そんなこと言ってもしょうがないから、頑張るよ。

この2〜3年で、ようやくちゃんと歌えるようになってきたと思ってる

音楽以外の話もさせてください。今年2月に絵本『ベイビーレボリューション』(絵:奈良美智/クレヨンハウス 刊)を刊行しましたが、これも音楽と同じく、浅井さんのメッセージを伝えるためのアクションなんでしょうか?

まあ、そうだね。けど、そこまで大げさには考えてないけど(笑)。15年くらい前に「Baby Revolution」(SHERBETS)という曲が出来て、俺も気に入っていて。ただ、自分の意志で絵本にしたわけではないんだよ。クレヨンハウスの方が「絵本にしませんか?」と言ってくれて、「いいよ」って。だから、その人に感謝だよね。奈良さん(絵を担当した奈良美智)ともたまたま、昔から知り合いだったし。絵本になって、俺も嬉しかった。

表現のチャンネルを増やしたいという意向もあるんですか?

増やしたいというか、もともとなんでも作ってるけどね。物販のデザインもやってるし、この前に絵本(2011年刊『Let’s Study』)や絵画集も出してるから。この前、打ち合わせで「いちご農園やろうか?」って言ってたんだよね。食べ放題のいちご農園(笑)。

(笑)音楽以外にもやりたいことがたくさんある、と。

そうだね。何歳までこういう活動を続けられるかわからないから、そろそろ将来の設計とか立てたほうがいいかもなって、たまに思うしね。もちろん、音楽はやめないけどね。ずっと歌っていたいから。

もうひとつ聞かせてください。前回の「HARUKAZE」「ぐっさり」は配信、今回はCD。音楽の届け方については、どんなふうに考えていますか?

CDのほうがいいよ、俺は。配信ってよくわからないし(笑)、好きなミュージシャンの曲だったら、モノとして手に取りたいと思うから。CDそのものがなくなったら、どうしようもないけどね。

データじゃなくて、モノがいいと。

うん。そのうち恋人もバーチャルになりそうだけどね(笑)。映画とかに出てくるでしょ、そういうシーンが。そんなんで満たされるなんて、なんてペラペラなんだって思うし、滑稽でしかないだろ。

ミュージシャンの場合は、生でオーディエンスと触れることができるライヴという場所がありますからね。

そうだね。ライヴは好きだし、ずっとやりたいと思ってる。この2〜3年で、ようやくちゃんと歌えるようになってきたと思ってるんだよね、自分の感覚では。……まあ、わかんないけどね、昔がどうだったかは。昔のことは忘れてるから(笑)。

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS
INDIAN SUMMER QUATTRO GIGS

6月22日(⼟)名古屋CLUB QUATTRO
6月23日(⽇)⼤阪CLUB QUATTRO
6月29日(⼟)渋⾕CLUB QUATTRO
6月30日(⽇)渋⾕CLUB QUATTRO

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浅井健一(あさい・けんいち)

1964年生まれ、愛知県出身。1990年より2000年までBLANKEY JET CITYとしての活動後、 自主レーベル「SEXY STONES RECORDS」を拠点にバンドSHERBETS、AJICO、JUDE、PONTIACSや、ソロ名義で活動。2016年に新たなソロプロジェクト、浅井健一& THE INTERCHANGE KILLSを始動。2019年2月にソロ名義で約5年ぶりの新曲「HARUKAZE」「ぐっさり」を配信リリース、5月29日にシングル「METALLIC MERCEDES」を発表。

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