平成のゲーム 30年間の軌跡  vol. 4

Review

【平成26年~31年】ゲームがインタラクティブ性を獲得した5年間

【平成26年~31年】ゲームがインタラクティブ性を獲得した5年間

前回の記事に引き続き、平成26年(2014年)から平成31年(2019年)4月頃までの平成最後のゲームシーン、残りの5年間と4ヶ月ほどを振り返っていく。また、本稿の結びでは、あらためて平成21年(2009年)から現在までの約10年間を筆者の感触を通して考察していきたい。

文・構成 / wodnet、エンタメステーション編集部


平成26年(2014年) -シェアが結んだゲームとSNS-

この年の4月、日本の消費税が5%から8%になった。そうなるまえにぜひとも買っておきたかったのが家電製品や車・バイク、住宅といった大きな買い物だが、ゲームシーンでは2月に発売された次世代据置型ゲーム機、PlayStation®4(ソニー・コンピュータエンタテインメント 当時/現ソニー・インタラクティブエンタテインメント 以下同)がそれに当てはまる買い物だった人も多かったのではないだろうか。

▲PlayStation®4。映像表現などの性能の向上はもちろんのこと、さらにネットワークやコミュニケーションの機能が強化された。なかでも“Share”ボタンを用いた動画や静止画の保存および共有機能には驚かされた

9月にはXbox One(マイクロソフト)、10月にはNEW ニンテンドー3DS(任天堂)が発売となり、3大ハードメーカーの主力機揃い踏みの年であった。

▲Xbox One。本機用にリファインされたKinectが同梱されるなど、Xbox 360の後継機として大幅な強化がなされた

▲NEW ニンテンドー3DS。これまでのニンテンドー3DSシリーズと互換性があり、次世代機ではないものの、新たにCスティックとZR・ZLボタンが追加されるなど、操作性が向上した

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の爆発的な普及と浸透にともない、インターネットには個人・企業の区別なく無数のコンテンツが氾濫し、情報の提供者も受信者も、それぞれの思惑が絡み合って混沌としたやりとりが日常的に繰り広げられるようになった。この時期から、情報を正確に読み取る能力(メディアリテラシー)やプライバシーの保護は、誰もが身につけるべきスキルとなっていった。
かつての情報発信といえば、メーカーなどの企業が情報を出す場所やタイミングをコントロールし、メディアがそれを大勢に広めるといったわかりやすい構造・段階性を帯びていた。しかし、SNS全盛の時代は情報収集の利便性が格段に向上しただけでなく誰もが情報を発信できるようにもなり、情報を渇望する個人の執念や探究心は、ときに企業が意図しない形で玉虫色の情報を拡散するきっかけにもなっていった。

そんなネット時代の負の側面に目を向けざるを得なかったこの頃、SNSの正の側面をあらためて体現し、ゲームとSNSを包括してくれたゲーム機がPlayStation®4で、その正の側面とは“シェア(共有)”であった。本機は自動的にプレイ状況を動画で保存していて、遡って動画を切り出して編集し、その動画をSNSに投稿したり、リアルタイムのゲームプレイをライブ実況できるだけでなく、遠く離れた友だちとシェアプレイで自分のゲームを遊んでもらったりもできるようになった。PCで難しい技術を駆使しなければできなかったようなことが、PlayStation®4ではいとも簡単にできるのだ。
こうして情報の共有だけでなく、ユーザー同士の時間の共有、そして体験の共有をもスムーズに実現させたPlayStation®4。この共有のムーブメントは、先述の“リアル集会所”や“すれちがい通信”にも通じていて、物理的におなじ場所や時間にいなくても、つながる遊びや楽しさを共有できるゲームシーンを確固たるものにした。

<平成26年(2014年)>

【時代の出来事】
東京都知事選で舛添要一氏が初当選、あべのハルカス完成、『笑っていいとも』放送終了、赤崎勇さん・天野浩さん・中村修二さんがノーベル物理学賞、KADOKAWAがフロム・ソフトウェアを子会社に、KADOKAWAとドワンゴがKADOKAWA・DWANGOを設立、日本のスマホゲーム市場が家庭用ゲーム市場を上回る、映画『アナと雪の女王』、映画『マレフィセント』、映画『GODZILLA』、映画『ベイマックス』、映画『思い出のマーニー』、ドラマ『花咲舞が黙ってない』、ドラマ『緊急取調室』、アニメ『SHIROBAKO』、アニメ『プリパラ』、アニメ『アルドノア・ゼロ』、アニメ『残響のテロル』、アニメ『結城友奈は勇者である』、アニメ『ピンポン THE ANIMATION』、漫画『ゴールデンカムイ』、漫画『だがしかし』、漫画『僕のヒーローアカデミア』、漫画『火ノ丸相撲』

【発売されたおもなゲーム】
『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX』、『パズドラ バトルトーナメント -ラズール王国とマドロミドラゴン-』、『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』、『妖怪ウォッチ2 真打』、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』、『モンスターハンター4G』、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』、『ファイナルファンタジー エクスプローラーズ』、『Minecraft: PlayStation®Vita Edition』、『マリオカート8』、『メタルギア ソリッドⅤ グラウンド・ゼロズ』、『ぷよぷよテトリス』、『ソードアート・オンライン -ホロウ・フラグメント-』、『ゼルダ無双』、『Destiny』、『コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア』、『グランブルーファンタジー』、『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』、『LINE ディズニーツムツム』、『テラバトル』、『スクールガールストライカーズ』、『白猫プロジェクト』、『ファイナルファンタジー レコードキーパー』、『ねこあつめ』、『アイドルマスターシンデレラガールズ』、『ファントム オブ キル』、『にゃんこ大戦争』

平成27年(2015年) -ゲームの変容と多様性-

個人情報に対する意識の高まりからマイナンバーの通知カードが届き始めたこの年、スマートフォンをPCのように活用するライフスタイルはますます定着し、マイクロソフトが無料配布したWindows10もスマートな時代を意識したUIで、スマートフォンのアプリケーション(スマホアプリ)を使うような感覚をPCに持ち込んできた。
アプリの数はまるで雨後の筍のようで、ゲームシーンでもリリースラッシュが起こり、代表的なタイトルを絞り込むことすら困難なリリース数に昇った。そんななか、任天堂がDeNAと提携したニュースは、これまでのゲームシーンを考えても驚きの発表だった。歴戦の兵(ツワモノ)と血気盛んな新人が、かなりのスピード感を持ってタッグを組んだ。
ゲームアプリは新参者ばかりではなく、日本の国民的RPGのシリーズも登場し、歴戦の兵が新たな戦場に乗り込むケースも増えていった。この年は、スクウェア・エニックスから『星のドラゴンクエスト』や『メビウス ファイナルファンタジー』などがリリースされた。
一方でリッチなタイトルだけでなく、個人で制作されたインディーゲームにも徐々に関心が寄せられていき、新たなゲームクリエイターの活躍の場としても、スマホゲーム市場は活況を呈して現在に至っている。
さらに、『ハースストーン』(ブリザード・エンターテイメント)や『Vainglory』(Super Evil Megacorp)といった、いま現在eスポーツ業界を賑わせるタイトルも続々と日本で正式リリースされた年であった。
こうしたスマホゲームアプリの大量出現は、ゲームシーンに“多様性”を育んだ側面があると感じている。ひと言で「ゲーム遊んでます」と言っても、その中身は人によって千差万別だ。それは同時に、ユーザーが自身のライフスタイルのどこにゲームを配置しているかも含めて、さまざまな価値や認識があっていい時代になったことを意味している。ゲーム脳の恐怖のような迷信や誤解が蔓延っていた時代がまるでウソのようだ。
そういったゲームのとらえかたの多様性が認められていくなかで、昨今話題の“eスポーツ”にも徐々に目が向き始めた時期だった。平成15年(2003年)から平成24年(2012年)まで続いていた“闘劇”が“闘会議”となって帰ってきたこの年、のちに闘会議の常連種目(タイトル)となる作品が登場した。“イカ”の愛称でお馴染みの『スプラトゥーン』(任天堂)だ。

▲『スプラトゥーン』(任天堂)。4人対4人で勝敗を競う三人称視点のシューティングゲーム(Third Person Shooter;TPS)。プレイヤーが操作するインクリングは人間の姿になれるイカ。バシャバシャとインクを撃ち合って床面を自陣の色でより多く塗れたチームの勝利となる

FPSやTPSといったシューティングのジャンルは、日本のゲームシーンにもたびたび登場していたが、どうしてもリアルな人間を撃つシチュエーションが多くなりがちで、コアなファンが遊ぶゲームという印象があった。そこへ、ポップでキャッチーな世界とキャラクター、相手を撃ち倒すよりも床を塗ることを優先させる内容の本作が登場したことは、日本人が提案するFPS(TPS)の新たな形として、FPSの概念をも変容させる出来事だった。この年は、価値観や認識の変化という意味で、ゲームシーンがこれまでにない多様性をユーザーに提案した年と言えるのではないだろうか。

<平成27年(2015年)>

【時代の出来事】
任天堂の当時の取締役社長・岩田聡氏が死去、ラグビーワールドカップで日本が南アフリカから歴史的勝利、五郎丸ポーズ、横綱白鵬が史上最多優勝、世界体操で日本が37年ぶりの金メダル、イスラム国(ISIS)の日本人拘束、Netflix開始、映画『スターウォーズ/フォースの覚醒』、映画『ジュラシック・ワールド』、映画『バケモノの子』、ドラマ『下町ロケット』、ドラマ『デスノート』、アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』、アニメ『アクエリオンロゴス』、アニメ『おそ松さん』、アニメ『美男高校地球防衛部LOVE!』、アニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』、アニメ『パンチライン』、漫画『かぐや様は告らせたい』、漫画『ゆるキャン△』、漫画『はたらく細胞』

【発売されたおもなゲーム】
『鉄拳7』、『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』、『モンスターハンタークロス』、『妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊』、『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』、『パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズ エディション』、『ハコボーイ!』、『スーパーマリオメーカー』、『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』、『メタルギア ソリッドⅤ』、『東亰ザナドゥ』、『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』、『シアトリズム ドラゴンクエスト』、『ディシディア ファイナルファンタジー』、『Fate/Grand Order』、『プリンセスコネクト』、『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』、『城とドラゴン』

平成28年(2016年) -知新からの温故-

ドナルド・トランプがアメリカの大統領選で勝利し、イギリスがEUからの離脱を選択するなど、激動する世界情勢から目が離せなかったこの年。日本でも熊本大震災の暗いニュースがありつつも、さまざまな分野で激動の年となった。なかでもゲームシーンに関連するところだと、“VR元年”がトレンドワードのひとつに挙げられるだろう。ソニー・コンピュータエンタテインメントはソニー・インタラクティブエンタテインメントに社名を変更し、満を持してPlayStation®VRを発売した年だった。

▲PlayStation®VR。平成26年(2014年)に初試作機を披露したバーチャルリアリティ(VR)を体験できるヘッドマウントディスプレイをPlayStation®4の周辺機器として発売

本機と同時に、『PlayStation®VR WORLDS』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、『サマーレッスン』(バンダイナムコエンターテインメント)、『Rez Infinite』(エンハンス / Developed by Monstars and Resonair)など、さまざまなタイプのVR対応ゲームソフトも発売された。本機発売後にVR対応となった既存のゲームソフトも数多くある。

▲『PlayStation®VR WORLDS』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)。シューティングやダイビングなど、5種類のVR体験を楽しめる

▲『サマーレッスン』(バンダイナムコエンターテインメント)。VRで実現された、目の前にいるかのような実在感のキャラクターたちと距離感を楽しみながら交流できる。プレイヤーは家庭教師となり、3人の教え子が登場

▲『Rez Infinite』(エンハンス / Developed by Monstars and Resonair)。画面中央のアバターを操作してレーザーを発射し、ウィルスを撃破しながら電脳空間を進んでいく共感覚シューティングアドベンチャーゲーム。プレイヤーの攻撃とウィルスの破壊の効果音が音楽と同期し、まるで音楽ゲームのようにリズミカルな反応として視覚的に返ってくる

ほかにもスマートフォンでVRを体験できるゴーグルや、VR対応の動画コンテンツなども続々と登場したが、仮想現実への圧倒的な没入感や、手に取れると感じられるほどの臨場感をPlayStation®4のハイクオリティなゲームで体感できる喜びは大きく、夢のようなマシンが現実に登場した瞬間だった。
一方、任天堂は3D立体視機能や折りたたみ式をオミットしたニンテンドー2DSを低価格で投入し、さらにユーザーを拡大していった。ゲームソフトもそれに貢献し、『ポケットモンスター サン・ムーン』(ポケモン)、『妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ』(レベルファイブ)などの人気作が軒を連ねた。また、株式会社ポケモンとNianticの共同開発で『ポケモン GO』がスマートフォン向けゲームアプリとしてリリースされたのもこの年であった。

▲『ポケモン GO』(株式会社ポケモン、Niantic)。Niantic社の『Ingress』がゲームに活かしていた GPS機能の位置情報を用い、現実の世界を歩くことによってポケモンと出会えるゲーム。プレイヤーは『ポケットモンスター』シリーズ同様にポケモントレーナーとなり、実在する場所へ赴いてポケモンを探し捕えたり、育成したポケモンを使ってほかのプレイヤーとバトルをしたり交換ができる

いわゆる拡張現実(Augmented Reality;AR)の技術を用いたタイトルで、バーチャルなポケモンが現実世界の映像を背景に出現する光景を見て度肝を抜かれたユーザーも多かったことだろう。特定の場所に実際に足を運ばなければ手に入らないポケモンがいるなど、かつてのすれちがい通信のブームのような“人と人のつながり”にとどまらず、人と場所(空間)をも結びつける作品となり、位置情報を用いたゲームもこれ以降増えていった。そんななか、任天堂が発売したニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータがヒットした年でもあった。

▲ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ。本体にあらかじめ30本もの名作ファミコンソフトが内蔵された小型ゲーム機

ゲームシーンにクラシックブームを巻き起こした本機。名作を手元に残しておきたい。過去のゲームに触れながら思い出を語りたい。そんな昔を懐かしむ気持ちは、ときとして最先端に匹敵する魅力を生み出すことがあることを、このゲーム機は教えてくれた。
温故知新ではなく、知新にどっぷり浸かっているからこそ温故を求めるという志向。VRや位置情報ゲームなどの真新しい刺激そのものが弱いわけでは決してなく、前回の記事冒頭にも記したように、新しいものをつねに求めようとすること自体にも、私たち人間はすぐに慣れて(馴化して)しまうのかもしれないのだ。
昔を懐かしみたい気持ちに突き刺さるニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータを展開した任天堂の戦略は、現在のゲームシーンにたどり着くまでの歴史を紐解く役割を果たすと同時に、古き良きゲームと新鮮なゲームのあいだを行き来させる遊びの流れを生み出し、新しいものをより刺激的に受け取れる心の土壌を作ってくれているのかもしれない。
あえて温故と知新を行き来させることで、ユーザーに馴化・脱馴化を促し、古いものも新しいものもその魅力を失わずに済むよう仕向けてきたのなら、ゲーム業界全体が展開しているクラシックブームの戦略にはあらためて脱帽する。

<平成28年(2016年)>

【時代の出来事】
リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック開催、18歳の選挙権施行、広島カープが25年ぶりのリーグ優勝、SMAP解散、ピコ太郎氏が『ペンパイナッポーアッポーペン』をYouTubeに公開、TikTok、映画『君の名は。』、映画『シン・ゴジラ』、映画『この世界の片隅に』、映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、音楽『恋』、アニメ『ユーリ!!! on ICE』、アニメ『甲鉄城のカバネリ』、アニメ『ブブキ・ブランキ』、アニメ『終末のイゼッタ』、アニメ『キズナイーバー』、アニメ『ヤマノススメ』、アニメ『ベルセルク』、アニメ『この美術部には問題がある!』、漫画『鬼滅の刃』、漫画『彼方のアストラ』

【発売されたおもなゲーム】
『スーパードラゴンボールヒーローズ』、『スーパーマリオメーカー for ニンテンドー3DS』、『ファイナルファンタジーⅩⅤ』、『ストリートファイターⅤ』、『オーバーウォッチ』、『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』、『人喰いの大鷲トリコ』、『モンスターハンター ストーリーズ』、『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』、『デッド オア アライブ エクストリーム3』、『シャドウバース』、『クラッシュ・ロワイヤル』、『スーパーマリオラン』、『グリムノーツ』、『#コンパス【戦闘摂理解析システム】』、『TIME LOCKER』、『囚われのパルマ』

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