Interview

吾妻光良 & The Swinging Boppers 結成40年目に新作をリリース! “ご機嫌目盛り”を上昇させる極意と大所帯バンドのガバナンスを語る!?

吾妻光良 & The Swinging Boppers 結成40年目に新作をリリース!  “ご機嫌目盛り”を上昇させる極意と大所帯バンドのガバナンスを語る!?

今年、結成40年を迎える吾妻光良& The Swinging Boppersがニューアルバムをリリースする。日本屈指のブルーズ・ギタリスト、吾妻光良を中心に総勢12人で繰り広げるご機嫌な音楽は、長年にわたり熱い支持を獲得。メンバー全員が他の仕事に就いているため、不定期な活動ながら、その抱腹絶倒なライブは毎回、超満員。日々の出来事や世間をにぎわす話題を盛り込んだユーモア溢れるオリジナル曲と抜群の演奏で観客を楽しませてきた。5年8か月ぶりとなる通算8枚目の新作『Scheduled by the Budget』は、すでにライブで定番になっている曲に加え、バッパーズの大ファンである中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、人見元基(ex VOW WOW)をゲストに迎えたスタンドナンバーのカヴァー、ボーナストラックにはライブ音源を収録。一度でもその楽しさの味をしめたら人生が何倍も楽しくなることうけあいのバッパーズから、吾妻光良と渡辺康蔵の笑えるバンド・エピソードを交えたインタビューをお届けする。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 沼田 学


昭和から塩漬けになっていた「焼き肉アンダー・ザ・ムーンライト」がアルバムで生き返った。(吾妻)

今年は結成40年。大学の卒業記念に学園祭で演奏したのが始まりだそうですね。吾妻さんと渡辺さんのお付き合いもそれ以来ですか?

吾妻光良 ベースの牧裕とはそれプラス4年。それよりさらに古い付き合いがドラムの岡地曙裕。

渡辺康蔵 俺たちホーンセクションは結成した大学5年のときからだな。

アルバムはどういう内容にしようと考えていましたか?

吾妻 アルバムに入っている曲はすでにライブで披露している曲がほとんど。カヴァーをしたい曲があるからレコード会社に許諾を取ってくれと頼んだもののダメだった曲や、日本語詞を見せた途端に却下された曲もありまして、「ルーズベルト・イン・トリニダード」という1933年のカリプソの曲なんですが。

ライブでは人気の政局ネタを取り入れた曲じゃないですか?

吾妻 そう。まっ、それは残念だったんですが、今までライブではやったことはあるけど、歌詞がいまひとつでやらなくなってしまった曲が今回のアルバムで生き返ったのは嬉しい。

渡辺 一番古い曲は「焼き肉アンダー・ザ・ムーンライト」。あの歌詞が出来た時は相当嬉しかったんだろうね。俺に「出来たよ、パパ!」ってメールが来たもん。

吾妻 そうそう。1988年にバッパーズで帯広に行った時に4小節だけ出来て、その後は何も浮かばず30年塩漬け。

渡辺 去年の「すみだストリート・ジャズ・フェスティバル」では演奏したから、平成には間に合った。

吾妻 まだ昭和の1988年に4小節だけあった曲を時代をかけて熟成させた(笑)。この曲は4人のソロが8小節ずつ交代しながら進むんですが、私はその中にバンドのロマンを感じるんですね。ああ、時代は移っていったんだ、と。

渡辺 ソロが昭和〜平成〜令和と時代を刻むように……幻想だね(笑)。

吾妻 夢だね(笑)。あの帯広が我々にとって初めての地方ツアーだった。

渡辺 初の遠征が嬉しくて飛行機で写真撮りまくったね。

吾妻 あの頃は「Photo爺ィ」じゃなくて、まだ、30代だったから「Photo兄ちゃん」だったな(笑)。

左・渡辺康蔵 右・吾妻光良

「ご機嫌目盛り」では、バトル形式のディスりあいを取り入れてみたんだけど……?(渡辺)

アルバムは1曲目の「ご機嫌目盛り」から文字通りご機嫌にさせてくれますね。吾妻さんと渡辺さんのラップの掛け合いもあって。

渡辺 「最後まで楽しもう」の別ヴァージョンみたいなものだから、まあこれが1曲目だなというのはあったかな。

吾妻 俺たちのラップ、大丈夫ですかね? 鎭座DOPENESSを狙ったんだけど、ダメか?(笑)。長さはあれで限界。あれ以上になるとただの念仏になる。

渡辺 バトル形式のディスりあいを取り入れてみたんだけど、この前、ライブでやったら歌詞も振り付けも忘れちゃって(笑)。

〈そんなにどこも痛くない 昨日のことも覚えてる〉とか、歌詞も中年にはいちいち身に覚えがあることばかりで。

吾妻 メートル上げていくには健康第一。毎回そういう結論に(笑)。

だからこそ「大人はワイン2本まで」ということですか?

吾妻 タイトルは昔の友だちの年賀状から頂戴しました。「吾妻さん、大人はワイン2本までです!」って書いてあったんだよ。今は、I am Wine now. He is Everything.

(笑)。

吾妻 ワインがスイヤー(安い)になったというのもある。80年代に大阪にライブで行った時、天王寺に串カツを食いに行って、酒屋で380円のワインを買って帰りの新幹線で飲もうとしたら、それが5年くらい日向に放置してあったような代物で、襖のようなスゴい味がして(笑)。

渡辺 今回のボーナストラックにも収録されている「最後まで楽しもう」の歌詞に出て来る〈酸っぱいワイン〉がそれ。あまりにも不味いから捨てようとしたら、「飲め! 最後まで楽しめ」ってヒドいよね(笑)。

吾妻 それが「最後まで楽しもう」という曲になったんです。

世の中は、縦、横、高さ、酒の量の四次元で成り立っている。(吾妻)

渡辺 バッパーズは昔からメンバー全員同じものを食べて割り勘にするのが習わしで。串カツも100円以上のものは頼めないんだよ。「自分で払うから200円の海老を食わせてくれ」って言ってもバンドの統率が乱れるからダメ。

吾妻 一応、バンドのガバナンスを考えているんです(笑)。

大所帯のバンドを継続していくために必要な決まりごとだと?

吾妻 そう。サヴォイ・レコードの社長のハーマン・ルビンスキーも同じらしいよ。そんなヒトのレーベルの音楽ばっかり聴いているからこうなっちゃった(笑)。

大人の「たしなみ」から生まれた曲は、“ご機嫌目盛り”を上げてくれますしね。

吾妻 「あなたは何のためにバンドをやっているんですか?」と訊かれたら、8割、9割は飲むためにやっているようなところがある。ライブの前に軽くたしなんで、終わってから打ち上げで飲むのが普通ですね。ツアーで1泊1公演5飲みは行きすぎですが、まぁ、楽しいんですよ。

渡辺 だから、飲まないメンバーは、打ち上げでイカ刺しを食べてもいい(笑)。

吾妻 世の中は四次元で成り立っているんですよ。縦、横、高さ、そして、酒の量。

そうだったんですか!?(笑)

吾妻 昔、ライブの曲順の打ち合わせを喫茶店でやったら、「どうも。久しぶりです」ってなんだかいつもヒトが違っちゃって、「あっ! これは酒がないからだ」って気がついた。次元が変わるんです、酒のあるとなしでは。ちょっとたしなんだバッパーズの次元は、飲まないときと時空が違う(笑)。

還暦を超えて、最近は勤務時間帯でもメールの返信が早くなってきた。(渡辺)

中高年のカメラ好きを揶揄した「Photo爺ィ」も片腹痛い。

渡辺 これは全国の「Photo爺ィ」を敵に回したな。だって、〈ヤツのスマホの壁紙 近所の犬猫〉だよ!(笑)。

吾妻 「俺のこと、バカにすんなーっ!」って? 俺も最愛の犬を失って以来、犬を飼う気になれないから気持ちは分からないでもないんだけどさ。日本人のカメラ好きは、スマホの今に至るまで変わらないね。

ちなみにインスタグラムやSNSは?

吾妻 何にもしてない。バンドのWebサイトでは書いてますけどね。会社で見つからないようにこっそり更新したり。

バッパーズの皆さんは今も他の仕事に就いているんですか?

吾妻 12人中2人を除いて還暦を超えましたけど、まだ働いていますね。悠々自適という人はいない。ただ、生業としての仕事はしていても少し楽になってきたかな。

渡辺 その分、体が衰えている(笑)。最近は勤務時間帯でもメールの返信が早くなってきた。

過去には「俺の家は会社」という曲や、1991年にはすでに加齢をテーマにした「歳には勝てないぜ」もありましたね。

渡辺 今思えば、まだ若かったのにね。

吾妻 「24時間、働けますか?」なんて言ってた時代もあったくらいだからね。

渡辺 あの忙しく働いていた頃に、俺たち、よくライブやってたよな。今となっては仕事とどうやって折り合いつけていたか思い出せないや。

アルバム・タイトルの『Scheduled by the Budget』は、額面通りに受けとめると「予算次第のスケジュール」ですが……?

渡辺 我々の人間としてのバジェット、ここまでは使えるという「予算」もそろそろ見えてきたからね。

吾妻 それを寿命ともいう。だから、アルバムも出しておこうかなと(笑)。

ゲストが来ると、「伴奏している」という感じがして気が引き締まるもんなんですよ。(吾妻)

カヴァーの2曲はゲスト・ヴォーカルを迎えています。一人はEGO-WRAPPIN’の中納良恵さん。

渡辺 よっちゃん(中納良恵)が来ると、俺たちの集中力が全然違うんだよ。

吾妻 女性に限らずゲストが来ると、「伴奏している」という感じがして気が引き締まるもんなんですよ。それがけっこう楽しい。

渡辺 「Misty」の「Look at me」で入るところ、なかなか難しくてね。

吾妻 うちは最近の録音では珍しく、全員でせーので録ってますから、一発でキマると気持ち良いんですよ。「Misty」はEGO-WRAPPIN’の森(雅樹)くんが推してくれた曲で、俺も向こうのR&Bはけっこう聴いているつもりだったんだけど、ロイド・プライスという人のライブ・ヴァージョンは知らなくて、それが素晴らしいアレンジだったので、ほぼ完コピしました。

渡辺 よっちゃんは我々のクアトロのライブにもゲストで出てくれたね。

吾妻 その昔、都市の黒人たちが週末にクラブにフルバンドと歌姫を観に行って1週間の憂さを忘れるというその感じをやりたかったんです。

「Try A Little Tenderness」で素晴らしいヴォーカルを披露されている元VOW WOWの人見元基さんとも古いお付き合いだとか。

吾妻 それこそバッパーズより長い。本人は前からこういうのを歌ってみたかったみたいで、まぁ、声が普通の人間とは違いますからね。年齢的には1歳しか違わないんだけど、今もライブでぶっ通し3時間半歌って、打ち上げは朝までだってよ。

渡辺 ウソ! だって仕事もしてるでしょ?

吾妻 してる。とにかく、普通じゃない。再雇用界最強のロックシンガー!

風化しやすいワイドショー的な時事ネタは出来るうちにやっておく(笑)。(吾妻)

「やっぱ見た目だろ」は、自虐ネタをユーモラスに軽快に聴かせてくれますね。

吾妻 歌っている内容があまりにもワイドショーっぽすぎたので、CDに入れるに当たって歌詞に苦慮しましたが、普遍性のあるものになってよかったなと。

渡辺 ワイドショー的な歌詞の曲って風化しちゃうこともあって、これも一度風化したんだけど甦ったね。

吾妻 良い古材活用だったね。

渡辺 バブル時代の「物件に出物なし」という曲も一度は風化したんだけど、その後「物件に偽装あり」として復活したしね。

その時折の時事ネタを盛り込んだ曲はライブでも異様に盛り上がりますね。

吾妻 「栃東の取り組み見たか」も転じて「日馬富士のケンカを見たか」になったし、時事ネタは出来るうちにやっておく(笑)。

サラリーマンに「あるある」の共感を呼びそうな「でっすよねー」や、「正しいけどつまらない」には毒気も忍ばせて。

吾妻 そうそう。日頃から「なんで捕まらなねぇんだよ!」とか思いながらワイドショー見てますからね。「正しいけどつまらない」は最後に出来た曲で、なぜだかブルースっぽい遅い曲は最後の土壇場に書くんですよ。

渡辺 ああ、「秋葉原」も「俺のカツ丼」もそうだったな。

吾妻 やっぱり、長らくブルースをやってきた人間としてはブルース的なものをやるのに恥じらいがあるのかな。だから、ブルースの神様に気づかれないうちにこっそりつくろうとしているのかもしれない。ホントの12小節のブルースってどうしても日本語で書けないんだよ。何回か小編成でも試してみたんだけど、英語のカヴァーはできても、日本語に訳した途端に恥ずかしくて歌えなくなる。

吾妻さんがそう言うと、ものすごく説得力があります。

渡辺 ファンは吾妻のスロー・ブルースのギター・ソロを期待しているはずなんだけど、バッパーズでは“もどき”というかその変形パターンだよね。

吾妻 何か壁があるんですよ。我々のゲストにもよく出てくれる京都のタンメンこと福島岩雄も長年ブルースの日本語化に取り組んでいるんだけど、彼も同じことを言ってまして、それを歌えるようになったら、俺たちのエポックだねという話をしている。

会い過ぎると仲が悪くなるからライブはこのくらいのペースがちょうどいい。(吾妻)

ボーナストラックのライブ音源からはバッパーズのライブの熱狂と楽しさがダイレクトに伝わってきますが、近年はライブの本数も増えてきましたね。

吾妻 以前は年に4回くらいだったけど、還暦を超えてからは年6、7回くらいになってきましたね。

渡辺 メンバーの一人が海外赴任中の頃がいちばん少なかったのかな。土日が休みじゃないメンバーもいるし、有給の限界もあって。

吾妻 そう。仕事が立ち行かなくなっちゃうから。ライブが増えてきたのは嬉しいんだけど、あまり会い過ぎると仲が悪くなるからこのくらいのペースがちょうどいいんですよ。できれば翌日の仕事に差し障りがない土曜日がいい。

渡辺 このヒトは吾妻光良トリオとか他にもたくさんライブやっているから。

吾妻 バッパーズは人数が多いから譜面や譜面台を用意したり、スケジュールの調整とか色んなことにエネルギーを遣うから大変なんです。

渡辺 でも、楽しいんだよね。

吾妻 楽しいよー。そうでなきゃ40年も続けてないって。

その他の吾妻光良 & The Swinging Boppersの作品はこちらへ。

ライブ情報

『Scheduled by the Budget』リリース記念ワンマンライブ

5月25日(土) 東京・渋谷クラブクアトロ (Sold Out)
7月6日(土) 愛知・名古屋クラブクアトロ

大宴会in南会津2019

6月15日(土)  福島・会津山村道場うさぎの森オートキャンプ場

Rising Sun Rock Festival 2019 in EZO

8月17日(土) 北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

吾妻光良 & The Swinging Boppers

1979年秋、早稲田大学理工学部の音楽サークル「ロッククライミング」に所属していた吾妻光良が、当時交流のあった「Swing & Jazz Club」などのメンバーと共に、卒業記念の思い出づくりとして学園祭で演奏したのが始まり。大学卒業と同時に解散のはずだったのだが、あまりの楽しさに味をしめ9か月後に再結成。以後不定期に活動を行い現在に至る。現メンバーは、吾妻光良(Vocal, Guitar, Arrangement)、牧 裕(Contrabass)、岡地曙裕(Drums)、早崎詩生(Piano)、冨田芳正(Trumpet, Arrangement)、近 尚也(Trumpet)、名取茂夫(Trumpet)、西島泰介(Trombone)、山口三平(Baritone Saxophone)、小田島亨(Alto Saxophone)、渡辺康蔵(Alto Saxophone, Vocal.)、西川文二(Tenor Saxophone)の12人編成。1983年に1stアルバム『Swing Back with the Swinging Boppers』をリリース以降、これまでに6枚のオリジナル・アルバムとライブ・アルバム、ライブDVDをリリース。ほとんどのメンバーが他に仕事を持っているためライブの本数は少ないが、「FUJI ROCK FESTIVAL」、「アラバキロックフェスティバル」などのロックフェスにも出演しており、今年は「Rising Sun Rock Festival 2019 in EZO」に出演が決定している。

オフィシャルサイト