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芯となる魅力は輝きを失わない、最新『ファイナルファンタジーX/X-2』の価値

芯となる魅力は輝きを失わない、最新『ファイナルファンタジーX/X-2』の価値

RPGを遊ぶとき、最初のプレイはとにかく強引に先へと進んでいくプレイスタイルをとる。物語の進行に関わるイベントだけをこなし、戦闘も最小限。とりあえずエンディングを見る。やり込み要素については2周目以降で考えるのだ。
そんな風にRPGとつきあってきたので、『ファイナルファンタジーX』を手に取ったときは、とにかく早くクリアーしたいと急いた。「話題作を一刻も早くクリアーしたい」という思いだけが当時の筆者には満ちていたのだ。しかし、ディスクをPlayStation®2に入れプレイを開始すると、そんな気持ちはあっという間に消え失せていた。名曲”ザナルカンドにて”に彩られたオープニングシーンにすっかりやられてしまったのだ。「最後かもしれないだろう」と語りかける少年の声が耳に入った途端、筆者はこの作品を丁寧に隅々まで遊ぶことを決意した。物語のすべてを目撃し、いろいろな人の話に耳を傾けよう。そう決めてスタートした冒険は、いまだ忘れられないものとなった。いろいろなRPGを遊んできたが、これほど最初のつかみに秀でた作品をほかに知らない。
今回の記事では、新規にNintendo Switch™版とXbox One版の『ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター』が発売され、あらためて多くの人がプレイできることを踏まえてのインプレッションをお届けする。本作は、『ファイナルファンタジーX』はもちろん、『ファイナルファンタジーX-2』まで収録された豪華な作品だ。しかも、両作品ともに日本語版でありつつインターナショナル版の追加、変更点を含むものとなっているのも見逃せない。以前に両作品をプレイしたのは、10年以上まえのこと。あれからさまざまなRPGを遊んできたが、本作の芯となっている魅力はやはり今でも刺さる。今回の記事では、両作品の魅力をゆったりと語っていく。

文 / 浅葉たいが


『ファイナルファンタジーX』は最後まで一気に遊べない

『ファイナルファンタジーX』は、世界を脅かすシンという存在に立ち向かう少年と少女の物語だ。”ザナルカンドにて”とともに幕を開ける冒険は、その旋律のイメージと同じく、ところどころに深い切なさや寂しさを漂わせながら進んでいく。見知らぬ土地に飛ばされた主人公のティーダは、召喚士の少女ユウナとともに旅に出る。最初、目的こそ違うもののふたりは徐々に惹かれ合っていく。ふたりがお互いのことを想いながら行動しはじめたとき、物語は大きく動き始める。

▲切ない雰囲気が満ちるオープニングに引き込まれたプレイヤーも多いのでは?

プレイヤーはそのうち、残酷ともいえる世界の真実を知らされることになる。冒険を終えたとき少年と少女はどうなってしまうのか、と緊張しながらラストバトルに臨んだことを今でも強烈に覚えている。今回のプレイは筆者にとって、オリジナル版、インターナショナル版を経て3回目のプレイになるが、大筋や結末を知っていてもところどころで一息つきたくなってしまった。この作品を思い出すたびに、素晴らしいRPGを遊んだという満足感が浮かんできたあと、まだ熱を持つ爪痕のようなものが残っていることを自分の内に感じる。本作ではさまざまな別離が描かれるのだが、そのどれもが痛く、切ない。随分と時間が経って、いろいろな物語に触れてきた今でも爪痕がじんとするような感覚になるのは、グラフィック、音楽、フルボイスの会話などが絶妙に溶け合い、最初にそれを見たときの衝撃が抜けないからだろうか。

▲先を知っている状態で遊んでも、切ないシーンはやはり響く

▲リマスター版ということでグラフィックの構図などは変わらないものの、細部は非常に美しくなっている

本作の優れている部分は、物語だけではない。バトルの歯ごたえや自由度も大きな魅力だろう。CTB(カウント・タイム・バトル)という形式の本作のバトルは、以前の『ファイナルファンタジー』シリーズで数多く採用されたATB(アクティブ・タイム・バトル)からプレイフィールをガラリと変えたものになっている。

▲ボスとのバトルでは、さまざまな魔法や技を使い分けて戦う。ユニークな攻撃手段を持つ敵も多く、緊張感のあるバトルが楽しめる

CTBでは、選んだ行動やパラメーターによって変化する行動順が画面上に表示される。プレイヤーには味方と敵の行動順が見えているため、コマンドをやりくりして敵の攻撃機会を遅らせたり、減らしたりするという戦術を考えることができる。ATBでは、その名のとおりコマンドを選んでいる間もバトルの時間が進んでおり、素早く状況に応じたコマンドを選んでいくのがセオリーとなっていたが、CTBではじっくりと考えたうえで最善の一手を探すことになる。このシステムを理解し、強力な行動を軸に戦いを進めるというプレイスタイルをとれるようになれば、戦力不足を戦術でカバーできるシーンも増えてくる。ゲームへの理解度が深まったことを実感できる瞬間が随所にあるというのは嬉しいものだ。筆者は昔から新しいルールの戦闘システムに出会うと、わくわくしてしまうのだ。

▲行動順が画面右側で可視化されているのがわかるはず。この行動順は選択した行動によっても変化するので、慣れてくれば戦術を考えるうえで重要な要素になる

▲ユウナは召喚獣を呼び出して戦うことができる。召喚獣の行動をコマンド選択によって決定する

バトルに紐づいたやり込み要素も見逃せない。隠し召喚獣、七曜の武器という特殊な条件を満たすことで入手可能な装備、そして正攻法で戦うとなるとさまざまな下準備が必要な隠しボス”デア・リヒター”への挑戦など、さまざまなエンドコンテンツが用意されている。すべての要素を網羅するにはかなりの時間が必要だが、やり遂げたときの満足感はひとしおだ。

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