平成のゲーム 30年間の軌跡  vol. 3

Review

【平成21年~25年】ゲームがコミュニケーションと体感の革命を起こした5年間

【平成21年~25年】ゲームがコミュニケーションと体感の革命を起こした5年間

新元号“令和”になって3週間以上が過ぎ、新生活にはもう“馴れて”きただろうか。唐突だが、心理学用語に馴化・脱馴化という言葉がある。特定の刺激に対して慣れて、反応が鈍くなったり遅くなったり薄くなったりするのが馴化(じゅんか)。反対に、一度別の刺激を与えることで鈍くなった刺激に対する反応が復活することを、脱馴化(だつじゅんか)と言う。
(ビデオ)ゲームにとって、馴化・脱馴化は切っても切れない心理的な働きであろう。エンタテインメント全体でこの働きを考えるなら、ユーザーが馴化し、飽きてしまうことは恐怖でしかない。個々のゲーム機、ゲームタイトル、場合によってはジャンルにも当てはまるだろう。人を楽しませるコンテンツはつねに、新鮮で刺激に溢れた体験をユーザーに与えるべく生まれているはずだからだ。
平成30年間のゲームシーンをこの視点から見るならば、ずっと“飽きること”との戦いでもあったのかもしれない。それは別の言いかたをするなら、馴化・脱馴化を器用に使いこなせたかどうかの歴史、とも言えそうだ。
本記事は、平成30年のゲームシーンをひとつの流れとして読み解く全4回。3回目となる今回はトピックスの多さを考えて最後の10年の前編とし、平成21年(2009年)から平成25年(2014年)までを振り返る。これまで同様に、個人や世代によってゲームシーンの受け止めかたは多々あると承知したうえで、時系列での掲載をお許しいただければ幸いである。数値によるデータの紹介はなるべく避けて、感覚的な部分での歴史を述べていきたく、資料性の高い記事ではないこともあらかじめご了承いただきたい。

文・構成 / wodnet、エンタメステーション編集部


平成21年(2009年) -“体感”が導くゲームの転換点-

アメリカでバラク・オバマ氏が大統領に就任し、日本では鳩山内閣が発足して民主党に政権交代したこの年、ゲームシーンではこれまでにない転換が見られた。ひとつは携帯ゲーム機のサイズ革命だ。10月に発売となったPSP®(プレイステーション・ポータブル) go(ソニー・コンピュータエンタテインメント 当時/現ソニー・インタラクティブエンタテインメント 以下同)は小型・軽量化を売りにし、11月発売のニンテンドーDSi LL(任天堂)は携帯ゲーム機の後継機としては初となる“大型化”を売りにした。

▲PSP® go。ユニバーサル・メディア・ディスク(UMD)スロットを無くし、液晶面と方向キーや各種ボタンを分けてスライド式展開にするなど、徹底した小型・軽量化が図られた

▲ニンテンドーDSi LL。上下ともに画面サイズが大きくなっただけでなく、内蔵バッテリーの持続時間も長くなった

携帯ゲーム機をコンパクトにして使いやすくすることも、画面サイズを大きくして見やすくすることも、どちらもユーザーの声に耳を傾けた進化と言える。とりわけニンテンドーDSi LLは、中高年層の使いやすさを意識しつつ、子どもたちにとっては友だちの画面を横からのぞき込みやすくもあり、時代のニーズに応える新しいユーザーフレンドリィの視点・方向性を提示した。
ゲームソフトに目を向けると、7月に発売となった『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』(スクウェア・エニックス)が生んだゲームシーンに触れないわけにはいかない。

▲『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』(スクウェア・エニックス)。ニンテンドーDS専用ソフト。国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズのナンバリングタイトル。前年に発表された『ドラゴンクエストⅩ』に先駆けて、近くにプレイヤーがいるアドホック環境でのオンラインプレイを初めて搭載。最大4人で冒険することもできた

本作は、『ドラゴンクエスト』シリーズ初となったマルチプレイはもちろんのこと、ほかのプレイヤーから宝の地図を手に入れられる“すれちがい通信”の遊びを爆発的に普及させた。これは、ニンテンドーDSに当初から備わっていた機能で、電源を入れたまま上画面を閉じたスリープ状態でも、ほかのニンテンドーDSと物理的にすれちがったときに、互いのデータを交換・共有できるというものだ。
ゲームとは、テレビやモニターの映像を見ながら遊ぶもの、という前提があるが、そこに新たな遊びかた・楽しみかたが提案された瞬間とも言えた。また、それが“人と人を直接結びつける”方向での提案だったことは、前記事の『モンスターハンター』シリーズにおけるリアル集会所ブームとも通じていて、ゲームにおけるコミュニケーションの大切さを改めて浮き彫りにさせた。
ほかにも任天堂の『New スーパーマリオブラザーズ Wii』、『Wii Sports Resort』、カプコンの『モンスターハンター3(トライ)』といったWii向けのタイトルも好調な年だった。

▲『モンスターハンター3(トライ)』(カプコン)。シリーズで初めて水中狩猟が体験できた。Wii専用のクラシックコントローラーを使った操作だけでなく、Wiiリモコン&ヌンチャクで、実際に武器を振るような感覚でもプレイが可能

いずれもさまざまな“体感”を楽しむタイトルで、以降もWiiの提案する独自のゲーム体験を多くのサードパーティーが深掘りしていった。こうした遊びの進化が、ゲームシーンを質的に変化させるだけでなく、アイデアを豊かにさせていった。もちろんフロンティア精神あふれるゲームソフトばかりではなく、『ファイナルファンタジーⅩⅢ』(スクウェア・エニックス)を始めとするハイクオリティなタイトルもゲームシーンを彩った年だった。

▲『ファイナルファンタジーⅩⅢ』(スクウェア・エニックス)。全編映画の世界に飛び込んだような高精細映像で物語が展開する。シリーズで人気のアクティブ・タイム・バトル(ATB)はそのままに、アクション性とスピード感がより強調され、主人公・ライトニングを始めとするキャラクターたちの華麗な動きを堪能できる

<平成21年(2009年)>

【時代の出来事】
国際宇宙ステーションに日本の実験棟”きぼう”が完成、裁判員制度による初の裁判が実施、マイケル・ジャクソンさん死去、Twitterブーム、事業仕分け、草食男子、小説『告白』、小説『ソードアート・オンライン』、映画『アバター』、映画『サマーウォーズ』、映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』、映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、ドラマ『JIN –仁-』、ドラマ『BOSS』、アニメ『東のエデン』、アニメ『君に届け』、アニメ『けいおん!』、アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』、アニメ『宇宙をかける少女』、漫画『進撃の巨人』、漫画『マギ』、漫画『青の祓魔師』、漫画『男子高校生の日常』

【発売されたおもなゲーム】
『ボーダーブレイク』、『Mincraft』、『League of Legends』、『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』、『トモダチコレクション』、『イナズマイレブン2 脅威の侵略者 ファイア/ブリザード』、『ラブプラス』、『セブンスドラゴン』、『Wii Fit Plus』、『バイオハザード5』、『ベヨネッタ』、『STEINS:GATE』、『イースⅦ』、『アマガミ』、『初音ミク -Project DIVA-』

平成22年(2010年) -The Beast-

この年、2003年に宇宙へ飛び立った日本の小惑星探査機“はやぶさ”が地球へ帰還し、人類が宇宙飛行の往復技術を獲得したことは大きな飛躍だった。
ゲームシーンの飛躍に目を向けると、ソニー・コンピュータエンタテインメントがPlayStation®Move モーションコントローラーを、マイクロソフトがProject Natal(のちのKinect)を発表した。

▲PlayStation®Move。PlayStation®3用(後年発売となるPlayStation®4でも使用可能)の周辺機器。PlayStation®Cameraと組み合わせ、手で握って動かすコントローラー。動きを正確に認識

▲Kinect。Xbox 360専用の周辺機器。コントローラを一切使わず、本機の前に立って音声やジェスチャーを行うことでゲームを操作できる

任天堂のWiiやニンテンドーDSが作り出した“体感”するゲームのおもしろさが、メーカーの枠を超えて広がりを見せた。まるで遊園地のアトラクションのような体感型の波は、デジタルでバーチャルな世界を扱うゲームと急速に融合していった。
ほかにもゲームシーンに関わるハードとしては、iPadの登場もこの年であった。ゲーム機として登場したわけではないiPadだが、パソコンの代わりとしてビジネスシーンでも活躍するほど高性能で、ゲームのプラットフォームのひとつとして数えられるようになるまでに、そう時間はかからなかった。
そして平成22年は、ある人物が飛躍した年でもあった。いま話題のeスポーツ。この業界でウメハラ(Daigo)の名を知らない者はおそらくいないであろう。この年、ウメハラこと梅原大吾さんが米国でプロゲーマーになった。
以下の動画は、Evo2004『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』の準決勝戦、その最終ラウンド第一試合の逆転劇。梅原選手はアメリカのジャスティン・ウォン選手に追い詰められるが、本作のブロッキングシステムを正確無比な操作で活かし、大逆転を収める。のちに背水の逆転劇と呼ばれる伝説的シーンだ。

EVOは最も長く継続開催されている、世界最大級の格闘ゲームトーナメントだ。その影響力は高く、梅原選手はこの年、アメリカのMad Catsという周辺機器メーカーとスポンサー契約を結んだ。残念ながら、この頃の日本はまだeスポーツに対する意識も環境も整っていなかった。そんななか、世界に目を向けてプロゲーマーとなった梅原選手。そんな彼が、今日のeスポーツの活況につながる道を示してくれたことは言うまでもないだろう。

<平成22年(2010年)>

【時代の出来事】
中国のGDP(国内総生産)が世界2位となり日本を抜く、菅内閣発足、日本年金機構発足、子ども手当受給開始、羽田空港国際線ターミナル開業、DQNネームに代わりキラキラネーム流行、コーエーがテクモを吸収合併、小説『もし高校野球のマネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら(もしドラ)』、映画『アリス・イン・ワンダーランド』、映画『借りぐらしのアリエッティ』、映画『インセプション』、ドラマ『臨場』、ドラマ『フリーター、家を買う』、アニメ『Angel Beats!』、アニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』、アニメ『バカとテストと召喚獣』、アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、漫画『ノラガミ』、漫画『ハイスコアガール』

【発売されたおもなゲーム】
『メタルギア アーケード』、『ドラゴンボールヒーローズ』、『MELTY BLOOD』、『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』、『ファイナルファンタジーⅩⅣ』、『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』、『モンスターハンターポータブル 3rd』、『Wii Party』、『ゴッドイーター』、『メタルギア ソリッド ピースウォーカー』、『ニーアレプリカント/ゲシュタルト』、『ゼノブレイド』、『北斗無双』、『エンドオブエタニティ』、『レッド・デッド・リデンプション』、『うたの☆プリンスさまっ♪』

1 2 3 >
vol.2
vol.3
vol.4