Interview

平成に最も歌われたアニソン 高橋洋子に聞く「残酷な天使のテーゼ」との24年。『シンカリオン』×『エヴァ』コラボへの感慨も…

平成に最も歌われたアニソン 高橋洋子に聞く「残酷な天使のテーゼ」との24年。『シンカリオン』×『エヴァ』コラボへの感慨も…

『新世紀エヴァンゲリオン』TVシリーズの主題歌「残酷な天使のテーゼ」で知られる高橋洋子が、新作ミニアルバム『EVANGELION EXTREME』をリリースする。平成で最も歌われたアニソンが生まれた当時の様子から、いま現在“母性”をテーマに新たな「エヴァ」ソングを生み出した理由、そして昨年話題になった『シンカリオン』と『エヴァ』のコラボについてなど盛りだくさんの内容で聞いた。

取材・文 / 日詰明嘉


『エヴァ』を社会現象と実感したタイミング

高橋洋子さんは以前にスタジオミュージシャンのお仕事をされていたそうですね。「残酷な天使のテーゼ」のお話もそのときのお仕事のご縁で編曲者である大森俊之さんによる紹介で『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)について詳しい内容を知らないまま歌われたとか。

高橋洋子 はい。基本的にはスタジオミュージシャンなんです。もともと歌うことは好きだったけれども、人前に出ることが得意ではなかったから、子供の頃は合唱団に入っていたんですね。小学2年から高校2年まで。そこは私にとって、みんなに混じって楽しく歌える場でした。その後はコーラスのお仕事をしていましたが、メインの人は別にいるから視線はそっちに向いているなか、私はコーラスとして自由に歌わせていただいていました。

ソロデビューはどのような形で訪れたんですか?

高橋 その後、月9ドラマ(『逢いたい時にあなたはいない…』)の挿入歌のお話があったのですが、急に決まったことで「良い話だけど、急な話で近くに歌える人いない?」ということで急遽レコーディングをして「P.S. I miss you」でデビューとなりました。だから、「どうしてもデビューしたいんです!」という形でデビューしたわけではなかったんですね。野望もなかったし、ましてやみんなの前に出て歌う気もないままデビューしたんです。

その後、お仕事の中で大森さんと出会われて『エヴァ』のお話があり、「残酷な天使のテーゼ」を歌われたわけですが、その後『エヴァ』は社会現象となっていきました。スタジオミュージシャンとして歌われたなかで、高橋さんはいつ頃から、主題歌アーティストという自覚を持たれていたのでしょうか?

高橋 当時、『エヴァ』のアニメは、放送が始まるまで絵も見ていないしストーリーも知らない状態で、視聴者の皆さんと同じくTVの前で初めて見たんですよ。オープニングが流れると、音に映像がピッタリ合っていることに感動して、「こんなに素晴らしい仕事をやらせていただいたのか」という思いがありました。その後、続けて観ていくうちに「おや?」と思い、そのままハマるという皆さんと同じハマり方でした(笑)。

で、当時「何だかスゴいアニメがある」と噂が噂を呼んで騒がしくなっていき、中盤ぐらいから「これはもしかしたら、とんでもないことになるかもしれないな」と思っていました。そうすると主題歌を歌っている私のほうにも、取材のお話がドンドン来るようになり、新聞からも取材が来るようになると、いよいよ「社会現象」だなという感じになり、自分自身も歌っていることに対する責任感を覚えるようになりました。その時に「ただ歌っているだけではいけない」という自覚が出てきました。『エヴァ』の認知が上がるにつれて考えることが増えていったという感触ですね。

「残酷な天使のテーゼ」がカラオケランキング1位の理由とは?

「残酷な天使のテーゼ」は今もカラオケでも非常に高い人気です。もう24年も前のこの曲が継続して人気の理由をご自身としてはどのように感じていらっしゃいますか?

高橋 「平成で歌われたカラオケランキング」全体だと3位で、アニソン部門ではダントツの1位だとうかがった時は、まず単純に嬉しいなと思いました。まず、『エヴァ』の作品力は絶対的なものとしてあります。それに加えカラオケで背景として映像が流れると、社会現象作品ですから知らない人も「観てみようかな」という気になる。そうしたことが繰り返されて、皆さんの中に浸透していったのではないかと思います。

曲も歌詞も非常に完成度が高いものです。「残酷」と「天使」の組み合わせとか、「“テーゼ”って何?」とか(笑)。その次(「魂のルフラン」;『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』主題歌)は「魂」って、当時はスピリチュアルな言葉としてだいぶ社会に対して球を投げた感じだったと思いますよ。

それに歌ううえでも難しいんです。でも、難しいからこそ皆さんはカラオケで歌いたいんだと思います。だからこそ、歌い終わった後に達成感がある。そういう気持ちを掻き立てる曲だなと思います。私は何回歌っても上手く歌えない(笑)。編曲の大森さんにはそもそもの発注からして「難しくしてくれ」だったそうですから、いったい誰に文句を言えばいいのか(笑)。

今回の新曲「赤き月」で作編曲を担当されたのがその大森さんですが、制作にあたりどのようなお話をされましたか?

高橋 今までの『エヴァ』とは違うものにしようとしました。24年経ったんです。同じことはやめようと。そこで、今の私から14歳の主人公たちにエールを送れるとしたら何かなと考えたときに思ったのは、「母性」しかないなと。私にもこの20数年間の中でいろんなことがありました。その中で『エヴァ』と対峙してるわけで、皆さんもそれぞれの年代で共有しているものがある。

今、コンサートで世界中を回らせていただくと皆さんが日本語で歌ってくださるんですね。とても素敵な時間を共有させてもらっていますが、やっぱり日本語で歌うことも曲自体も難しいので、もうちょっと気楽に参加していただけるようなものがあってもいいんじゃないかなと思ったんです。そういうものもひっくるめた状態で一緒になれるのは“参加型”の歌かなと思ったんです。

「24年間の全部を詰めてみんなで歌おう」

“参加型”というのは具体的にどのような作りでしょうか?

高橋 コーラスを「ナナナナ~」と、歌詞がないつくりにして一緒に歌っていただけるようにしていますし、ヒューマンビートボックスを採り入れているので、そこでダンスバトルしてもらおうかとか。「始(はじまり)の合図」という歌詞の後にサイレンみたいな音が鳴るのですが、それは実はヒューマンビートボックスなんです。その後にも要所要所に出てきます。ライブの際には皆様にも参加していただきたいですし、そうすることでこの曲は完成するという作りにしました。このスタイルは初めての試みでしたね。

中盤にヒューマンビートボックスのゾーンがあったのは分かりましたが、サイレンの音まで口で出していたんですか。

高橋 そうなんですよ。ヒューマンビートボクサーの彼は世界チャンピオンなんですよ。だから、その界隈の人が知って聴けばおののくような使い方をしています。実際に見ると驚くと思いますよ。「本当にひとりの口から出る音? どういう仕組なんですか?」って(笑)。ライブの際にはもちろん彼を呼んで一緒に歌いたいし、皆さんにパフォーマンスを観ていただきたいですね。

「赤き月」は高橋さんが歌詞を書かれています。大きなテーマとしては先程の「母性」というキーワードがありましたが、言葉選びにおいて特に意識されたことは何でしょうか?

高橋 歌詞を読んでいただくと分かるのですが、語数が少ないんです。通常ですと20~30と使うものを8語とかで、それは難しい部分ではありました。あと、『エヴァ』には赤い月が個人的にはイメージとしてあります。で、これは原作者ではなく私の解釈として聞いていただきたいのですが、「赤き月」というのは自分の中にある月、つまり自分自身を指すことなんです。つまり、みんな答えが違ってみんなの中に「赤き月」というものがある。それに対して私は母性で歌うという体で書いています。これは歌詞にある「白い月・黒い月」もそうです。

今回の「赤き月」の歌入れはいかがでしたか?

高橋 意外と早かったですよ。私は基本的にあまり時間をかけないんです。なので、30分くらい。

えっ? それはずっと練習を重ねて収録に臨んだからですか?

高橋 そうでもないかな。

というと、最初の話のスタジオミュージシャン的なスキルという話に戻りますが、そういうスキルあってのお仕事だという。

高橋 そう。たぶん2回くらいしか歌っていないです。むしろ、本線よりも他の部分のほうが時間がかかったかな。合唱の部分はスタッフ全員参加ですから。私はもちろん、大森さんもプロデューサーもエンジニアさんも私のマネージャーも、ダンサーさんもメイクさんも。つまり、24年間の全部を詰めてみんなで歌おうと。知り合いのお坊さんが東京に来る機会があるというので、その方にも入ってもらっています(笑)。

でも、そうすることによってしかできない歌ってあるのだと思うんです。歌の上手さって、全員コーラスにおいてそれほど重要なことではなくて、それよりも楽しさとか一体感とかみんなで作ったことの方が大事。でも、まだ音源の段階ではこの曲は完成していないんです。なぜならリスナーの皆の声が入ってないから。それは会場で完成させようって感じですね。

『シンカリオン』と『エヴァ』がコラボした意義とは?

話題は少し変わりますが、昨年TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』の「エヴァ回」(第17話、31話)で「残酷な天使のテーゼ」が挿入歌として使用されました(→当時のニュース記事)。そのことについて、高橋さんはどのような感想を抱かれましたか?

高橋 そもそも「500 TYPE EVA」の新幹線ができたとき(『シンカリオン』とのコラボ以前)から嬉しかったです。『エヴァ』には関連商品などがたくさんあるなかで、新幹線のように家族で楽しめるものや子供向けの作品に『エヴァ』が登場したことは夢があるなと感じました。鼻が高い気持ちで楽しく拝見させていただきました(笑)。なんなら誰かのお母さん役で出たいくらい(笑)。内容も知らぬまま、スタジオミュージシャンとして派遣されて歌わせていただいたという状況から、私自身が『エヴァ』を大好きになって、社会現象となり、そして20数年経って子供向けの『シンカリオン』に「残酷な天使のテーゼ」が流れるって、本当にスゴいことですよ。

そして私はこれから2020年公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に向けて、宣伝隊長のように働きたいくらいの思いでいます。本当に光栄なことに最初のTVシリーズで歌わせていただいてるから、やっぱり『エヴァ』っていうと皆さん私のことを思い浮かべてくださる。だから、私にできることは何かと考えるとこういう活動になるし、それが進化していろんなポジションで『エヴァ』が生息し続けるということをさらに応援したい。そして、私も参加させていただけていることを誇りに思って、世界中の方にお伝えしたいなと思うばかりです。

©カラー ©カラー/Project Eva.

高橋洋子オフィシャルサイト